あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)
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Posted by ブクログ
人は、自由を失うと壊れるんじゃない
自由がなくても生きられる形に、静かに作り替わっていく。
閉じ込められているはずなのに、
やがてそこが現実になる。
逃げられる可能性よりも、
今ここで成立している生活を選ぶ。
それは敗北じゃない、適応の完成だ。
Posted by ブクログ
極限的な生活を強いられる中で、資本的な価値が転倒していく様子が面白かった。
日頃生きている生活の中で、変化しないと思っているものは果たしてそうなのか?
砂のように世界は常に流動していて、それを我々は見落としてるのではないか?
男が閉じ込められ、強制された過酷な生活が、段々色付いて見えてくるのが不思議だった。
自分にとっての生活と価値。その「当たり前」を強く問い直された。
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砂に囲まれた環境の中で、意義不明な労働し続け、配給によってのみ生かされ、家族という共同体を形成するという、人生の縮図のような小説。
なぜそのような環境で人々は満足し住み続けられるのだろうか。きっと納得させられているからに他ならないからだろう。
近年では起業や副業、投資という言葉が叫ばれるようになってきたが、サラリーマンや時間の無駄となる人間関係ような砂や砂の女から抜け出すには、部落からしたら(社会からしたら)異常者にならざるを得ない。その"正常者"への引力が邪魔する。そんな理想と現実の描写。
一方で、自由と呼ばれる生活と制約のある生活、どちらが幸せに暮らせるのだろうかと考えさせられる。
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仕事を辞めるか続けるか迷っている今の自分にピタリとハマった。
毎日の繰り返しの仕事から逃げたい。でも逃げたらそこは自由なのか?
今のままで諦めてもいい。今があるから自由という妄想に執着しているのか?もしくは今の安定に執着しているのか。迷いながら読んだ。
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人生について考えさせられる。時代は全く違えどわたしだけではなく皆、砂に囲まれて生活している。
日常の意味のあるか分からない仕事を淡々とこなし、時にはそこから新たな興味深い発見をし、一方でそんな退屈なルーティーンからの脱出を試みて、失敗して順応していく。まさに人生そのものな気がした。
Posted by ブクログ
砂しか出てこないのに、こんな多彩な比喩表現ができるものなんだなと思った。読んでいて、こちらまで喉がカラカラになって口の中にざらざらとした不快感が出てくる。
人間の醜さ、汚さも浮き彫りになると同時に、他の生物にはない適応性、不条理な環境を受け入れ成長する人間の強さも感じた。
この砂の穴は誰もが何かに囚われて生きる現代社会にも通じる普遍性を感じた。それでも私たちが逃げないのは、日本という環境に順応していること、日々になぐさみ物の存在があったり、何かしらのささやかな充足を感じる瞬間があること、そして行先も戻る場所も余白になった往復切符をみんな持っているからということなのかな。
Posted by ブクログ
象徴と理不尽と真実が詰め込まれた恐ろしい小説だと感じた。
カフカの「変身」に似たものを感じるが、それよりもう少し人間の弱さ(ある意味強さ?鈍さ?)に踏み込んでいる気がする。
多くの国で翻訳され評価されたことに納得する。
このような状況は、形を変え、私たちの周りに大小多く存在している。
そして、そんな不毛な場所にすら、時間と共に根をおろしてしまう。
普遍的な人間の真実を描いているから、時が経っても色あせない作品なのだと思う。
2003.7.2
男の変化が面白い。女に情を抱くようになり、最後にはそこの生活から抜け出せなくなっている。「希望」という名の溜水装置は、生活の定着の象徴のように見える。どんなに不本意な生活でも、その日常に飲まれてしまうと、人はある程度慣れてしまう。そして、現実を肯定しようとする意識が働くのかもしれない。教師をしていた世界をも愛していなかったことが、決定的な決め手だったのかもしれない。
Posted by ブクログ
あまり読みやすい文体ではなかったが、かえってそれが主人公の抱える息苦しさとやるせなさにマッチしてたのかなと感じた。
希望と充足って、案外対極にあるものなのかも
Posted by ブクログ
冒頭に7年行方不明と書いてあるにも関わらず、男は脱出できるのか気になってしかたなかった。
