あらすじ
前漢の中国。大きな戦果をあげてきた大将軍・衛青を喪った漢軍は、新たな巣于の下で勢いに乗る匈奴に反攻を許す。今や匈奴軍の要となった頭屠の活躍により、漢の主力部隊である李広利軍三万はあえなく潰走した。一方、わずか五千の歩兵を率いて匈奴の精鋭部隊が待つ地に向かい、善戦する李陵。匈奴の地で囚われの身となり、独り北辺の地に生きる蘇武。そして司馬遷は、悲憤を越え、時代に流されようとする運命を冷徹な筆でつづり続ける――。北方版『史記』、慟哭の第五巻。(解説・吉野仁)
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李陵が五千の歩兵部隊で匈奴と戦いたいと帝に訴えるところから中書令となった司馬遷が帝の言動を記録している場面まで(あらすじ難しい)
後半の主軸メンバーがそれぞれの場所で動き出す一冊。司馬遷編は読むのがツライし蘇武編は引き込まれる。
匈奴側がとにかく面白い。漢側が政治的に腐っているので、匈奴側の真っ当な感じが読んでいて気持ち良い。匈奴側は残された史実が少ないらしいので、ほぼ北方謙三氏の創作なんだろうけど、これがめちゃくちゃ面白い。キャラがいいんだよなぁ。好き。
漢側は……もう、ツライ。劉徹の暴君っぷりが……
桑弘羊も倒れるし、司馬遷も李陵も理不尽な目に遭うし。在位が長くなるとやっぱりあかんのかぁ……と思っていたので、ラストの独り言には息を呑んだ。
ああ……変わっていない……だから桑弘羊もずーっとそばにいるんだよなぁ。
ツライ。あと2冊分……劉徹は最後、どうなるんだろう。
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第5巻。武帝は在位45年を過ぎ、徐々に暴君のような行いが増えてくる。かつての将軍の孫である李稜は、匈奴の捕虜になってしまっただけでなく、武帝からあらぬ疑いを受け、一族を処刑されてしまう。司馬遷は正論を言った咎で、重い罰を受ける。使者とした匈奴に行った蘇武は北方の地に住まわされるが、極寒の地でサバイバルしていく。
史記の後半戦を彩る人物たちの転機を描く第5巻。前半の、漢の将軍たちの匈奴との戦いを描くくだりも面白かったが、ここにきて、リーダーとは、人間とは、人生とはを考えさせられるようなストーリーに転じてきた。著者の筆力がすさまじく、読ませます。
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ともに匈奴にとらえられた李陵と蘇武。この幼なじみ二人の漢に対する忠と信念の対比、そして生きるということの描写が読ませる。そして司馬遷。これまで以上に人間にフォーカスした巻になっている。
それにしても、著者は中島敦の『李陵』を愛読したとされ
、本書にもその影響は少なからずあるはず。その上で、両作品の違いが面白い。読み比べてみるもまたよし。
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感想
誰も帝を注意するものが居なくなり、国がドンドン腐っていく。権力とはそういうものなのか。自制してやっていくのはよっぽどの名君なんだろう。
この巻は蘇武も司馬遷も李陵も困難に出会い、生き方を見つめ直す巻という感じがした。
あらすじ
李広利は何の実力もないが、再度劉徹から匈奴攻めを命ぜられる。李陵は李広利の軍で、兵站を命ぜられるが、帝に直接5千の歩兵で匈奴に攻め入りたいと打診し、認められる。
李陵は5千の歩兵で敵陣深くまで到達するも、左賢王の2万の軍に敗れて投降する。劉徹の周りには最早、イエスマンしかいなくなっていた。李陵は単于に会い、1年間単于庭で自由に過ごすことを許される。蘇武は、匈奴に捕えられ、北海の北の極寒の地で自由に過ごして良いと言われ、厳しい冬を必死で生き抜く。
司馬遷は宮廷で李陵のことについて帝から聞かれて、正直に答えたが、去勢の刑に処される。司馬遷は苦しみながら、気持ちを殺して再度宦官として帝のそばで仕える。自分の想いは全て父から受け継ぐ史書に注ぐ。
一方、蘇武は北海で何度も冬を越え、はぐれ狼を仲間にして生き延びていた。李陵は、匈奴の戦を見る。漢の降将が李陵を騙ったことで、帝は激怒し、李陵の一族を滅する。李陵は単于から軍を預かり、調練を始める。単于が死に、狐鹿姑が単于を継ぐ。李陵は軍を率いて、漢軍とぶつかる。帝は李陵が匈奴に降ったことを信じられないでいた。
