楠木建のレビュー一覧

  • ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

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    アダム・グラントの3作目。
    やっと読み終わった。
    (途中、長いこと中断していた)

    オリジナリティのある人間。
    それってかっこいいし魅力的なだなと思う。
    でも、果たして自分はなれるのか?
    やっぱりひと握りの特別な人だよね?

    そんな一般的なイメージを
    具体例の連続で壊してくれる。

    ・オリジナルな人はリスクを冒す人ではないよ
    ・オリジナルな気づきも過信すれば失敗するよ
    ・既存の価値観と相反する提案を
     まわりに受け入れてもらうためには
     話し方を工夫するといいよ
    ・仕掛けるのは、
     早ければ早いほうがいいわけでもないよ
    ・組む仲間も考えよう
     (考え方が近しいと敵対することがある、
     逆に元敵だった人が強い味方になるよ)
    ・組織として腐敗しないためには、
     意見を言い合える関係性が大事
    ・恐怖と向き合うにはユーモアが大事
    ・前向きな楽観も危機管理な悲観も
     どっちもつかえるよ

    などなど。
    具体例を挙げながら説明する。
    え!?そうなの?
    という発見もあるし、
    うんうん、そうだよね!
    という当たり前と感じるものもあった。


    本書を読んで、オリジナルであることは、
    特別なことではないのかもしれないと思えた。

    オリジナリティはちっちゃな火種で
    それを如何に大切にたやさずに
    燃やし続けられるか。
    慢心せずに、直向きに、誠実に
    向き合い続けられるか。
    ということなんじゃないかと感じた。


    例の中で出てきた2人の人物に興味が湧いた。

    アメリカの婦人参政権運動家の
    ルーシー・ストーン

    セルビアの「オトポール!」革命
    ポポビッチ

    日本語の本があったら読んでみたいな。



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    2024年08月29日
  • 絶対悲観主義

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    「うまくいくわけがない」と最初から思って物事に取り組むとダメージが少ない、と言う考えに基づいて生きている著者のエッセイ本。
    前半は絶対悲観主義がもたらすメリットなどについて書かれているが、後半は著名人などの名言をベースにした著者のエッセー的な内容になっている。この著者の面白いところは、高学歴にもかかわらず、自分を低く見せるような語り口で文章を綴るところである。が、隠し切れない著者の知性や教養が文章からじみ出ているのがクスっと笑えるところである。苦手な人は苦手であろうが、好きな人には最後まで楽しく読める1冊である。

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    2024年06月02日
  • すべては「好き嫌い」から始まる 仕事を自由にする思考法

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    戦略構成においてシナジーが大事なのではなく、論理的な時間軸が重要という話はとてもうなづけた。

    ベゾスは、それまで多くのEコマースの業者が「オンラインに顧客を集めれば儲かる」と考えていたことを、時間軸の概念を取り入れ、そうではくレコメンドなど購買意思決定を支援するインフラを作り、それまでま提供できてなかった利便性を提供し、結果的にお客さんが集まるという仕組みを作った。

    施策や戦略を考える上で、その前後のアウトカムに何を期待したいのかを考えることは自分自身の仕事でも徹底させたい。

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    2024年05月19日
  • 経営読書記録 表

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    読書記録は、読むものではなく、自ら書くものだと思っています。
    ただ、仕事と趣味を兼ねた著者のコメントには共感するものが多く、過去作品も読んできたので、迷わず手に取って読ませていただきました。
    対談で記録内容のフォローがあったり、キチンと読ませてくれる構成がイイ。裏にも期待。勿論、いくつかの書籍は手にとってみたいと思いました。

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    2024年05月05日
  • 絶対悲観主義

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    コンピテンシー評価に「批判的思考」という項目があります。低評価なので上司にこの本を推められましたが、コンピテンシー評価の内容とは異なっていました。

    しかし、私にとって役に立つ「スタンス」を学びました。筆者は「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもない」という前提で仕事するーこのスタンスを絶対悲観主義と呼びます。

    私はこれまでそんなに努力をしなくても、成功した体験の方が多いので、社会に出てからは、一筋縄じゃない事象が多く苦労しています。

    「うまくいくことが最低ライン」という思考から「うまくいくことの方が難しい」を知ったことで、どんな結果になっても必ず何かは得た感覚があります。

    その他、ユニークでユーモアのある考え方、経験について綴られており面白かったです。

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    2024年04月28日
  • 好きなようにしてください

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    普段この手の本は読まないものの、夫の本棚で目についてちょっと覗いたら面白くてそのまま借りました。

    これはキャリアに悩んでる時に読みたい!(まさに今)
    NewsPicks読者?からの質問に、ほぼ全て「好きなようにしてください」と回答笑
    ちょっと突き放してるようで、背中を押してるようで、そして余談が非常にタメになったり自分自身ハッと気付かされることもあったり。
    自分も転職すべきか?自分に向いてる仕事は?などなどキャリアについての悩みは尽きない。
    本書に何度か出てくる、「川の流れに身を任せ」がめちゃくちゃ刺さった。機が熟したらその時の流れに身を任せていけばいいや、と思うと幾分気が楽になる。
    お悩み事によって、刺さる内容も異なりそう。また10年後くらいに読んでみたい本。
    あーおもしろかった!

