あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(解説・ドナルド・キーン)
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Posted by ブクログ
初・安部公房。面白かった~(笑)虫を捕りに来た男が砂の街に囚われ・・・不条理な世界に閉じ込められ必死に脱出しようとする気持ちと徐々に変わっていく気持ちが面白かった(笑)そして女が妙にエロチックな感じだった(笑)安部公房読みやすいし面白い他の作品も読んでみよう(笑)
Posted by ブクログ
浅い言葉になってしまうが狂気的な文章!とそういいたい。
ずるずると蟻地獄のように砂の中に引きずり込まれていくような感覚、男の気力が削がれていく様が恐ろしくて下手なホラー小説より怖く、面白かったです。
他人なんてどうでもいい、今を生きる自分らの利益さえあれば……というような、出てくる人物たちの描写も恐ろしく、安部公房の見る人間とはこのようなものなのだろうか?と評論などを読んでみたくなる良い読後感のある名作でした。
Posted by ブクログ
内容もざらざらしてるしなんか、ずっとざらざら感。水とか大気とかに惑わされる物語には出会ったことあるけど砂って今までになかったかも。読み心地も読後感も別に気持ちよくなかったけど面白かったな。主人公の感情の起伏がとてもよく伝わってくる。後半は気持ちが落ち着いているのが伝わってきたけど水を自力で獲れたときは気持ちの昂りが伝わってきた。砂の世界から出ることではなく、置かれた環境でよりよく生きる(乾きから逃れること)ことを目標にするようになり、水が自力で獲れるようになっても砂かきは続けていくんだろうなぁ。
友達が面白いというので読んだんだけど、友達はこれを何歳の時に読んで面白いと感じたんだ??と疑問に思った。
Posted by ブクログ
読んでいると、体をはたきたくなるような
口の中までジャリジャリしてくるような感覚。
蟻地獄に落っこちたアリの気分
掻いても掻いてもさらさら埋まって戻っていく
砂の怖さ。
ずっと夢の中で走っているみたいな感覚。
理不尽としか言いようがない話だけど、
抵抗しても無駄なんだと悟ったら…
この生活も悪くないと思ってしまったら…
怖すぎでした。
Posted by ブクログ
主人公は男であるが、表題は砂の女である。読むと明らかになるが、女と女の属する部落との接触によってもたらされる男の精神・思考の変遷が本当に面白い。
理不尽かつ抑圧的、それでいて密閉的な環境下では嫌でも内省にエネルギーが割かれる。仮に外に出たとして果たしてその自由は本当に価値のあるものなのだろうか。
脱出に失敗した後に、「これでよかったんだ」と自分を納得させるような思考の展開は、まさに「酸っぱい葡萄」的であり、鴉の罠や蒸留装置に傾倒する行動の展開も頷けた。
鴉の罠『希望』が全く機能しないこと、女が子宮外妊娠の可能性があること、7年間も失踪し続けていること(生きている保証はない)から、男の未来は暗いと言わざるを得ず、重い読後感であった。
Posted by ブクログ
ざっくりのあらすじを聞いたときは、ホラー系なのかと思っていたが、そんなことはなかった。
「砂の村」でも「砂の家」ではなく、あくまでも「砂の女」。主人公が男性であり、男女であるがゆえに性の問題も絡むのだけど、結局のところ、「人は孤独では生きていけない」ということなのかなと思う。
語り合う言葉は何でもよくて、生活そのものに満足していなくてもいい。むしろ孤独ではないと感じられたときには理不尽な生活すらも彩りを持つのかもしれない。
それは逆説的に、孤独がいかに圧倒的な力を持っているものであるかということでもある。
尊厳を虐げられがちな「女」が、衆人環視を拒否したときもそう。あれは「男」が来て孤独から救われたがゆえに、自らの最低限の尊厳を守り通す糧にできたのではないかと思う。
あの砂の村では男にも女にも「顔」がない。つまり、誰でもないが、誰でもあり得るということなのかと思った。