安部公房のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自分達を不幸にする社会構造をひっくり返すという目的のために存在していた筈の手段が、目的へとすり替わっていく。
最近も頻繁に見かける類の狂気かと思う、元は高い使命意識を持っていたであろう人々が、目的と手段を履き違えて頓珍漢な声を荒げ、白い目で見られる様は。
そしてその活動すら、金持ちの金稼ぎに利用される様も、どこかで見覚えがあるなと思ってしまうのは穿った考え方だろうか。
花井が革命に執着する気持ちはなんとなく分かる。
飼い慣らされている、誰かに人生を掌握されているという、八方塞がりで前進も後退もしないことへの焦燥感だろうか。
現状に甘んじていた方が楽であるにも関わらず、それでも八方塞がりからの脱出を試みる、これだけでは異常でも狂気でもないのだが…読後感には徒労感が付き纏う。 -
Posted by ブクログ
今でこそこのような「現実と虚構が混乱してしまう」テーマの話しは数多く作られてきたが、当時はかなり斬新だったのかもしれない。主人公の不安の高まりが徐々に伝わってくる。
安部公房の作品はかなり久しぶりに読んだ。本作品もその独特な不条理の世界観が面白い。どの作品も、日常の裏側の、しかしかなりかけ離れた世界にいつの間にか引きずりこまれ、そこに精神的に一体化されてしまうような話が多い。トリップ感覚とも違うこんな世界をよく描けるものだと改めて感じた作品。
登場人物と場面が限定されているので、映像よりも舞台劇に向いてそうだ。目の前でこの緊張感を表現してくれる役者達を観てみたいものだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ安部公房さんの本はこれが初めて。素人ながら、簡単な感想を述べたいと思う。
まず『友達』について。
ページをめくるたびにゾッとするような善意の押し付け。主人公の男の話は誰にも信じてもらえず、ただ孤独であることを許されない様子が非常に気味悪く、滑稽でもあった。
「私たち、友達でしょ?」
「誰かと一緒にいた方が幸せに決まってる」
それはそう、それはそうなのだが。
人は、少なくとも自分は、孤独である事よりもそれをまざまざと見せつけられたり、それが許されないことの方が辛い。押し付けられる善意はむしろ迷惑に感じてしまう。
しかし、実際はその迷惑さは伝わらないことが多いのではないか。
親切には変わりないのが、むしろ厄介なことなのかもしれないし、では全く放置されれば良いのかというと、そうでもない。難しいなぁ。
次に『棒になった男』について。
突然棒になってしまった男、新宿。街。
平凡な日常からの乖離、疎外。自分がこの自然から切り離され、ふらふらと彷徨している感じ。
上手く説明は出来ないが、とにかくこの非日常性の雰囲気が安部公房さん独特のものなのだろうなと感じた。
『榎本武揚』も良かった。最初あまりにボロクソに言われていて少し笑ってしまったが。
ボクシング、鞄の話はもっとよく分からなかったが、何回も目を通してみるとまた違った感想が出てくるのかもしれない。