安部公房のレビュー一覧
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ネタバレ非常にショッキングな作品だ。予言機械が映し出す過酷なまでの未来、その未来を前提として、海底開発協会のメンバーは行動する。「現在」では罰せられるべき犯罪を犯してまで。しかし、勝見がそれらを糾弾すると、彼らは未来の論理を使ってそれらの行為を正当化していき、次第に勝見の方が言葉を失っていく。自分の子供を、水棲人という「片輪の奴隷」にされたにもかかわらず。この作品は、私のよく見る悪夢を想起させる。内容は忘れるのだが、冷や汗がたらたら出てくる悪夢だ。目の前で起こっていることに対して、何か叫ぼうとしても、声が出ない、届かない。出来事を眺めるしかできない無力の状態になってしまう。勝見も頼木達の論理に完璧に
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いやー、安部公房の作品の中でよもやこんなに理解できないとは。自分の感性が死んだのかと不安になる。
ただ巻末の解説をよみ、「うわー!さすが安部先生!」となった。この小説は、分かりやすくてはいかん、順序立ててはだめなのだ。
まず時系列が掴みにくい。「今」か回想かの境が判別しにくく、全部読んでも半分位しか順序立てて整理できない。
そして地理関係の分かりにくさ。「旧病院跡」?「崖っぷちを切り抜いた商店街」?「中庭に面した6つに分かれた小部屋」?一文ずつ頭の中に地理を浮かべようとするが、すぐに矛盾が生じて追えなくなる。
このわからなさこそがこの作品の肝。論理立てて整理できないその混乱こそ、 -
Posted by ブクログ
大学4年生だったかな。まぁ、十何年も前のこと。ちょっとお手伝いしてたバイトのマスターが、好きな本なのだと、いくつか本を下さって、そこに安部公房の砂の女があった。それまでは、高校の教科書で赤い繭が載ってて、奇妙で怖い感じの話を書く人くらいの印象だったのだけど、
そこからどハマりして、いくつか呼んだ記憶がある。
でもこの初期の短編は、読んだことがなかった。
久しぶりなのもあるし、初期なのもあると思うけど、初めはちょっと入り込みにくかった。
後ろの方の、耳の値段や、鏡と呼子、鉄の卵辺りで、あぁこれこれ、そうだ、この感じ、となった。
少し長いお話の方が、私には合ってたのかも。特に鉄の卵が良かった -
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象徴と理不尽と真実が詰め込まれた恐ろしい小説だと感じた。
カフカの「変身」に似たものを感じるが、それよりもう少し人間の弱さ(ある意味強さ?鈍さ?)に踏み込んでいる気がする。
多くの国で翻訳され評価されたことに納得する。
このような状況は、形を変え、私たちの周りに大小多く存在している。
そして、そんな不毛な場所にすら、時間と共に根をおろしてしまう。
普遍的な人間の真実を描いているから、時が経っても色あせない作品なのだと思う。
2003.7.2
男の変化が面白い。女に情を抱くようになり、最後にはそこの生活から抜け出せなくなっている。「希望」という名の溜水装置は、生活の定着の象徴のように見える -
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まさか未来予言機の開発話がこんな展開をするとは…目が離せず、一気に読んでしまった。
古典文学を読んでいると、当時の感覚では当たり前でも今の感覚では「倫理的にどうなんだ」と思う現象が多々ある。きっと未来人から見た我々にもそういう点がいろいろあるだろう。
人間の価値観は絶えず変動しているが、絶対的に現在が最善というのは間違っているのではないか?
それでも良かれ悪かれ、私たち「現代人」は現代の価値観の中で現代を生きるしか道はないのだが。
最後に安部公房は、現代人に未来の価値観を評価する資格はないと言った。
現代人の偏見で未来を観測して、頓珍漢だと絶望するくらいなら、未来予測なんてない方が良いのかも -
Posted by ブクログ
安部公房が書く「都会という無限の迷路」、それはタクシーであり公衆電話であり地図であり電話番号……、そのような「都会」は今はもうないのかもしれない。
初めは物語世界に入り込むのに苦労した。
半分を超えたあたりで、小説のテーマが何となくわかった。
入り込めなかったのは、現代が安部公房の時代とは前提が変わってしまったからかもしれない。
冒頭、「だから君は、道を見失っても、迷うことは出来ないのだ」とある。
安部公房の時代からさらに時が経ち、現代はもはや、手掛かりとしての地図すら消えてしまった状況ではないか。
道が自分と同化し、道を見失うこともできなくなった……。