東浩紀のレビュー一覧
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面白い。
わりと論旨はわかりやすくて、ルソーが昔語ったようわからんものだった「一般意志」は、現代のICT革命を経て可視化された。それを政治に活かしていったら面白いんちゃうん?て感じかな。
ルソーの一般意志って「人間は真理に自然とたどり着ける」みたいな人間への信頼感が根底にはあると思ってて、2.0ではその人間観はどうかなぁと思ったら、全然変わってないように見える。うーんどうなんだ。なんて読み進めたら、2.0はあくまでカウンターパートとして使うべき。みたいにあって。バランス感覚があるなぁ。なんて思ったけどそれって本末転倒というか、思想の鋭さが鈍った感じもする。そこから先の章は正直紙幅も足りてないし -
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感情と論理は、対になる概念なのだろうか。
「感情的にならず論理的になれ」とか。「お前は理屈っぽい人間だから人の感情が理解できないんだ」とか(これはあまりにも暴論か)。
感情と論理を対概念として、オルタナティブの様に扱う人は多い。
しかし、本書はそれを否定する。感情は論理を規程しうる、ということからもわかるように、感情と論理は「あちらが立てばこちらが立たぬ」式の二者択一ではない。
宮台によれば、いわゆる「ネトウヨ」や「ブサヨ」が台頭している背景にあるのは、「感情の劣化」だ。
知性とは態度であり、したがって論理的思考力などの知的能力によって規程される類のモノではない。問題はむしろ思考を方向づけ -
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オタク論でありポストモダン論であり文学論。
ラノベにも美少女ゲームにも触れたことのない人にとっては理解しにくいかもしれない。そういう人でも理解しやすいように本文中で詳しく説明されているが、やっぱり実感としてわかるかどうかは大きな違いだろう。
本書は2007年に出版されたが、2016年現在、ここで予言されていた新たな文学のあり方が当時よりも顕在化、加速化している気がする。メタ物語的な想像力に支えられた物語、読者を物語の中に参加させる手法は今や定番でありふれたものだし、当時よりもずっと、物語外の世界の権力は物語そのものを押しのけて肥大している。
物語外の世界(読者/消費者/プレイヤー)に重心を置 -
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大塚英志と東浩紀が、四回にわたっておこなった対談の記録です。第一回は2001年、第二回は2002年で、東が『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)の頃の東が、『物語消費論』の大塚英志と、サブカルチャー批評について議論を交わしています。
第三回は2007年で、今度は東が『ゲーム的リアリズムの誕生』(講談社現代新書)を刊行した後の対談です。そして2008年におこなわれた第四回は、秋葉原連続殺傷事件の直後の対談になっています。
対談を通して、大塚は愚直なほどにおなじ問いかけを東に向けています。彼が問うているのは、「公」のことばをもう一度立ちあげなければならないという義務感であり、そうしたこと -
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再読。この対談は『東京から考える』くらい好きだ。まえがきにもあるように、戸惑いに満ちている気がする。父として、父になれない者として、父になってしまった者としての。時折見える説明原理(独身者に対する子育て支援のロジックとか)について、宮台さんよりあずまんの方が正しかったんだということが、今読み返せばわかる。
時代は自分と直接関係のない(ないはずないんだけど、ほんとは)人間に対して、「そんな人間知るか!」「嫌いだ!」「俺のほうが大変だ」「あたしのほうがえらい」……の合唱になっている気がして、息が苦しい。
『ウェブ社会の思想』の脚注にも通じる話だけど。 -
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小説を読む時に、物語の「構成」はちょくちょく気にしながら読んでいますが、小説の「構造」を意識したことは余りありませんでした。なんていうと言葉遊びのようですが、本書を読み終えて思った率直な感慨です。
普段、文芸評論はほとんど読まず、フィクションの海を漂うに任せていることばかりのワシですが、本書は「セカイ系」の世界へと誘う巻頭言から引き込まれました。セカイ系……ワシの中では「最終兵器彼女」あたりから意識し始めた単語・概念でしたが、そこに至る様々な文学史的経緯があった、しかもそれを著者なりの切り口で深掘りし、強い説得力でもって解説してくれます。
しかしその解説も、全然小難しくはない。丁寧な説明、 -
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思いのほか、とても読みやすかった。文芸批評では取り上げられることのない、新井素子、法月綸太郎、押井守、小松左京の4名の作家から、閉塞したセカイ系をどう突破しようとしたか、が語られる。押井守の映画は何作品か見ていた他、法月綸太郎の本はほとんど読んでいたが、その他2名の作家はあまり読んでいない。それでもとても分かりやすい。
法月綸太郎は、正統派本格ミステリであるようでいて、変格でもある。一時期までは主人公がよく悩んでおり、そこに共感していた(あんまり悩まなくなった近作は、作品としてのパワーも落ちてきたように思える)。が、セカイ系と恋愛の問題、として読み解くことができるとは全く思わなかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。ボクはラノベもミステリーもほとんど読まないので、実感として東さんのいうことはわからないし、押井守にもハマらなかったけれど、ポストモダンとセカイ系の危機、その時代における小説の役割をわかりやすく説明してくれている。僕らよりも若い世代の価値観の一端も垣間見えたような気がする。
特に、押井守の物語のループ性は、細野晴臣が言っていた「世界は螺旋形をしている」と似ているなと思った。反復しながらズレていく世界の中で、自分の生の一回性をどのように価値付けていくのか、愛、家族、もうひとつの母性・・・ 難しいけれど、東さん自身は肯定的な未来を模索し、見出しているようにも思えた。