安部公房のレビュー一覧

  • 第四間氷期(新潮文庫)
    生物学や科学やなんだかんだの専門的知識は持ち合わせてないけれど、それでも書かれている内容は理解できるしスリルと隣り合わせのストーリーには引き込まれる一方。

    唯一理解できないのは、これが約60年も前に書かれた小説だという一点のみ。代表作しか読んだことなかったけれど、安部公房って凄すぎじゃない?
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    「死んだ娘が歌った・・・・・」について

    一文あらすじ

     家が貧乏なために出稼ぎで上京した少女が、「自由意志」によって殺される話。


    メモ

     職場の上司から「自由にしてよい」と命じられ、出稼ぎ先を首になった少女は、欲しくもない自由を手に絶望して自殺する。
     近代以降の人間は、自由を万人が持つべ...続きを読む
  • 密会(新潮文庫)
    ぶっ飛んだカルト・ムービーのようでいて外れ過ぎないというか押さえているという稀有な作品。アングラっぽさが漂うもそこに逃げていない。この世界造形はさすが安部公房という感じ。小説表現の自由や可能性が感じさせる。巻末の平岡先生の解説もいい。
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    安部公房は以前別のを読もうとして全く入り込めなかった過去があったので避けてたけど、今回これを読んでみたらすごく面白くてすらすら読めました。

    シュールで不思議な雰囲気で、社会や政治への風刺が多い短編集だったかなという印象です。
    とんでもなくシュールってわけでもなく入り込みやすい気がします。
    後味は全...続きを読む
  • 第四間氷期(新潮文庫)
    昔むかしに読んだのに、今なお印象が強い本。
    これをきっかけに安部公房を読みたいと思った。
    SF感、物語の構成、非常に面白く、引き込まれる。
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    安部公房との出会いは、高校2年生の時に使用していた現代文の教科書の中だった。
    本書にも収録されている「棒」という素っ気ないタイトルが冠せられた10ページ程度の作品で、非条理、無説明、急展開な内容に惹きつけられた。
    数年後に「砂の女」を読み、少し違う雰囲気だけど良いなと思い、「棒」を連想させるタイトル...続きを読む
  • 他人の顔(新潮文庫)
    安部公房の思考実験小説の金字塔でもあり、ノート等記録型の長編小説の代表でもある作品。

    安部公房の思考実験というと、日本では「箱男」の評価がやたら高いが(安部公房には海外にも小説のニーズが有る)、あれで挫折した人は、こちらを読んでみると良い。

    もしも自分が他人の顔になれる仮面を手に入れたら、一体ど...続きを読む
  • 笑う月(新潮文庫)
    意外と読んでいなかった本作。

    無意識から生まれ来るものについて、
    安部公房が語るように、
    精神分析的な解釈を考えるよりも、
    その無意識に動かされ、遊び、昇華することを生業としている、
    芸術家達が言葉にするのが、
    とてもおもしろいと感じる。


    公然の秘密

    が、強く残った。
  • 笑う月(新潮文庫)
    安部公房がいかにして物語を編むのか、創作の舞台裏をみるような一冊。

    彼の紡ぐ世界は、書こうと思って書けるようなものでない。
    ピカソの絵をみて、自分でも描けるのではないかと言う人がままいる。しかし、実際描こうとすると、途端に筆が止まるのではないか。描いてはみたものの、「なにか」が違う。彼の絵はデタラ...続きを読む
  • 密会(新潮文庫)
    妻を救急車によって攫われた男がその行方を追うにつれ、組織としての病院と患者、そして医師に撹乱されていく話。「盗聴」という行為をもって、社会における性の統制と計画的な消費を断片的に描写しています。
    もっともらしい言葉を使って概要を述べるのは簡単なのですが、ではこの作品は何を示したかったのか?といった...続きを読む
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    ラストの場面で、箱の中の自分の後ろ姿を見つめるシーンがとても印象的だった。恐らく主人公の後ろからも、もう一人の主人公が後ろ姿を見つめるような鏡合わせの構造になっていて、だからこそ主人公は「恐かった」のだろう。でも、もしそこで振り向けば、目の前にいた自分の後ろ姿からも目線がそれるのだから、背後の自分も...続きを読む
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    安部公房の一部ドタバタも含むSF中心の短編集。青年が突然、珍しい木「デンドロカカリヤ」に変化する。夜中に突然現れた見知らぬ家族によって家が乗っ取られるなど、わかりやすい恐怖から、世の中が知らぬ間に水の底になって、人間が人喰い魚に鳴ってしまうなど、常識の根本が覆されてしまうものまで、多彩な作品群。

    ...続きを読む
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    多分初めて読んだ安部公房だったと思う。
    ここで無頼派にハマった。
    若いうちに読んどいて良かった。
  • 第四間氷期(新潮文庫)
    予言機械によって地球が水没するという未来が予言され、一部の研究者によって、人類の未来を託すために水棲人類の開発が進められていた。
    予言機械の開発者はその未来を受け入れられず、予言機械の開発に消極的となるという未来が予言され、受け入れないということを知った未来の開発者自身と周囲の研究者によって、殺害さ...続きを読む
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    圧倒的想像力というか空想力!
    安部公房の頭の中ってどんなことになってるんだろう。
    実存への不安感とシュールさでぐらぐらする、面白い!!
  • 密会(新潮文庫)
    ここまでドギツイ性的描写ができるのはさすがです。

    ややグロテスクな表現もあるので中々人にはお勧めできませんが、
    安部公房作品が好きな方にはたまらない一作かと思います。
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    ◆パス「波と暮らして」→ディキンソン「早朝、犬を連れて」を読み、無性に「人魚伝」を読み返したくなり、再読。
    ◆1957年〜64年に発表された初期短篇10篇。小説でいうと「砂の女」〜「他人の顔」の頃か。
    ◆飛び込んできた不測の事態によって、現実だと思い込んでいた世界は揺すぶられ歪み崩れ落ちる。元の世界...続きを読む
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    表題2作。
    ひどくシュールな漫画を読んでいる気持ちになる。
    水中都市にしても、デンドロカカリヤにしても
    「ある枠」をはめて物語を一層意味深くしている。この作者、物一つ眺めてからの創造力が桁外れだ。モノづくりにとってはネタの宝庫かもわかりませんね。
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    「失踪した主人を探して欲しい」
    この時点で、安部公房を何冊か読んできた人なら、見つかることはないことは想像に難くないだろう。したがって、見つからないのである。
    いなくなった人を探して見つからないというテーマは「密会」と似ており、安部公房作品らしくどの登場人物ものらりくらりと本質を語らない。主人公もフ...続きを読む
  • 笑う月(新潮文庫)
    今読んでる文章が誰の視点で何として語られているのか、読んでるうちに分からなくなる。今いるここが夢なのか現実なのか分からなくなってくるように。その揺らぎに病みつきになる