あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)
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Posted by ブクログ
文豪だし、タイトルも装丁もなんか地味で小難しそう…
と思ったら安部公房ってこんなに読みやすくて面白いんだ!と一気読みしました。
深い考察などできませんが色んなメタファーが思い浮かぶので、またいつか再読したい。
世にも奇妙な物語とか好きな人にお勧めかもしれません
Posted by ブクログ
男の心境の変化が生々しく、全然他人事じゃない!と感じて恐ろしかった
これからの人生、ここは砂の中ではないか?と常に自分に問いたいし、逃げることを諦めたくない……でも本当に、逃げるなんてことできる?
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凄まじき傑作!
これを映像化しようと思ったことも凄いと思う
こんな理不尽な状況に陥ったらと想像すると震える
追い詰められた人間の心理描写が生々しい
Posted by ブクログ
めちゃめちゃ面白い。相当好きかも。、
カフカの城とかに似ている気がした。
――罰がなければ、逃げるたのしみもない――
意味わからんけど、最後なるほどと。表現の面白み、読み応え、おかしみ…ものすごい好きだった。
難しそうだけど、意外とミステリーとかサスペンス的な感じだからすいすい進む。
変な話、策を練って頑張って脱出しようとするってシンプルな話だから、相当読みやすい。もちろん、それだけじゃないけど。
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砂の中に閉じ込められた世界だとしても生きるため、欲しいもののために働く。
地上の世界に戻れても何も変わらない。
生きるとはそういうことだという皮肉を込めたメッセージを本作品では感じた。
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本作『砂の女』は20カ国以上の国に翻訳された国際的にも高く評価された名作です。
ストーリー自体はあくまでシンプル!ふと迷い込んだ砂丘で、理不尽にも穴の中の家に閉じ込められた主人公。砂の壁に囲まれた穴から脱出すべく奮闘するも・・・という物語です。
前回の記事で紹介した『箱男』はストーリーが難解で、問題作と言われるほどの奇作でしたが今作『砂の女』は非常に読みやすいです。
ただ、阿部公房らしい不条理な世界観は健在です。
文学の国際性ということを考えることになったこの作品は私にとっても貴重な読書となりました。これは楽しい読書でした。
Posted by ブクログ
今までの生活との対比で
・妻とは避妊具がないと出来ない上になじられている
・新種の虫を見つけて名前(名声)をつけたい
・砂の女とはできる
・「希望」を村人に自慢(名声)できる
と願いが叶ってしまっているし、妊娠した事である程度村人からも認めてられてはしごも外されなくなり…
こうなると砂の生活が罰ではなくなってきて「罰がなければ、逃げるたのしみもない」ってのになるんだろう。
何回も読めばこう言う対比がまだまだあるんだろうな…
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そんなに分厚くない本なのだけれど、各章が濃密で読むのに時間がかかってしまった。初めて読んだ種類のインパクト大。こういう本が世界的にヒットするというのは、なかなか世の中病んでいるな?いい意味で。
2024.7.31
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砂の女
著:安部 公房
新潮文庫 あ-4-15
けだるく、やるせない世界、男の隠れた一面が次第にあらわになっていく
失踪者 民法第30条 失踪の宣告 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる
海岸からほど近い村にある砂の穴の家、そこに囚われた男と、砂の家の女の物語
村人とぐるであるその女は、その失踪者と交わい、生活を共にしていく
すんなりと、村に入れたにもかかわらず、なぜか、抜け出すことができない
メビウスの帯なる言葉にて、果たして、穴の中にいることとは、同時に、穴の外にもいることになっているのでしょうか
女が、子宮外妊娠の治療に行くために、梯子が残されていても、男も、もはや、その穴の家からは抜け出そうとはしない
かくして、失踪宣告の審判の日は近づいていく
もくじ
第1章
1~10
第2章
11~27
第3章
28~31
ISBN:9784101121154
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:288ページ
定価:710円(本体)
1981年02月25日発行
2003年03月25日53刷改版
2020年05月25日79刷
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うまく言えないのですが、
男性と女性の生物(身体)的違いがもたらす、恋愛感情のすれ違いの顛末が本筋とは別軸に暗喩的に述べられてるような…
やはり、ついてるものがお互い違いますし役割も違いますし、どこまでいっても動物ではありますし、理性というものはあるにせよ、お互いのことを分かり合おうとする姿勢が大事ですね
と思いました。愛が足りんとかそういうことではないのだと思いますよって医学部卒の阿部公房が言ってるのかなと想像すると愛おしくなりました(多分違いますけど)
Posted by ブクログ
シナリオ構成、ユーモアの多様性、シンプルさ、比喩のうまさ、どれをとっても勉強にしかならない。
運命とは何か、生きるとはどういうことか、存在意義は何か、そういった人間としての在り方に問いかけ、自分の日常を考えさせられ、どこに向かうべきか、どこに焦点を絞るべきか、何に重きを置くべきかなど、ほんとうにいろんなことを考えさせられた作品だった。
Posted by ブクログ
『砂の女』が発表されたのは1962年、キューバ危機の年だ。もはや歴史にマッピングされる時代である。なのにこの小説は、文学作品特有のカビ臭さがない。むしろ新鮮なくらいである。
