【感想・ネタバレ】砂の女(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)

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感情タグBEST3

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男の心境の変化が生々しく、全然他人事じゃない!と感じて恐ろしかった
これからの人生、ここは砂の中ではないか?と常に自分に問いたいし、逃げることを諦めたくない……でも本当に、逃げるなんてことできる?





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2024年11月04日

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凄まじき傑作!
これを映像化しようと思ったことも凄いと思う
こんな理不尽な状況に陥ったらと想像すると震える
追い詰められた人間の心理描写が生々しい

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2024年10月16日

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めちゃめちゃ面白い。相当好きかも。、
カフカの城とかに似ている気がした。

――罰がなければ、逃げるたのしみもない――
意味わからんけど、最後なるほどと。表現の面白み、読み応え、おかしみ…ものすごい好きだった。
難しそうだけど、意外とミステリーとかサスペンス的な感じだからすいすい進む。
変な話、策を練って頑張って脱出しようとするってシンプルな話だから、相当読みやすい。もちろん、それだけじゃないけど。

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2024年10月12日

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ネタバレ

砂の中に閉じ込められた世界だとしても生きるため、欲しいもののために働く。
地上の世界に戻れても何も変わらない。
生きるとはそういうことだという皮肉を込めたメッセージを本作品では感じた。

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2024年08月31日

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ネタバレ

本作『砂の女』は20カ国以上の国に翻訳された国際的にも高く評価された名作です。

ストーリー自体はあくまでシンプル!ふと迷い込んだ砂丘で、理不尽にも穴の中の家に閉じ込められた主人公。砂の壁に囲まれた穴から脱出すべく奮闘するも・・・という物語です。

前回の記事で紹介した『箱男』はストーリーが難解で、問題作と言われるほどの奇作でしたが今作『砂の女』は非常に読みやすいです。

ただ、阿部公房らしい不条理な世界観は健在です。

文学の国際性ということを考えることになったこの作品は私にとっても貴重な読書となりました。これは楽しい読書でした。

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2024年08月28日

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ネタバレ

今までの生活との対比で

・妻とは避妊具がないと出来ない上になじられている
・新種の虫を見つけて名前(名声)をつけたい

・砂の女とはできる
・「希望」を村人に自慢(名声)できる

と願いが叶ってしまっているし、妊娠した事である程度村人からも認めてられてはしごも外されなくなり…
こうなると砂の生活が罰ではなくなってきて「罰がなければ、逃げるたのしみもない」ってのになるんだろう。

何回も読めばこう言う対比がまだまだあるんだろうな…

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2024年07月31日

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そんなに分厚くない本なのだけれど、各章が濃密で読むのに時間がかかってしまった。初めて読んだ種類のインパクト大。こういう本が世界的にヒットするというのは、なかなか世の中病んでいるな?いい意味で。

2024.7.31

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2024年07月31日

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砂の女
著:安部 公房
新潮文庫 あ-4-15

けだるく、やるせない世界、男の隠れた一面が次第にあらわになっていく

失踪者 民法第30条 失踪の宣告 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる

海岸からほど近い村にある砂の穴の家、そこに囚われた男と、砂の家の女の物語

村人とぐるであるその女は、その失踪者と交わい、生活を共にしていく

すんなりと、村に入れたにもかかわらず、なぜか、抜け出すことができない

メビウスの帯なる言葉にて、果たして、穴の中にいることとは、同時に、穴の外にもいることになっているのでしょうか

女が、子宮外妊娠の治療に行くために、梯子が残されていても、男も、もはや、その穴の家からは抜け出そうとはしない

かくして、失踪宣告の審判の日は近づいていく

もくじ
第1章
 1~10
第2章
 11~27
第3章
 28~31

ISBN:9784101121154
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:288ページ
定価:710円(本体)
1981年02月25日発行
2003年03月25日53刷改版
2020年05月25日79刷

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2024年07月11日

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ネタバレ

うまく言えないのですが、
男性と女性の生物(身体)的違いがもたらす、恋愛感情のすれ違いの顛末が本筋とは別軸に暗喩的に述べられてるような…
やはり、ついてるものがお互い違いますし役割も違いますし、どこまでいっても動物ではありますし、理性というものはあるにせよ、お互いのことを分かり合おうとする姿勢が大事ですね
と思いました。愛が足りんとかそういうことではないのだと思いますよって医学部卒の阿部公房が言ってるのかなと想像すると愛おしくなりました(多分違いますけど)

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2024年07月13日

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ネタバレ

シナリオ構成、ユーモアの多様性、シンプルさ、比喩のうまさ、どれをとっても勉強にしかならない。
運命とは何か、生きるとはどういうことか、存在意義は何か、そういった人間としての在り方に問いかけ、自分の日常を考えさせられ、どこに向かうべきか、どこに焦点を絞るべきか、何に重きを置くべきかなど、ほんとうにいろんなことを考えさせられた作品だった。

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2024年07月03日

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ネタバレ

 初めて本著者の作品を読みましたが、引き込まれる世界観・独特の比喩表現に感銘を受けました。砂の特性について、現実ではありえないものと思いながらも、その比喩表現により、なんだか実在の砂もそうではないか、と思えてしまう不思議さがありました。
 最初は砂の部落を否定し、抜け出そうとしていた主人公も、最終的には元の生活では得られなかった生き方を見出しました。果たして、便利な環境があるだけで人の精神は満たされるのか、考える機会にもなりました。

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2024年05月30日

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ドナルド・キーン氏が解説にも書いていた通り、徹底したフィクションでありながら描写がどこまでも写実的なのが歪さを生んでいて引き込まれた。
あとタイトルが砂の『女』であることにも意味がありそう。主人公の人生を変えたのが結局環境というより女の存在だったということか…?