男が以前の生活に辟易していたのもあると思うが、人間は自分の今いる場所が"居場所"だと思ってしまうし、自分の居場所になるように行動してしまう生き物なんだろうな。
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多彩な比喩表現が新鮮でイメージするほど男の人柄や女の姿が浮かんできて、物語に入り込むことができたと思います。自由を求めて幾度となく試行錯誤を繰り返したが、時間が過ぎるにつれ環境に慣れ、馴染み、小さな喜びを見つけ、心地良く思い、確実に逃げることができたが逃げる事をしなかった様に恐ろしさと日常に溢れる幸せを感じました。
また、女の外へ興味を示さず、今ある物に固執する様はある種の信念を感じ、同時に虚しさのようなものを感じました。
舞台も見に行き、イメージできなかった部分も鮮明かされ、また読み返したいです。
Posted by ブクログ
砂から社会や人生の無常さを投影することができた。
砂に自由を投影していたが、砂による不自由を強いられる。
自由とは、幸福とは、満たされることの重要さを考えさせられた。
不自由さがあるからこそ、目標や意義を見出しやすいのかも。
あんなにも脱走を望んだ彼は、結局は自分の成し遂げたことを理解してもらいたいという欲求を超えることはできなかった。
新種の昆虫を発見するという半永久的な名声ではないにしろ、自分のしたことを理解してもらうという何よりも難しいことは、待ち望んだ外の人たちには理解し難い。
Posted by ブクログ
読んでる間中、口の中に砂が入ってくる感覚になる。ザラザラしてて、湿っぽくて。砂の本読んでるだけなのに。安部公房すご。
砂の穴の中の生活。地獄なのに、最後は「今じゃなくていい」と逃げるのをやめて引き返す主人公……。そんなものなのかしら。そんな気もしてくるから、怖い。貯水装置を誰かに見せたいという欲望が勝った瞬間……。
こんな世界もあるのか、と、現実逃避できた。
文庫本の誰かのあとがきみたいなの読んでたら、内容めっちゃさらっとまとめてくれてて笑 これ読めばいいのでは?となるが笑
でもやっぱり安部公房の文章を読みたいよね。
Posted by ブクログ
第14回読売文学賞受賞作。
昆虫採集に訪れた男が、砂に囲まれた穴の底に閉じ込められ、そこで暮らす女と共に生活を強いられるという特異な設定の物語。住居は絶えず砂に埋もれていくため、男は脱出を望みながらも、生き延びるために日々砂掻きを続けることになる。
当初は脱出が第一の目的であったはずが、生活を続けるうちにその意識は徐々に変化していく。やがて男は状況に適応し、砂掻きの効率化を考え、女との共同生活にも疑問を抱かなくなっていく。この過程は、外部から見れば半ば強制された労働でありながら、内側からは日常として受け入れてしまう人間の性質を象徴しているように感じられた。
簡単に言えば社畜である。
砂という存在は単なる自然現象ではなく、時間や労働、さらには逃れられない状況そのものの比喩として機能している。単調で終わりの見えない作業の中で、人はどのようにして現実と折り合いをつけていくのか。本作はその問いを静かに突きつけてくる。
物語としての筋は比較的明快である一方、比喩や象徴が多く盛り込まれており、一度の読書では捉えきれない奥行きがある。再読することで新たな発見があるタイプの作品だと感じた。
発表当時から海外でも高く評価されているのも頷ける内容であり、現在においてもなお通用する普遍性を持った一冊である。
Posted by ブクログ
重い内容を読みたくて選んだ小説。
正にその通り、「諦め」や「絶望」という言葉が浮かんだ。
でもこれは、現実社会にも言えることなのではと。
ずしりと心に残る作品。
Posted by ブクログ
初めの2ページで最後がどいう結末かが分かってしまうが、それに至るまでの過程がいい。
理解はしずらいが、男の砂穴の中での生活や女との関係、生きる理由などが見えてくる。
最後はハラハラしながらも応援してた。
Posted by ブクログ
砂の中での生活と、社会生活での生活となんの違いがあるのだろうか?むしろ何もない砂の中の生活の方が、何も無いからこそ1つ1つの事柄がくっきりと見え、純粋に捉えることができ、生き生きと1日1日が過ごせているのではないか。主人公が桶の底に水を発見した時の喜びようが、まさにそれではないか。現代はスマホや街に情報や欲望が渦巻いているように、常にさらされている。そんな俗世間より、砂の中での生活の方が一人の人間として充実や満足感があると思う。
Posted by ブクログ