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    2024年04月22日
  • 逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知

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    ▪️飛び道具トラップ
    ある特定の企業の文脈での局所的な成功がどこでも効果を発揮する「万能の必殺技」であるかのように曲解されて発動する

    ▪️飛び道具トラップのメカニズムと駆動プロセス
    1.「同時代の空気(技術革新や環境変化)」の土壌の上で
    2.人々の耳目を引く成功事例が生まれ
    3.それを「飛び道具サプライヤー」があおる中で
    4.「同時代のノイズ」が発生し
    5.「飛び道具」が過大評価され
    6.関心を持つ人々による事例文脈からの「分脈剥離」が起こり
    7.「文脈無視の強制移植」が行われ
    8.「手段の目的化」と「自社の論理分脈との不適合」により逆機能が起こる

    ▪️飛び道具トラップ回避の思考ステップ
    1.自社の戦略ストーリーを固めること
    2.事例文脈を理解すること
    3.飛び道具を抽象化し、論理でその本質をつかむ
    4.自社に導入すべきかどうかの判断


    ▪️激動トラップ
    観察対象と自社の文脈の差異を無視ないし軽視するという空間軸上のトラップ

    ▪️要素はシステムに先行する

    ▪️技術革新がどれほど非連続なものであっても、人間の需要は本質的に連続的な性格を持っている

    ▪️技術的に「できる」ということと、実際に人々が「する」ということの間には大きな隔たりがある


    ▪️遠近歪曲
    「遠いものほどよく見え、近いものほど粗が目立つ」

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    2024年04月20日
  • 経営センスの論理

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    スキルではなくセンスが必要
    アナリシスは分けること
    優れた経営は要素だけではだめで、ストーリーが必要という著者の主張と整合する
    余談も多いが堅苦しくなく読みやすい

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    2024年03月27日
  • 絶対悲観主義

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    言われてみればそうだな、と思うものの、あまり今まで体系だって主張している文章に出会ったことがなかったのが新鮮だった。
    他の章は違う話題でエッセー集のような感じ。

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    2024年02月12日
  • THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

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    再考の重要さについて、身につまされる内容だった。

    異なる意見に対峙した時に陥る3つの思考パターンを捉えることで自身の思考の囚われに気づくキッカケになりそう。

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    2024年01月07日
  • 絶対悲観主義

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    悲観的にとらえていれば、物事うまくいく、というお話。
    啓発的に読むこともできるが、楠木先生のエッセイと捉えて読むとよいように思う。

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    2023年11月23日
  • 「好き嫌い」と才能

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    ネタバレ

    ■為末大(元プロ陸上選手)
    楠木 でも、人から指示される以上に嫌いなことがあります。それは、人に指示をすること。為末さんはどうですか?
    為末 僕も嫌いです。自分と同じものを相手に投影すること自体が、相手が嫌がることなんじゃないか、と僕の方が思ってしまうので。
    楠木 いやー、同じだなあ。僕は走らないけど、すごく共感します。初めてお会いした気がしません(笑)。人の考え方とか行動に、影響力を及ぼすのが嫌いなのです。人それぞれ、まったく違うのに、自分の考えを押し付けてしまうことは、本当に嫌いですね。
     為末さんは今、子どもにかけっこなどを教えておられるということですが、そういう教育の現場では教えることに関してどうなさっているのですか。
    為末 そこはなかなか難しいところです。子どもたちの親御さんたちからは、「型」を教えて欲しいと言われることがほとんどです。しかし、同じ体型の人が存在しない以上、一つの走る型が全員に通用することはないのです。僕は、ある型があったとして、そこにたどり着くまでの考え方を教えたいと思っています。正しく足を動かすということはどういうことなのか、という内側のところを理解してもらいたいのですが。
    楠木 どうしても教えてもらう側はすぐに効果が出る「型」や「ベストプラクティス」を求めてしまいますからね。でも、誰にでも通用するベストプラクティスなんて存在しない。そんなものがあれば誰も悩まないわけでだから。ちょっと、せっかちな人が多すぎる気がします。自分のやり方というのは、時間をかけてやっていくうちに、徐々に型になっていくものでしょう。
    為末 型に縛られるというのは、プロのアスリートでも往々にしてあることです。メダルを取ったりとか、大きな成果が出たときなど、その成功体験に縛られる人が多いのです。たとえば、メダルを取った理由として、本番の3日前に食べたもののおかげだとか、本気で思ってる人がいます。これなどは、再現をしても成功するかどうかまったく根拠がないもので、いわゆる「ジンクス」のたぐいなのですが、成功体験に縛られてしまうと、それを「戦略」として語ってしまうんですね。成功した理由というのは、複雑すぎてわからないものなのですが、アスリートの心理というのは厄介な部分があって、型にとらわれてしまうと、ジンクスに属するものを、根拠のあるハウツーと考えてしまう傾向があるといえます。
    楠木 そこはビジネスの世界でもまったく同じですね。経営手法については、さまざまな理論があり、そうしたものをベースにして「科学的なアプローチ」は可能です。しかし、経営に関する理論自体は再現性がないため、科学ではない。あくまでも「科学的」にとどまる。過去に成功事例があっても、それは一回性のもので、その成功というのは、そのときのあらゆる要素の組み合わせの結果、生まれたものなのです。そこを誤解してしまうと、うまくいかないときに、いろいろの問題が生じてしまう。経営はそうした前提を認識した上で、何とかやっていくしかないのです。

