安部公房のレビュー一覧
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『第一部 S・カルマ氏の犯罪』
主人公はある日突然、自分の名前を失う。そこから物語は、「自分とは何か」「存在とは何か」という哲学的な問いを軸に展開していく。しかし本作の魅力は、その難解なテーマだけではない。
物語の世界は終始、現実と虚構の境界が曖昧で、まるでデ・キリコやサルバドール・ダリの絵画の中を歩いているようだった。裁判所や会社といった現実的な舞台が登場するにもかかわらず、そこでは常識が通用しない。不条理でありながら妙に説得力があり、その独特な世界観に強く引き込まれた。
特に印象的だったのは、「無機物の、有機物への革命」という発想である。無機物には意志があり、生きているにもかかわらず -
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正直読み終えた直後は、ほとんど意味が分からなかった。
誰が本当の箱男なのか。ノートを書いているのは誰なのか。何が事実で何が嘘なのか。読み進めるほどに全てが曖昧になり、途中からは登場人物の言葉すら信じられなくなってしまった。
しかし不思議なことに、読み終えて数日が経つと、この作品について考える時間が増えていった。理解できなかったはずなのに、気づけば作品のことを考えている。『箱男』は読んでいる最中よりも、読後にこそ真価を発揮する小説なのかもしれない。
この作品で私が最も揺さぶられたのは、「真実とは何か」という問いだった。
物語は、箱男を観察していた男が箱男となり、その記録をノートに綴る形で -
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凄まじい砂の世界、窮屈すぎる過疎社会、卑しい部落の人間。息ができなくなるくらいの強烈な閉塞感に加え、比喩表現でさらにクラクラしてくる。
逃げ出すことばかり考えていたけど、あれ?自分がいた元の世界ってそんなに良いところだったっけ?なんで戻りたいんだっけ?ってなってた男の心境の変化を、ラストの行動で理解した。
たしかに、自由ってなんだろう。自由には責任が伴う。自由だってしんどい。
結局「外の世界のことなんてどうだっていい」という女の一言に尽きるなと。
私にとって初の阿部公房作品。言葉の難しさや分かりづらさはあるものの、息苦しさを感じさせる表現は見事。読み終わってすぐに深呼吸をした。 -
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ネタバレこの作品には、全体を覆う“乾いた空気感”というものが凄くうまく表現されていた。無機質で冷たい文体。そして主人公の一人称ではなく、神の視点から淡々と語られる構成。その全てが合わさることで、読んでいるこちらまで砂に包まれていくような感覚になった。
物語の展開自体は非常にシンプルだと感じた。ある日突然、主人公の日常は崩壊し、砂の世界へ閉じ込められる。そして元の生活へ戻るために脱出を試みる。ただ、その分かりやすい構造の中に、とてつもなく深いテーマが隠されていた。
序盤では、理不尽に閉じ込められた主人公に強く同情してしまう。しかし読み進めるうちに、ある違和感が生まれた。
「元いた世界と、砂の世界は本当 -
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ネタバレ「砂の女」という題名
読みはじめは「砂の女だ!」と感じても、
読みおわりは「砂の女か?」と感じられます。
砂の女は、終盤で主人公に歯向かいます。しかも強めに。それは「愛郷精神」つまり「部落の集合的意識」があらわになった場面です。
目の前の「女」ではなく「部落」が歯向かってきたと感じた主人公も、最終的にはその部落に順応しました。主人公は「砂の男」になり、部落に定着して、愛郷精神を育んでゆくのでしょう…。ハッピーエンド…?
主人公目線、砂の本質は「流動=定着の拒絶」だと見抜いていました。しかし極限状態におかれた人間はその「定着の拒絶」にすら「定着」してしまう、という有様!
人間の強さと、 -
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ネタバレ意味が分からないままとりあえず読み進め、読後にあらすじまとめを読んでもやはり意味がわからず、考察を読んで初めて少し納得した感じ。
途中、展開の意味がわからなすぎて、アリスのような童話のつもりで書いているのかと思った。
名刺という社会的な自分の名前を消された時、残った自分という存在は、自分を自分であると認識ができるだけで、そこにただ”存在”しているだけの、生物としてだけの存在になってしまうのではないか。
考察を読むと、とらぬ狸が特に面白かった。
とらぬ狸とは人間の非現実的な願望であり、目玉銀行へ目玉を預けること要求されるのは、現実を見る能力を手放すように促している。
赤い繭では、家を探し求 -
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「間氷期」とは、地球の氷期と氷期の間の比較的暖かい期間のこと。現在が「第四間氷期」である。とすると、次の氷期が訪れるという話なのかと思いきや、そうではなかった。未来を予知する「予言機械」の開発者が殺人事件に巻き込まれるところから始まり、人類の未来に関する大いなる謎へと繋がっていく。
主人公である予言機械の開発者は、その機械の「使い道」を考えなければならない状況になっている(しかも政府の意向に反しない範囲で)。それは当たり前のように見えて、実はそうでもない。純粋に技術的興味(シーズ)によって開発をしているだけの開発者にとって、用途(ニーズ)などはどうでもいいのである。
そもそも、新しい技術が