あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)
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Posted by ブクログ
感情と比喩の連続
比喩は軽快ではないけど秀逸でメモしたくなるようなものばかり
自分が見ているいまの正常・日常が、無意識に焦点をあてている対象から離れ、視野を広げてみれば、
その「正常」の外にいる人にとっての異常である可能性
身近な例であれば社畜や宗教的な洗脳なのかなと思った
男が「異常」に染まっていく過程が、中盤からジリジリとその気配が貯まっていき、後半の勢いが印象的だった。
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シンプルなストーリーで読みやすくおもしろかった。
砂の中の部落、そこで砂掻きをして日銭を稼ぐ村人。毎日のルーティンに慣れて、自由に歩き回ることや綺麗な景色を見て感動することを求めない。
これは現代社会のシステムを暗示していると思った。
そこに外から入り込んだ主人公。
あらゆる脱出方法を試みるが、失敗に終わる。
長年その生活を繰り返していくうちに、主人公もその生活に慣れていく。
最後には、縄梯子が垂れ下がったままになっても、もう脱出を図ることはしなくなっていった。
たまには旅行して綺麗な景色を見ること、いろんな物語に触れること、いろんな人と話をすること。こういうことを意識してやっていかないと、砂の中の住人のように狭く暗い世界で単調に生きることになってしまうと感じた。
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チャットGPTに私の好きなタイプの本を伝えておおすめしてもらったこの本。笑
全然知らなかったが、作者の安部工房は、ノーベル文学賞に1番近かった日本人らしい。
相当有名な作家だったんだろう。
ただ珍しい虫探しをしにきただけなのに、砂の街の砂の穴に突如囚われ、そこで見知らぬ女と生活させられる男。
その姿は現代にも通じる。息苦しく生活しにくい社会やシステムを変えたいと思って行動したとしても、それを跳ね除けようと何度も何度も頑張っても、結局は無駄。最後には、もうすっかり諦めて、そちら側の人間に落ちてしまう。そして、骨抜きにされたかのようにただ生きていくだけ。
そんな、悲しいけど、なんだか共感できることもある少し怖い物語。
卑猥な表現もあったのがちょっと不快だったが、全体として日本文学らしくて、とても良かった。やるせなさというか、おぞましさというか。でも、そういうふうだよね、現実は。という感じの本。
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高校生のときに初めて読んで、何度も何度も読んでいるけど、毎回読み終わったあとに考えにふけってしまう。
ただ、前回読んだときはこう考えたけど、ちょっと変わったな〜っていう自分の変化も感じられて楽しい。
社会の中で生きるってどういうことなんだろう。何のために働くんだろう。今わたしは穴の中なんじゃないかな…
これからも定期的に読み返したい一冊です。
Posted by ブクログ
安部公房の海外に翻訳されまくった名作。
脱出不可の砂地獄で奔放する男とそこに住む女の物語。
絶望的な世界でもがく男、そんな世界でどこか達観した女。
閉鎖空間での心理描写、砂に対する情景描写がすさまじく、読んでるこっちがザラザラして息苦しくなるほど。
気になりすぎて速読した結末は、渇いた現代人の価値観に確かな潤いをもたらしてくれるのではないでしょうか。
どこか海外SFっぽさもありながら心に残してくるのはしっかり日本文学っぽさ。
翻訳されてしかるべき名作を皆さんも是非...