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想像を絶する不幸や災難、理不尽に直面してもなお、自分の中にある芯を貫いて生きていく男達のなんと格好良いことか……。
でも、これを成し遂げることがこの世に生をうけた意義なんだ、って信じられるものがあると、強くなれるんですよやっぱ。さて6巻。
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第五巻。
“理不尽”・・。この巻を表す言葉は、これに尽きるのでは?という程、過酷な不運が、李陵・司馬遷・蘇武を襲います。
そして、その運命を受け入れ、それぞれの生き方で再生していく3人の姿が、胸を打ちます。
長安では冴えなかった蘇武が、北方でサバイバルの才能を発揮して、生き生き(?)している感じが救われました。
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1~5の中で一番面白い巻。動きとしてはそんなに大きなものはないのだけど、司馬遷、李陵、蘇武、劉徹それぞれの闇が明らかになり、そしてそれぞれのやり方で許容・克服していく様が面白い。特に司馬遷の私見を混ぜず、私見を言わず、職業人として「歴史を記述すること」に徹する姿勢が逆に小気味よい。
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久しぶりに、史記の続編を。
3.4巻がつまらなくなりつつあったので、しばらく間を空けてみたんだけど、5巻は持ち直した気がする。
前漢の中国。帝は、絶対的な王様として、腐った政治を行い続けている。即位した初めの頃は、部下の意見にも耳を傾けその上で判断をしていた帝も、時が経つにつれ、煩い者を退け、全てが思うままになってしまっている。
戦は負け続け、罰すべき人を罰せず、全く関係のない人を怒りに任せて処罰する。まさに、暴君。
一方で、漢の敵、匈奴は組織的な規律を身につけ、更に強くなりつつある。
国の大きさ、富、全てにおいて漢の力は強いけど、小さいながらも強い力でまとまった匈奴の勢いが今後は楽しみな気がする。
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あーあ漢を支えるものは何もなくなる。史記は初めて読んでいるが今後の展開が読みづらいです。でも何故か引き込まれる世界です、蘇武はどうなるのかも気になりますし。李陵、司馬遷も新たな境地に入るし、とりあえず6巻読もう。
Posted by ブクログ
悲劇だらけの巻。
理不尽なことからの現状をひとしきり嘆いたあとは、その不遇の中で何か目的や意味を見出し行動する。うーん、【漢】だ。
でも司馬遷も、李陵も、蘇武も、不幸の発端は武帝だ。
それにしても何を飲もうかな。レベルで人の人生を左右する重大な決断をしないで欲しい…確かに国のトップの言っていることがコロコロ変わるのは、良くない。
でも間違えた、と思ったら迅速それを訂正、修正するのも必要なわけで。むー。
以前から李広利を過度に優遇する武帝に疑問を持っていたけれど、桑弘羊の言葉にああ、と思う。それだけではない、色々なものが絡まって、なのでしょうが。
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司馬遷の腐刑、李陵の族滅といった過酷な刑罰を科す武帝。年老いて若き日の武帝の姿はなく、次第に暴君と化していく姿は、見ていて、恐怖さえ感じる。理不尽さに対する怒りが芽生えてくる。前半の退屈な英雄譚を脱して、物語は佳境に入ってきた。
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盛者必衰の理あり。
トップにというのはあれだが、長くトップに立ち続けてしまうと、国だろうが会社だろうが、疲弊してしまう。
そして、有能な人がどんどんと去っていってしまう。
漢は劉徹は今後どうなるのか…?
李陵、司馬遷、蘇武それぞれがそれぞれの思いを抱いて、生きていく。
彼らの生きざまも注目していきたい。