安部公房のレビュー一覧

  • 砂の女(新潮文庫)
    こんなに面白い本、なぜ今まで読まなかったんだろう。

    昭和50年代に書かれた物語なのに、とても斬新で新鮮だった。なんだこの話は⁈って衝撃だった。
    状況や心の機微などの細かな描写に、とても惹きつけられたし、主人公がどうなっていくのか、どんな結末を迎えるのか、ずっと気になり、前のめりだった。
  • 箱男(新潮文庫)
    背伸びして安部公房氏を読んでいる。
    映画化になり、積読から手に取った。混乱する。難しい。
    何方か書いていらしたが、最後まで読ませてしまうのが安部公房氏。次が気になってしょうがなかった。
    人の数だけ、内側(心の中)の世界がある。でも内側の世界だけでは生きていけなくて外側(世間、世の中)と接するけれど、...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    見事なほどの予想外の展開に、
    ついていくのが大変だったけど………

    何故か惹かれる箱男。
    いや、私はあの箱、五万円で買おうと申し出がでるほどのあの箱に惹かれている。
    入ってみたい。
    そして覗き窓から世間を見てみたい。


    話は単純ではなく、登場人物も少なくない上に裸になる事が多いし怪しい事も繰り広げ...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    箱を被り生活する男、設定が最高に面白かった。内容は意外に複雑で噛み締めて読まないとなかなか理解できなかった。
    永瀬正敏主演で映画もやるので絶対に観たい。
  • 他人の顔(新潮文庫)
    人はみな他人の顔を求めるものだと思う。 SNSで友人を作るのが当たり前になっている現代は、出版された時代と比べてもかなり「自分とは別の顔」が普及した世の中になっている。
    のみならず、コスプレやメタバース、ゲームのアバターなど「自分以外の自分」で自己表現ができる機会は多い。
    化粧や整形の普及もあって、...続きを読む
  • 壁(新潮文庫)
    新潮文庫、昭和44年発行版を読んだ。
    収録作は「S·カルマ氏の犯罪」、「バベルの塔の狸」、「赤い繭」(赤い繭、洪水、魔法のチョーク、事業)。
    全編を通して悪い夢でも見ているような感覚であったが、面白かった。
    「赤い繭」は国語の教科書にも載せられているが、なるほど一番まとまりがよく、短い中に安部公房の...続きを読む
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)
    [感想]
    『友達』のなんだかわからない世界観に強引に引き込んでいく安部公房の描写力、会話力がすごい。
    『棒になった男』の棒とは何か?観客に向けて棒の森と言っているので、現代社会に生きる人々=棒と言っているのか、決まりきった考え方で生き死んでいく人々のことを棒と言っているのか様々な考察ができる作品なっ...続きを読む
  • 第四間氷期(新潮文庫)
    電子頭脳を持つ予言機械、今で言う人工知能のような機械にある男の未来を予言させたことに端を発し、事態はあれよあれよと急展開を迎える。
    SF的な要素があるかと思えば、唐突にミステリーな要素が垣間見えたり、SF小説と言われているが、不思議な作風だった。この作品が日本で初の本格SF小説だそう。
    そして、19...続きを読む
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    安部公房特有の暗くねばっこい質感がありながら読む手を止まらせない一冊。

    探偵としてあちこち探し回り、一癖も二癖もある人たちと何度もすれ違っているが探してる男の姿は一向に見つからない。影さえ見えないままだから心のどこかに知らない影を作りたがるのは誰もがそうなのかもしれない。

    そうして終わらない迷路...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    村に着いたときからこの世ではないどこか別世界に行った感覚。自分が主人公になってしまったらと想像すると恐ろしい。読んだ後に悪夢を見た気がする。主人公の心情変化が見どころだと思う。
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    安部公房の短編集は読むのにすごくエネルギーがいる。長編小説であれば最初から最後までトップスピードというわけにはいかないので「遊び」がある。遊びとは、安部公房の世界から我々の住む、あるいは理解し得る世界へ戻って来れる瞬間のことである。しかし短編小説では向こうの世界に入ったっきり、物語が終わるまで帰って...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    ある日、箱をかぶることによって別の存在になれると思った男が、箱男のなり方から、のぞき窓から見る世界について独白調に書いたし小説風の物語。
    何度も見るを多用しているように、一方的に見る、注視する、覗き見ることに意識を向けていて、描写もとても細かくズームしていくが、よく読むとそこまで見えるはずもなく、音...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    他人からみられずに他人のことを見る。という根本的な欲求を書かれた小説であったが、心の奥底にあるものを表出させられた感覚があるものの、どのように解釈したらよいか悩んでしまう。見られずに見る立場になるには、社会生活から断絶するしかないのか、中途半端しかできないからモヤモヤするのか。しばらくしてから再読し...続きを読む
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    ネットで話題ということで気になっていたがなかなか出会わず忘れていた頃、たまたま立ち寄った書店で平積みになってるのを発見。小さなお店に似つかわしくないほどの大量の平積み。買い求める際もなぜか店員さんがとても喜んでいたのでこの人この本好きなんだな。と、思っていたところ本のオビを見て納得。オビの文句書いた...続きを読む
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    これまで読んだ安部公房の中では、
    私にとっては難解で、
    意味を理解するというよりは、
    円環的で、主客が狂っていく、
    いつもの蟻地獄のような安部公房世界を味わうことに努めた。

    難解な理由の一つは、
    会話が、描写が、
    何を言っているのかわからないのだ。
    限りなくリアリティがあるような変哲もない団地の景...続きを読む
  • 壁(新潮文庫)
    冒頭の「S・カルマ氏の犯罪」はゴーゴリの『鼻』を思わせる。名前を失った男の内なる「壁」が成長し、果ては自身を飲み込んでいく。名前は他者と区別する一つの壁かもしれない。そもそも、生物か否かの条件は、外界と隔てる壁があるか否かだ。人は壁がなければ生きていけないのかもしれない。
  • 箱男(新潮文庫)
    見ているのか、見られているのか
    この話がおかしいのか、自分がおかしいのか
    彼我の境界があるようで、ないようで
    箱をかぶった変態の話かと思いきや、変わってるのは理解できない自分なのかと不安になる
  • 壁(新潮文庫)
    第一部の「S・カルマ氏の犯罪」はある日突然名前を失った男が、周りの人間から迫害され、最終的に壁になってしまう話。不条理小説であるカフカ『変身』の壁バージョンだろうか。いや、あちらは目覚めたらいきなり虫になっていた設定なのでちょっと違うか。でもモチーフは近いものを感じる。
    第二部の「バベルの塔の狸」は...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    『砂の女』が面白かったので別の安部公房作品にチャレンジしてみたけど、難解すぎて参った。一言でいうと、段ボール箱を頭から腰までかぶって、のぞき窓から外を見ながら都市をさまよう男の物語なのだが、変死体のCが出てきたあたりからストーリーについていけなくなった。途中で挿入される写真も謎だし、はっきり言って本...続きを読む
  • 壁(新潮文庫)
    自分というアイデンティティ、自分と他者とを区別しているもの、自分が社会生活を営むために必要としているもの。
    それは、名前だったり、肩書きだったり、影であったり、家であったりする。
    それらをなくしたとき、自分は自分といえるのか、社会に存在し続けることはできるのか。

    壁は、社会生活に疲弊した自己を確立...続きを読む