Posted by ブクログ
初・安部公房。面白かった~(笑)虫を捕りに来た男が砂の街に囚われ・・・不条理な世界に閉じ込められ必死に脱出しようとする気持ちと徐々に変わっていく気持ちが面白かった(笑)そして女が妙にエロチックな感じだった(笑)安部公房読みやすいし面白い他の作品も読んでみよう(笑)
Posted by ブクログ
令和に読んでも全く色褪せていない安部公房の名作
著者自身が2つ(2人)の自由をテーマにしたと語っているが、やはり非凡な才能がなければこの作品にこのタイトルは出てこないよ
Posted by ブクログ
浅い言葉になってしまうが狂気的な文章!とそういいたい。
ずるずると蟻地獄のように砂の中に引きずり込まれていくような感覚、男の気力が削がれていく様が恐ろしくて下手なホラー小説より怖く、面白かったです。
他人なんてどうでもいい、今を生きる自分らの利益さえあれば……というような、出てくる人物たちの描写も恐ろしく、安部公房の見る人間とはこのようなものなのだろうか?と評論などを読んでみたくなる良い読後感のある名作でした。
Posted by ブクログ
「米の炊けるにおいにも、夜明けの色がまじりかけている。」だったり、表現や文章がとても好みだった。
ストーリーも面白かった。
続きが気になって、中盤〜終盤は一気に読んだ。
Posted by ブクログ
友人から薦められて読みました。
比喩表現の多い文体で、砂特有のざらざらとした質感の物語です。
それでありながら女と男の間で繰り広げられるやりとりであるとか、情であるとかに湿度を感じる面白い本でした。
色々なものに対して意義を見出しながら生活することはきっととても充実している。
でもそれができない環境に閉じ込められたら?というなかなかに面白い本でした。
Posted by ブクログ
内容もざらざらしてるしなんか、ずっとざらざら感。水とか大気とかに惑わされる物語には出会ったことあるけど砂って今までになかったかも。読み心地も読後感も別に気持ちよくなかったけど面白かったな。主人公の感情の起伏がとてもよく伝わってくる。後半は気持ちが落ち着いているのが伝わってきたけど水を自力で獲れたときは気持ちの昂りが伝わってきた。砂の世界から出ることではなく、置かれた環境でよりよく生きる(乾きから逃れること)ことを目標にするようになり、水が自力で獲れるようになっても砂かきは続けていくんだろうなぁ。
友達が面白いというので読んだんだけど、友達はこれを何歳の時に読んで面白いと感じたんだ??と疑問に思った。
Posted by ブクログ
自由とは。
私はこの昔の本を読む前に、事前に少しあらすじを確認し、自由がテーマで、かつ何ヶ国もの国で翻訳されているとのことを知り、興味を持ち読みました。
先入観を持つことになりうる確認事では。と感じましたが、この大作を読み解くにはそれはあまり関係がありませんでした。
描写は細かく、かつ繊細。主人公が終始不自由な印象を受けました。
そして、読むにつれ自由意思とは何かを考えざるを得ない状況に読者をも引き連れて行くのです。
そもそも自由のない状況下にある主人公においてですら問われる“自由意思”の意味。また、生きるとはどう言うことなのか。
私はこの大作を読むことで、不自由さと自由について大切なことを学びました。追体験してしまう引き込みの強さがこの作品にはありました。
興味がある方にはお勧めしますが、私は注意が一つ必要なのをここで書かせていただきます。
それは性描写等があり、R15の様な人を選ぶ可能性がある点を書かさせていただきます。
しかし、読み終えた時、おそらく“私の自由とは”に触れること間違いないです。
自由について。
日々の仕事について。
生きがいについて。
などなど、とても幅広い考察を私はする事ができました。
読み手になって“自由”という大切なことに触れていただけると幸いです。
Posted by ブクログ
読んでいると、体をはたきたくなるような
口の中までジャリジャリしてくるような感覚。
蟻地獄に落っこちたアリの気分
掻いても掻いてもさらさら埋まって戻っていく
砂の怖さ。
ずっと夢の中で走っているみたいな感覚。
理不尽としか言いようがない話だけど、
抵抗しても無駄なんだと悟ったら…
この生活も悪くないと思ってしまったら…
怖すぎでした。
Posted by ブクログ
ある著名人が言っていた作品で、興味はあったが今ではないと思っていた。しかし本屋に行ったら、光を差しており思わず買ってしまった。余談でした。
本作は砂の女というタイトルの通り、砂の女と男の物語であり、比喩表現や物語の構成などさすがであった。また、どっぷり浸かってしまい、口の中や喉の表現があれば無意識に、自分の口を探ってしまう。ジャリジャリとした食感も伝わってくるそんな作品でした。
正直なところ、未熟なのでこの本が伝えるメッセージはあまり掴めなかったです。
2025/12/10追記
心理学でいう学習性無気力(ストレス)の状況に似ていると思った
Posted by ブクログ
2025年の文学1冊目。高校時代から気になってた。比喩や描写の独創性や的確さには驚くものがある。たまに何いってるか分かりづらいが。この文学を通して何を伝えようとしてるのか、自分には漠然としか掴めなくて難しい。
ただ、男の最後(結局穴に居座る)は、割と早いうちから私は展開が読めていた。それが一番美しい終わり方なのは間違いない、というかそれ以外無いだろう。その、砂みたいなむず痒さが、この作品の本質か。
Posted by ブクログ
貪欲なイソギンチャクにひっかかってしまったオッサン、結局それでいいんや…
女の周りに立ち込める、すじ肉を煮るような匂い
読んでいると、身体中が渇き、ザリザリザリザリするようで、息苦しくなってくるようで、面白かった〜
Posted by ブクログ
ヘミングウェイの『老人と海』あるやん?
