安部公房のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
安部公房の作品は変だ。読み進めていくうちに迷子になる。ちゃんと舗装された道路を通ったはずなのに。
『友達』の展開は訳が分からない。それなのに納得してしまう。そして、そら恐ろしくなる。闖入した一家が、例えばこんな論理で説得してくるのだ。
"兄弟は他人の始まりっていうじゃないか。つまり、他人をさかのぼって行けば兄弟になるということでもある。"(19頁、『友達』より)。
これを劇場で見た観客は何を思っただろうか?
『榎本武揚』は、安部公房先生にしては珍しい歴史・人物モノである。とはいえ展開がシュールなのは変わらない。幕末ファンかつSF好きには興味深い一品なのではないだろう -
Posted by ブクログ
他の作品とは違って、台本をテキスト化したものなのでちょっと特殊な文体です。この事によって、普通は不可能である、人物が同時に別行動をするという表現が可能なので、短文でありながらも人物の表情や仕草を捉える事が出来る。ちょっと不思議な感じです。
<友達>ある一人暮らしの男の部屋に、見知らぬ9人の家族が上がり込んでくる。出ていけと迫る男に堂々と、自分達がどれだけ大切な存在か、貴方が必要としているかと説き、訳も分からぬまま住み着かれる。大衆とは世間とは、ただの他人の集まりでしかないという恐怖を描いた作品。
<鞄>ある新婚の女性が、悩みを友人に打ち明けるが.........それはとてつもなく大きな悩みでも -
Posted by ブクログ
[R62号の発明]
会社を首になって自殺を考えていた機械技師の男が、生きながら自分の死体を売ってロボットにされてしまう。元の会社にロボットとして働くようになった彼は、人間を酷使して殺してしまう機械を造る。このあらすじからすると、不況時代に対する風刺と見ることや、資本家に対する左翼思想側からの作品と見ることも当然可能だろうと思うけど、個人的にはそういうことよりもヘラで脳味噌をひっくり返しているところとか、脳味噌が君なのか、それとも君がこの一部なのか、といった手術シーンの方が印象に残っている。
ただ、予想していたほどすごい話でもなかったな。教科書に載ってても全然不思議じゃない。SFならこれぐら