安部公房のレビュー一覧

  • 壁(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    『第一部 S・カルマ氏の犯罪』

    主人公はある日突然、自分の名前を失う。そこから物語は、「自分とは何か」「存在とは何か」という哲学的な問いを軸に展開していく。しかし本作の魅力は、その難解なテーマだけではない。

    物語の世界は終始、現実と虚構の境界が曖昧で、まるでデ・キリコやサルバドール・ダリの絵画の中を歩いているようだった。裁判所や会社といった現実的な舞台が登場するにもかかわらず、そこでは常識が通用しない。不条理でありながら妙に説得力があり、その独特な世界観に強く引き込まれた。

    特に印象的だったのは、「無機物の、有機物への革命」という発想である。無機物には意志があり、生きているにもかかわらず

    0
    2026年06月14日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    自身の価値観をただ主張し続ける男に苦々しい思いを感じつつ読み進めた。
    競争社会の価値観に囚われ疲弊し心理的孤独だった男が、共同体的価値観の村落・女と過ごすことで価値観に変化が生じる物語。のように感じられた。

    0
    2026年06月13日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    「手」と「飢えた皮膚」が好み。「鉄砲屋」も素晴らしかった。「闖入者」は本当に胸糞が悪かった。安部公房の様々な顔が楽しめる短編集で、満足感は強い。

    0
    2026年06月09日
  • 箱男(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    正直読み終えた直後は、ほとんど意味が分からなかった。

    誰が本当の箱男なのか。ノートを書いているのは誰なのか。何が事実で何が嘘なのか。読み進めるほどに全てが曖昧になり、途中からは登場人物の言葉すら信じられなくなってしまった。

    しかし不思議なことに、読み終えて数日が経つと、この作品について考える時間が増えていった。理解できなかったはずなのに、気づけば作品のことを考えている。『箱男』は読んでいる最中よりも、読後にこそ真価を発揮する小説なのかもしれない。

    この作品で私が最も揺さぶられたのは、「真実とは何か」という問いだった。

    物語は、箱男を観察していた男が箱男となり、その記録をノートに綴る形で

    0
    2026年06月07日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    凄まじい砂の世界、窮屈すぎる過疎社会、卑しい部落の人間。息ができなくなるくらいの強烈な閉塞感に加え、比喩表現でさらにクラクラしてくる。

    逃げ出すことばかり考えていたけど、あれ?自分がいた元の世界ってそんなに良いところだったっけ?なんで戻りたいんだっけ?ってなってた男の心境の変化を、ラストの行動で理解した。
    たしかに、自由ってなんだろう。自由には責任が伴う。自由だってしんどい。
    結局「外の世界のことなんてどうだっていい」という女の一言に尽きるなと。

    私にとって初の阿部公房作品。言葉の難しさや分かりづらさはあるものの、息苦しさを感じさせる表現は見事。読み終わってすぐに深呼吸をした。

    0
    2026年05月30日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    奇妙な状況で想像がフル回転する。

    砂が当たり前にある生活が耐え難い。
    耐え難いはずなのに、順応していく様に妙に納得できてしまった。

    「罰がなければ、逃げるたのしみもない。」

    適応しきった砂の女と
    自由を定義しようとする男

    1/8m.m.の流動

    0
    2026年05月26日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    この作品には、全体を覆う“乾いた空気感”というものが凄くうまく表現されていた。無機質で冷たい文体。そして主人公の一人称ではなく、神の視点から淡々と語られる構成。その全てが合わさることで、読んでいるこちらまで砂に包まれていくような感覚になった。
    物語の展開自体は非常にシンプルだと感じた。ある日突然、主人公の日常は崩壊し、砂の世界へ閉じ込められる。そして元の生活へ戻るために脱出を試みる。ただ、その分かりやすい構造の中に、とてつもなく深いテーマが隠されていた。

    序盤では、理不尽に閉じ込められた主人公に強く同情してしまう。しかし読み進めるうちに、ある違和感が生まれた。
    「元いた世界と、砂の世界は本当

    0
    2026年05月26日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    限りなく5に近い4
    僕の集中力と理解力のせいで分かりきっていない
    面白いなあ、突飛な設定なのに妙に写実的で、現実的で、キャラにブレがなくて。比喩で出てくることに本質が詰まってる感じがする。再読したい。
    この世には中間体というのは意外とないなと思った。

    0
    2026年05月23日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    3月に舞台をみたのでどうしても読みたくなった。
    主人公の人間らしさといい、周囲の人間の視線といい、妙なリアルさでこちらまで砂の中で生活しているような気持ちになる。

    0
    2026年05月18日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    うへー、1日で読み切ったー。
    引き込まれる読書体験だった。
    比喩が多くて、サラッと読んだ一週目では詳しくは分からなかったなー。

    あと、女がエロい!ともかくエロく感じた。
    ほんまに引き込まれたなー。

    0
    2026年05月16日
  • 砂の女(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「砂の女」という題名

    読みはじめは「砂の女だ!」と感じても、
    読みおわりは「砂の女か?」と感じられます。

    砂の女は、終盤で主人公に歯向かいます。しかも強めに。それは「愛郷精神」つまり「部落の集合的意識」があらわになった場面です。

    目の前の「女」ではなく「部落」が歯向かってきたと感じた主人公も、最終的にはその部落に順応しました。主人公は「砂の男」になり、部落に定着して、愛郷精神を育んでゆくのでしょう…。ハッピーエンド…?

