安部公房のレビュー一覧
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R62号の最後の衝撃。脳の回路、生産性、重役。頭取は何に感動していたのか?
戦後の労働や生活環境といった時代を感じる。そしてその奥に隠された寓話や教訓。設定も落ちもユニークで、読み進めてしまう。
「パニック」パニック商事。Kの痕跡。三日間の放浪。
「犬」人間くさい犬。「妻の顔」妻と犬のいれかわり?
「変形の記録」一番教訓や話の落とし所がつかみにくかった話。戦争のすなぼこり?
「死んだ娘が歌った……」掃除の授業、お弁当詰めの授業、心のイワシ、朝まで遊ぶ娘。工女の哀れさ。
「盲腸」羊の盲腸。
「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」
「鍵」盲目の娘と疑い深い親父。
「鏡と呼子」田舎小学校ながくて良 -
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マスクをしていないと、奇異な目を向けられる昨今において。
主人公はもはや妄想観念的な執着心でもって仮面を作り出そうとする。
しかし、この執着心やら孤独感とはどこに源泉があるのだろう。
顔、なのだろうか。
P.74『怪物の顔が、孤独を呼び、その孤独が、怪物の心えおつくり出す。』
こだわりの強さ、情緒交流の乏しさ。
そこに、恐るべきボディイメージの歪みと疎外感が加わる。
P.80『流行と呼ばれる、大量生産された今日の符牒だ。そいつはいったい、制服の否定なのか、それも、新しい制服の一種にすぎないのか』
これは昨今でもまったく同じ現象を容易に思い浮かべられる。量産型女子大生とか男子大生と -
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とあるさびれた田舎町で、共同体から疎外されルサンチマンを抱えたはぐれものたちが、地熱発電所の建設を利用してアナーキーなユートピアを目指す「革命」を企てるが、町の支配者たちに発電計画を横取りされて瓦解・挫折するまでをユーモラスかつアイロニカルに描く。
描かれる「革命」が政治的な陰謀というより、1人の夢想家の大博打に町が巻き込まれていく形で、「革命」の挫折の要因が権力の弾圧や革命勢力の内紛のようなありがちなものではなく、地方政治における諸勢力間の陰湿でせこいなれ合いや、法的な許認可や土地取引の経済的な駆け引きの敗北であるのが、単なる反ユートピア政治小説と一線を画している。初出は1950年代と -
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表現力に圧倒される。時代背景も人物背景も馴染みがないはずなのに、自分がそこにいるような手触り感。特に二回目の団地の描写はすごい。あ、この感じ前にもあったな、懐かしい、主人公に自分が重なる。
内容は難解。さらっと読みしただけでは喪失部分が唐突で意味がわからない。一体どういう心情でそういうことになったの?これまでの丁寧な説明は逆になんだったの?と。でももしかしてそれも表現効果の一部なのだろうか。メビウスの輪(とはよく言ったものです)の裏側は表と近しい位置にありながら全く繋がらない世界です、というのをその唐突さで表している?
主人公は弟、田代君、仕事、彼の妻からの依頼、と次々に目的を見失い(これ -
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安部公房(1924-1993)の長編小説、1967年。
安部公房の小説の主題として、しばしば「自己喪失」ということが云われる。では逆に、「自己」が「自己」を「獲得」しているのはどのような情況か。それは、「世界」の内で何者かとして在ることができるとき。則ち、「世界」が"存在の秩序(ontic logos)"として一つの安定した価値体系を成し、その内部において「自己」が意味を付与され在るべき場所に位置づけられているとき。しかし、近代以降、「自己」の存在根拠を基礎づけようとするのは当の「自己」自身となる。このような【超越論的】機制から次のことが帰結する。
□ 自己喪失は不可避