あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)
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Posted by ブクログ
仕事を辞めるか続けるか迷っている今の自分にピタリとハマった。
毎日の繰り返しの仕事から逃げたい。でも逃げたらそこは自由なのか?
今のままで諦めてもいい。今があるから自由という妄想に執着しているのか?もしくは今の安定に執着しているのか。迷いながら読んだ。
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人生について考えさせられる。時代は全く違えどわたしだけではなく皆、砂に囲まれて生活している。
日常の意味のあるか分からない仕事を淡々とこなし、時にはそこから新たな興味深い発見をし、一方でそんな退屈なルーティーンからの脱出を試みて、失敗して順応していく。まさに人生そのものな気がした。
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読みやすい文体なのに、サラッと読めないストーリーのため読み終えるのに長時間かかった。そのため読後直後は☆4。しかし、考えを深めるにつれて☆5。
最後のシーンが深く心に残り続ける。執着心は愛情に擬態する。男が物語のラストで選んだものは、救いがないと同時に救いのあるものだった。この二重構造、すざましい作品だ。
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失踪から7年たって死亡の認定を受けたと小説の最初に書かれた時点で男が逃げられないことは確定していたが、正確には逃げられなかったのではなく最終的に逃げようとすらしなかったという終わり方にするのが良かった。
これこそ安部公房というような難解な比喩が定期的に書かれていて、そこを読むのに体力を使った
穴に閉じ込められて初めて普通の生活に固執する意味を考えるようになるという展開が自然で良い。自由は必ずしも全ての人間に望ましいものではない。
政府は砂の被害に対する対策を支援しないという無責任の結果、塩の入った砂を流通させるという部落民の無責任が生まれてしまった。
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安部公房らしい奇想天外な設定だが、「砂」に対するの論理的な着眼点が世界観に説得力を持たせる。不条理に囚われた主人公の男に共鳴するかのように、ずっと口の中に砂が入ってるかのような居心地悪さを抱えながら、夢中になって読んだ。ずっとどう終わらせるのだろうと考えながら読んでいたが、あそこまで完璧なラストはなかなかない。「罰がなければ逃げる楽しみもない」。自由という甘美な響きはまるで砂地獄のように彼を捕らえの身にするが、彼は最後に現実の砂地獄で生きることを決め、その砂地獄から抜け出すのだ。いや、もっと深い穴にハマってしまったのかもしれない。男と女が暮らす砂地獄が突如として私たちの日常と重なり合ってくる。
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ニワハンミョウに騙されて命を落とすネズミやトカゲのように、砂に魅せられて騙されて、穴の中での女との生活を余儀なくされる男の物語。
何度かの逃亡が失敗に終わり、最後は逃げられる状況であっても逃げる事はせず、その後7年の間、元の生活に戻る事はなかった男。
極限の生活の中でも生活の充足や生き甲斐を見つけてしまう人間は、哀しい生き物だろうか、それとも幸福な生き物だろうか。
7年の男の生活、生死は不明だが、ある程度充足した生活を送ったのではないかと思う。誰かに強く必要とされる事、新しい家族ができる事、生き甲斐となる仕事(水の採集)が出来たこと。毎日の砂との戦いが日常になれば、他に煩わしい事はない生活。
仮に女や子供が男より先に死んで、穴の中で孤独になった時にせめて後悔のない人生を送ってほしいと思った。
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現状との馴れ合いを作品的背景として扱い、砂の底での生活を通して人生における選択の必要性を読者にぶん投げる作品。
描写として虚実皮膜の真髄と言って良いほど精緻な直喩。
語り手、文体の無常な立ち居振る舞いにはあらためて、文学の全ては自由であることを再確認した。
この虚構性と現実性の混同に働きかける仕掛けが世界的に評価されるのも納得。
Posted by ブクログ
理由らしい理由もなく行方不明になった男がいて、7年後に失踪者として死んだものとみなされた……と、そういう話なのだけれど、その間に男の身に何が起きていたのかを読んでいく作品だった。
孤独の本当の意味に気づいたシーンが印象に残っている。ほとんど正気を失いかけながら、衝動的に命を絶つことのないように日々を過ごしている姿が居た堪れない。逃げ出すことを諦めて監禁場所でおとなしく暮らすか、諦めないで外に出ることを目指すか。これはもう人生なんだと思った。
なぜこんなにも面白い作品なんだろうと不思議になる。人間というものは罰があるから逃げるし、歩かないで済む状況になればむしろ安心し、馴染んでいくものなのかもしれない。