    主人公目線、砂の本質は「流動=定着の拒絶」だと見抜いていました。しかし極限状態におかれた人間はその「定着の拒絶」にすら「定着」してしまう、という有様!

    人間の強さと、

    0
    2026年05月08日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ある探偵業の男が依頼された人の旦那を探しているうち、いろいろなしがらみがでてきて最後自身がそこから逃れようとして蒸発してしまうというお話。
    主人公の背景をが前段でもう少し記載されていたら、少しわかりやすかったかなとも思う。

    0
    2026年05月06日
  • 壁(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    不条理不条理!読んでる間に、漫画家つげ義春氏の訃報があって、なにか共通なものを思い出した。

    それにしても「とらぬ狸」の言葉だけゴシック体なのは何故なのか

    0
    2026年04月18日
  • (霊媒の話より)題未定―安部公房初期短編集―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    『手紙』が刺さったけど未完…
    内側と外側が反転て何それ!と一気におもしろさ加速してまじの途中で終わって絶望

    0
    2026年04月14日
  • 壁(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    意味が分からないままとりあえず読み進め、読後にあらすじまとめを読んでもやはり意味がわからず、考察を読んで初めて少し納得した感じ。
    途中、展開の意味がわからなすぎて、アリスのような童話のつもりで書いているのかと思った。

    名刺という社会的な自分の名前を消された時、残った自分という存在は、自分を自分であると認識ができるだけで、そこにただ”存在”しているだけの、生物としてだけの存在になってしまうのではないか。

    考察を読むと、とらぬ狸が特に面白かった。
    とらぬ狸とは人間の非現実的な願望であり、目玉銀行へ目玉を預けること要求されるのは、現実を見る能力を手放すように促している。

    赤い繭では、家を探し求

    0
    2026年04月09日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     この本を読んでいる最中の不安感といったら無い。何か分からないものをずっと求め続けている感覚。何度も読む手が止まってしまった。正直読むのが辛かったので再読はしないかもしれない。でもある種の救いがあるから読み切れた。
     自分の存在証明をするのは自分である。自分が決めた「目的」である。目的のない人生は、途端に自分の所在を不明にする。

    p.294「〜どんなつまらない目的のためでもいい、とにかく歩いていられるのは幸福なんだってことを、しみじみと感じちゃうんだな……」

    0
    2026年04月14日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    「間氷期」とは、地球の氷期と氷期の間の比較的暖かい期間のこと。現在が「第四間氷期」である。とすると、次の氷期が訪れるという話なのかと思いきや、そうではなかった。未来を予知する「予言機械」の開発者が殺人事件に巻き込まれるところから始まり、人類の未来に関する大いなる謎へと繋がっていく。

    主人公である予言機械の開発者は、その機械の「使い道」を考えなければならない状況になっている(しかも政府の意向に反しない範囲で)。それは当たり前のように見えて、実はそうでもない。純粋に技術的興味(シーズ)によって開発をしているだけの開発者にとって、用途(ニーズ)などはどうでもいいのである。

    そもそも、新しい技術が

    0
    2026年03月22日
  • 壁(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    意味が分からないのに、分からないまま楽しめてしまう不思議な感覚でした。
    裁判の場面の、ゴチャゴチャ感が一番好き!

    0
    2026年03月22日
  • 箱男(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    いやぁ、複雑すぎるし藤子不二雄すぎる(つまり不思議)

    いきなりダンボール被った生活。
    他にもダンボールを被ったライバル?

    欲を解放した姿がダンボール(でも覆われている)

    凄く格好いい比喩や表現が出てくるので、おーっ!と感動しつつ、話は藤子不二雄。

    翻訳こんにゃく必要。

    0
    2026年03月08日
  • 密会(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    安部公房の作品の中ではそこまで知名度も評価も高くない作品のようですが、世界観全開の展開・発想と安部公房の作品にしては分かりやすいストーリーという事もあり、楽しめた。

    救急隊員に攫われた妻を探すために接触した馬の真似をして走る協力者に渡されたカセットテープを聞いてみると主人公自信を盗聴したもので、その内容をノートにまとめて欲しいと依頼される。
    みたいな不思議で怪奇なお話。

    0
    2026年02月23日