あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)
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Posted by ブクログ
散々足掻き苦しんだが、結局ラストは砂の中の生活を受け入れる。反復や習慣が人に染み込んでいく。比喩がひたすらに秀逸。砂や虫について、詳しくやや専門的に描かれる。いかにも学問に精通した人の視点だと感じた。
Posted by ブクログ
この作品には、全体を覆う“乾いた空気感”というものが凄くうまく表現されていた。無機質で冷たい文体。そして主人公の一人称ではなく、神の視点から淡々と語られる構成。その全てが合わさることで、読んでいるこちらまで砂に包まれていくような感覚になった。
物語の展開自体は非常にシンプルだと感じた。ある日突然、主人公の日常は崩壊し、砂の世界へ閉じ込められる。そして元の生活へ戻るために脱出を試みる。ただ、その分かりやすい構造の中に、とてつもなく深いテーマが隠されていた。
序盤では、理不尽に閉じ込められた主人公に強く同情してしまう。しかし読み進めるうちに、ある違和感が生まれた。
「元いた世界と、砂の世界は本当に違うのか?」
もちろん見た目は全く違う。だが本質的には、どちらも終わりの見えない労働と閉塞感に支配された世界なのではないか。主人公が砂を掻き続けるように、私たちもまた社会の中で何かを繰り返し続けている。読んでいるうちに、砂の村だけが異常なのではなく、人間社会そのものが巨大な“砂の世界”なのではないかと思わされた。
そしてこの作品が恐ろしいのは、主人公自身も少しずつその世界へ適応していくことだと思う。最初は必死に脱出を望んでいたはずなのに、次第に砂の生活の中へ意味を見出していく。その姿は、人間がどんな環境にも慣れ、生きる理由を探してしまう存在であることを表しているように感じた。
そしてこの作品は、「自由とは何か」という問題を提議していると私は感じた。
私自身、社会の歯車として生きることに強い息苦しさを感じ、会社を辞め、ワーキングホリデーでオーストラリアへ渡った。そして日本へ帰ってきた今も、再び海外へ行こうとしている。ずっと何かから逃げ続けている感覚がある。けれど、この小説を読んで思った。逃げた先に、本当の自由はあるのだろうか。結局、人はどこへ行っても、自分自身からは逃げられないのかもしれない。砂の世界から抜け出しても、また別の砂の世界が広がっているだけなのかもしれない。それでも人間は、どこか別の場所を求め続ける。『砂の女』は、そんな人間の渇望と不自由さを、乾いた砂の感触と共に突きつけてくる作品だった。
Posted by ブクログ
限りなく5に近い4
僕の集中力と理解力のせいで分かりきっていない
面白いなあ、突飛な設定なのに妙に写実的で、現実的で、キャラにブレがなくて。比喩で出てくることに本質が詰まってる感じがする。再読したい。
この世には中間体というのは意外とないなと思った。
Posted by ブクログ
「砂の女」という題名
読みはじめは「砂の女だ!」と感じても、
読みおわりは「砂の女か?」と感じられます。
砂の女は、終盤で主人公に歯向かいます。しかも強めに。それは「愛郷精神」つまり「部落の集合的意識」があらわになった場面です。
目の前の「女」ではなく「部落」が歯向かってきたと感じた主人公も、最終的にはその部落に順応しました。主人公は「砂の男」になり、部落に定着して、愛郷精神を育んでゆくのでしょう…。ハッピーエンド…?
主人公目線、砂の本質は「流動=定着の拒絶」だと見抜いていました。しかし極限状態におかれた人間はその「定着の拒絶」にすら「定着」してしまう、という有様!
人間の強さと、そのなかにある弱さを同時に描ききった見事な物語です。その分、読み進めるのは苦労しました。
Posted by ブクログ
史記の張騫砂漠行の直後に読んだのでずっと脳内が砂まみれ
あちらはどこまでも乾燥してたけどこちらは日本!!て感じの湿度が加わってまとわりついてイヤすぎだった
最後逃げない(結局元の生活も入れ子構造みたいに延々と積もる砂を掻き出すのと同じだから)のも日本社会!!て感じがする
メビウスの輪の先生への文章、執着強めなのがずっと気になってる もしかしたら相手もずっと探してくれてるかもしれない