カンガルー・ノートの次に読みたいと思って買った本。▼人が「死にそう」な状況を克明に描写することによって、これほどまでに「生」をリアルに活字から摂取することになるとは思わなかった。安部公房は、荒唐無稽なフィクションを極めてさもありげに明晰に記述するから、こちらも信頼して没入してしまう。▼一方で不条理を条理として何ら疑わない村人の純粋さを俯瞰することが面白い。彼らの仕事。この意味を伴わない只の営為を通して、意味以外の表情や着眼点が立ちあらわれる。▼この描写の妙にふれ、読書“体験”そのものの価値を強く感じた。次はカミュの「シーシュポスの神話」を手に取ってみる。
Posted by ブクログ
砂にさらされることで人生観が浮き彫りになるの、なんか嫌だなあ! 嫌だなあ、という気持ちがずっとあった。人生の本質の一つがあまりにも容赦なく書かれてると感じたからかもしれない。そこに悪意はないけど、だからこそ。
これってタタール人の砂漠を読んだ時と同じ感情かも。奇しくも砂漠モチーフというのも共通(タタール人の方は山岳地帯のイメージの方が強いけど)。 "タタール人の砂漠"には、停滞を破るきっかけとなる役割・それを支えに停滞に甘んじさせる楔の役割、どちらもあったと思うので、そこらへんも似ている。
もし男が一人で放り出されてたとしたらどうなったのか(女がいないとしたら)。
その場合もなんだかんだで停滞を選ぶ気がして嫌だ。
Posted by ブクログ
舞台化されると聞いて手に取った一冊。
時代背景もあるのだろうけれど、言葉は難解で比喩も多く、正直なところ読みやすい作品ではない。
さらに、やや過剰にも感じる性的な描写が続き、そこまで必要か?と首をかしげる場面もあった。
けれど──物語そのものは、とても面白い。
砂丘へ昆虫採集に出かけた男は、帰り損ね、親切な老人の計らいにより、一夜の宿を与えられる。
そこは、女がひとりで暮らす、砂に埋もれた家。
蜂の巣のように砂丘にぽっかりと開いた穴の底にあり、出入りの手段は上から下ろされる縄梯子のみ。
一夜のことと思っていた男の目論見は、朝になって崩れる。
縄梯子は消え、女は淡々と言う。
「明日になれば水の配給がありますよ。」
冗談じゃない──すぐに帰るはずだった男は、終わりのない労働とともに、この奇妙な世界に閉じ込められていく。
昼は灼熱の中で眠り、夜は降り続く砂を掻き出す。
逃げ出そうともがくほどに、状況は静かに、しかし確実に絡め取ってくる。
理不尽で、不条理で、どこか現実にも通じる閉塞感。
それでもなお、穴の上に立つ日を願い続けた男の結末には、思わずニヤリとしてしまった。
読みにくさの先にある、じわりと効いてくる一冊。
今年の11冊目
Posted by ブクログ
砂穴の中で生活する男の皮膚や口内にこびりついた砂の表現がリアルでゾワっとした。徐々に砂穴での女との生活を肯定していくようになる男の心情の変化が面白い。
Posted by ブクログ
2026.04.14
砂がまとわりついたようなざらざらした感覚が終始付きまとう作品。書かれた時代が何十年も前なのもあるのか、表現が難しい部分も多く読みづらかったが大枠は読み取れた。
Posted by ブクログ
全体的に読みにくい文体だったが、砂穴から脱走するシーンには『走れメロス』のような疾走感を想起させられ、ページをめくる手も速まった。また、豊富な比喩表現も魅力的だった。
Posted by ブクログ
けものたちは故郷を目指す、とはまた全く違うファンタジー。
発想がなかなか面白くて、けものたちとは逆な1日で読み切った。それでも時間軸が変わるとやはり読みづらい。
Posted by ブクログ
中々ストレスの溜まる内容だけれど、これは傑作。昆虫採集に出掛けた男はある村に行き付く。考える事を止め言われるがままの暮らし、同じ作業を毎日毎日、まるで虫のよう...
Posted by ブクログ
砂に沈む部落というなんともミステリアスな設定が自分好みだった。
砂の穴の中での暮らしを描くというシンプルなテーマであったが退屈を感じることはなかった。
男と女のやり取りや脱出を試みる男の様子などはもちろん砂との暮らしに対する比喩表現が豊富であったことも大きな理由であると思う。
もちろん砂の中で暮らしたことはないが口内の描写や身体中に砂が纏まりつく様子は恐ろしい程に感じることができた。
脱出が失敗に終わったあとはどのように物語を締めくくるか予測ができなかったが男が穴から出られる状況となってもあれだけ苦しんだ砂の中でもう少し暮らすという選択をしたのがよかった。
穴の中でラジオや男とのやり取りを楽しむ女を通してどれだけ劣悪な環境でもそこに生きがいや娯楽を見いだせるかは自分次第だということを学んだ。
Posted by ブクログ
独特な言い回しとの相性が良くなくて、読むのにかなり時間がかかってしまった(◜ ̯◝ )
人間の適応能力ってすごいんだな、というか適応するしかなくて、ある種狂った精神状態になることで潜在的に自衛してたのか、わたしなら普通にブチギレ続けてると思うけど