北方謙三のレビュー一覧
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トクチャルは死んだ。一度、口に出して呟いた。
戦場で、死んだのだ。自分の長子ではあるが、ひとりの兵として死んだ。数えきれないほどの、兵の死のひとつである。
二刻ほど、ジョチはひとりでいた。
それから大きな部屋へ行き、将校を集めろと従者に命じた。(320p)
1巻まるまるホラズム国との戦いである。一進一退。驚くほど何も進まなかった。その間、後衛のチンギス弟カサルが病死し、チンギス息子ジョチの息子トクチャルが戦死し、無敵だった遊撃隊隊長ムカリが、ジャムカ息子マルガーシと一騎討ちして亡くなった。亡くなった漢たちは、それぞれに戦う意味、生きる意味、死ぬ意味を探していた。見つかったのかどうかはわからない。
ひとつ、話題は違うが、ここに出てくる漢たちの女性の扱いは酷いということを記しておく。チンギスは、戦場にて副官の提供する女を精神安定剤のように抱いているだけではなく、ホラズム国の精鋭を指揮している女隊長の存在を認めると「殺さずに捕えろ」「俺の前で両脚を拡げられるかどうか、見てみたいのだ」などと言う。チンギスだけでなく、ホラズムの軍師イナルチェクも常に軍営に女を呼んで精神安定剤として扱っている。当時の習俗を描いただけかもしれないが、どうも気にいらない。
カサル
チンギス弟、次子也
昔兄と共に兄弟殺す
兄遁走し弟は郷に残
兄帰郷し弟は将軍へ
次子四子テムゲ呼び
ボロクル死責め撲つ
泣き泣き弟責め撲つ
病を得て余命幾拍無
魂兄の許へ行き微笑
兄弟故郷遥萬里微笑
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ネタバレ・劉備、曹操からの独立を決め徐州ゲット!からの秒で奪われる。敗因は曹操が抱く敵対心を読みきれていなかったことかなぁ。関羽が唆された時はハラハラしたけど、戻ってきてくれて良かった。次は劉表をどう攻略していくかが実物。
・曹操vs袁紹の戦い。それにしても曹操は本当にギリギリの戦いが多い。絶体絶命に陥って力を発揮しきれるのは覇者として強いよな。鄒氏を倒したのもびっくりしたな。曹操の間者と孫権の間者、どっちがより優秀なのか気になる。
・個人的には袁紹ってそんなに悪いことしたかなぁという印象だったので残念ではあるが、臣下の話を聞けなくなったら終わりなんだなと思った。
・それにしても孫策ゥ...お前って奴はよォ...若さが故だったのかもしれないがこんな結末ってありなのか...。民政に強い孫権と軍政に強い周瑜が今後どう展開していくか気になる。
・まだ4巻なのにメインどころが次々と倒されて、15年以上経過して、皆さんいいお年頃で最終巻まで持つのか?と心配な気持ち(笑) -
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ネタバレ
・牧だった劉焉を継ぐ劉璋 vs 五斗米道の国を作りたい張衛(益州)
・曹操と呂布を戦わせる作戦を思いつく劉備(徐州)。さすが徳の将軍...言い方悪いが曹操の懐にも呂布の懐にもつけ込めるのすごい。
・曹操、呂布との戦いを目の前にしつつ、劉備を味方にしたいけど力ありすぎて怖いかもと思い始める。
・呂布、赤兎との別れ。表が怖い人って裏返すと良い人だったりするんだよな。最期までかっこいい漢だったよ...あまりに辛い。成玄固、赤兎を頼む。どうか穏やかに暮らしてくれ。
・袁術と絶縁した孫策と周瑜。揚州を固めるため徐々に動き出す。
・袁紹 vs 公孫瓚(幽州を賭けて)
・曹操、袁紹と戦う前に朝廷の鼠(?)を打つことを決意。4巻へ続く -
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奥付け 1988年 10月25日 第1刷
一体何年眠らせていたのだろう。そして何のタイミングで、積読本の山の中から現れて読むことになったのだろう。
