安部公房のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最初は異常だったものが、
次第に自分の世界の手触りになっていく。
潜在意識と意識的な選択の狭間に、
砂が少しずつ入り込んでくる。
静かに、時間を掛けて。
いつの間にか、
環境に侵食されているのか、
環境を受け入れているのか分からなくなる。
意識か無意識か。
人は、環境から影響を受ける。
環境を変えれば、
人の行動や習慣や、人と人との関係も、
少しずつ変わり得る。
私は、その可能性を諦めたくない。
落ちるのか、
登るのか、
埋もれるのか、
掻き出すのか。
奇妙で深淵な蟻地獄に迷い込む、
いや、飛び込む、動機と衝動はあるか。
読んだのは15年程前ですが、
人生に影響を与えた本のひとつです。
人に紹介するために、
内容を思い出しながら書きました。
最後は、
人間が世界に働きかけることの、
小さな希望を感じる。 -
Posted by ブクログ
砂の穴の底にある女の一軒家に閉じ込められた男の話
日々男は逃亡を試みるので、はらはらして読み進める
男は現実世界に戻りたい一心なのだが、男が思い出してる現実世界の家族や仕事のことは、灰色でなにも面白みの無さそうな世界に感じる
日々の砂の穴の中の生活は、毎日の砂かき、ラジオを買うための少しの内職
女は私はめっちゃ優しいと思うちょっとあこがれる笑
逃亡のチャレンジで話は進んでいくんだけど
読み終わったあとは
働くこと、生活すること、ほんとに大事な生き方ってなんやろう
幸せってなんなんやろうか
っと、ぼーっと考えてしまう
読む度に感想変わりそう -
Posted by ブクログ
ネタバレなんとも言いがたいがとても好みだった。
小出しにされる情報にどんどん恐怖や不安感が募り、比喩表現の巧みさに魅了され、主人公の思考を通じて人生の意味まで考えさせられる。
わからないのに「なんだかわかる」という気持ちにさせられて、文章にのめり込んでいくような読書になったのが面白かった。わかると思うのも幻想にすぎないというか、きっと思い違いだろう。
競争や責任から逃げ出した先の、すべての約束を放り投げる解放感は替えがきかないだろうなと思った。本来は残された側の動揺や苦悩に共感すべきところを、失踪人の心理を考えて追っていくことで同化していく感覚を味わえた。
探偵は後頭部など暴行を受けたあと、現実の時間が飛び飛びになっているのが不穏。その後、走り続けているのに呼吸が乱れていないとか、無人の街の描写もあり、実はあのまま昏睡状態におちいっているか、亡くなっているのではないかと思えてきた。
失踪人は行方知れずのまま、次々と悪いことが起きて決して良い流れとは言えないけれど、探偵自身は自分に関する何かを見つけたのかもしれなかった。余韻を残すラストだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第4間氷期
未来予知機を作った人間が疎外され
水棲人類を作った人間が疎外される
最初は混乱を招いたり、自由を奪うという理由で政府から未来予知器の使用を制限された製作者の不満から始まる
未来予知という近未来的な装置に世間は沸き立っているも、ソ連が「世界は最終的に共産主義に落ち着く」という未来予知をしたことを皮切りに、自由主義諸国は政治的反対からその意思を世論に流した
結果、研究所は閉鎖の聞きに追い込まれる
どうにか使途を見出そうと、機械に聞いて見ると、社会ではなく個人の未来を予想すればいいという答えが帰ってきた
そこで、助手のトモキと共にある平凡そうでいながら予測不可能さを備えていそうな中年男性を尾行することにした
しかしその中年男性は、殺されてしまい、その嫌疑が尾行していた2人にかかることになった
死体を未来予測する限りにおいては良心の呵責は少ないだろうと言うことに気づいた研究者は、別の脳神経に関して研究している人物に委託し、脳波を機械に読み込ませ、過去を見ることにした
すると、殺される前にあっていた女性とは「中絶したら7000円が貰える 口外してはいけない 臨時の収入は中絶ブローカー」という奇怪な会話をしている事がわかった
それから、それ以上深入りするなと言う警告の連絡が届くようになった
次は女性を機会に読み込ませてしまえば真相が明らかになり、委員会の期待も裏切らず、警察への懸念も断ち切れるのではと思い、正しく実行に移そうとする
