安部公房のレビュー一覧

  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    手掛りを辿れども辿れども、真実に近付きも遠のきもしない感じが、失踪人の周囲を同心円上にぐるぐる回っているだけのようで徒労感と無力感が延々と繰り返される。それでも次は何かがわかるかも知れない!という期待を込めてページを捲る手が止まらない。
    通常の推理小説ならラスト一気に真実の一点へ駆け込むが、そうは問屋が卸さないのが安部公房。不確実で掴みどころのない手掛りを次々に無くし、結果として唯一確実な存在だった自分自身すら見失う。地図は燃えつきた。お見事。

    草臥れたような「場末」の表現が抜群に上手くて笑える。大抵の場合古本から煙草の匂いがするとハズレ籤を引いた気になるが、安部公房だと逆に煙草の匂いがアジ

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    2021年10月09日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    箱男を数年前に読んだ以来の安部公房。
    この人の文章によって思い描く景色は、古いビデオテープに録画した古い映画のような、ざらざらした触感の音声と映像で再生される。
    そうして再生された景色も、埃と砂でざらざらしている。

    また、この与太話の説得力は何だろうか。
    「ショウチュウを飲みすぎると魚になる」とか、酔っ払いの戯言のようなのに、なんとなく「そういうもんかな」と思わせる。
    起承転結が夢のようにチグハグで、読み終わってすぐは「なんだこれは」と思うのに、なんとなく腑に落ち…いや落ちないわ。全然落ちない。その腑に落ちなさと不条理が良い。

    あまり深く考えない方が楽しく読めるのかもしれない。
    ざらざらし

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    2021年10月09日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    初めはいたって正常だったが、徐々にねじれていって、最後は何が正しいのかわからない。頭が混乱します。まさしく天才的でした。

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    2021年09月29日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    友達だけ読み終わった。めっちゃ怖い。よくわからない善意みたいなのをゴリゴリ押し付けてくる感じ。
    自分の近くにこういうのある気がする。世間体かな?

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    2021年09月20日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    ありえないのに、否応なく説得させられる感じ。

    ❇︎

    作品の中に凝縮されている、世の中…さすが安部公房だなと思います。

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    2021年07月12日
  • 密会(新潮文庫)

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    性描写のオンパレードの中に、グロテスクな描写あり。
    時代背景としては、売春を筆頭に性行為が軽視され始め、スポーツ化したというところからこういった内容になったようですが、登場人物がカオス過ぎて惹かれる。
    病院=社会、ということは混乱を意味しているよう。
    迷路のような想像できない病院内や地下道は、そのまま社会への混乱に加えて先が見えないことを表しているのかも。
    想像したらキリがないけど、ラストの安倍印も満足。

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    2020年11月08日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    顔を失くした男の自己回復と、
    他者との交流の窓を回復する目的であったはずの仮面が、
    いつしかただ別の素顔を得るだけになる。

    執拗に繰り返される自問自答と顔に纏わる考察が、
    必死になればなるほど迫害的で妄想的な意味合いを強め、
    ひどく歪んだ自己愛的な主観へと埋没していく様が怖いが、
    それは蛭の巣窟になったからなのか。
    それとも妻が指摘することが真実なのか。

    男とその妻という形式を借りた、
    これまた安部公房が描き続ける普遍的な人間の実存をめぐる物語に仕上がっている。

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    2020年10月31日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    小学校の高学年くらいに「棒になった男」や「他人の顔」が紹介されていたのを読んで興味を惹かれて手に取った一冊。
    ファンタジーやSFか、カフカのような不条理モノか、乾いていながら、新宿ゴールデン街的な雑さと人間の粘度ある文体からにじみ出る別世界、でもそれは非常に身近で、そんな世界の話に引き込まれた。

    ご本人も亡くなり、あまり話題にのぼるという事も無い気がする作家だが、新潮文庫に変わらずあるのが嬉しく、また懐かしく、最近読んだスタージョンあたりに刺激されて久々に手に取ってみた。

    又吉くんオススメの帯がついていたが、これをきっかけに読者が増える事を期待する。

    また、ラジオドラマ「R65の発明」は

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    2020年09月12日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    随筆でもあり小説でもある感じの話と、スナップショットが詰まっていた。
    他の作品に比べると読みやすい。

    私も夢(悪夢)をみることが多いほうだとおもうけど、安部公房がみる夢はやっぱりひと味違う。
    他の作品にも通じるところがあって、不条理で少し怖い。
    スナップショットも安部公房らしい味わいがあって良かった。

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    2020年08月18日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    「存在しないもの同士が、互いに相手を求めて探りあっている、滑稽な鬼ごっこ」

    正に現代。鬼ごっこの形が変わって誰でもどこでもやり易くなっただけで、やってることは昔とさほど変わらない。

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    2020年08月04日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    ハードボイルド小説だ。或いはノワール小説的でもある。

