安部公房のレビュー一覧

  • 砂の女(新潮文庫)
    「砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象...続きを読む
  • 人間そっくり(新潮文庫)
    自らのことを火星人だと言い張る訪問者。対話を通じていく中で、寓話と現実の境が曖昧になってゆく。物語の立て付けやパーツによる定義を超えた、物語の現実との連続性の中での寓話性によって読者の現実を揺るがす手法がSFの真髄を体現していた。
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    本屋をぶらっと見ていたら何と新刊に安部公房が!!!一番好きな作家と言っていいくらいに好きなのでとても感激!

    未完ながら、この精緻で堅牢な構造物のようにかっちりとした文章は正に安部公房。飛ぶ男というのも安部公房らしい。最初未完と知らずに読み始めたので、途中から文字が欠けていたので印刷ミス?と一瞬思っ...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    「納得がいかなかったんだ、まあいずれ、人生なんて納得ずくでいくものじゃないだろうが、しかし、あの生活や、この生活があって、向うの方が、ちょっぴりましに見えたりする、このまま暮らしていって、それで何うなるんだと思うのが、一番たまらないんだな、どの生活だろうと、そんなこと、分りっこないに決まってるんだけ...続きを読む
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    現代の寓話とも言うべき短編集。主人公らは人間から変態したり、そもそも人間ではない存在を描いており、その中に著者のユーモアがふんだんに散りばめられている。不条理な展開に振り回されつつも、その中にある様で存在しない大きなメッセージを感ずるだろう。
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    かいわれ大根から始まる旅。
    テンポ良くて、読みやすい。
    死が其処此処に配置されているけれども、暗くない。
  • 第四間氷期(新潮文庫)
    未来とは天国か地獄か。科学技術によって人間を取り巻く環境は大きく変化し、その新しい自然によって人間自体も大きく変容してゆく。未来の価値を図る尺度は現在の側にはなく、善悪の彼岸すら大きく捩れてゆく。これはある種のSFが未来を通して現在の人間社会を描くという試みを、未来予知機械をSFと見立ててそれによる...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    のめり込む、読み終わる頃に私の手元は砂に覆われてた。“砂”が題となってはいるが別の地に置き換えても構わない、“慣れてしまえばいい”その土地に身を準ずる事が恐怖の根源なのだ。希望はいつまで経っても慣れない地には居座らない、飛翔をする、一度居座ってしまえば残るのは後悔と裏側に潜む安堵である。”孤独とは幻...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    男の立場で読むことで
    男の心境に沿って物語が進んでいく
    読後は改めて女の立場で
    読み進めてみたいとも思った。

    不自由だったはずの幼少期を
    振り返ってみると
    自由であったと感じる。
    大人になった今は
    自由では無いのか?自由とは何か?
    そんな事を思いながら読んでいた。

    孤独とは、
    幻を求めて満たされ...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    久しぶりに再読したが。エキサイティングすぎる。後半の視点が変わりまくるあたりのついていけなさすごい。
  • 砂の女(新潮文庫)
    『砂の女』が発表されたのは1962年、キューバ危機の年だ。もはや歴史にマッピングされる時代である。なのにこの小説は、文学作品特有のカビ臭さがない。むしろ新鮮なくらいである。
    安部公房は日本で最初にワープロを使って執筆した作家と言われる。理知的な文章は、小説家というよりも実験家のようである。実際、彼は...続きを読む
  • 壁(新潮文庫)
    メモ
    「壁」とは理不尽の試練或いは自己との対話
    砂漠の中に壁は存在しない
    壁と砂漠の関係性は自己と実体の関係性にある、気がする
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    文学的挑戦に富んだ短編集。文学を解体して、再構築しているような難解さがありつつも、エンタメ小説としても全く古びない力強さと、奇妙でじっとりとしていてニヒルな感触が印象的だった。
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    シュールの極みだった。世界観を楽しむ作品という気がする。あれこれ考えても全く訳がわからないけど、テンポがよくてリズム感もあって読みにくくはなかった。笑い転げるほど面白い場面もあるし、語り口調のおもしろいところもなんかかわいらしいところもあった。景色は暗いのだけども、どんよりとした気持ちになる作品では...続きを読む
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    安部公房の夫人の編集者的改変を元に戻した編集になっているそう。フロッピーディスクの遺稿だそうな。不眠症、夢、性転換など、興味深いテーマが次々と立ち現れ混淆する、不思議な作品だ。だが、正直内容は、よくわからない。すでに全集で読んで、何回か読んでいるが、なんの話なのかと訊かれるとさっぱりである。晩年の暴...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    毎日が煩雑で全く同じことの反復でしかない生活なら、この穴の中での、毎日砂を掘っては捨てる単調な反復の生活に置き換えた方がよっぽどマシかもしれない。面白かった。
  • 壁(新潮文庫)
    この本は、三部で構成されていた。第一部の「S・カルマ氏の犯罪」が第25回芥川賞を受賞したとのこと。

    『壁 第ー部 S・カルマ氏の犯罪』
    ある日、自分の名前が想出す(原文ママ)ことができなくなった主人公に次々と起こる非現実的な出来事。よくわからなくて何度も読み返すうちに、こにシュールレアリスムの世...続きを読む
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    本書との出会いは書店の新刊書コーナーで。安部公房の新刊書?お亡くなりになってから大分経つのに。新しい作品が発掘されたのか?裏の帯を見たら今年は安部公房生誕100年とのこと。新潮文庫では新刊を2か月連続で刊行するとの気合の入れ方。これまで単行本で文庫化できていなかった2冊だ。芸術新潮でも特集記事が組ま...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    すごい作品でした。夢や希望、生気も砂に吸い取られてしまったような読後感。生きている意味とは…とネガティブ全開になってしまうけど好き。求心力がすごかった。
  • 砂の女(新潮文庫)
    ハードル高いと思っていたのですがサラサラッと読めました(砂だけに)ただし、作品の意味する所までは読み取れてなかった気もします。日常生活のふとした時に砂の女の描写を思い出してしまいそう。それだけ影響力は大。面白かったです!