安部公房のレビュー一覧
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Podcast「夜ふかしの読み明かし」の読書会で取り上げられていた一編、第一部の「S・カルマ氏の犯罪」を読んだ。
見渡す限りの荒野、静かに果てしなく成長してゆく名前を奪われた壁による、問わず語りの「おかしなことばかり多くて、普通のことがほとんどない」多分“ぼく”にはあまりむかないのだと思った”現実“の数日間。
名刺に名前を奪われたり、身のまわりの品に存在理由をかけた闘争を仕掛けられたり、永遠に続く裁判にかけられたりする現実に向いている人はまあいないと思うし、そのわりに冷静に話しますよね、と思いながらも、これは現実をあきらめ、自由を奪われた独房の孤独のなかで、それ故に語らざる得ない哀しい物語のよ -
Posted by ブクログ
20代半ばで芥川賞を受賞した安部公房が、30歳前後に書いた12の短編を収録した作品集。
どれもシュールで実験的で、ユーモアやウイット、アイロニーに笑わせられる場面もちらほらあります。毒が盛られたような内容の話であっても、おかしみを感じさせるシーンをちゃんと作られているため、シリアスになりすぎずに、フィクションの中身と適度な距離を保ちつつ、楽しめるのでした。また、そこのところをちょっと角度をかえて考えてみると、たまに水面に浮かんでくるあぶくのように、ここぞのところで効果的に滑稽さが仕組まれているからこそ、これは小説つまり虚構なのだ、と読む者は踏まえることができるんだなあ、とひとつ気づくことにな -
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「題未定──霊媒の話より」
霊媒師とは、要するにアドリブ俳優である
霊魂に身体を貸したというテイで
お芝居をやっている
相手はそれを本当に先祖の霊魂と信じるのだけど
それによって現世の鬱屈が
いくらかでも癒やされるのなら
単純に否定すべきものではないのである
では、かの霊媒師はいかにして霊媒師になったか
そういう話なんだけど
これは、自分の話を他人事のように語っているのではなかろうか
副題からそう臭わせることで
自然主義文学へのひとつの問題提起ともなっている
死者の意思が捏造されうる以上
自らの経歴もまた捏造の可能性を免れない
その事実を発見したことが
反近代のはじまりなのかもしれない
「老 -
Posted by ブクログ
ただいま映画『箱男〜The Box Man〜』が上映中である。公開日以降、最初の日曜日に観に行った。僕の個人的な事情なのだけれど、今年は、かつてないほど映画を観ている。俳優さんの演技というものについて理解を深めたいと思ったからだ。というのも僕の好きだった俳優さんは、演技について“天才”とすら称されることもあるほどに、演技について評判が良かった。にも関わらず、僕は素直に彼女の演技の評価を受け入れることができなかなった。実際、TVドラマや映画などで彼女の演技を観ても、彼女と、他の役者さんの演技の違いについて明確な“天才”たる理由や根拠を見出すには、いまだ至っていないのだ。僕は彼女の演技は好きなのだ