しかし、女性は監視され、他者の介入が不可能な個室にて服毒自殺をした
次の警告として、開発者の妻が3週間目の嬰児を偽の病院で堕ろされた
トモキの煮え切らない態度、尾行されていること、全ての警告が内密に行われているものや、実行に移されていないものに対して発されたものであることから、開発者はトモキが真犯人だと推理する
本人に突き立てると、それは胎児ブローカーを、目眩しの嘘だと思い込んでいるからだと諭され、いざ水棲生物の開発所へ向かう
そこでは家畜の水棲化が行われており、トモキは常連らしい打ち解けようだった
帰宅してからもまだ開発者は疑い続け、妻を装置にかけて病院の場所を探り疑念の裏打ちをしようとする
そこで電話のベルが鳴った
今まで警告を電話にて行っていたのは、装置に読み込まれた自分自身だった
そこで、明日会議が行われるから出席しろと指示される
開発者は単調に書類を分析している同僚を横目に羨みながら、その会議室、及び自らが開発した装置の設置されている場所に向かう
扉を開くと、そこはトモキと、女性助手と、いつも手続きをしてくれている官庁の財界人と、水棲生物を案内してくれた所長だった
装置となった自分と、トモキが説明をする
水棲生物研究所は、装置を利用してこのイノベーションの行く末を知りたかった
しかし、それには開発者である主人公が邪魔だった
どのような未来においても主人公は保守的で、水棲生物開発の事実をまだ受け皿のない世に解き放ち騒ぎ立てようとした
局としては殺害するしか無かったが、開発者であることや、自体に関わっているトモキや和田(女性研究員)の慈悲によって、どうにか救済が図られた
その救済措置というのが、装置に開発者をかけて、未来を予測した上で防止しようとするものだった
しかしどうしても主人公は協力的にはならない
最後の手段として、種明かしをした上で本人に解決策を講じてもらおうというのが、この会議の議題だったのだ
そこでは同時に、水棲生物の行く末や、現在の研究所も映像として見せられる
最初は手網を握っていた人類も、徐々に狭まる陸地や、拡大する水生生物の人権や知性から逆転が生じ、動物園や博物館に展示されるようになる
その中で、「いりり」という水棲生物第1号の、涙腺が残るという欠陥が継承された個体の物語へと映る
1度地上の風に吹かれて不安と夢想に取り憑かれた青年は、クタクタになるまで岸辺へと泳ぎきり、地上に出た瞬間に疲労と重力で動けず息絶えた
事実を開示されたあとの主人公は、放心しながら、後ろからズックの擦れる音を響かせて歩み寄ってくる「暗殺者」の音を聞き幕は閉じる
運命論に縛られた人間に自由意志や生きる意味はなくなってしまうこと
未来という現実、事実を知らないからこそ人間は虚構の希望を持って生きられること
当時は今より物議をかもしていた中絶問題に対して「その本質は未来を奪うこと」と定義し、その上で装置により未来の確定した人間は"中絶"していいとすること
とうとう悩まされる哲学的な問や
安部公房の作品によく見られる周囲全員に親しみや安心がなく、自分だけが思想として取り残され、価値を物体に剥奪され、もはや対象化されてしまう無慈悲さ
そして申し分ない、SF具合
3つの点に置いて満足だった上に
短編のように入れられた、水棲生物の青年の地上へのロマンチックな夢想という今のところ安部公房作品には見られない要素も楽しめて、すごく満足だった -
Posted by ブクログ
短編10話。一つひとつの話が短いので読みやすい。
『箱男』『砂の女』『燃えつきた地図』など、安部公房の有名作品を思い起こさせるような内容もあり、非常に面白かった。
星新一のショートショートと少し雰囲気が似ている話もあるが、やはり安部公房はぶっ飛んでいる。
それでいて決してふざけているわけではなく、あくまでも真面目に描かれているからこそ、グイグイ引き込まれる。
『賭』は、奇妙な会社に巻き込まれていく展開がすごくワクワクして好き。
『無関係な死』は、無関係であることを証明しようとすればするほどドツボにハマっていくのだが、読んでいてなぜかすごく共感できる。
『人魚伝』は、アドレナリン分泌の有無が愛と恋の違いだという理論が素敵だと思った。
恋の話ではあるものの、ダークな展開で、この話もワクワクしながら一気に読んでしまった。