    為末 選手が感じる喜びは、大きく2種類あると思います。1つは、勝ったときの「報われ感」。自分がしてきたことが報われたと言う感情ですね。2つ目は、できなかったことができるようになったという「有能感」。習得した喜びで、表現する喜びともいえるかもしれません。僕は、後者の有能感により喜びを強く感じていたタイプです。
    楠木 その表現する喜びというのは、芸術家などのアーティストに近い感情かもしれませんね。僕のような経営学者の仕事にも、喜びのツボは3つほどあると思っています。話が長くなりますけれど、いいですか。
    為末 はい、どうぞ(笑)。
    楠木 僕はそれを川にたとえていまして、多摩川でいえば、まず、奥多摩のような清流の川上の段階で喜びを見いだすタイプ。僕はこれを「川上哲治型」と呼んでます(笑)。ちょっと古いですが。僕の同期の仲間で青島矢一さの(一橋大学教授)がまさにそうです。これは、研究の仕事でものを考えていて、自分が理解できた瞬間、つまり、「わかった! そういうことか」という瞬間に最も大きな喜びを覚えるタイプです。自分がわかったことを論文にしたり本にしたりするのはオマケ。経営者としては、この「奥多摩・川上タイプ」が最もピュアな人たちといっていいでしょう。青島さんがそうですが、本質的に深みのある研究をする人は川上型が多い。
     僕はその次の、川中で喜びを見いだすタイプで、「川中美幸型」(笑)。多摩川でいうと登戸とかガス橋あたり。比喩が伝わっていないかもしれませんが(笑)。これは、自分の考えたことを、論文や口頭で他人に伝えて、「あー、なるほどね」とわかってもらうことにビビビビという喜びを見いだす。このタイプは、ある程度、反応というか反響がないと喜びが薄い。僕は実際に商売をしている人に自分なりの考えが伝わって、超間接的にではありますが、商売のお役に立ちたいというのが仕事の基本的なモチベーションです。
     3つ目は、「川下型」。極端なケースでは東京湾に出てしまうタイプ。経営学者ではありませんが、竹中平蔵さん(慶應義塾大学教授)みたいなイメージです。自分の考えを主張して人に伝わった結果、資源が社会的に動く。ここに喜びを感じるタイプ。政府の政策に影響力を与え、その政策が実行され、世の中が動くーー動員される資源の大きさに喜びが比例するというのが、「川下・河口・太平洋タイプ」ですね(笑)。
     話が長くなりましたが、良し悪しではなく、あくまでも好き嫌いの問題として、こんなふうに研究者の業界でも喜びのツボに違いがあるように思います。

    楠木 今までのお話を伺っていると、アスリートの人というか、陸上選手をやっている人たちというのは管理されることを好みそうですね。好き嫌い自体が、はっきりしていないような……。
    為末 さすが鋭いです。そうなんだと思います。僕は子どもだけでなく選手も教えることがあるのですが、「どっちがいいと思う?」といった質問をすると、「どちらが正しいのですか?」と聞き返されることが多い。僕としては、好きなほうを選んでほしくて聞いているのですが、好き嫌いよりも「どちらが正しいか」ということを優先する傾向があります。つまり、主観を言うことが苦手。
     そもそも、何が好きで何が嫌いなのかが、自分自身のことなのにわかっていない感じなのです。その点も、社会に出てから苦労する要因かもしれません。社会で自分が何をやりたいのかが、わかっていないのですから。だから、アスリートは、現役時代から自分の好き嫌いについて、考える癖をつけるべきだと思います。
    楠木 アスリートの人はどうしてそうなるのでしょうか。早くから、コーチに教わるからでしょうか。
    為末 今、スポーツを教わる子どもたちがどんどん低年齢化しています。まず、親御さんたちが、早く習わせようとします。それは、レベルの高いアスリートにするには、早くからトレーニングを始めたほうが有利になると言われているからです。たとえば、サッカーであれば、ボールタッチの優れた感覚を身に付けるには、10歳になる前からトレーニングしたほうがいい、といったことです。体操であれば、6歳から9歳で回転感覚が身に付くので、その段階で習わせたほうがいい、とか。
    楠木 本当にそうなのですか。
    為末 ある程度、事実だと思います。体操では、12歳以降に始めた人でオリンピアン(オリンピック出場選手)になった人はいないと言われています。したがって、子供がその種目を好きになる前に習い始めることになるので、その種目が本当に好きなのかどうか、自分自身でもはっきりしないのだと思います。陸上選手の場合は、もっとわかりやすい部分があります。だいたい、小さい頃から足が速いので、自分の才能に気づきやすい。しかも、小学生とか中学生あたりは、足が速いと周囲から過剰に評価されやすいじゃないですか。女の子にもモテたり(笑)。
    楠木 為末さんもそうでしたか。
    為末 足はむちゃくちゃ速かったです。実家の犬よりも速かったですから(笑)。だから、15歳くらいから、足の速さで食べていけると思っていました。このように、陸上選手の場合は、自分の才能に気づきやすいわけです。競技を好きになる前に、向いていることがわかる。向いているから好きになる、ということも起こりますが。
    楠木 そうか、アスリートは、特に陸上選手は、仕事として成立するプロセスが、一般の人とはかなり違うんですね。サラリーマンを含め、多くの人たちにとっての仕事とは、ある程度続けてみないと向き不向きがわからないものですよね。極端に言うと、営業の仕事は10年やってみて向いていることがわかった、みたいな感じ。一方で陸上選手は、やり始めたときから向いていることがわかる。というか、最初から向いているとよくわかった上でやり始める。この違いは大きいですね。
     為末さんの発言を誤解している人は、その辺の為末さんの陸上選手というイメージに引きずられていそうですね。「勝てないのは努力が足りないからじゃない」といったコメントに対して、「それはもともと足が速くて恵まれた人だから言えることだ」と誤解して受け取ってしまう。仕事の向き不向きといった大事な問題について触れようとしているのに、先入観が邪魔をしている。

