安部公房のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「豚に、豚みたいだと言っても、おこったりはしませんよ…」
安部公房のSFって言われてるけど安部公房の話だいたいSF的要素あるとおもう。サイエンス要素ないのに火星が舞台なだけでブラッドベリの火星年代記がSFなら、火星人と名乗る男が家におしかけてくる人間そっくりもSFじゃないのか?SF概念はむずかしい…
この作品、以前読んだ砂の女や人間そっくりに比べると取っ付きにくく感じ、特に途中の科学的な話の部分は自分には難しくあまり頭に入ってこなかったが後半からあとがきにかけてSFの醍醐味である固定概念を崩されるという感覚を味わうことができて最後まで読んで良かったと思えた。
今まで過去の人が現代の生活を知っ -
Posted by ブクログ
ネタバレ情報を整理しながら読んでいったはずだけれど、理解するのが難しい小説だった。登場人物はごく少ないのにも関わらず、なぜこんなにも入り組んで話の展開が読めないのだ。怒涛の展開に頭が追いつかない。
読み始めてしばらくすると、映像化は無理じゃないかという思いでいっぱいになった。言葉によるこの絶妙な可笑しみをどう映像で表現するのかと。
でも読み進めてちょうど半分を超えたあたりで、それどころじゃないと気付かされた。かなり実験的な試みを感じる小説で、こんな複雑な構造をしているとは想像もしていなかった!
途中、意味がわかりかけたのに終盤で再びけむに巻かれてしまって、途方に暮れている。
箱男にとっては居心地のいい -
Posted by ブクログ
なんだ…この作品は…
ずっと、ずーーーっとよく分からないまま、そのまま読み続ける。しかし分からないからと言っても、決して途中で本を投げ捨てる訳でも無く、いつか分かる時が来るのか…ただただ字を読む。常に「私は誰?…ここは何処…?」状態。また別の感覚で表現するならば、万華鏡のような物から本の世界観を見てるような…または、手垢が付いたガラス越しにハッキリと何を見てるか分からない状態で物語を読んでるかの様でした。自分にとっては理解が難しく、頭の中をシャッフルされてるような感覚になりましたが「面白い」本であったなと。また読み返したい気持ちもありつつ、またあの迷宮に入る覚悟が持てるか…。映画化されてるので -
Posted by ブクログ
安部公房、晩年に近い作品。
いや、はや、あっぱれ。面白かった。
箱をかぶった箱男。まんまっちゃまんまだが、
これが意味するのは「匿名性」
つまり現代における「SNS」のようなものだ。
これをまだネットがない時代に書いているのだから、、さすがと言わざるを得ない。今新刊です!と登場しても話題になるのでは。
匿名の仮面を被った人間が取る行動。
あちらからは見えないが、こちらからは見える、という状況で人間が起こす行動。
そして覗き穴から覗く、という描写も、スマホの出現と人類全クリエイター、カメラマンの現代においては、とっても上手くできた箱である。 -
Posted by ブクログ
Podcast「夜ふかしの読み明かし」の読書会で取り上げられていた一編、第一部の「S・カルマ氏の犯罪」を読んだ。
見渡す限りの荒野、静かに果てしなく成長してゆく名前を奪われた壁による、問わず語りの「おかしなことばかり多くて、普通のことがほとんどない」多分“ぼく”にはあまりむかないのだと思った”現実“の数日間。
名刺に名前を奪われたり、身のまわりの品に存在理由をかけた闘争を仕掛けられたり、永遠に続く裁判にかけられたりする現実に向いている人はまあいないと思うし、そのわりに冷静に話しますよね、と思いながらも、これは現実をあきらめ、自由を奪われた独房の孤独のなかで、それ故に語らざる得ない哀しい物語のよ -
Posted by ブクログ
20代半ばで芥川賞を受賞した安部公房が、30歳前後に書いた12の短編を収録した作品集。
どれもシュールで実験的で、ユーモアやウイット、アイロニーに笑わせられる場面もちらほらあります。毒が盛られたような内容の話であっても、おかしみを感じさせるシーンをちゃんと作られているため、シリアスになりすぎずに、フィクションの中身と適度な距離を保ちつつ、楽しめるのでした。また、そこのところをちょっと角度をかえて考えてみると、たまに水面に浮かんでくるあぶくのように、ここぞのところで効果的に滑稽さが仕組まれているからこそ、これは小説つまり虚構なのだ、と読む者は踏まえることができるんだなあ、とひとつ気づくことにな -
Posted by ブクログ
「題未定──霊媒の話より」
霊媒師とは、要するにアドリブ俳優である
霊魂に身体を貸したというテイで
お芝居をやっている
相手はそれを本当に先祖の霊魂と信じるのだけど
それによって現世の鬱屈が
いくらかでも癒やされるのなら
単純に否定すべきものではないのである
では、かの霊媒師はいかにして霊媒師になったか
そういう話なんだけど
これは、自分の話を他人事のように語っているのではなかろうか
副題からそう臭わせることで
自然主義文学へのひとつの問題提起ともなっている
死者の意思が捏造されうる以上
自らの経歴もまた捏造の可能性を免れない
その事実を発見したことが
反近代のはじまりなのかもしれない
「老