ついこの間読んだ、「ババガヤの夜」にまるで導かれたような気がする。「ババガヤ」が今のハードボイルドなら「渇きの街」は40年前のハードボイルド。
典型的なクライムノベルでおり、バイオレンス小説である。しかし圧倒的に「ババガヤ」の方が新しく、「渇きの街」は古臭い。
悪く言えば陳腐であるのだ。男と女の関係ひとつっても。でも、そこが良い。殊に私世代の人間にとっては。
北方謙三のいい読者ではない私だが、この初期のハードボイルド作家の北方も、今の時代小説そして水滸伝以降の北方も本質的には変わってないのを再確認できた。
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藤原純友という人をとても魅力的に描いていると思う。
小説として、とても読みやすかったし面白かった。
最終章というかエピローグの部分は、夢か現か幻か。
純友の現実なのか幻想なのか。
生き延びて大陸に渡っているとしたらそれはそれで夢があるけど、幻想のようにも受け取れる。
純友の後に伊予の国司として着任した紀淑人は紀長谷雄の息子で、なんとなくそんなイメージ(応天の門の長谷雄から)でちょっと笑えた。
将門の元には道真の息子がついており、時代は繋がっているなぁと改めて思う。
小野好古は案外良い人かも。
北方謙三というだけで、ちょっと構えて読み始めたけど、上下巻通してとても楽しく読めた。
他の作品も読んでみようかな。
承平天慶の乱と言ってもなかなかピンと来る人は少ないかもしれない。
平将門の乱に比べて、藤原純友の乱は歴史に取り上げられることも少ない気がする。
なぜか?
どちらも叛乱を起こしたことには変わりない。
将門の方は同族争いに端を発し、周囲を巻き込み、担ぎ上げられて新皇を名乗ったりしたものの、比較的早くに鎮圧されている。
純友の叛乱は、どこから叛乱かというと期間は難しいけれど、長い間忠平に反抗していたと思う。
あまり取り上げられないのは、海賊として見られていたからだろうか?
もう少し取り上げられても良いのにと思う。
NHKオンデマンドで昔の大河の「風と雲と虹と」を見てみようかなと思う。
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マルガーシの父親のジャムカは、戦ではチンギス・カンを上回っていたかもしれない、とテムル・メルクは考えていた。
草原の戦を分析すればするほど、ジャムカという武将の凄味はわかった。
ただ、チンギス・カンと較べて、ジャムカには足りないものが間違いなくあった。
国を作りあげていく力だ。それは軍を作りあげる力とも同じだった。
(略)
チンギス・カンが、何度かぎりぎりのところまで追いつめられたのは、ジャムカの精鋭の力だったのだろう。
しかし闘うたびに、チンギス・カンの軍は堅固になり、ジャムカの軍は精鋭だけになっていった、とテムル・メリクには見えた。
「戦は、強さだけで決まるものではないな。なにか、別のものが作用する。マルガーシ殿とぶつかって、俺はいつもそう思った」(367p)
モンゴル国の版図は、今や金国、西夏、西陵を飲み込み、西の大国ホラズム国に迫りつつあった。テムジンは最初から鉄の産出に拘り、ボオルチェは兵站の道をつくってきた。そのモンゴル国の勢いに飲み込まれる前に、ホラズム国は叛旗の狼煙をあげたのである。ホラズム40万とモンゴル15万が、サマルカンドを目指そうとしていた。チンギス紀、おそらく最大の戦いの準備の巻になっている。
⸺大地が揺れていた。
丘も草も、木立や岩も、陽炎(かげろう)の中にあった。
チンギス紀1巻の冒頭文である。
毛仙光・ボロクル
或金国文官戦中に於いて独り死す
元金国福興元帥の部下頭良く頑固
元同僚耶律楚材と同じく兵站を担
汗弟テムゲ将軍自ら毛の拷問を担
毛身体精神毀行即ち非人傀儡と化
テムゲ将軍心鬼将に金国軍を罠す
完顔遠理金将軍即ち罠を返し策す
ボロクル蒙将軍嘗て戦場の孤児也
テムゲが拾いあげて母営地で育つ
テムゲの九死を拾い上げて戦死す
毛之死は愚也ボロクル之死は可悲