安部公房のレビュー一覧

  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    安部公房の作品は変だ。読み進めていくうちに迷子になる。ちゃんと舗装された道路を通ったはずなのに。

    『友達』の展開は訳が分からない。それなのに納得してしまう。そして、そら恐ろしくなる。闖入した一家が、例えばこんな論理で説得してくるのだ。

    "兄弟は他人の始まりっていうじゃないか。つまり、他人をさかのぼって行けば兄弟になるということでもある。"(19頁、『友達』より)。

    これを劇場で見た観客は何を思っただろうか?

    『榎本武揚』は、安部公房先生にしては珍しい歴史・人物モノである。とはいえ展開がシュールなのは変わらない。幕末ファンかつSF好きには興味深い一品なのではないだろう

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    2012年12月11日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    安部公房の戯曲集を初めて読んだけれど、やっぱり安部公房であって、現実の中の非現実、日常の隣にある非日常に誘う作品です。このなんともいえない不思議な世界観にいつも感嘆するばかり。素敵です

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    2012年03月18日
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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    満州時代の経験が生きた佳作。哲学書じみた『終りし道の標べに』に比べると読みやすい。

    本作は、生と死の境目を綱渡りする決死の逃避行劇である。安部公房が生涯追い続けた「疎外」「人格の証明」といったテーマが既に表出している点が興味深い。また、夢や幻覚を用いた前衛的な雰囲気や、ひりひりするような現実的レトリックといった、後年の作風と繋がる面があるところも気になる。

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    2012年12月11日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    安部公房の戯曲集。

    表題作『友達』は非現実的な世界観が、主人公を通じて日常的なものへと錯覚させられる、読み進めていくうちに思わず引き込まれていく作品でした。
    日本社会において、個性や個人という考え方を維持することが難しく、全体主義、連帯責任というものに押さえつけられてしまうという現状を表現したものであり、これは現在の日本社会でも通じるとことだと思った。

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    2011年09月19日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    「友達」「棒になった男」「榎本武揚」の三つの戯曲集。
    戯曲ははじめて読んだけど、会話形式なのでサクサク読めて楽しめた。相変わらずブラックな笑いのセンスが抜群の「友達」がお気に入り。

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    2012年11月29日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    ユートピア思想の具現化を追い求めて結成された「飢餓同盟」。
    排他主義・権威主義がはびこる廃れた温泉町に革命の機運を起こすべく奔走するが、徐々に手段が目的と化し、自らも政治・経済システムに取り付かれた狂人となり果て、同盟が瓦解していく模様を綴った作品。


    支配の重壁に押しつぶされようとしている人々が、立ち上がりその壁を突き崩そうと試みる。
    例えその試みが儚く敗れ去ったとしても、彼らの飛ばした小さな火花の中に、私たちの社会のより良い可能性を見つけることができるのではと感じました。

    私はこの作品を絶望ではなく希望の教訓であると信じたい。

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    2011年04月10日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    ほら、あるでしょ。
    クイズに不正解だったお笑い芸人が、突き落とされて小麦粉まみれになるやつ。
    あと、少しズレちゃうんだけど、その時自分は面白く無いのにTVの向こうではわざとらしい笑い声がゲラゲラ入ってて、何かから取り残されちゃったなーって感覚。
    その傍観者でいたはずの自分てのも、その実当事者であったりするわけで、知らず知らずに小麦粉まみれの芸人やわざとらしいゲラゲラになってる可能性のが高いんだよね。
    そんな意思は無くても。
    そこがなんか怖くて腹が立つ。

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    2011年02月27日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    またまた安部公房の「有り得そう」と錯覚させてくれる作品。特にこれは戯曲だから、変にリアルなの!

    いくつか作品が収録されているけど、私は「友達」が1番好き。

    無茶苦茶な家族がいい具合に有り得ない。でもだんだん、本当にこの家族が存在するような錯覚に陥る。まさに安部公房の魔法。



    実際に上演されるなら絶対観てみたいな。

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    2010年10月22日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    ほかの作品にもよく見られるような、土俗性と人間の過剰なまでの人間らしさが散りばめられている作品。
    雪に閉ざされた地方都市や戦後間もないであろう時代といった舞台には、確かに今この場にいる自分との距離を感じてしまう。しかし、われわれが日本人である限りはどこにいようとどんな時代を過ごしていようと同様の構造を周囲に見出していくのだろう。
    なんて思った。
    装丁がすてき。

