安部公房のレビュー一覧

  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    シュールの極みだった。世界観を楽しむ作品という気がする。あれこれ考えても全く訳がわからないけど、テンポがよくてリズム感もあって読みにくくはなかった。笑い転げるほど面白い場面もあるし、語り口調のおもしろいところもなんかかわいらしいところもあった。景色は暗いのだけども、どんよりとした気持ちになる作品ではなかった。

    安部公房は初めて読んだけれど、癖になりそう。

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    2024年03月19日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    安部公房の夫人の編集者的改変を元に戻した編集になっているそう。フロッピーディスクの遺稿だそうな。不眠症、夢、性転換など、興味深いテーマが次々と立ち現れ混淆する、不思議な作品だ。だが、正直内容は、よくわからない。すでに全集で読んで、何回か読んでいるが、なんの話なのかと訊かれるとさっぱりである。晩年の暴走って感じ?だろうか……

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    2024年03月13日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    本書との出会いは書店の新刊書コーナーで。安部公房の新刊書?お亡くなりになってから大分経つのに。新しい作品が発掘されたのか?裏の帯を見たら今年は安部公房生誕100年とのこと。新潮文庫では新刊を2か月連続で刊行するとの気合の入れ方。これまで単行本で文庫化できていなかった2冊だ。芸術新潮でも特集記事が組まれていた。もう、新潮社の鼻息が荒い。新潮社は既に、1972~1973年に全15巻、1997~2009年に全30巻と2回全集を刊行しているが、さすがにもう全集は出ないだろう。それよりも、生誕100年ということで、古本の全集の値段が急に吊り上がりはしないかと恐れている。でも、来年には読破を挫折した人が大

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    2024年03月06日
  • 密会(新潮文庫)

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    愛と快楽にまみれた出口のない現代人の地獄…
    虚無感、喪失感、絶望…なんとも言い難い感情を味わった。
    馬人間、女秘書、溶骨症の少女、奇怪な人物を通して描かれる。
    やはり安部公房先生の作品は衝撃的です。

    ⚫︎良き医者は良き患者

    ⚫︎動物の歴史が進化の歴史ならば、
    人間の歴史は逆進化の歴史

    ⚫︎明日の新聞に先を越され、ぼくは明日という過去の中で、何度も確実に死に続ける。やさしい一人だけの密会を抱きしめて…

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    2024年01月06日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    本での中で過ぎている時間よりも、読んでいる時間のほうが長くて不思議な感覚になった。そのせいなのかは分からないが徐々に洗脳のようにいわゆるトポロジー症候群にかかっていく様がリアルすぎた。自分もなってるような気持ちになった。本の中でリアルと寓話が混じっていく過程で、本の中と現実の中も混ざっていく気がしたから感情移入出来るのかもしれない。すごく面白かった。

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    2024年05月03日
  • 壁(新潮文庫)

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    第一部「S・カマル氏の犯罪」と第二部「バベルの塔の狸」を読んだとき、まるでピカソの絵のようだと思った。どこまでもどこまでも突き進む想像力が紡ぐ奇々怪々な世界。その「なんじゃこりゃ」と叫びたくなるような世界は、ピカソの絵がそうであったように、演繹という論理的な思考の展開によって極めて理性的に導出されているものだ。ただ、論理の出発点となる公理が、我々の常識の及ばぬ破天荒なものであるから、演繹の帰結としてとんでもないものが導き出される。あるいは出口のない堂々巡りを続ける。特に両作品の登場人物たち(「S・カマル氏の犯罪」で言えば裁判官を務める経済学者や数学者、「バベルの塔の狸」なら狸など)の会話は、本

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    2023年12月11日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    最高。
    通常の世界からだんだん夢の中を歩いている気分になる。自分は誰なのか、むしろ自分が追い求めていた人物かもしれないし自分はその弟かもしれない。ファイトクラブのような気もしつつ、ただ人を探す行為に疲れた精神錯乱かもしれない。それを風刺として利用したのかそれとも夢の世界に引き摺り込みたいのか。安部公房だった。

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    2023年11月02日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    初めての阿部公房。読んではいないが映画やその他の情報からの「砂の女」の暗くて重いイメージで読む気になれなかった。しかしそのイメージ撤回。複雑で深く、喜劇的でもあっておもしろかった。世界が滅びても自分は生き延びるってどういうことだろう。

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    2023年10月06日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    ネタバレ

     非常にショッキングな作品だ。予言機械が映し出す過酷なまでの未来、その未来を前提として、海底開発協会のメンバーは行動する。「現在」では罰せられるべき犯罪を犯してまで。しかし、勝見がそれらを糾弾すると、彼らは未来の論理を使ってそれらの行為を正当化していき、次第に勝見の方が言葉を失っていく。自分の子供を、水棲人という「片輪の奴隷」にされたにもかかわらず。この作品は、私のよく見る悪夢を想起させる。内容は忘れるのだが、冷や汗がたらたら出てくる悪夢だ。目の前で起こっていることに対して、何か叫ぼうとしても、声が出ない、届かない。出来事を眺めるしかできない無力の状態になってしまう。勝見も頼木達の論理に完璧に

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    2023年09月24日
  • 密会(新潮文庫)