世の中すべて自分の希望通りに生きている人は少なく、砂の生活を、そっくりそのまま読者の生活に置き換えることもできるだろうと思う。まるで現実の社会や人間の構造そのものの話を読んでいるかのようで、目が離せない緊迫感があった。
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昔に読んだときは、文章力の凄みやホラー小説としての印象が強く残った。
改めて読み返すと、本作の怖さは人間がどんな環境にも順応してしまう過程そのものにあることに気づかされる。自由とは何か、異常と呼べる世界の中で人はどのように意味を見出すのか、受け取る印象が変わった。
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砂しか出てこないのに、こんな多彩な比喩表現ができるものなんだなと思った。読んでいて、こちらまで喉がカラカラになって口の中にざらざらとした不快感が出てくる。
人間の醜さ、汚さも浮き彫りになると同時に、他の生物にはない適応性、不条理な環境を受け入れ成長する人間の強さも感じた。
この砂の穴は誰もが何かに囚われて生きる現代社会にも通じる普遍性を感じた。それでも私たちが逃げないのは、日本という環境に順応していること、日々になぐさみ物の存在があったり、何かしらのささやかな充足を感じる瞬間があること、そして行先も戻る場所も余白になった往復切符をみんな持っているからということなのかな。
Posted by ブクログ
多彩な比喩表現が新鮮でイメージするほど男の人柄や女の姿が浮かんできて、物語に入り込むことができたと思います。自由を求めて幾度となく試行錯誤を繰り返したが、時間が過ぎるにつれ環境に慣れ、馴染み、小さな喜びを見つけ、心地良く思い、確実に逃げることができたが逃げる事をしなかった様に恐ろしさと日常に溢れる幸せを感じました。
また、女の外へ興味を示さず、今ある物に固執する様はある種の信念を感じ、同時に虚しさのようなものを感じました。
舞台も見に行き、イメージできなかった部分も鮮明かされ、また読み返したいです。
Posted by ブクログ
砂から社会や人生の無常さを投影することができた。
砂に自由を投影していたが、砂による不自由を強いられる。
自由とは、幸福とは、満たされることの重要さを考えさせられた。
不自由さがあるからこそ、目標や意義を見出しやすいのかも。
あんなにも脱走を望んだ彼は、結局は自分の成し遂げたことを理解してもらいたいという欲求を超えることはできなかった。
新種の昆虫を発見するという半永久的な名声ではないにしろ、自分のしたことを理解してもらうという何よりも難しいことは、待ち望んだ外の人たちには理解し難い。
Posted by ブクログ
読んでる間中、口の中に砂が入ってくる感覚になる。ザラザラしてて、湿っぽくて。砂の本読んでるだけなのに。安部公房すご。
砂の穴の中の生活。地獄なのに、最後は「今じゃなくていい」と逃げるのをやめて引き返す主人公……。そんなものなのかしら。そんな気もしてくるから、怖い。貯水装置を誰かに見せたいという欲望が勝った瞬間……。
こんな世界もあるのか、と、現実逃避できた。
文庫本の誰かのあとがきみたいなの読んでたら、内容めっちゃさらっとまとめてくれてて笑 これ読めばいいのでは?となるが笑
でもやっぱり安部公房の文章を読みたいよね。
Posted by ブクログ
第14回読売文学賞受賞作。
昆虫採集に訪れた男が、砂に囲まれた穴の底に閉じ込められ、そこで暮らす女と共に生活を強いられるという特異な設定の物語。住居は絶えず砂に埋もれていくため、男は脱出を望みながらも、生き延びるために日々砂掻きを続けることになる。
当初は脱出が第一の目的であったはずが、生活を続けるうちにその意識は徐々に変化していく。やがて男は状況に適応し、砂掻きの効率化を考え、女との共同生活にも疑問を抱かなくなっていく。この過程は、外部から見れば半ば強制された労働でありながら、内側からは日常として受け入れてしまう人間の性質を象徴しているように感じられた。
簡単に言えば社畜である。
砂という存在は単なる自然現象ではなく、時間や労働、さらには逃れられない状況そのものの比喩として機能している。単調で終わりの見えない作業の中で、人はどのようにして現実と折り合いをつけていくのか。本作はその問いを静かに突きつけてくる。
物語としての筋は比較的明快である一方、比喩や象徴が多く盛り込まれており、一度の読書では捉えきれない奥行きがある。再読することで新たな発見があるタイプの作品だと感じた。
発表当時から海外でも高く評価されているのも頷ける内容であり、現在においてもなお通用する普遍性を持った一冊である。
Posted by ブクログ
重い内容を読みたくて選んだ小説。
正にその通り、「諦め」や「絶望」という言葉が浮かんだ。
でもこれは、現実社会にも言えることなのではと。
ずしりと心に残る作品。
Posted by ブクログ
初めの2ページで最後がどいう結末かが分かってしまうが、それに至るまでの過程がいい。
理解はしずらいが、男の砂穴の中での生活や女との関係、生きる理由などが見えてくる。
最後はハラハラしながらも応援してた。
Posted by ブクログ