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    2010年04月26日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    他の作品とは違って、台本をテキスト化したものなのでちょっと特殊な文体です。この事によって、普通は不可能である、人物が同時に別行動をするという表現が可能なので、短文でありながらも人物の表情や仕草を捉える事が出来る。ちょっと不思議な感じです。
    <友達>ある一人暮らしの男の部屋に、見知らぬ9人の家族が上がり込んでくる。出ていけと迫る男に堂々と、自分達がどれだけ大切な存在か、貴方が必要としているかと説き、訳も分からぬまま住み着かれる。大衆とは世間とは、ただの他人の集まりでしかないという恐怖を描いた作品。
    <鞄>ある新婚の女性が、悩みを友人に打ち明けるが.........それはとてつもなく大きな悩みでも

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    2009年10月04日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    独特な比喩表現で、途中止まって考えてしまう描写がたくさん出てきます。
    たとえば、「くらげのように踊りだす胃袋」。
    くらげの踊り‥?海にいて始終泳ぎ漂う、あのくらげを思い浮かべました。

    ストーリーは女性蔑視があるものの、人を監禁する術をもち、徐々に洗脳されていく様や、「砂」という自然物質を絶え間なく身近に感じさせるものです。
    砂のように引き込まれて完読しました。

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    2025年12月21日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    私には難しかった。けどつまらなかったわけでもなかった。
    安部公房の他の本を読んだことがないから、いきなり安部公房のアイデアの出所とか、話の作り方の説明をされているようでピンとこず、先に他の本を読むべきだったかもしれないと思った。

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    2025年12月14日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    ネタバレ

    殺人事件を巡るミステリのような展開から話が変わってきてSFへ(笑)予言する機械や謎の脅迫電話、胎児誘拐事件、水棲人の研究など色々考えるな~(笑)異色なSFとしていい感じですね(笑)

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    2025年11月24日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ある夏の朝。時速2、3キロで滑空する《飛ぶ男》が現れる。ある中学教師と接触していた《飛ぶ男》は、男性不信の女に空気銃で撃たれた。女は《飛ぶ男》を確認する為に中学教師の部屋へ。 不思議な雰囲気の話。しっかり完成していたら、なんだかとても良い物語になっていた気がする。

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    2025年11月24日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ある朝突然脛にカイワレ大根が生えたという展開が(笑)なぜカイワレ大根だったんだろう。掴みとしては良かった(笑)なんと言うか物語自体が壊れてしまう寸前のようなギリギリのところを走ってる感じで結構読むのは苦労したけど引き込まれていくように読んでしまった(笑)所々に現れる歌が何となく『ドグラ・マグラ』を想像してしまった。

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    2025年11月24日
  • 箱男(新潮文庫)

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    ネタバレ

    難解。語りや視点が色々と変化してしまい混乱してしまった。箱男と贋箱男の区別もちょっと難しくなってしまって。解説まで読んで少しわかったかな(笑)しかし一読だけでは理解できない(笑)ちょっと『ドグラ・マグラ』を読んでいるような(笑)あそこまでおかしくは無いですが(笑)とりあえず時間をおいて再読しないと(笑)そして他にも安部公房が積読になっているから読んでいこう(笑)

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    2025年11月24日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    どの作品も発想が怖い。

    「変形の記録」「死んだ娘が歌った…」などは死後の視点で描かれているが、死んでも変わらない、死後の世界も今と同じ事が繰り返されるような気がして暗澹たる気持ちになりそうになる。救いが無い。

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    2025年11月20日
  • 箱男(新潮文庫)

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    阿部工房は箱に住んだことあるんじゃないかというくらい箱の描写が細かい
    一回じゃ理解できなかったけどなぜか面白い
    もっかい読む

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    2025年11月16日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    [R62号の発明]
     会社を首になって自殺を考えていた機械技師の男が、生きながら自分の死体を売ってロボットにされてしまう。元の会社にロボットとして働くようになった彼は、人間を酷使して殺してしまう機械を造る。このあらすじからすると、不況時代に対する風刺と見ることや、資本家に対する左翼思想側からの作品と見ることも当然可能だろうと思うけど、個人的にはそういうことよりもヘラで脳味噌をひっくり返しているところとか、脳味噌が君なのか、それとも君がこの一部なのか、といった手術シーンの方が印象に残っている。
     ただ、予想していたほどすごい話でもなかったな。教科書に載ってても全然不思議じゃない。SFならこれぐら

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    2025年11月09日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    未完だから続きを書きに来て欲しい。
    安部公房に出てくる女は魅力がある、みんな変なのに話が静かに展開していくのが面白い。

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    2025年11月06日