安部公房のレビュー一覧

  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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    順調に思えた故郷への逃避行は、はじめの一日を頂点に地獄へと急降下していく。
    銃撃、衝突、凍傷、飢え、裏切り、ありとあらゆる死の淵に立たされながらも、日本に帰れるという希望が何度もちらつく。が、その希望の光は見えたと思った次の瞬間には消え、暗闇を彷徨い歩いていると再び光り、またすぐに消える。消えるたびに絶望が殴る蹴るの暴行を加えてくる。幻の光であると、どこかで知っていながら、それでもすがりつくものがないよりましだと、裏に絶望が隠された希望という扉の取手を回す。

    久三の感情、情景描写、ひとつひとつの表現が、鈍い鐘の音のような重さをもって心臓に響いてくる。
    すべてが事実にしか思えないほど残酷なまで

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    2019年11月07日
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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    第二次世界大戦敗戦の噂を聞いて、診断書を満州から偽造し、逃げて?きたという公房の、半分くらいの体験記だそうです。
    敗戦と共に襲われる屈辱、苦悶、苦痛…そして無政府状態に対する怒りと疑問が、この作品には生きることを諦めないというテーマで描かれています。
    元々、公房のなかにある

    考えることを諦めなければ、必ず閃きがある

    というモットーのなか、主人公はひたすら考え抜いて窮地を渡っていくのですが、このモットーは個人的にも好きで、文学に嵌るきっかけにもなりました。
    高の指を切断するシーンは、流石、医学部卒なだけあり生々しいですが、生きることを優先させると…と、ひたすら生に貪欲な内容でした。
    人間は、

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    2019年11月03日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    安部公房で一番好き。この作者は、閉塞的な環境の人間模様を書かせたらピカイチですね。

    話変わるけど、ノーベル賞は安部公房に取ってほしかったなあ。あと数年生きていれば……。

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    2019年07月07日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    「選ぶ道がなければ、迷うこともない。私は嫌になるほど自由だった」

    安部公房にハマるきっかけになった「鞄」をまた数十年振り振りぐらいに読みたくなった。
    昔は選択できることが少なくて迷うこともなく進むことが出来たのに、大人になるにつれて選べることが増え、どんどん僕は不自由になってしまった。

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    2020年04月30日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    相変わらずの突飛な発想力で、生から死、死からその先へとくるくる変わる短編集です。
    テーマはヒューマニズム。
    機械にされた人、藁を食べる人、死んだ人間が生者を観察したり、公房独特の180度の発想の転換で楽しませて…というのもありますが、これからの教訓になる一冊です。
    鉛の卵で、予期しているのが怖いくらいに当たっているのが凄味があり、またじっくり読み直したいとも思いました。

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    2019年11月17日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    安部公房のSFじみた短編小説群。純文学然とした冒頭作品で油断したが、2本目からは本領発揮の幻想なのかミステリなのかという話が続く。

    帰宅し、アパートのドアを開けたら、見ず知らずの男の死体が転がっている。さてどうするか。警察に届けたら、自分が犯人にされてしまう。アパートの他の住人に押し付けるには、死体を運ばなくてはならぬ…(無関係な死)。

    いやいや、油断した。2本目「誘惑者」で気づくべきだったのだ。安部公房じゃないか。死体が有っても犯人など出てこないし、3階から階段を降りたら4階に着くのだ。比喩をこねくり回したり、理屈をまぜっかえしたりなど不要。これぞ安部公房という短編である。

    「使者」は

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    2019年02月08日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    追っているはずが追われてた、人を嵌めようとしていたはずが自分で自分を追い込んでた、飼っているはずが飼われていた……というような状況の話が多い短編集だった。
    相変わらず絶望的というか無慈悲な終わり方をする話ばかりだけどなんだか好き。

    ただ、『なわ』だけはどうしてもだめだった。
    犬好きの私はあの展開はちょっと読めなかったという個人的な問題なのであって、小説自体としては良いんだと思う…けど。

    『誘惑者』は比較的わかりやすい話で好き。
    『夢の兵士』の哀愁も。
    『無関係な死』は私もあぁなったら焦ると思うし深刻な問題なんだけど、主人公の行動はなんだかギャグにもできそうな感じにみえてきて面白かった。

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    2018年08月27日
  • 密会(新潮文庫)

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    ネタバレ

    布団になった母、膀胱の括約筋がイカれておしっこ垂れ流しの看護婦、勃起したまま意識不明の医者、そのぺニスを玩具にする看護婦。私は読み終わり三日間連続で最低な夢を見た。

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    2018年07月26日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    閉鎖された町、革命がテーマですが、読み進めるうちに小さな組織、例えばご近所付き合いとか学校とかに例えると理解しやすいかと思います。
    正気の革命なんてものは夢。
    だが、そこに魅せられてしまう者がいて、思いが強いと狂気になり、やがてそれは成功か不成功か、人為的なものもあるけど、この本では狂気、狂気、更に狂気。
    だけど、所々ギャグコミックのような描写に笑ってしまったりもする、いいエッセンスが加わりあまり苦がない作品だけど、個人的には結構難しかったので、また読み直したいと思います。

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    2018年03月18日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    「死んだ娘が歌った・・・・・」について