    ■高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)
    高岡 あるプロゴルファーと出会い、「これから年をとっていくのに、その打ち方では駄目だ」と言われたのがきっかけで、40代半ばぐらいでフォームを全部捨てました。できるだけ長く、しかもプレーしたいと思って、二年間スコアを付けずにやりました。
     プロには「スコアを忘れてスイングを変えることに徹しろ」とアドバイスされました。スコアにこだわると、新しいことができなくなる、と。とはいえ、練習場だけではスイングは変わらないから、本番でやらないと駄目なのです。考えているだけでなく、実際に行動に移して初めて、できるかできないかがわかってくるというのは、仕事も同じですよね。
    楠木 確かに高岡さんのお仕事のやり方と関係していますね。変えるとなったら、これまでの積み重ねがゼロになっても徹底的に変えるということ。もともとネスレは商品の寿命がとても長いわけで、キットカットもずっと前からある商品。評判になったCMもあったのに、売り方をガラッと変えた。もう1つは、とにかくやってみるということ、しかも練習で極めるのではなく、本番で実践して変えていくこと。お仕事でこれをやると、失敗することも多くあるわけですよね。当然ですけど。
    高岡 普通はまず、失敗しますね(笑)。部下から「失敗の経験はありますか」みたいな質問をされるときがありますが、私の失敗の定義は周りの人とだいぶ違っています。前例がないやり方を失敗したときの結果は、たいてい自分の想像を超えているので、どんな結果でも「これを失敗とは言わない」と思うようになったのです。誰もやったことがないことなら、思うようにいかないのは当然ですからね。肝心なのは、思うようにいかなかった原因をその都度調べて、自分の仮説にないものについては新たな解決策を考えていくことです。何回失敗しても駄目なときもありますし、そのときは諦めますが、たいていは、だんだん道筋が見えてくる。そこまでやれるかどうかですね。
    楠木 「失敗」ではなくて「実験」ですね。
    高岡 そうです。だからいきなり大きな投資はやらない。ギャンブルになりますから。だから、やり方を変えようと思ったときは、かなり小さなレベルで実験して、「難しいけれど、こうやったらうまくいけそうだ」という経験をする。良い方のやり方を広げていくという感じです。
    楠木 初めは実験だったものが、現実世界で成功して動きだし、徐々にスケールが大きくなる。そこにマーケティングの醍醐味があるのでしょうね。

    楠木 経営という仕事のなかで、理屈抜きで楽しい、やっていて本当にのめり込むようなことがあれば教えてください。
    高岡 私のなかでは業務にあまり区別がなくて、人事やファイナンス、サプライチェーンなどのいわゆるファンクションもすべてマーケティングが必要だと思っています。商品の販促、開発といったマーケティングと同じようにやる。その意味で、引っくるめてマーケティングが大好きですね。新しいことをやって、顧客に影響を与えるのも、社員に影響を与えるのも同じように面白い。社員が何か問題を抱えているなら、従来と違う形で解決しようと考えたりする。長いことその部署でやっている人より、私のほうが良いアイディアが出てきたりして、競争するのがたのしいです(笑)。
    楠木 高岡さんの好きなパターンがあって、あらゆる仕事をそのパターンに取り込んでいく。人事でもファイナンスでも、ご自身にとっては、同じマーケティング的なアプローチ。
    高岡 そう、問題解決のすべてです。企業には人事のコンサル会社もあれば、サプライチェーンのサービスを提供する会社もある。そういう会社にマーケティングはいらないのかというと、必要なわけです。それは社内のファンクションのチームも同じです。ところが、ややもすると、「長いことずっとやってきました」と「顧客」である社員の満足度とフィットしない状態になる。ファンクションにかかわる人には、「時代が変わったら制度も変えなければならない」とか「昔のルールに縛られて困っている社員はいないか」などと考える癖をつけてほしいと思います。

    楠木 高岡さんがなさった人事の施策には、どんなものがあるのですか。
    高岡 たとえば、毎年「就職人気企業ランキング」が発表されますが、私がCEOに就任したときは人事部門が「ベスト100に入るのが目標です」と言っていました。しかし、「ちょっと待てよ」と思った。仮に毎年就職活動生が100万人いるとして、私たちが本当に欲しい人材は、多分そのうち1%もいない。そんなにたくさん採るわけでもありません。十把一絡げの学生全体による人気投票より、本当に欲しい人材による人気投票がいいわけです。逆に人気企業ベスト10みたいに入ってしまうと、欲しくない人からたくさん応募が来て、採用業務にすごく時間が取られてすごく非効率。だから、当社は人気企業ランキングに入らなくてもいい。私たちが選りすぐった、欲しい人材のなかで投票したときに、ベスト5に入る企業になりたいですね。「ネスレには入りたいけれど、自分は全く入社できない」と学生に思われるような企業になりたい(笑)。
     逆に言えば、ああいう調査は一切気にしないほうがいいし、そのためには他社とはまったく違う採用方式をとらないといけません。わが社も一般的な日本企業と同じように一斉の新卒採用を何十年とやってきましたがやめました。通年採用でさまざまな採用プロセスに切り替えてから、入社してくる人のタイプがガラッと変わりました。これも1つのイノベーションですね。
    楠木 それもまた顧客視点ですね。自分の会社や経営を外から見たときに、他社との違いがあることが大切で、他社と一直線に並べられてしまう人気ランキングに入る必要はない。発想がつくづくマーケティングですよね。僕がいつも思うのは、就活生の人気企業ランキングって、「ラーメンを食べたことのない人による人気ラーメン店ランキング」みたいで、あまり説得力がないということ。誰でも知っている会社がランクインするのが当たり前。毎年見ていますが、文系学生の人気ランキング上位は商社やメガバンク。これって僕が学生だった30年くらい前とほとんど変わっていない。

