安部公房のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
学生時代に読んだ本を再読。
父に薦められて読み、SF好きになり、読書習慣が付くことになった思い出深い本である。
予言機械、水棲生物の存在は常識から大きく外れている。
その異常さ、不気味さに起因しているのだろうか、読み進めるにつれて主人公の世界自体が現実から剥離していく様な感覚に陥る。
未来の残酷さを受け入れるか否かが、この本の主題となっているが、楽観主義の私は本編の未来はまだ良いように感じた。
現実では、今まさに起きている戦争ですぐ近くの国が核を撃つかもしれない。
それを起点とし、人類が滅ぶ事もあり得る。
そんな未来が無いと言い切れるだろうか。 -
Posted by ブクログ
けものたちは故郷をめざす
著:安部 公房
新潮文庫 あ-4-3
ヤマザキマリの「国境のない生き方」にお薦めがあったので、一読させていただきました
逃げ遅れた日本人久木久三と、日系中国人高との、満州からの逃避行
八路軍を巻くように、都市を避ける南下路
眠ることすら難しい凍土の旅程
野犬、狼がうろうろとする、身を隠すことができない原野
氷はあるが、水を飲むことがなかなか許されない
ピストルをもち、なかば脅されながら進む
疲労困憊でわずかな坂を上ることすら時間がかかってしまう
敵とも味方とも分からない連れにも神経を研ぎ澄ませ、久三の生への挑戦が続く
凍傷でボロボロとなる皮膚、パンをもうけつけなくなった胃や、どす黒い血、極限の状態でたよるものは自分ただひとりである
目次
第1章 錆びた鉄路
第2章 旗
第3章 罠
第4章 扉
ISBN:9784101121031
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:320ページ
定価:670円(本体)
1970年05月25日発行
2018年02月15日23刷改版
2024年02月20日27刷 -
Posted by ブクログ
本屋をぶらっと見ていたら何と新刊に安部公房が!!!一番好きな作家と言っていいくらいに好きなのでとても感激!
未完ながら、この精緻で堅牢な構造物のようにかっちりとした文章は正に安部公房。飛ぶ男というのも安部公房らしい。最初未完と知らずに読み始めたので、途中から文字が欠けていたので印刷ミス?と一瞬思ったがそうではなかったみたい。あの微妙な空白は何の空白なんだろうか?
とはいえしっかり安部公房の世界を感じれてよかった。「さまざまな父」も同じモチーフのようなのでこれらがひとつの作品として纏まればかなり面白い作品になるだろうな、と空想するのもまた楽しい。
安部公房、また全部読み直そうかな、と思って家にある新潮文庫をみたら字が小さくてちょっと辛い…(まだカバーの背中も今の銀じゃなくて青いやつ)落ち着いて読めるように書い直そうかな…
安部公房を全部読んだ人は是非!そうでない方はまずは他の完成作品から読むことをお勧めします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ非常にショッキングな作品だ。予言機械が映し出す過酷なまでの未来、その未来を前提として、海底開発協会のメンバーは行動する。「現在」では罰せられるべき犯罪を犯してまで。しかし、勝見がそれらを糾弾すると、彼らは未来の論理を使ってそれらの行為を正当化していき、次第に勝見の方が言葉を失っていく。自分の子供を、水棲人という「片輪の奴隷」にされたにもかかわらず。この作品は、私のよく見る悪夢を想起させる。内容は忘れるのだが、冷や汗がたらたら出てくる悪夢だ。目の前で起こっていることに対して、何か叫ぼうとしても、声が出ない、届かない。出来事を眺めるしかできない無力の状態になってしまう。勝見も頼木達の論理に完璧に打ちのめされて、言葉が出ない。妻の胎児を中絶させられ、自分自身もこれから殺されるというのに、叫ぼうにも、それが声となって空気を震えさせることができないのだ。
私は、未来にどうしても耐えられない。そこで、まず勝見と同じく、「予言機械」の正当性を考えてしまう。誤差のない予測(シミュレーション)なんて、ナンセンスだし、予言を知った場合の行動をn次予言値としてカバーしているかのように見えるが、2次予言にしたって、誰が・いつ・どこで・どのような状況で、1次予言を知ったかによって変わるべきで、それを刻々と計算していると、時間が足りないはずだ。しかも、作品中に出てくる二次予言値も相当妙な存在である。単なる予言で人格などない、と言いつつ、勝見を殺す段になって「私だってつらい」と感情を滲ませるのだ。また、勝見がいくら予言を鵜呑みにしては危険だと叫んでも、海底開発協会のメンバーは取り合おうとしない。その正しさは絶対的で、それからの論理だと、勝見は未来に対応できない人間として裁かれる運命にあるらしい。しかし、そのような未来を受け入れられないのは私も同じで、だからこそ「予言」の正当性を疑わざるを得ない。予言機械が語る未来の過酷さを思うと、なおさらに。
しかし、「予言」を「預言」と読み替えると分かるような気がする。ちょうど、ノアが神から洪水の預言を聞いたように。勝見もまた、自ら作った予言機械から預言を授かったのだ。しかし、傲慢で残酷なノア(少なくとも安部にとっては)と違い、断絶に耐えられない勝見はその預言を信じることができなかった。故に、未来の論理によって裁かれ、代わりに弟子達・海底開発協会がノアにならざるを得なかったのだろう。海の主人となるべき水棲人類の父親となる、ノアに。勝見が責めを受けるとすれば、未来予測という神の領域に足を踏み入れたにもかかわらず、神の言葉を信じられなかったという一点に尽きる。しかしながら、そのことこそが、予言がタブーであることを暗示していると思う。
さらに、物語の後半で、予言機械によって未来が映し出されていく。ただし、それが「実際」に起こることなのかどうかは、一切語られることはない。ただ映されるのみだが、その未来像はとてもリアルに迫ってくる。洪水、水棲人社会の到来、水棲人社会の日常、「風の音楽」にあこがれる水棲人、などの物語。それらに対して、私たちはもはや判断することはできない。ただ眺めるしかないのだ。でも、本当にこの「ブループリント」は正しいのだろうか?
いや、もう予言だの水棲人社会だの言うのはよそう。たとえ、近い将来、水棲人を眺める望遠鏡のように水没していく運命にあっても、我々は「現在」を生きるしかないのだから。 -
Posted by ブクログ
いやー、安部公房の作品の中でよもやこんなに理解できないとは。自分の感性が死んだのかと不安になる。
ただ巻末の解説をよみ、「うわー!さすが安部先生!」となった。この小説は、分かりやすくてはいかん、順序立ててはだめなのだ。
まず時系列が掴みにくい。「今」か回想かの境が判別しにくく、全部読んでも半分位しか順序立てて整理できない。
そして地理関係の分かりにくさ。「旧病院跡」?「崖っぷちを切り抜いた商店街」?「中庭に面した6つに分かれた小部屋」?一文ずつ頭の中に地理を浮かべようとするが、すぐに矛盾が生じて追えなくなる。
このわからなさこそがこの作品の肝。論理立てて整理できないその混乱こそ、主人公が囚われている世界。
私は安部公房の描く「ナルシスト的孤独」が好きだ。ただこの作品は少し毛色が違うように思う。
いつもの主人公は、他者とのコミュニティから疎外されている。外界との繋がりに不具合が生じ、それを拗らせて精神世界に没入する。
だがこの作品の主人公は、むしろ周りからはどんどん関わりを持たれ、コミュニティに取り込まれようとしている。そしてとてもノーマルな人間だ。だけど最終的には孤独になっている。
「坩堝」、私はなんとなくそんな印象を受けた。何度も読み返す作品だ。