砂の中での生活と、社会生活での生活となんの違いがあるのだろうか?むしろ何もない砂の中の生活の方が、何も無いからこそ1つ1つの事柄がくっきりと見え、純粋に捉えることができ、生き生きと1日1日が過ごせているのではないか。主人公が桶の底に水を発見した時の喜びようが、まさにそれではないか。現代はスマホや街に情報や欲望が渦巻いているように、常にさらされている。そんな俗世間より、砂の中での生活の方が一人の人間として充実や満足感があると思う。
Posted by ブクログ
カンガルー・ノートの次に読みたいと思って買った本。▼人が「死にそう」な状況を克明に描写することによって、これほどまでに「生」をリアルに活字から摂取することになるとは思わなかった。安部公房は、荒唐無稽なフィクションを極めてさもありげに明晰に記述するから、こちらも信頼して没入してしまう。▼一方で不条理を条理として何ら疑わない村人の純粋さを俯瞰することが面白い。彼らの仕事。この意味を伴わない只の営為を通して、意味以外の表情や着眼点が立ちあらわれる。▼この描写の妙にふれ、読書“体験”そのものの価値を強く感じた。次はカミュの「シーシュポスの神話」を手に取ってみる。
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砂にさらされることで人生観が浮き彫りになるの、なんか嫌だなあ! 嫌だなあ、という気持ちがずっとあった。人生の本質の一つがあまりにも容赦なく書かれてると感じたからかもしれない。そこに悪意はないけど、だからこそ。
これってタタール人の砂漠を読んだ時と同じ感情かも。奇しくも砂漠モチーフというのも共通(タタール人の方は山岳地帯のイメージの方が強いけど)。 "タタール人の砂漠"には、停滞を破るきっかけとなる役割・それを支えに停滞に甘んじさせる楔の役割、どちらもあったと思うので、そこらへんも似ている。
もし男が一人で放り出されてたとしたらどうなったのか(女がいないとしたら)。
その場合もなんだかんだで停滞を選ぶ気がして嫌だ。
Posted by ブクログ
全体的に読みにくい文体だったが、砂穴から脱走するシーンには『走れメロス』のような疾走感を想起させられ、ページをめくる手も速まった。また、豊富な比喩表現も魅力的だった。
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けものたちは故郷を目指す、とはまた全く違うファンタジー。
発想がなかなか面白くて、けものたちとは逆な1日で読み切った。それでも時間軸が変わるとやはり読みづらい。
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中々ストレスの溜まる内容だけれど、これは傑作。昆虫採集に出掛けた男はある村に行き付く。考える事を止め言われるがままの暮らし、同じ作業を毎日毎日、まるで虫のよう...
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砂に沈む部落というなんともミステリアスな設定が自分好みだった。
砂の穴の中での暮らしを描くというシンプルなテーマであったが退屈を感じることはなかった。
男と女のやり取りや脱出を試みる男の様子などはもちろん砂との暮らしに対する比喩表現が豊富であったことも大きな理由であると思う。
もちろん砂の中で暮らしたことはないが口内の描写や身体中に砂が纏まりつく様子は恐ろしい程に感じることができた。
脱出が失敗に終わったあとはどのように物語を締めくくるか予測ができなかったが男が穴から出られる状況となってもあれだけ苦しんだ砂の中でもう少し暮らすという選択をしたのがよかった。
穴の中でラジオや男とのやり取りを楽しむ女を通してどれだけ劣悪な環境でもそこに生きがいや娯楽を見いだせるかは自分次第だということを学んだ。
Posted by ブクログ
独特な言い回しとの相性が良くなくて、読むのにかなり時間がかかってしまった(◜ ̯◝ )
人間の適応能力ってすごいんだな、というか適応するしかなくて、ある種狂った精神状態になることで潜在的に自衛してたのか、わたしなら普通にブチギレ続けてると思うけど
Posted by ブクログ
久しぶりの読書がこれだったので、難易度高めだった。時間の進み方が一定じゃないのがすごい気になって、これが意図的なものか普通に本ってそーゆーものなのか分からず考えすぎちゃった。多分この本で本来、吸収できるであろうことの10%くらいしか吸収できてない気がするけど、物語を通して、砂の女とか身近なものはミクロ的な描写で、風景とか遠いものはマクロ的な描写で表現してて、主人公目線の主観的なものの見方をそのまま文字起こしした感じ。そーやって考えると時間の進み方も主観的なのかも!ミクマクな描写の対象が物語が進むにつれ、変化してって、主人公の感じ方の変化を表してた気もしなくもない。最終的にみんなマクロでみたら一緒やん!って気づきに至って話が終了。この気づきにはそんなに驚かなかった。というか、そうでしょうねって感じだった。BGM的な意識と似ているのかしら。
感想を読んで、生々しさとか怖さはあんまり感じなかった。割とファンタジーとして捉えてたから自分に置き換えるとか感情移入するとかはなかったからだと思うけど、、。そーゆー感想持つのか!といい気づきでした♪
Posted by ブクログ
中盤まで同じような内容が繰り返されるところで躓いてしまい、なかなか読み進められなかったのですがやっと読み終えました。
結果ほんとにおもしろかったです。早く読めばよかったです。
不自由の中の自由、というか豊かさに気づいていくさまが
とてもよかったです。