たとえば、三島由紀夫は作者の一年後輩に当たる。優劣をつけるわけではないが、三島の作品と比較すると、安部公房がいかに現代的かがわかるかと思う。
安部公房は日本で最初にワープロを使って執筆した作家と言われる。理知的な文章は、小説家というよりも実験家のようである。実際、彼は東大の医学部出身で、数学は得意中の得意だったという。
大空に羽ばたく自由もあれば、巣穴に籠る自由もある。それがこの小説のテーマだと、昔読んだインタビューに書いてあった記憶がある。あれほど戻りたいと願った日常が、結局は砂掻きのように単調な反復でしかないという皮肉。家と職場の往復から必死に逃れてたどり着いた先が、スマホゲームのデイリーミッションという現代人の実像。『砂の女』の主人公はわれわれ自身なのかもしれない。
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「希望の灯」というドイツ映画を観た。
この映画の原題は「通路で」とか「廊下で」とかの意味らしく、小売で働く人にとってみればそれは部署やアサインみたいなもので、マリオンに逢えなくなってから、菓子の売場を通って「しばらく朝のシフトのようで姿をみない。けど確かに彼女がさっきまでここにいた気がする」と主人公が思うシーンは素晴らしいと思った。特にマリオンには夫がいるので、切なさは余計につのる。
『砂の女』では、主人公の男が砂穴に軟禁されながらも鴉を捕まえる罠をつくり、その装置に「希望」と名付ける。希望とは何かと、しばらく考えてみた。「希望の灯り」では、マリオンが菓子の通路で働いている姿を、また明日職場に行ったら見れるかもしれない、とか思ったりすることだろうか。
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砂に囲まれ毎日砂かきをする女の家に閉じ込められた主人公だったが、最初から中盤にかけては同じ生活を繰り返す女を侮り、必死に外に出ようとするがふとした時に外の生活でも人々は毎日同じように生活しているのだと気付かされる。
また、水の生成に成功するなど不便な生活の中にも生きがいを見つけていき、その生活に順応していく人間の姿が見え面白かった。
Posted by ブクログ
とにかく独特な表現が多く読みきるのに大変な小説だった。
特に好きな場所は砂からの脱出を図る男の気持ちの変化で、はじめはあんなに必死に運命に抵抗していた男も全て曝け出されて自尊心を徹底的に壊された結果、人間ではなく終盤、見せ物みたいな行為ですら許容してしまってしまう。
この時点で男と女の自尊心の差が逆転してしまい女が拒絶してしまった事すらよくわかっていないのが、あんなに部落での生活に対して不満をぶつけていた男のあり方がかなり皮肉めいていてかなり好き。
最終的には男の現実からの逃避という根っこにあった欲望がうまく部落とかみ合った感じで終わった。
うまく何が言いたいか読み取れなかったためもう一度チャレンジしたい。
Posted by ブクログ
文学小説は難解で読むのに時間がかかるイメージがあったので気を引き締めて挑んだが安部公房は比較的読みやすく、推理小説のようにスラスラと内容が頭に入ってきた!
最初は砂への文句ばかり言っていた主人公が最終的には女の肉のシワに固まった砂に愛着すら抱いてたのが「ナントカ蝿は適応力がある」等の付箋回収だったり、エディプスコンプレックスをチラつかせていたり(ラストの探究心や女を母親とみてるような当たり散らかし様)構成の綺麗さに驚いた!
また、主人公と同じように困惑するような設定なのに、主人公が現実的な公務員であることから妙に写実的で面白かった!後味残る、また読み返そう
Posted by ブクログ
とにかくハラハラして一種の冒険小説のようにどんどん読んでしまった。ただそこには「砂」という物質に着目したユニークな視点から現代の生き方を照らし合わせるという巧みな表現もあるように見えた。世界でも人気な理由がわかる。分析したい本
Posted by ブクログ
ずっと抵抗を感じながら読み進めていたのに、結末を知ってから読み返すと全てが自然な流れに感じるという不思議な小説。
砂が積もる一方で男の本質は露になり、表面的には苛立ちを覚える一方で本質的には心が洗われ生活が満たされていく。
環境や経験から得る思考はまだ顕在的なもので、それに反して潜在的に作用することもあるのかも。砂の下から水が湧いてくるように。
Posted by ブクログ
男が失踪し、七年たったことで法律により死亡が認定されたところから物語は始まる。
しかし実際は、砂掻きをしないと砂に埋まっていってしまう砂穴の中の家に捕らわれていた。その家には一人の女が住んでいた。
そこは寝ただけで体や口の中に砂がこびりつき、とても生きていけるような環境ではなく、男は何度も脱出を試みる。
そんな男だったが、最終的にはその砂穴の中で暮らしていく。一冊を通して男の女に対する感情や男にとっての自由・幸せとは何なのかを考えさせられた一冊だった。
安部公房の他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
未発見の昆虫を探しに遠出した際に、意図せず砂の中の家に閉じ込められた男と、その家に居た女。
あまりにシュールな状況下で男が脱出を試みる話。
ある意味、ホラーの部類に入るような内容。
安部公房さんの作品で、古さはありますが、何故か
社会生活や労働といった人間の生の在り方についても考えてしまう、とても趣のある作品でした。
Posted by ブクログ
チャンスがなくて手を出していなかった名作に挑戦。想像していた通りではあるものの、気持ちが晴れる小説ではないことに加えて、心の奥がざわつく感じが止まらず、ページが進まなかった。既に世界中で翻訳されて読まれているとのことであるが、著者の真意に到着できなかった気まずい感じが残った。
Posted by ブクログ
『罰がなければ、逃げるたのしみもない』
周りを砂に覆われた家。
男はその中に閉じ込められてしまった。
常に体が砂に纏われている感じ。
男と女の考え方の違い。
慣れというのは、ある意味恐ろしい…
男にとって良いことなのか悪いことなのか。
不思議でリアルな物語。
そういう展開になるのか…とか。
たまに話が難しくなったり、急に始まる誰目線の何の話かわからないというのが出てきたり…
私には少し難しかったかもしれない笑
教訓のようなものがあるような、ないような…笑
解説のドナルド・キーンさん良かった!
