安部公房のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「こんにちは、火星人」というラジオの脚本家は、ピンチに陥っていた。
"存在するはずのない火星人をネタに日本を風刺する"番組はこれまで順調にやってきたが、火星にロケットが軟着陸することになり、火星のことが明らかになると世間の目は厳しくなると予想されるからだ。
そんな彼が部屋で鬱々としていると、突然自らを火星人だと名乗る男が訪問してくる。
その男の妻から電話もあり、30分後に迎えに行くが、気違いで暴力的なため逆らわずに話を聞くようにと言われ、家に上げてしまう。
最初は気違いの戯言と聞き流していたが、相手は意外と論理的で適当な相槌は見逃してくれず、真剣に向き合わざるを得なくな -
Posted by ブクログ
順平。砂穴に閉じ込められる。砂穴の底に家。周囲の砂壁から絶えず砂が崩れ落ち、家に砂が侵入してくる。放っておくと家が砂で埋まってしまうため、順平は砂を掻き出す。来る日も来る日も砂を掻き出す。終わりなき労働。終わりなき反復。順平「脱出したい、自由になりたい、こんな生活は異常だ」。しかし、順平は次第に砂穴の生活に「意味」を見出し始める。砂穴の中で水を得る仕組みを工夫し始める。順平は不条理な状況からの脱出ではなく、与えられた状況の中に自分なりの意味を付与していく。安部公房『砂の女』1962
*cf. カフカ(審判, 城)、カミュ(異邦人, シーシュポスの神話)
◾️社会的拘束。形態を持たないのは力の -
Posted by ブクログ
ネタバレ「豚に、豚みたいだと言っても、おこったりはしませんよ…」
安部公房のSFって言われてるけど安部公房の話だいたいSF的要素あるとおもう。サイエンス要素ないのに火星が舞台なだけでブラッドベリの火星年代記がSFなら、火星人と名乗る男が家におしかけてくる人間そっくりもSFじゃないのか?SF概念はむずかしい…
この作品、以前読んだ砂の女や人間そっくりに比べると取っ付きにくく感じ、特に途中の科学的な話の部分は自分には難しくあまり頭に入ってこなかったが後半からあとがきにかけてSFの醍醐味である固定概念を崩されるという感覚を味わうことができて最後まで読んで良かったと思えた。
今まで過去の人が現代の生活を知っ -
Posted by ブクログ
Podcast「夜ふかしの読み明かし」の読書会で取り上げられていた一編、第一部の「S・カルマ氏の犯罪」を読んだ。
見渡す限りの荒野、静かに果てしなく成長してゆく名前を奪われた壁による、問わず語りの「おかしなことばかり多くて、普通のことがほとんどない」多分“ぼく”にはあまりむかないのだと思った”現実“の数日間。
名刺に名前を奪われたり、身のまわりの品に存在理由をかけた闘争を仕掛けられたり、永遠に続く裁判にかけられたりする現実に向いている人はまあいないと思うし、そのわりに冷静に話しますよね、と思いながらも、これは現実をあきらめ、自由を奪われた独房の孤独のなかで、それ故に語らざる得ない哀しい物語のよ -
Posted by ブクログ
20代半ばで芥川賞を受賞した安部公房が、30歳前後に書いた12の短編を収録した作品集。
どれもシュールで実験的で、ユーモアやウイット、アイロニーに笑わせられる場面もちらほらあります。毒が盛られたような内容の話であっても、おかしみを感じさせるシーンをちゃんと作られているため、シリアスになりすぎずに、フィクションの中身と適度な距離を保ちつつ、楽しめるのでした。また、そこのところをちょっと角度をかえて考えてみると、たまに水面に浮かんでくるあぶくのように、ここぞのところで効果的に滑稽さが仕組まれているからこそ、これは小説つまり虚構なのだ、と読む者は踏まえることができるんだなあ、とひとつ気づくことにな -
Posted by ブクログ
「題未定──霊媒の話より」
霊媒師とは、要するにアドリブ俳優である
霊魂に身体を貸したというテイで
お芝居をやっている
相手はそれを本当に先祖の霊魂と信じるのだけど
それによって現世の鬱屈が
いくらかでも癒やされるのなら
単純に否定すべきものではないのである
では、かの霊媒師はいかにして霊媒師になったか
そういう話なんだけど
これは、自分の話を他人事のように語っているのではなかろうか
副題からそう臭わせることで
自然主義文学へのひとつの問題提起ともなっている
死者の意思が捏造されうる以上
自らの経歴もまた捏造の可能性を免れない
その事実を発見したことが
反近代のはじまりなのかもしれない
「老