安部公房のレビュー一覧

  • 密会(新潮文庫)
    ●あらすじ
    ある夏の未明、突然やって来た救急車が妻を連れ去った。男は妻を捜して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一盗聴マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、出自が試験管の秘書、溶骨症の少女、〈仮面女〉など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある。

    前半は手記形式で共感できることも多く読みやすかったが、後半は視点がころころ切り替わり結構読むのが大変だった。匿名SNSのもっと先にはこういうものが待ち受けているのかも。
  • 箱男(新潮文庫)
    前半は設定の面白さと不気味さですらすらいけた。中盤、見ると見られるの関係が明かされていき、深いものを読んでいる感じ。終盤は何だか置いて行かれた感じ。
    同じテーマが一貫していたとは思うけど、視点や場面が次々に変わるのでオムニバスを読んでいるよう。
    外の世界を、見られずに見るということに執着する時代の話...続きを読む
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    ●あらすじ
    自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく「無関係な死」など、10編を収録。
    (新潮社ホームページより引用)


    初めての安部公房。10篇の短編が収録されている。
    文豪のつもりで読んだらかなりエンタメ寄りでびっくりしました。いつもオチでびっ...続きを読む
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    「R62号の発明」「鉛の卵」「変形の記録」は特に、心に残る素晴らしいSF。思慮と冒険に満ちた作品の数々。
  • 第四間氷期(新潮文庫)

    好きな長篇。
    サスペンス色が強く緊迫した雰囲気が、主人公と同調していく様で面白い。
    作者の先見の明という点で有名な本作だが、やはりこの時代でこの作品を生み出した安部公房は怪物という他ない。当時描かれていた未来を、現代から答え合わせ様々な考証が出来る有意義な一冊。
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    安部公房全集29に所収のものを読んだ。読んだ、というか、訳が分からなくて飛ばし読み。
    訳が分からない、は褒め言葉で、ものすごいぶっ飛んでいてついていけなかったということ。
    なんだこれは。
    会社の新製品開発提案箱に冗談のつもりで「カンガルーノート」という落書きメモを提出して採用されてしまった男の脛にか...続きを読む
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    最初の出だしはかいわれ大根?!となりましたが、すぐこれは死の物語なのか…と話の中身は分かり易く、時々ふっと笑ってしまうタイミングが合って、読みやすかった。澁澤龍彦の『高岡親王航海記』、安部公房版ですね。

    安部公房の半生全然知りませんが、これが自身の闘病生活を綴っているのだとすると(そのようにしか見...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
     序盤は箱男の手記という形で結構面白くてサクサク読める。 

     最初から意味はわからない物語だけど、後半になるにつれ人物も入れ替わったり、誰かの話が挿入されたりして、読むのが辛くなってくる。

     段ボールを被って生活することで人々から「見られる」ことを捨て、
    人々を「見る」ことだけを選んだ人間の話。...続きを読む
  • 壁(新潮文庫)
    簡潔に面白いと評していいのか躊躇われる作品。それは『壁』における主題を私が完璧に捉えられきれていないという不安からくるものだと思う。

    しかし、捉えきれなくても、充分楽しめた。おそらく、ところどころに散りばめられた皮肉とコミカルさ(明るさ)がそういう楽しみをつくっているのだと思う。

    第三部を除いて...続きを読む
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    幻想的というか不条理というか、とにかく訳のわからない10編。でも読み終えてしまった。
    夢の兵士:脱走者の正体にニヤリとした。
    誘惑者:駅での出来事。追う者と追われる者の逆転。立場の逆転好きだねえ。
    家:死なない祖先。ホラー小説のようだ。
    使者:嘘火星人の話。気が狂っているだけなのか?
    透視図法:スル...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    男は周囲に染まり切っていない自分をアピールするために謎めかして休暇を取り、その最中で砂の罠に嵌り、女との共同生活が始まる。脱出を試みる中で男が思う「自由」というのも決して壮麗ではなく、思い出すのは灰色の日常のみ。砂の家にいるときであっても男は何も変わっておらず、「逃げるたのしみ」に生を求めて生きてい...続きを読む
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    途中入り込みにくい篇もあったが、最後の鉛の卵にて、やはりこれ、という結末。「スカッとしない展開」という意味でスカッとする転換劇。気づくと安部公房の論理のすり鉢状の砂に飲み込まれている。
  • 箱男(新潮文庫)
    初安部公房。戸張大輔経由で興味を持った。ライナーに「安部公房に捧ぐ」って書いてあるのよね。チャプターごとに観る者⇄観られる者の関係性がぐるぐると入れ替わり、読者もまたその視線の中に織り込まれていく。比喩表現がどれもソリッドで美しい。終盤の立ちションを見られて許嫁に逃げられる男のエピソードが無性に好き...続きを読む
  • 第四間氷期(新潮文庫)
    時間的な射程の広さに驚愕し、ハードボイルドな結論に納得した。

    1959年=2023年から見て64年前の作品。
    1959年というと冷戦期であり、ソヴィエトの脅威が身近に感じられた時代だろう。

    私が最初に読んだのは、2006年ごろ。当時の世間はweb 2.0の頃で、深層学習や機械学習が世間に広く知れ...続きを読む
  • 人間そっくり(新潮文庫)
    火星人についてのラジオ番組の脚本家の家に、自称火星人の気違い男が訪ねてきて、自分は本物の火星人だと思うか、自称火星人と名乗る気違いだと思うか、気違いだと思ってるんだろ、証拠を見せろ、、うんちゃらかんちゃら、、やってるうちに、まんまと相手の話術に乗せられ、とうとう自分が火星人だと言わされてしまう。
    ...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    箱男は箱の中から世界を観察し、絶対的な観察者となる。いつしかその非対称的な関係は、執筆者と被執筆者、本物と模倣者などの関係さえも踏み越えて流転してゆく。リーダビリティの高い文章で写実的に描かれる世界が気づいたらフィクションを飛び越えて読者側の世界へと一歩踏み出してくるような感覚は円城塔の作品にも通じ...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    箱をかぶることで「見る・見られる」という社会の関係性から離脱し、見るだけの存在となる男
    匿名性
    アンチロマン(反小説)
  • 人間そっくり(新潮文庫)
    SF作家に熱烈なファンが来訪してくる。来訪者の妻の電話によりグッと引き込まれ、来訪者が異常者なのかどうなのか主人公と同じ目線で判断する楽しさがあった。意味不明ながらも筋の通った論理を展開する所は安部公房らしくて読んでいて楽しかった。
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

    『友達』の原題にもなった『闖入者』が抜けてて素晴らしい。
    他収録作はシュールレアリスム寄りだが、安部公房作品では相対的に取っ付きやすい部類かもしれない。