    ハードボイルドやノワールという物語の成立には都市という舞台は必要不可欠だ。

    田園風景の中で、誰もが誰もの家族たりうる社会でハードボイルドもないだろう。

    この物語も等しく、都市が舞台であって、さらに、拡大してゆく最中の都市とも言える。

    この舞台装置はまったくノワール的と言ったら研究者には笑われてしまうだろうか。

    都市において人や事物、そしてそれらに与えられた役割は完全に匿名的で交換可能な価値を持つ。

    だからこそ、都市の機能は平等公平で自由である。
    しかし、その内実は孤独で冷酷で不平等でもある。

    P.293『「ほら、あんなに沢山の

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    2020年06月10日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    アヴァンギャルド。

    もはや死語であったはずの前衛がこの2020年に再読して生き生きとしてしまう。

    「天は人の上に人を作らず」

    ある種の人たちは自らの事を選ばれた人間だと思ってはいないだろうか。

    実際には誰もが誰かを選んでいるだろうし、同時に誰も誰かを選んでなどいない。

    無知のヴェールという概念がある。生まれる以前に人間は平等だが生まれた直後に不平等となる。

    生まれた国、地域、親を選ぶことはできず、ヴェールを被された状態である。

    だからこそ、明るみに出た瞬間に、恵まれた存在は公共性を保持するために努めなければならない。

    無知のヴェールについて、日本人はあまりにも知らなすぎ、考えが

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    2020年05月22日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    良くも悪くも男性はこういう思考に陥りやすいのではなかろうか。しかし妻の気持ちもわからぬではない。一度刺さったハリネズミのトゲはそう簡単には抜けない。ならいっそもっと深く差し込んで見る必要があったのではないか?

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    2020年04月20日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    来訪者:自称火星人の男
    標的:ラジオ脚本家

    クルクル裏返る男の物言いに翻弄される脚本家。人間がその人間たる足元を巧妙に削られ「人間そっくり」にされてゆく様には、滑稽と戦慄を覚える。

    文豪がガチで飛び込み営業したら、何でも売っちゃいそうで怖い。

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    2020年03月28日
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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    順調に思えた故郷への逃避行は、はじめの一日を頂点に地獄へと急降下していく。
    銃撃、衝突、凍傷、飢え、裏切り、ありとあらゆる死の淵に立たされながらも、日本に帰れるという希望が何度もちらつく。が、その希望の光は見えたと思った次の瞬間には消え、暗闇を彷徨い歩いていると再び光り、またすぐに消える。消えるたびに絶望が殴る蹴るの暴行を加えてくる。幻の光であると、どこかで知っていながら、それでもすがりつくものがないよりましだと、裏に絶望が隠された希望という扉の取手を回す。

    久三の感情、情景描写、ひとつひとつの表現が、鈍い鐘の音のような重さをもって心臓に響いてくる。
    すべてが事実にしか思えないほど残酷なまで

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    2019年11月07日
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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    第二次世界大戦敗戦の噂を聞いて、診断書を満州から偽造し、逃げて?きたという公房の、半分くらいの体験記だそうです。
    敗戦と共に襲われる屈辱、苦悶、苦痛…そして無政府状態に対する怒りと疑問が、この作品には生きることを諦めないというテーマで描かれています。
    元々、公房のなかにある

    考えることを諦めなければ、必ず閃きがある

    というモットーのなか、主人公はひたすら考え抜いて窮地を渡っていくのですが、このモットーは個人的にも好きで、文学に嵌るきっかけにもなりました。
    高の指を切断するシーンは、流石、医学部卒なだけあり生々しいですが、生きることを優先させると…と、ひたすら生に貪欲な内容でした。
    人間は、

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    2019年11月03日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    安部公房で一番好き。この作者は、閉塞的な環境の人間模様を書かせたらピカイチですね。

    話変わるけど、ノーベル賞は安部公房に取ってほしかったなあ。あと数年生きていれば……。

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    2019年07月07日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    「選ぶ道がなければ、迷うこともない。私は嫌になるほど自由だった」

    安部公房にハマるきっかけになった「鞄」をまた数十年振り振りぐらいに読みたくなった。
    昔は選択できることが少なくて迷うこともなく進むことが出来たのに、大人になるにつれて選べることが増え、どんどん僕は不自由になってしまった。

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    2020年04月30日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    相変わらずの突飛な発想力で、生から死、死からその先へとくるくる変わる短編集です。
    テーマはヒューマニズム。
    機械にされた人、藁を食べる人、死んだ人間が生者を観察したり、公房独特の180度の発想の転換で楽しませて…というのもありますが、これからの教訓になる一冊です。
    鉛の卵で、予期しているのが怖いくらいに当たっているのが凄味があり、またじっくり読み直したいとも思いました。

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    2019年11月17日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    安部公房のSFじみた短編小説群。純文学然とした冒頭作品で油断したが、2本目からは本領発揮の幻想なのかミステリなのかという話が続く。

    帰宅し、アパートのドアを開けたら、見ず知らずの男の死体が転がっている。さてどうするか。警察に届けたら、自分が犯人にされてしまう。アパートの他の住人に押し付けるには、死体を運ばなくてはならぬ…(無関係な死)。

    いやいや、油断した。2本目「誘惑者」で気づくべきだったのだ。安部公房じゃないか。死体が有っても犯人など出てこないし、3階から階段を降りたら4階に着くのだ。比喩をこねくり回したり、理屈をまぜっかえしたりなど不要。これぞ安部公房という短編である。

    「使者」は

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    2019年02月08日