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2024年05月20日

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「納得がいかなかったんだ、まあいずれ、人生なんて納得ずくでいくものじゃないだろうが、しかし、あの生活や、この生活があって、向うの方が、ちょっぴりましに見えたりする、このまま暮らしていって、それで何うなるんだと思うのが、一番たまらないんだな、どの生活だろうと、そんなこと、分りっこないに決まってるんだけどね、まあ、すこしでも、気をまぎらせてくれるものの多い方が、なんとなく、いいような気がしてしまうんだ」

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2024年04月26日

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ネタバレ

とにかく独特な表現が多く読みきるのに大変な小説だった。
特に好きな場所は砂からの脱出を図る男の気持ちの変化で、はじめはあんなに必死に運命に抵抗していた男も全て曝け出されて自尊心を徹底的に壊された結果、人間ではなく終盤、見せ物みたいな行為ですら許容してしまってしまう。
この時点で男と女の自尊心の差が逆転してしまい女が拒絶してしまった事すらよくわかっていないのが、あんなに部落での生活に対して不満をぶつけていた男のあり方がかなり皮肉めいていてかなり好き。
最終的には男の現実からの逃避という根っこにあった欲望がうまく部落とかみ合った感じで終わった。
うまく何が言いたいか読み取れなかったためもう一度チャレンジしたい。

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2024年11月04日

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ネタバレ

文学小説は難解で読むのに時間がかかるイメージがあったので気を引き締めて挑んだが安部公房は比較的読みやすく、推理小説のようにスラスラと内容が頭に入ってきた!
最初は砂への文句ばかり言っていた主人公が最終的には女の肉のシワに固まった砂に愛着すら抱いてたのが「ナントカ蝿は適応力がある」等の付箋回収だったり、エディプスコンプレックスをチラつかせていたり(ラストの探究心や女を母親とみてるような当たり散らかし様)構成の綺麗さに驚いた!
また、主人公と同じように困惑するような設定なのに、主人公が現実的な公務員であることから妙に写実的で面白かった!後味残る、また読み返そう

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2024年09月11日

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とにかくハラハラして一種の冒険小説のようにどんどん読んでしまった。ただそこには「砂」という物質に着目したユニークな視点から現代の生き方を照らし合わせるという巧みな表現もあるように見えた。世界でも人気な理由がわかる。分析したい本

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2024年09月01日

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ネタバレ

ずっと抵抗を感じながら読み進めていたのに、結末を知ってから読み返すと全てが自然な流れに感じるという不思議な小説。
砂が積もる一方で男の本質は露になり、表面的には苛立ちを覚える一方で本質的には心が洗われ生活が満たされていく。
環境や経験から得る思考はまだ顕在的なもので、それに反して潜在的に作用することもあるのかも。砂の下から水が湧いてくるように。

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2024年08月25日

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男が失踪し、七年たったことで法律により死亡が認定されたところから物語は始まる。

しかし実際は、砂掻きをしないと砂に埋まっていってしまう砂穴の中の家に捕らわれていた。その家には一人の女が住んでいた。

そこは寝ただけで体や口の中に砂がこびりつき、とても生きていけるような環境ではなく、男は何度も脱出を試みる。

そんな男だったが、最終的にはその砂穴の中で暮らしていく。一冊を通して男の女に対する感情や男にとっての自由・幸せとは何なのかを考えさせられた一冊だった。

安部公房の他の作品も読んでみたい。

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2024年07月26日

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のどがカラカラになって、肌がカサカサになって、
目の前には砂しかない、、、ような気分になる。
それくらい描写が細かくて凄い。
同じような人達と群れること、そして慣れることって
ちょっと怖いなと思う。
罰がなければ、逃げる楽しみもない

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2024年06月30日

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未発見の昆虫を探しに遠出した際に、意図せず砂の中の家に閉じ込められた男と、その家に居た女。
あまりにシュールな状況下で男が脱出を試みる話。
ある意味、ホラーの部類に入るような内容。

安部公房さんの作品で、古さはありますが、何故か
社会生活や労働といった人間の生の在り方についても考えてしまう、とても趣のある作品でした。

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2024年03月19日

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いろんなところで、変わった話で面白い、とおすすめされていたので、気になって読んでみることに