    高岡 先ほどお話ししたように、ネスレは非常に利益志向なので、通常は5年で利益が出るようにやるのですが、ネスプレッソは時間をかけましたね。私たちは何を見ていたかというと、未来のコーヒーの飲み方です。コーヒーは昔、朝食や一家団欒など、家族で飲むものでした。ところが今、日本の60%、東京都内で80%が1人か2人世帯なのです。たとえ4人家族でも子どもが大きくなって塾に通うようになると夕飯がバラバラですから、コーヒーを飲むタイミングもバラバラになってきます。1人で飲みたいとき、今までのコーヒーメーカーは不便で、高くても1杯ずつ淹れやすいほうがいい。必ずそういう時代が来ると考えていました。
    楠木 まさに論理的な仮説。
    高岡 仮説と時代の変化をどこまで読み通せるかでしょうね。ネスレは世界中で事業展開をしているのが強みで、先に高齢化社会や小さい世帯になっている国でもそういうものがはやれば、いずれ他の国でもそうなるのではなか、という仮説が出てくるわけです。
    楠木 今のお話は、重要なメッセージを含んでいると思います。「時代の流れを読む」というときよくある誤解は、「誰も知らないような特殊で特別の知識を持っている人に先見の明がある」というもの。でも、今のお話にあるように、ロジックとして強固だということが大切なのであって、何も特別の知識があるわけではない。「そういえばコーヒーを1人で飲むようになっているよね」。これは言われてみれば誰でもわかることです。ただし、それを正面から捉えて、儲かる戦略ストーリーに落とし込むのが難しい。
    高岡 変化に適応するのは難しくて、2日や3日ではわからないし、時系列的に変わるわけでもない。だから、意外と難しいのです。どれだけ変化に気づく思考をいつも持っているかが大事です。

    ■高島宏平(オイシックス代表取締役社長)
    楠木 高島さんご自身、東大、マッキンゼーときて、仲間もIBMに入ったりして、そうした仲間が集まったとき、当時の「ネットネットした状況」を考慮すると、アイディア一発勝負のネットビジネスで、一丁うまいことやったろう……、という方向に行くのがわりとありがちなパターンですね。でも、高島さんたちは、生鮮野菜のネット販売という、ちょっと聞いただけでも手数がやたらにかかって大変そうなビジネスを選択している。僕はこの事業の選択に、高島さんの好き嫌いが色濃く反映していると思います。好き嫌いで語ると、食の分野に事業立地を定めた背景には、どんな理由があったのでしょうか。
    高島 サラリーマンをやっていた2年間、大学時代の仲間とは毎週末集まっていました。ずっと話し合いをしていて、「僕らは何をやりたいのだろう」「自分たちのやりがいは何か」と、突き詰めていきました。そうすると、人の役に立つことにはやりがいを感じる、ということがわかってきました。こう言うと、何だか非常にいい人に聞こえますが、正確に言うと、「人の役に立っている自分が好き」ということに気がついたわけです。
    楠木 ああ、そこは大切なところですね。人間はわりと単純にできている。あくまでも自分が大切なのですが、結局のところ、自分以外の誰かのためになったときにいちばん気分が良くなるようにできていますね。この辺、神様もいい仕事をしたな、と僕が思うところです。

    ■野口実(エービーシー・マート代表取締役社長)
    楠木 ご自身が昔から面白がって販売の仕事をしていた。経営者になっても、それと同じような面白さを体験できるような工夫をいろいろなところに入れ込んでいるということですね。
    野口 好き嫌いで言うと、私がいちばん嫌いなのは「モチベーションを与えてください」と言う人です。他人が与えられるわけがないから、ちょっとそれは違うんじゃないかと思いますね。楽しみは自分で作っていくものだし、見いだしていくものですから。
    楠木 無理やり設計しようとすると、全部がインセンティブになってしまう。しかし、最近の経営では、インセンティブの設計という話題が非常に多い。僕は個人的には「合理的な面もあるけれども、腑に落ちない」と思う。ありていに言えば、わりと嫌い(笑)。
     インセンティブというのは自分の外にある誘因。誘因で動く、というか誘因がないと動かないうちは仕事としてまだまだのはず。商売まるごとを動かす経営という仕事になると、もう動因しか残らない。自分のなかから自然に出てくる内発的な何かに突き動かされてやるものだと思うのです。

    ■篠田真貴子(東京糸井重里事務所取締役CFO)
    篠田 でも、私が20代の頃と比べると、今はより好き嫌いを軸に仕事を選んでいる例が増えている気はします。
    楠木 僕はちょっと違った感覚を持っていて、今こそ好き嫌いの復権がますます重要なテーマになっているという実感があります。昔と比べるとはるかに情報量が多くて、こういう仕事がいいとか、こっちに行くとこうなるとか、シミュレーションもできる気になってしまう。そうすると必然的に良し悪しが優先され、好き嫌いが劣後してしまう。特に若い人ほど良し悪しという社会的コンセンサスが優先する。昔は東大を出て大蔵省、みたいなのが「良し」で、今はMBA、マッキンゼー、プロフェッショナル経営者みたいなのが「良し」。「良し」の対象が東大・大蔵省から変わっただけで、「良し悪し優先、好き嫌い劣後」の傾向はかえって強くなっているように思います。「これから起業してアントレプレナー!」とか、「社会的企業家がカッコいい!」というのも、根っこは同じ話ですね。逆に「俺は好き嫌いを追求したい」という人は、バイトをしながら路上ライブ、となってしまう。篠田さんのようにその時々の仕事と折り合いをつけつつ、好き嫌いを模索していくのが醍醐味のはずですが。

