いかにも小路さんの作品って感じの
音楽をテーマにした
あったかい短編集。
逆に言えば
悪人が誰一人として出てこないところが、
少し物足りないと感じる人もいるかも。
泣きのギタリストが涙を流さなかった理由とは…
「クラプトンの涙」
アイドルのバックバンドが起こす
ある奇跡とは?
「唇に愛を」
怪我で休養中のドラマーを襲う
運命のいたずらを描いた
「笑うライオン」
売れっ子ピアノマンの原点は
小さな場末のバーだった…
「その夜に歌う」
売れないハワイアンバンドが
武道館ライブに出ることになった理由とは…
『明日を笑え』
など7篇。
どの話も
昭和の時代のバンドマンたちの悲哀を感じさせて、
最後のオチが
グッとくるものばかり。
音楽小説だけに
実在したバンドや
モデルとなったミュージシャンが
分かる人には分かる書き方をしていて、
兜の衣装を着た、
ホーンセクションバンドは
明らかに
「スペクトラム」をイメージしてるんだろうし(笑)
ある大物外国人バンドの前座を務めたのは
今は亡きいかりや長介率いる
「ドリフターズ」だろうし
それぞれのミュージシャンを
イメージしながら読むと
また違った味わいがあります(笑)
しかし音楽って不思議ですよね。
何かを切り詰めなきゃならなくなった時には、
真っ先に切られてしまう運命のもの。
そんな空気を震わせ
ただ消えていくものがもたらせてくれる、
何かしらの余韻。
それは
現実を凌駕する情景を見せてくれたり、
音楽にしか踏み込むことのできない
心の領域に染み込んできて、
一歩踏み出す勇気をくれたり、
人生観をも左右したりする。
誰もが持つ
ネガティブな感情を、
ポジティブに反転させるのが
音楽の魔法なんだとしたら、
この小説にもそれは
確かに息づいてます♪
行間の隙間からは
「黒いジャガー」や
「sing! sing! sing!」、
「Georgia on my mind」
が確かに聞こえてきたし、
音楽がないと見えない景色を
本を開くことで鮮やかに見せてくれる、
稀有な音楽小説だと思います。