昆虫採集が趣味の教師の男が、砂穴の底に落ちてしまって出られなくなり、脱出を試みるもうまく行かず、穴の底で暮らし続ける女と過ごす日々が描かれていました

ありえない設定ですが、自分なりに頭の中で風景をイメージするのが面白いと感じながら読み進めました

穴の中の劣悪な環境、男が極限に何度も追い込まれますが、その時のカラダや心境の状態、ある意味何を考えてるのかよくわからない、なぜか穴の中に固執する女に対する男の怒りや気遣い、さまざまな欲望、研究者としての一面、部落の異常な状況、いろんなことが複雑に絡み合って、ありえない設定ながらもありえそうな描かれ方で、確かに面白かったです

ただ、ちょっと精神的にしんどい時期に読んだこともあってか、疲れました

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2024年11月06日

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ネタバレ

砂穴の中にある家で、女と暮らさざるを得なくなった男の話。
最初はこの理不尽に対して足掻きなんとか脱出しようと試みるが、徐々に砂穴の生活を無自覚に受け入れていき、最後は水が砂穴で確保できる事に気付き、蒸留装置の製造を生きがいにしてしまいます。
我々の日常生活でも、如何ともしがたい理不尽は大なり小なりあるわけですが、その理不尽から逃げられないと気付いた時点で、その中でやりがい、生きがいを見つけて、やっていかないと精神的に生きていけない…、そんな話だと、解釈しました。
しかし、読後にまず感じたのは、自分も砂まみれになったような気分。外に出たわけでもないのに、部屋の掃除して、シャワー浴びたくなったよ(笑)

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2024年10月07日

Posted by ブクログ

とりあえず砂まみれの気分

物語の先が気になって豊富なメタファーまでは考える余裕がなかった
「100分で名著」を買ってあるので、こちらを読んでからまた再読する

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2024年10月04日

Posted by ブクログ

誰もが知らず知らずに砂の穴で砂かきをしているかのような人生を送っている。そして、砂の上の生活に思いを馳せるが、それは幻想でもあり、今ある生活の中から幸せを見つけることが大切である。とも解釈できるのかな? 何んともいえないザラザラとしたような読後感であった。

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2024年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終始ジメジメと体に汗と砂がまとわりつくような感覚がずっとあった。不気味で息苦しくて、自分も砂の中に閉じ込められているように思えるほど、没入感があった。読んでいて気持ちが悪い。まんまと騙されていくら砂を掻いても出られず、やっと出れる時が来たのになぜか砂穴にとどまってしまうのはまるで労働に追われている現代人を見ているようだった。

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2024年09月14日

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ネタバレ

読みやすいような、独特な癖のある文体でつい先が気になる。
結局最後は砂の家で暮らすことになったんですか?

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2024年08月28日

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不条理で悲惨に感じる生活が、やがて慣れていき、本質的に変わらない何かを指摘しはじめるときの恐ろしさ。

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2024年05月01日

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推理小説を読んでいるように先が気になってすぐに読んでしまい、それなりに引き込まれた。
この本に出てくる女は、砂の環境でしか生きられない昆虫を生き移しているように感じ、男もまたそのようになっていく、人間が環境に適応し、初めは逃げたかったもの、次第にその環境の中の生活の中に生きがいを見出して生活してしまうんだというのを感じた。
また冒頭の、罰がなければ逃るたのしみもない、という冒頭の言葉のように、逃げることに対して罰だと感じなくなり、逃げ出すこと以外のものに優先的な関心を見出してから、逃げることもやめてしまう。その言葉の通りのことを表していると解釈する。
それは、部落の人間の生活に対する男の生活の明確な違いがありつつも、自分が逃げ出して戻った生活に何があるのだろうか、そこに違いはあるのかというところも問われていると感じる。

何を伝えたい小説かはわからないが、人が置かれた環境の中で色々な解釈をしながらその環境に適応していく姿を見る、それを昆虫になぞらえている、一種の生物にすぎないもののように感じさせられた。

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2024年04月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

安部公房の世界観が好き。なぜかものすごく惹かれる。そしてこの「砂の女」は、もう…読んでも読んでも砂、砂、砂…!物語の主人公が砂の世界から出られないのと同じように、公房さんの言葉の世界に閉じ込められたような…つまり、すんなりと読み進めるのは難しかったわけで。面白い!と言って人におすすめも出来そうにない…。でも、それって凄いことだと思うのです。読み手をここまで安部公房ワールドに連れて行ってくれたのですから。物語は全てが面白いとは限らないし、面白くなければいけない、読む価値がない訳ではないと思う。どれだけその世界に引き込まれたか、だと思うから。その点でいえば、私は星5つ分、楽しませてもらいました。

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2024年11月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても怖かった。
本を閉じ、少し経って思考が整理され、
この怖さを知っていると思った。

宗教に入信していくときの心境変化。
夢を見たことがある。
逃げられない状態に置かれ、気づいたときには、
もうここに居よう、ここに居ればいいんだと思っている。
今でも思い出す怖い夢。

この本を読む私は怖さを感じているが、
男はもうあわてて逃げだす必要を感じていない。
ここも、実は何かの本の中かもしれない。

手段と目的が区別されないのは
横に流れる時間を縦に暮すようなものであり、
そうするとミイラになるという。(p.199)

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2024年04月06日

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