アレを全部砂で埋め立てました。みたいな小説です。
もう少し丁寧に書きます。
話の筋としては大衆文学のレールに乗るぐらい面白いです。解説でも言われているとおり、ミステリと呼べるぐらい明確なゴール、謎があります。
一方で比喩表現や情景描写が複雑で想像しずらかったりします。音に関する表現はよく分からない。
けど砂の流動や味、感触は一級で、これでもかってぐらい含まれてます。子供の時に公園で転んで砂まみれになった日を思い出せます
男が錯乱した時の文字の羅列ももはや笑てまう。思考がめっちゃ巡る感じがとても分かる。
あとどんだけ穴に戻されても折れないのがね。メンタルが強いのか、弱いのかよく分からんね。
特殊だ。難しいと聞いて身構えましたが、寓意やら哲学やらを語る部分以外はスラスラ読めました。
ストーリーが辛すぎるけどね。次はゆるふわ系なの読みたいな......
Posted by ブクログ
流動する砂、逃げ出したいのに抜け出せない、砂に絡め取られていく世界。砂を情報に置き換えると今の時代を切り取っている様でもあり、いつの時代も大差ない日々の連続
Posted by ブクログ
感想になっておらず恐縮であるが、「凄いものを読んでしまった」という読後の衝撃が忘れられない。
砂穴に囚われた絶望、日常と自由についての思索、水を求める根源的欲求、脱出のサスペンス、女との交わり......
人間の根源に迫る物語と、巧みな比喩が重ねられた筆致の組み合わせが、この作品を名作たらしめている。
主人公は男であるが、タイトルは砂の女。女は家を守り、男に奉仕し、最後は妊娠により物語から姿を消す。砂穴に囚われた女の様子は、始終何かに縛られ続けながら生きる、女性の苦しみを暗示しているように思われた。
しかしあれほど砂穴、そして部落から脱出しようとしていた男が帰属意識を感じ、逃亡を先延ばしにして7年も経過するとは驚きの一言である。結局人間は環境の変化に対して、最終的に順応を選ぶということだろうか?
Posted by ブクログ
男は周囲に染まり切っていない自分をアピールするために謎めかして休暇を取り、その最中で砂の罠に嵌り、女との共同生活が始まる。脱出を試みる中で男が思う「自由」というのも決して壮麗ではなく、思い出すのは灰色の日常のみ。砂の家にいるときであっても男は何も変わっておらず、「逃げるたのしみ」に生を求めて生きているのは同じだったといえる。
だが、物語終盤になると「なぐさみ物」という男にある本質的な生きがいを見つけることになり、物語は終わる。
最終的に男は自分の人生に満足しているようだったが、とても虚しい終わり方だと思った。人は充実した人生を生きることができれば、それがどんな形であれ良いということなのだろうか。
「セックスしないと出られない部屋」にいたけど、途中から目的が脱出じゃなくてセックス(その他もろもろ)が目的になって、それが生きがいになる話、というのが結構いい感じのまとめかも。(2025/11/8)
p60 罪 p62 擬死体発作 p71 p87 p90 p126 p177
どう、壮麗ではなかったのか。
Posted by ブクログ
独特な比喩表現で、途中止まって考えてしまう描写がたくさん出てきます。
たとえば、「くらげのように踊りだす胃袋」。
くらげの踊り‥?海にいて始終泳ぎ漂う、あのくらげを思い浮かべました。
ストーリーは女性蔑視があるものの、人を監禁する術をもち、徐々に洗脳されていく様や、「砂」という自然物質を絶え間なく身近に感じさせるものです。
砂のように引き込まれて完読しました。
Posted by ブクログ