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     いやー、安部公房の作品の中でよもやこんなに理解できないとは。自分の感性が死んだのかと不安になる。
     ただ巻末の解説をよみ、「うわー!さすが安部先生!」となった。この小説は、分かりやすくてはいかん、順序立ててはだめなのだ。

     まず時系列が掴みにくい。「今」か回想かの境が判別しにくく、全部読んでも半分位しか順序立てて整理できない。
     そして地理関係の分かりにくさ。「旧病院跡」?「崖っぷちを切り抜いた商店街」?「中庭に面した6つに分かれた小部屋」?一文ずつ頭の中に地理を浮かべようとするが、すぐに矛盾が生じて追えなくなる。

     このわからなさこそがこの作品の肝。論理立てて整理できないその混乱こそ、

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    2024年01月13日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    現代(令和)におけるVtuberとかにも応用できる、予見してるなぁとか思った。

    自分の行動の動機や選びとる選択、何に起因し何に向けてるのか、日々の自分を内省せざるをえなかった。

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    2023年05月09日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    大学4年生だったかな。まぁ、十何年も前のこと。ちょっとお手伝いしてたバイトのマスターが、好きな本なのだと、いくつか本を下さって、そこに安部公房の砂の女があった。それまでは、高校の教科書で赤い繭が載ってて、奇妙で怖い感じの話を書く人くらいの印象だったのだけど、

    そこからどハマりして、いくつか呼んだ記憶がある。
    でもこの初期の短編は、読んだことがなかった。

    久しぶりなのもあるし、初期なのもあると思うけど、初めはちょっと入り込みにくかった。

    後ろの方の、耳の値段や、鏡と呼子、鉄の卵辺りで、あぁこれこれ、そうだ、この感じ、となった。
    少し長いお話の方が、私には合ってたのかも。特に鉄の卵が良かった

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    2023年04月16日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    全部おもしろい。
    “まったく、現実ほど、非現実的なものはない。この町自体が、まさに一つの巨大な病棟だ。”

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    2023年03月30日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    それにしても、どんなにか恐ろしい、孤独の日々だったことだろう。
    ぼくは灰汁のような憐れみにひたされ、燻製のようになりながら、
    やっとの思いで彼女を振り向いて見た。

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    2023年03月22日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    まさか未来予言機の開発話がこんな展開をするとは…目が離せず、一気に読んでしまった。
    古典文学を読んでいると、当時の感覚では当たり前でも今の感覚では「倫理的にどうなんだ」と思う現象が多々ある。きっと未来人から見た我々にもそういう点がいろいろあるだろう。
    人間の価値観は絶えず変動しているが、絶対的に現在が最善というのは間違っているのではないか?
    それでも良かれ悪かれ、私たち「現代人」は現代の価値観の中で現代を生きるしか道はないのだが。

    最後に安部公房は、現代人に未来の価値観を評価する資格はないと言った。
    現代人の偏見で未来を観測して、頓珍漢だと絶望するくらいなら、未来予測なんてない方が良いのかも

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    2023年08月07日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    安部公房が書く「都会という無限の迷路」、それはタクシーであり公衆電話であり地図であり電話番号……、そのような「都会」は今はもうないのかもしれない。

    初めは物語世界に入り込むのに苦労した。
    半分を超えたあたりで、小説のテーマが何となくわかった。
    入り込めなかったのは、現代が安部公房の時代とは前提が変わってしまったからかもしれない。

    冒頭、「だから君は、道を見失っても、迷うことは出来ないのだ」とある。
    安部公房の時代からさらに時が経ち、現代はもはや、手掛かりとしての地図すら消えてしまった状況ではないか。
    道が自分と同化し、道を見失うこともできなくなった……。

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    2023年02月10日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    個人的には名作。
    『密室』は苦手だったが、こちらは後期安部公房の寓話性とダンジョンの面白さが噛み合って先がとにかく気になった。
    ラストの静寂と、もの寂しさは次作『カンガルーノート』に引き継がれる新鮮さでとても良かった。

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    2023年01月03日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    安部公房の作品という感じでとても良かった。この世界に身を浸すことが楽しい。意味や風刺はもちろん私には読み取りきれない。でもそれでもいい、そのまま作品を楽しめばいいと解説に書いてあって楽な気持ちになった。純粋に安部公房の描く世界の美しさと不可思議さと、その文体の見事さに浸って良いのだと思った。

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    2022年11月25日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    希望でも絶望でもない未来。
    安部公房は一貫してしっかりとした論拠をもって現代社会への警鐘や逃避をテーマにしてきましたが、SF作品への挑戦は自然な流れのように思えます。
    他の作品同様に、鋭い視点と論理的な指摘、そしてたっぷりのユーモア。紛れもない安部文学であり、大いに楽しませて頂きました。

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    2022年11月05日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    「人間そっくり」は1966年に『S-Fマガジン』に連載された作品です。

    ある日、
    自分は火星人だという男が訪ねてくる。

    自分は火星人だという男。
    彼は、ある小説の原稿を手にしている。
    タイトルは「人間そっくり」
    今回の出来事を、事前に小説に仕上げてきたという。

    そこから、延々150ページにわたり
    何が本当で、何が嘘かがわからない押し問答が続く・・・。
    まるで星新一のショートショートのような展開です。
    ただ・・・長い・・・(;^_^A

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    2022年10月30日