Posted by ブクログ
再読、まったく覚えていない、文庫本もバーコードなしで消費税3%だったし仕方なし。
ともあれ出だしとか面白いし、設定も異様なんだけれどもスムーズに読める。でもちょっとしつこいかな、もう少しタイトにできるような気がする。あと当然なんですが文体が昭和ど真ん中、今となってはまどろっこしい感もある。
もう一つ、これも当然ですけれども男性の手になる小説かと。タイトルとの関係を読み解けない哀れな愚民である当方、主要キャストである女性が魅力的に思えない。というか作家が女性を魅力的に描こうとしていないとさえ感じてしまいました。
Posted by ブクログ
いろんなところで、変わった話で面白い、とおすすめされていたので、気になって読んでみることに
昆虫採集が趣味の教師の男が、砂穴の底に落ちてしまって出られなくなり、脱出を試みるもうまく行かず、穴の底で暮らし続ける女と過ごす日々が描かれていました
ありえない設定ですが、自分なりに頭の中で風景をイメージするのが面白いと感じながら読み進めました
穴の中の劣悪な環境、男が極限に何度も追い込まれますが、その時のカラダや心境の状態、ある意味何を考えてるのかよくわからない、なぜか穴の中に固執する女に対する男の怒りや気遣い、さまざまな欲望、研究者としての一面、部落の異常な状況、いろんなことが複雑に絡み合って、ありえない設定ながらもありえそうな描かれ方で、確かに面白かったです
ただ、ちょっと精神的にしんどい時期に読んだこともあってか、疲れました
Posted by ブクログ
砂穴の中にある家で、女と暮らさざるを得なくなった男の話。
最初はこの理不尽に対して足掻きなんとか脱出しようと試みるが、徐々に砂穴の生活を無自覚に受け入れていき、最後は水が砂穴で確保できる事に気付き、蒸留装置の製造を生きがいにしてしまいます。
我々の日常生活でも、如何ともしがたい理不尽は大なり小なりあるわけですが、その理不尽から逃げられないと気付いた時点で、その中でやりがい、生きがいを見つけて、やっていかないと精神的に生きていけない…、そんな話だと、解釈しました。
しかし、読後にまず感じたのは、自分も砂まみれになったような気分。外に出たわけでもないのに、部屋の掃除して、シャワー浴びたくなったよ(笑)
Posted by ブクログ
とりあえず砂まみれの気分
物語の先が気になって豊富なメタファーまでは考える余裕がなかった
「100分で名著」を買ってあるので、こちらを読んでからまた再読する
Posted by ブクログ
誰もが知らず知らずに砂の穴で砂かきをしているかのような人生を送っている。そして、砂の上の生活に思いを馳せるが、それは幻想でもあり、今ある生活の中から幸せを見つけることが大切である。とも解釈できるのかな? 何んともいえないザラザラとしたような読後感であった。
Posted by ブクログ
終始ジメジメと体に汗と砂がまとわりつくような感覚がずっとあった。不気味で息苦しくて、自分も砂の中に閉じ込められているように思えるほど、没入感があった。読んでいて気持ちが悪い。まんまと騙されていくら砂を掻いても出られず、やっと出れる時が来たのになぜか砂穴にとどまってしまうのはまるで労働に追われている現代人を見ているようだった。
Posted by ブクログ
安部公房の世界観が好き。なぜかものすごく惹かれる。そしてこの「砂の女」は、もう…読んでも読んでも砂、砂、砂…!物語の主人公が砂の世界から出られないのと同じように、公房さんの言葉の世界に閉じ込められたような…つまり、すんなりと読み進めるのは難しかったわけで。面白い!と言って人におすすめも出来そうにない…。でも、それって凄いことだと思うのです。読み手をここまで安部公房ワールドに連れて行ってくれたのですから。物語は全てが面白いとは限らないし、面白くなければいけない、読む価値がない訳ではないと思う。どれだけその世界に引き込まれたか、だと思うから。その点でいえば、私は星5つ分、楽しませてもらいました。