    ■広木隆(マネックス証券チーフ・ストラジテスト)
    楠木 ストラジテストと僕の仕事は全然中身が違いますが、本質レベルでは非常に似た面があると思います。僕も同じようなジレンマを、経営学という仕事に感じているんです。アカデミックな経営学の建前は自然科学のアナロジーで出来上がっているんです。方法としては、仮説を立てて、「科学的」な手続きで収集し分析したデータを使ってその仮説が支持されたとか否定されたという形で「実証」するという自然科学のやり方を踏襲している。何を目指しているのかというと、一般法則の提示です。一般的な法則というのは、誰が、いつ、どういう気分で、どこでやってもそうなるというものです。つまり、普遍的再現性ですね。その意味での普遍的な因果関係を探していくというスタンスを、アカデミズムとしての経営学は採っています。
     ところが、そもそも経営に法則といったもの――こうやったら一般的にうまくいくというものはない。経営学者が、自ら定立した法則で経営しても、もちろんうまくいくとは限らない。自然科学の一般法則とは違うのです。それをひとまず横に置いといて、あくまでもアカデミズムの立場で経営現象を解明するという立場にも意義と意味はある。ただし、僕はその路線にはどうも乗れなかった。僕の仕事は何なのかというと、「こう考えたらどうですか」という僕の考えを実際に経営の現場にいる人々に提供するということです。自分では経営しているわけではありません。だからこそ経営や戦略というものを俯瞰することができる。自然科学的な「理論」ではなく、僕なりに到達した「論理」を発信する仕事だと心得ています。
     ビジネスの現場で仕事をしている人は忙しい。いちいちゆっくり考えている暇はない。しかもその人の経験は自分の業界や事業に限定されている。だから、そういう現実の実践世界で忙しい人たちに成り代わって、その背後にある論理をちょっと考えてみたんですけど、こう考えたらいかがでしょうか、という話です。

    ■木川眞(ヤマトホールディングス代表取締役会長)
    木川 たとえば、小倉さんは企業間取引の物流を切って、個人の荷物に集中したポートフィリオをつくられました。しかし新成長戦略は、必然的にその一部を企業の軸に戻すことになります。宅急便を始めた当時のヤマト運輸には「企業との取引をお断りする」という大きな経営課題があり、それを貫徹したのですから、「木川は小倉さんのやられたことを壊すのか。小倉さんがやめた企業物流にまた戻るのか」という心理的な抵抗感は相当あったと思います。
    楠木 ここが僕からすれば大変に興味深いところです。僕もそういう話をいろいろな会社で聞くのですが、会社や組織は物事を文脈から切り離して考えるバイアスが強いですね。小倉さんが「企業物流を切る」という戦略をつくったときの文脈と、今の文脈はまったく違うはずです。それなのにいつの間にか戦略が文脈から引きはがされて、単に「企業物流は駄目だ」みたいな話になってしまう。

    ■楠木建(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
    ――『「好き嫌い」と才能』では、「好きこそものの上手なれ」という言葉がキーワードになっています。前作の『「好き嫌い」と経営』でもそうでしたが、本書ではいっそう強く意識されている気がします。先生がそこまで「好き嫌い」にこだわる理由を、個人的なお話を含めてお聞かせください。
    楠木 僕は「好きこそものの上手なれ」が最強の原理原則だと信じているんです。「まえがき」に書いたことを繰り返しますが、自分を向いた趣味と違って、自分以外の誰かの役に立っての仕事。人に価値を提供しなければ話にならない。人の役に立てるということは、そのことについてよっぽど上手だということ。じゃあ、なぜそれほど上手なのか。有り体に言って努力投入してきたから。しかも、長い間やり続けているということですね。結局のところ、努力量の積分値が大切に決まっている。
     ここから先がポイントなのですが、「努力の長期継続」といっても、実際のところフツーの人にとってはなかなか難しい。僕にしてもそうです。娯楽なら何の苦もなく続けられるのに、努力は続かない。で、ある時に脳内革命が起きた。「努力」をしようと思うから続かない。「努力が努力じゃない状態」になればいい。すなわち「努力の娯楽化」が仕事のカギだという発想です。客観的には努力であることがその人にとっては娯楽に等しくなる。その理由は、要するに「好きだから」。以上の一連のロジックの最初と最後を取ると、「好きこそものの上手なれ」になる。

    楠木 こんなにおいしいものがあるかっていうくらい、若い頃の僕はシュークリームが大好きでした。今でもわりと好きですけど。特にカスタードクリームが好き。で、その頃ちょうど「シュークリームの民主化」が起きて、100円ちょっとで割と大きいのが買えるようになった。それまではケーキ屋さんでそれなりの値段がしたけれど、グッと身近になった。
     とはいえ、日持ちがするものじゃないから、「1日2個食べるとして、3日分なら6個だな」と計画して購入するのですが、消費量がすごい。努力してないのにどんどん前倒しで上振れる。「あれ、6個全部食べちゃったから、今日は達成度300%だぞ!」という達成感(笑)。要するに好きだからすぐに食べちゃう。
     シュークリームは300%達成できるのに、なんで論文の生産性は上がらないのか。シュークリームを食べながらつらつら考えていたら、恐ろしいことに気づいたんです。実は自分は世に言う「研究」が好きじゃないんじゃなかろうか。もし好きだったら、書かなきゃとか言ってないよね、と。「論文書かなきゃいけない、とか言ってる時点でもう終わっている」と言う厳然たる事実に気づいた(笑)。「お前はすでに死んでいる」ってやつですよね。
    ――でも、大学で研究をすると言うのは、望んで就いたお仕事ですよね?
    楠木 そのとおりです。誰に強制されたわけでもなく自分が選んで、運良く望みが叶えられた。それなのにやりたくないとはどういうことだと、自問自答しましたよ。「研究して論文書いて発表するのが好きだったんじゃないのかよ?」って。それに対する僕の本音の答えは、あまりに元も子もないものでした。僕が好きだったのは研究ではなくて、大学でポストを得て、自分の部屋をもらって、好きな本に囲まれながら、朝から晩まで好き勝手にああだこうだと考えていられる状態だったのです。
    ――確かにとても率直というか、ずいぶんなお答え(笑)。でも、そう言う人は世の中に多い気がします。制服を着たいだけのキャビンアテンドだとか、水仕事は嫌いだけれど花に囲まれていたいお花屋さんとか。
    楠木 それと同じですね。研究そのものじゃなくて、研究という仕事についている状態が好きなのですから、この気づきは恐ろしいほど元も子もない話なんで、しばらくは見て見ぬふりをしていました。臭いものにフタ。横山やすしが言うところの「チャック、チャック」(笑)。

