沢木耕太郎のレビュー一覧
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著者が25年間にわたり書き記したエッセイを集めた著書『銀河を渡る』を文庫化する際に2冊に分化したうちの後編が本書だ。そのエッセイが書かれたときに、振り返った過去の出来事について思いを馳せるようなエッセイが主だ。また、後半は著者がかかわった方がなくなられた際に、その交流のあらましが書かれている。
恩師であったり、仕事関係の恩人であったり、有名人であれば美空ひばりさんであったり。特に印象に残るのは高倉健さんだ。それは、私が高倉健さんのファンだというだけでなく、沢木耕太郎さんを語るうえで切り離せないボクシングを通じての関りであるからだ。つまり、著者と高倉健との情熱のやり取りが書かれているからだ -
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ノンフィクション作家による紀行文。マカオ、上海、シルクロードが多めな印象。紀行文以外はボクシング、オリンピックなどに関する筆者の過去のノンフィクション作品の舞台裏に関する記述というか、宣伝がいくつか。
「桃源郷」では世界の国々を見てきた筆者が、改めて日本の美しさ、特に田園風景に心を奪われた描写が印象的だった。普段意識することはないが、稲作民族であることを再認識し、田園の美しさに惹かれる経験をしたこともあり個人的に刺さった。
「鏡としての旅人」はその土地を訪ねる旅人を通して現地人は自国の良さを認識するという話。1960年代、高度経済成長の過渡期にあって、三島由紀夫の投じた「世界の中の静かな -
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ネタバレ帰ってきた日本は異国のようだった。懐かしの日本、よき日本は失われ、損なわれ、破壊されていた。人間らしさが失われていた。これまで旅してきた国や地域の「後進国社会」の方がはるかに人間的だと思えた。(下 p312)
徒歩で過酷な旅を行い、いく先々で信頼を得ながらインドまでの路を進む。今ではできない旅かもしれない。驚くべき出会いと年月。紀行文を凌駕して、ドラマにしか思えない。百魔を読んだ時もあぜんとしたがそれ以上。こんな日本人はもういない。
旅をすることで新しい土地に会い人に会い何かを得て何かを無くしていく。人生もそうなのだろうが、日本に帰ってからも本心は旅を続けたかったのだろう。 -
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沢木耕太郎の映画エッセイ集『世界は「使われなかった人生」であふれてる』を読みました。
沢木耕太郎の作品は、2年前に読んだ『不思議の果実―象が空を〈2〉』以来ですね。
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「使われなかった人生」とは何だろう。
それは、いまここにある自分の人生でなく、もう1つの可能性として「ありえたかもしれない人生」にほぼ等しい。
しかし、それら2つの言葉の間には微妙な違いがある。
「ありえたかもしれない人生」には手の届かない夢といった意味合いがあるが、「使われなかった人生」には具体的で実現可能な人生という意味が込められていると、著者は言う。ほんのちょっとした決断や選