小路幸也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『探偵ザンティピーの休暇』の続編。
アメリカで温泉リゾートを展開するオーナーの娘の日本視察に
同行するだけという気楽な仕事をもらったザンティピー。
しかし、彼の仕事がそんなに簡単に終わるはずもなく・・・
前作と同様、結果的に過去の悲しい事件の真相を暴くことになるのだが、
事件の終わらせ方はまさに「仏心」というかんじ。
真実は時として、誰かにとって、鋭い棘となりうるものだ。
ザンティピーはその棘を少しでも丸めようと奔走する。
こういう優しさもありだと、わたくしは思うのです。
さらりと読めるのに、ちょっと考えさせられるところもあるという
とても素敵な本でした。 -
Posted by ブクログ
実は買おうか買うまいか悩んだ本でした。
最近、小路さんの本が次々に出てくるので、多作ゆえの質の低下が出てきてる様に思えて。
そんな目つきで読んでいたせいか、前半は余り良い印象ではありませんでした。常にペアで語るという章の構成は物語の繋がりを悪くしているようだし、事件の焦点をぼかした書き方も歯がゆく感じられます。重く辛い物語を、良く言えば淡々と、悪く言えば浅く語る物語。
その中で、ハルを見守るイザざんとカホを見守るキッペイの2人が、現実を見据えながら、それでも一生懸命助けて行こうとするの姿が心地良く。
ただ、最後の数章で一気に盛り上げてくれます。ここは圧巻と言えるでしょう。
ご都合主義・予定調和 -
Posted by ブクログ
休暇、とタイトルにあるとおり、さくっと読んでスッキリ終わる一冊。作者も休暇な気分で書いたんだろうな。登場人物も推理ものにしては多くなく、推理ものによくある「この人誰だっけ?」現象が起こらずにさくさく読みました。
この話は主人公がアメリカンだから面白いんだろうなと思います。これが普通に日本人だったら印象の薄い本になっていたと思いますが、海外から見た日本(日本人)像とか、主人公の心情が強く打ち出されていて、それで面白くなっていた気がします。
作者は人情や家族の愛情を描くのが好きなんだろうな。そしていい感じの流れ者を描くのがうまい。東京バンドネオンの我南人しかり。 -
Posted by ブクログ
映画「男はつらいよ」を見て日本語を覚えたザンティピー。寅さん言葉を巧みに話す彼は、マンハッタンの自称名探偵である。そんな彼が、日本に嫁いだ妹からの意味ありげな連絡を受ける。妹は温泉旅館の若女将修行中。ザンティピーは有り金はたいて北海道の田舎温泉旅館にやってくる。ミステリとしては事件のプロットがつまらない。でも、異文化交流は面白い。ただ、アメリカ人にしては日本文化への溶け込み方が、あまりにすんなり過ぎるかな。日本旅館の朝食を、地元のダイナーのハンバーガーよりいいと、すぐに気に入ってしまうところなんかでそう思った。著者の小路幸也さんは相変わらず、角の取れたほんわかムードの小説を書く。肩の凝らない
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Posted by ブクログ
人の顔がのっぺらぼうに見えてしまう。一体なぜ?この本はその謎一つしかありません。
しかし、ものすごいリーダビリティ。やわらかい話し言葉でつづる奇妙な物語は謎解きへの渇望のみならず、古き日本の情景を読む人の心に浮かばせる。登場人物たちも現実にひょっこり現れてもおかしくないようなやつらばかり。
オチはともかくとして、こういったノスタルジックな小説は好きです。謎解きよりも空気を楽しむ小説だと思います。ちなみに謎は絶対解けないでしょう。
あとメフィスト賞受賞作は第一回の『すべてがFになる』の影響か、物語の最後で最強キャラがでてくる傾向がありますね。まあいいですけれども。