とにかく砂に対する描写が、口やカラダの中に砂が入る不快な気持ちが湧き上がるくらい巧緻。絶望とそれに抵抗し、さらに絶望し、最後行き着く先にあるものがとても意外だが、なぜか納得感がある、そんな作品だった
Posted by ブクログ
大屋根リングからの眺めに備える課題図書として読んだ。大屋根リングを先にイメージして読んだためか、実景を見て、かつ友達からの説明をふまえて、砂の穴の構造を読み違えていたと思われる(読解力)。映画も観てみたい。本の内容を思い出しながら感想を書こうとすると、指宿での砂蒸し風呂、インドのトゥクトゥクで目鼻口が砂砂しくなったこと、運動場で強風に曝されたときに皮膚中で感じた砂の感触、アサリの味噌汁で砂をジャリっと噛んだときの不快感、などの自分の砂体験が続々と彷彿とされてくる。砂の穴で過ごした経験なんてもちろんないのに、ありありとイメージできる表現の妙。脱出劇のところはハサミの形状や頑丈さに疑義を抱きつつも疾走感をもって読み進められた。非日常が日常と化していく過程が印象的で、戦争という非日常の日常化についての小田実の文章と脳内リンクした。あとは近代批判のニュアンスを終始感じながら読んでた。自然の一部である虫[=前近代の象徴]を採集する男[=近代の象徴]が、不本意ながら自然の一部になったかのような生活をし、やがてそこに安住していく可能性を秘めて終わる最後、これは皮肉かしら…とか思ってた。他にも、同僚たちの休暇に対する姿勢とか、役所?を批判する村人とか、砂を研究しようとする男の考えとかとか、、、随所に近代批判のニュアンスを感じた。
Posted by ブクログ
新潮文庫の2025年プレミアムカバー版に惹かれて手に取りました。
砂に塗れながら生活する描写がリアルで、読んでいるこっちも身体や口の中が砂まみれになっているような心地さえする。
人間の心のざらついたところや、閉ざされた世界で心の潤いを見出していく描写が、砂だらけの村という舞台によく映えていると思いました。
なんだか凄いの一言に尽きる。
Posted by ブクログ
欲しいものって、手にした途端に価値が無くなってしまう。無くなるというのは正確な表現ではないかもしれない。手に入れたと同時に、何かを失っている気がする。だからプラマイゼロで、満たされない。その欲しいものに対する熱意とか情熱、憧憬とかを、欲しいものを手に入れてしまったことで、もう自分は味わうことができなくなってしまったからかな。
Posted by ブクログ
あんなに脱出したかったのに、いざ出られるとなると砂の暮らしを選ぶ男。人が生きる上で何に価値を見出すか、そして、観念してからの男の変わりようも面白い。結局、女は砂みたいにサラッとしてるけど粘ってて、したたかでしなやかで、男より上手なんだよね。女はもしかしたら男の元に帰ってこないかもねー。
Posted by ブクログ
ざっくりのあらすじを聞いたときは、ホラー系なのかと思っていたが、そんなことはなかった。
「砂の村」でも「砂の家」ではなく、あくまでも「砂の女」。主人公が男性であり、男女であるがゆえに性の問題も絡むのだけど、結局のところ、「人は孤独では生きていけない」ということなのかなと思う。
語り合う言葉は何でもよくて、生活そのものに満足していなくてもいい。むしろ孤独ではないと感じられたときには理不尽な生活すらも彩りを持つのかもしれない。
それは逆説的に、孤独がいかに圧倒的な力を持っているものであるかということでもある。
尊厳を虐げられがちな「女」が、衆人環視を拒否したときもそう。あれは「男」が来て孤独から救われたがゆえに、自らの最低限の尊厳を守り通す糧にできたのではないかと思う。
あの砂の村では男にも女にも「顔」がない。つまり、誰でもないが、誰でもあり得るということなのかと思った。