    一文あらすじ

     家が貧乏なために出稼ぎで上京した少女が、「自由意志」によって殺される話。


    メモ

     職場の上司から「自由にしてよい」と命じられ、出稼ぎ先を首になった少女は、欲しくもない自由を手に絶望して自殺する。
     近代以降の人間は、自由を万人が持つべき絶対不可侵の権利のごとく認識してきた。しかし、自由とは権利なのだろうか。自由とは、意図的な力が加わらない状態のことではなかったのだろうか。
     自由を権利として定義づけ、あたかも義務かのように個人に課すこと、これは暴力にほかならない。これこそ、かつて自由を求めて闘った人々の共通の敵であったはずだ。金

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    2017年12月22日
  • 密会(新潮文庫)

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    ぶっ飛んだカルト・ムービーのようでいて外れ過ぎないというか押さえているという稀有な作品。アングラっぽさが漂うもそこに逃げていない。この世界造形はさすが安部公房という感じ。小説表現の自由や可能性が感じさせる。巻末の平岡先生の解説もいい。

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    2017年12月18日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    安部公房は以前別のを読もうとして全く入り込めなかった過去があったので避けてたけど、今回これを読んでみたらすごく面白くてすらすら読めました。

    シュールで不思議な雰囲気で、社会や政治への風刺が多い短編集だったかなという印象です。
    とんでもなくシュールってわけでもなく入り込みやすい気がします。
    後味は全体的に良くはないですね。ハッピーエンドではない…。

    『デンドロカカリヤ』が一番好きで、『手』『闖入者』あたりも好きです。

    これを機に安部公房作品もっと読んでいきたいなぁ。

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    2017年11月15日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    安部公房との出会いは、高校2年生の時に使用していた現代文の教科書の中だった。
    本書にも収録されている「棒」という素っ気ないタイトルが冠せられた10ページ程度の作品で、非条理、無説明、急展開な内容に惹きつけられた。
    数年後に「砂の女」を読み、少し違う雰囲気だけど良いなと思い、「棒」を連想させるタイトルの「壁」の世界観は自分にははまらず、「箱男」にもそこまではまらなかった。

    しかし、短編集である本書は、良い意味で作者の混沌さが薄れており、良質なSFものとして楽しめる。
    それらはサイエンスフィクションでもあり、藤子不二雄に絵を付けてほしい 少し不思議な物語でもある。
    時代背景や設定も現代、近未来、

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    2016年12月07日
  • 密会(新潮文庫)

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    妻を救急車によって攫われた男がその行方を追うにつれ、組織としての病院と患者、そして医師に撹乱されていく話。「盗聴」という行為をもって、社会における性の統制と計画的な消費を断片的に描写しています。
    もっともらしい言葉を使って概要を述べるのは簡単なのですが、ではこの作品は何を示したかったのか?といった部分に踏み込むと途端に手がかりが無くなってしまう。結果的には「閉鎖的な異常社会と外界にはあまり差は無い。」とか、胡散臭い感想をぼんやりと持つが、それだけで済むほど焦点は少なくない。
    結局、一度二度読んだ程度では理解が難しい作品です。また、もしかすると点で読む作品では無く、安部公房の作品群として線で

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    2016年05月07日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    安部公房の一部ドタバタも含むSF中心の短編集。青年が突然、珍しい木「デンドロカカリヤ」に変化する。夜中に突然現れた見知らぬ家族によって家が乗っ取られるなど、わかりやすい恐怖から、世の中が知らぬ間に水の底になって、人間が人喰い魚に鳴ってしまうなど、常識の根本が覆されてしまうものまで、多彩な作品群。

    様々な表現が文学的で、理解するのに時間がかかることを除けば、筒井康隆や小松左京を読んできた人にとっては、非常に面白い本と感じるであろう。特に気になるのは、作中人物の思考だと思って読んでいると、急に第三者の視点のような表現が織り込まれるところ。

    こういう作品群から、現代文の問題を出されたら、絶対解け

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    2016年02月12日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    多分初めて読んだ安部公房だったと思う。
    ここで無頼派にハマった。
    若いうちに読んどいて良かった。

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    2016年01月09日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    圧倒的想像力というか空想力!
    安部公房の頭の中ってどんなことになってるんだろう。
    実存への不安感とシュールさでぐらぐらする、面白い!!

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    2015年03月10日
  • 密会(新潮文庫)

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    ここまでドギツイ性的描写ができるのはさすがです。

    ややグロテスクな表現もあるので中々人にはお勧めできませんが、
    安部公房作品が好きな方にはたまらない一作かと思います。

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    2015年02月15日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ◆パス「波と暮らして」→ディキンソン「早朝、犬を連れて」を読み、無性に「人魚伝」を読み返したくなり、再読。
    ◆1957年〜64年に発表された初期短篇10篇。小説でいうと「砂の女」〜「他人の顔」の頃か。
    ◆飛び込んできた不測の事態によって、現実だと思い込んでいた世界は揺すぶられ歪み崩れ落ちる。元の世界が虚構なのか、この事態が虚構なのか。現実を取り戻そうと足掻く主人公はどちらの世界からも滑り落ち、居場所を剥奪され世界の狭間に取り残される。◆読み終えた私に残されるのは、主のいない帽子・白々とした床・緑色過敏症だけ…
    ◆はぁ、やはりこの悪夢のような世界観に魅了される。◆ゾクゾクするのは初読時から変わら

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    2015年01月12日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    表題2作。
    ひどくシュールな漫画を読んでいる気持ちになる。
    水中都市にしても、デンドロカカリヤにしても
    「ある枠」をはめて物語を一層意味深くしている。この作者、物一つ眺めてからの創造力が桁外れだ。モノづくりにとってはネタの宝庫かもわかりませんね。

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    2014年12月17日