    ――論文が載るのは若い学者にとってとても、うれしいことですよね。励みにもなるし。
    楠木 掲載されれば評価に直結しますから、論文書きにはあからさまにインセンティブがある。しかも、締め切りははっきりしている。「今度の学会はいつで、いつまでに学会に論文を提出しなきゃいけない」とか、「学術雑誌の論文が1本通ったから、次を書かなきゃ」とかね。ところが、論文が出るとますます調子が悪い。うれしいことはうれしいけれど、「論文が1本通ったし、1週間ぐらいゆっくり休んで、また考えよう」となっちゃう。それが2週間になり1か月になり、論文書きを半年ぐらい平気で休んでいる自分がいる(笑)。
     そのときにようやく気づきました。インセンティブとドライブは全然違うということです。インセンティブとは「誘因」です。自分の活動をある方向へと誘う外在的な報酬ですね。学術雑誌での論文発表はインセンティブとしてはっきりしている。ところが、インセンティブが明確に効いていて、自分も「論文を書かなきゃ」と思っているのに、どうもやる気にならない。要するに、本心ではあまり好きじゃないんです。インセンティブというのは良し悪しまでで、好き嫌いには立ち入れない。ドライブは「動因」です。自分のなかから突き動かされる内発的な動機です。これがないと、いくらインセンティブがあっても続かないんですね。

    楠木 読書のなかでも評伝や自伝を読むのが好きです。その人の好き嫌いとか価値観とか、その人の練り上げていった芸みたいなものがいちばんよくわかるフォーマットですからね。純粋に読書としても評伝を楽しんでいますが、自分が芸者だというメタファーを獲得してからは、「この人の芸に学ぼう」という意識で読んでいます。どうやってその芸が出てきたかのプロセスを知り、その人の好き嫌いのツボがどこにあって、それがどういうふうに形成されてきたのかを意識して読む。自伝や評伝はすごく勉強になります。
     作家の小林信彦さんが日本の喜劇人についての芸論を数多く書かれています。エノケン、ロッパ、渥美清、横山やすし、森繁久彌、クレイジーキャッツ、ザ・ドリフターズ、由利徹……。芸論は自分の仕事のスタイルを作っていく上で、とても参考になりました。どんな世界でも、芸で生きている人に対して尊敬の念があります。エルビス・プレスリーやフランク・シナトラも、みんなすごく変な人ですが、それが面白い。映画『仁義なき戦い』の脚本家、笠原和夫さんの本も芸論として最高ですね。

    楠木 仕事には好き嫌いの自己認識を深める旅みたいな面がありますね。やっているうちにだんだん好き嫌いのツボがわかってくる。自分の土俵の輪郭がだんだんと見えてくる。これが仕事生活の醍醐味というかコクのあるところじゃないでしょうか。
     再び井原さんの本の話に戻りますと、僕がひときわ感動したのは退職のくだり。彼は現場のプロデューサーとして大成功し、最年少で日本テレビの役員になるのですが、その後すぐ会社を辞めちゃうのです。
    ――社長になれるかもしれないのに、もったいない。
    楠木 彼の言い分はこうです。テレビのプロデューサーはとにかく番組を当てることが大切で、自分はそのために好きなようにやってきたし、スタジオの現場ではいちばん偉かった。ところが役員になったら、重役とか社長とかいるなかで、いちばん下っ端の「役員二等兵」。しかも周りの役員は、偉いわりにはバカが多い。バカのペースにあわせるのは耐え難いと言って辞めたのです。
    ――痛快な言い分ですね。
    楠木 井原さんはこう言っているんです。周りの役員はもちろん実際はバカじゃない。会社の組織の頂点に立っているエリートなのです。でも、テレビ番組制作の現場で一発当てるということにおいてはバカ。逆に、自分は現場ではアタマがいいけれど、管理職の世界に置かれてしまうとバカになる。自分が得意な土俵で仕事をしないと意味がない。だからさっさと会社を辞める。ツボにはまらない仕事はしない、とね。
     芸風は一つしかない。自分の好き嫌いのツボと心中する覚悟でやらないと、努力の娯楽化という好循環は生まれないし、いい仕事もできないんじゃないか。僕は井原さんの本を読んで、そう思いました。つまり、自分の芸風を知るとか自分の土俵がわかってくるということは、土俵の外にあるものを捨てるということ。何かを得るということは、常に何かを捨てているわけです。

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    2023年11月05日
  • THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

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    ネタバレ

    本書は再考することの重要性をいろんな角度から説いているように私は感じられた。

    再考しないことで起こる二極化思考や各バイアスによる固定観念の問題提起も納得でき、そこから抜け出すための科学者思考、タスク・コンフリクトを大切とした建設的な対立、好奇心を利用した学びの傾聴法、懐疑心の使い方、失敗・過ちに対するマインド、再考する時間を作ることの大事さといった科学を根拠としたアドバイスもためになるものだったと私は感じた。

