北方謙三のレビュー一覧
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ついに岳飛・秦容軍と南宋軍、梁山泊軍と金軍の間に戦端が開かれた。
が、戦闘シーンはあまり多くない。
身辺整理を始めた顧大嫂、十三湊で日を送る李俊、病の気配濃厚な秦檜(しんかい)。
物語の終焉の気配が濃厚になってきた。
秦容は”古いものは、終らせる。”と考えている。
その古いものとは、国家の形なのかもしれない。
民衆の生活を圧迫する帝政、官僚組織。
しかしそれは突き詰めると、軍隊も重荷となりうるわけで、その辺をどう処理していくのか。
”宋を倒す革命の小説だった『水滸伝』。国家を建設する小説だった「楊令伝」。そして、『岳飛伝』は登場人物たち、それぞれの人生を照らし出す小説。”
解説・吉田伸子 -
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まずは全7巻に及ぶ歴史小説を読み終えた達成感が凄い。紀元前の中国を生き抜いた男達の生き様という熱い塊が胸の中にドシンと落ちてきたような感じがする。
国があって、民がいて、争いがあって政治があって。時には厳しい自然に晒されても尚、信念を持った人は生を貫くのだという力強いメッセージが込められている。ハードボイルド小説(と言われている?)ってものに手を出したのは多分これが初めてだと思うんだけど、自分が普段読んでるような本に出てくる言葉遊びなんてものが一切なく、簡潔かつ事象だけを綴り続ける骨太な文章は圧巻の一言……めちゃくちゃ著名な大先生の本捕まえて何言ってんだコイツって話なんですけど、思ったままの感 -
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1巻から2巻、2巻から3巻と、読み終わるまでの時間がだんだん短くなってきた。それだけ物語にのめり込み、ページをめくる手が加速しているということで。さっさと仕事終わらせて、帰りの電車の中で早く読みたい……なんて気持ちになってしまうほどに。
1巻の感想で、「キングダムが面白くて史記に手を出したらえいせい違いだった」みたいなことを書いたんだけど、高校の頃友達と遊んでいた三國志Ⅷにいにしえの武将として登場する霍去病が出てくる話だったと知ってちょっと嬉しくて。当時、「名前からして病弱そうなヤツだな……」とか思ってたんですけど……うん……。というわけで4巻へGO。 -
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多分南宋が一番充実していた頃になるのだろう。
南北に敵がいる状態とはいえ、金国は梁山泊軍との激戦直後で南宋まで攻めてくる力はまだないだろうし、岳飛達に対しては五万もの兵を置いてにらみを利かせているし。
一度梁山泊軍に大敗させられた南宋水軍は韓世忠を外して立て直したし。
皇帝には権威を与えても権力を与えていないので、秦檜の思う国造りの完成は時間の問題だと思われた。
その時、岳飛と秦容が手を組んで北上を始めた。
というど真ん中のストーリーはさておいて、今回は李俊が格好良かったなあ。
「俺は、李俊殿にもっともっと長く生きていただきたいのです」と泣く張朔(ちょうさく)に「人は、死ぬ。いつか、必ず死 -
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今まで志を持たないと言っていた李俊が、志を秦容に語るようになるなんて。
”「自分が思った通りに、生きて生きて、生ききる。人間が志を全うするというのは、そういうことだ。替天行道の志は、人間らしく生ききることを、ただ言葉にしたのだと、俺は最近、思うようになった」”
長老と呼ばれる李俊と史進に隠れて目立たないけれど、呼延凌もそこそこ歳をとっていたんだなあ。
思えば彼の今までの一番の見せ場は、穆凌(ぼくりょう)から呼延凌になった時だったのかもしれない。軍の総帥にしてはあまりにも見せ場がなかったし。
梁山泊はもう、軍のいらない姿に変わろうとしている。
西遼や西夏、日本、秦容達のいる小梁山、さらには南 -
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北では呼延凌とウジュが対峙し、史進がウジュの首を狙う。
そして南では南宋と岳飛・秦容連合軍が対峙し、岳飛が辛晃の首を狙う。
いつの間にか、敵の首をとってさっさと戦を終わらせることが目的になっていて、ちょっと驚く。
”民の営み。地図に描かれた広大な地域にいる、すべての民の営み。それが、利害もなにもない、もともとあった梁山泊の志に繋がる言葉ではないのか。”
宣凱と王貴の考える梁山泊の在り方。
土地ではない、政ではない、ましてや王家の血筋ではない国の本質。
それが民の営みだと言われればそうなのかもしれないけれど、あまりにも物流や交易に傾きすぎていて、経済さえ守られていたら民は幸せだというのだろう