    私自身も確証バイアスや望ましさバイアスにハマることは沢山あったし、学びが薄いことではダニング・クルーガー効果のようなことが起きていたと自覚がある。これらのバイアスにハマり学びを止めていたことに今では気づけるが、本書で言う再考の時間を作らなければ、ハマったままになっていたことを考えるとゾッとする。

    私は自分にも他人にも懐疑的であると認識していたため、科学のエビデンスを重視している時期があった…だが、それは本当の科学ではなく、自分の不安の解消のための確証バイアスで自分の考えにあったエビデンスで安心したいだけだったのだと思っている。
    今でも科学を信じているが、可能性の強弱で捉えれるようになってきたと自負している。

    これらのバイアスや間違った学びを極力避けるために本書で助言いただいた点は役に立つと思うので忘れないようにしたい。

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    2023年10月24日
  • 逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知

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    経営判断を惑わす「飛び道具」「激動期」「遠近歪曲」といった3つの「罠=トラップ」を回避するために近過去の歴史を検証し、本質を知るというのが逆タイムマシン経営論です。

    罠にハマるメカニズムと駆動プロセスがわかりやすくまとまっていて、読みやすい本でした。

    遠近歪曲トラップや文脈思考が、こういった本で読む限りでは理解できるのですが、いざ自社にあてはめると知らないうちにバイアスがかかってしまいそうです。
    「破壊的イノベーション」を狙っているときにもこういったバイアスを意識しておかないと失敗しそうですね。

    また、最近話題の生成AIもシンギュラリティや「AIが人間の仕事を奪う」などと話題になっていますが、この本からすると「飛び道具トラップ」になりそうです。いろいろ飛びついて試してみましたが、便利だけどなくてもまぁ困らない。といったものに過ぎないです。生成AIブームはいつまで続くのか。。。

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    2023年09月29日
  • 「好き嫌い」と才能

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    好きってなんだろう。改めて問われると即答できない。無邪気にあれが好きこれが好きと言いづらいというか、本当に心から好きなものがわからなくなっているってのもあるかもしれない。そもそも社会人になって最初の配属の時点で全く希望していない部署だったし、好きで今の仕事が始まった訳では全くない。だからといって嫌いという訳でもないけれど。とりあえず食らいつきながらやってみたら嫌いではないし向いてない訳でもなさそうと思ってこの世界で仕事をし続けているということかな。結果的にこの世界での経験が自分の武器だし、意義とか目的とか考えると結構好きな部分もあるんだよね。この本で出てきた人のように昔から首尾一貫して好きなことの本質が変わっていないみたいな感じでは全然ないけど、結果として自分の蓄積してきた経験とそこから繋がっていきそうに思える道筋がまぁそこそこ好きかなと思えることはそれなりに幸運に恵まれているってことなのかもしれない。

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    2023年09月20日
  • THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

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    「視野を広げる」とか「多様な視点をもつ」みたいなことは出来るだけ意識するようにしていましたが、「再考する」ということについては完全にノーマークでした。

    謙虚さを大切にしながら頻繁に再考を行い、自分の信念を進化させていきたいと思いました。

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    2023年08月05日
  • ビジネス・フォー・パンクス ルールを破り熱狂を生むマーケティング

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    もともとパンク気質ある私がこれ読んで自信つけたらどうするんだ?と心配しながら読んだけど、面白かった。
    財務を重要視して、商品のクオリティにこだわる様子はとても好感。
    事業計画やめちまえとか、人生にはノーと言いたい人ばかりに囲まれるとか、交流イベントは間抜けの集まりだとか、国が変わってもどこも似たような雰囲気なのねとニヤける。
    けど、私が苦手な側の人達もこれ読んだら「そーだそーだ!」と言う書き方してるんだろうとは思う。

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    2023年06月05日
  • 好きなようにしてください

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    NewsPicksの意識高い系読者の質問に対し、楠木先生が「好きなようにしてください」とゆるーく返答していく本です。

    特に印象的だった点
    ・時の流れに身を任せて生きていくスタイル
    ・人生経験の少ない若者ほど環境決定論に翻弄されやすい
    ・意識高い層が転職を煽っても、自分が現職が居心地いいなら留まるのもあり
    ・著者のアフリカ育ち故?のゆるゆるさ

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    2023年06月04日
  • ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

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    ちょっと長かった。当たり前のことしか書いてなくてつまらないかも?と思いながら読んでいたのだけれど、その当たり前の根拠となる実験結果や事例が紹介されていて、納得しながら読むことはできた。

    オリジナルと言われる人は思いの外普通の考え方をする人らしい。リスクを嫌がるし、慎重だし、ガツガツ成功を求めず、流れに身を任せて、自分の信念を持って、人のために動く人、と理解した。みんなそうじゃないの?どこに差ができるんだ?その答えになりそうなことが書いてある。

    とりあえず本を読み終えたあと、良いな!と思うことを、のんびり、信念を持って、コツコツとたまに脱線しながらマイペースにやっていこう!と思えたので、自己肯定感を高めるには良い本だと思った。

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    2023年05月20日
  • 戦略読書日記

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    自分の読書のスタイルとか感想がいかにチープかと思い知らされる。たぶん読書をしている限り自分でも読んだ本から何かを感じたり考えさせられたり関心が深まっていることは確実にあるとは思うけど、それを言葉にする能力に圧倒的な差があることを突きつけられる。しかし言語化能力の差はつまりは感じる力とか考える力の差なのかとも思う。
    でもそんなことは抜きにしても、やっぱり読書はとてつもなく有意義だということが強く共感できて、自分なりに読むことを続けていこうというモチベーションが上がったというか、読書が好きでよかったと思った。
    読書の効果を大きくするためにも、読んだ本について書くことをしていかないとなとも思った。

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    2023年03月04日