あらすじ
眠った魚のように山あいに沈む町花園。この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちは、革命のための秘密結社“飢餓同盟”のもとに団結し、権力への夢を地熱発電の開発に託すが、彼らの計画は町長やボスたちにすっかり横取りされてしまう。それ自体一つの巨大な病棟のような町で、渦巻き、もろくも崩壊していった彼らの野望を追いながら滑稽なまでの生の狂気を描く。(解説・佐々木基一)
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Posted by ブクログ
1954年に発表された、安部公房初の書き下ろし作品。
過去に温泉で栄えた山あいの地方都市、花園町。地震をきっかけに温泉は途絶え、今では雪に埋もれたさびれた町に。
キャラメル工事の主任・花井が中心となり、町内のよそ者たちが集結して結成された「飢餓同盟」。彼らは理想を叶えるための手段として、地熱発電所建設を計画します。
町内を支配しているそれぞれの派閥の間で立ち回り共倒れさせようとしたり、メンバーを繋ぎ止めようとなだめたり…とにかく走り回って画策しまくる花井が忙しい。引きながらもついて行くメンバー達のキャラも濃い。
とにかく花井がずっと尋常じゃないのと、メンバーの一人織木が体を張って地下を探る方法が…もう想像の範疇を超えてて頭が疲れてきます。(いい意味で)
そして「まぁ、そうだよね…フー(脱力)」てな感じになるのですが…
読みはじめは「登場人物多〜」と思ったのですが、これは大丈夫でした。
ラストが異なるバージョンもあるとのこと。気になる〜
Posted by ブクログ
1954年刊の書き下ろし。北日本の山あいの町で繰り広げられるドタバタ劇。山師と地熱発電、革命を目論む秘密結社、政治家どうしの利権争い……戦後数年経ったばかりの頃の地方の町なら、ありえたかもしれない。
登場人物はみな個性的、総勢25名のキャスト。紆余曲折の展開があるので、日曜劇場のような連ドラに仕立てたら、けっこういけるかも。
通俗小説のように書いてみるという作者の「実験」のようにも感じられる。哲学・文学・思想のニオイがないのもいい。もちろん、筋書きは緻密に計算されていて、細部ではいつもの安部公房らしさが顔を出す。たとえばギニョール人形劇が登場し(いわば劇中劇)、そこではシュールな展開があったりする。
冒頭は、降りしきる雪のなか、下りの最終列車から大きなトランクをもった男が降り立つシーン。ここで読者の心をつかまえ、最後まで一気に読ませる。後半が駆け足なのが少し残念。
(なお、新潮文庫版は改稿版。オリジナルとはエンディングが少し異なる。)
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閉鎖された町、革命がテーマですが、読み進めるうちに小さな組織、例えばご近所付き合いとか学校とかに例えると理解しやすいかと思います。
正気の革命なんてものは夢。
だが、そこに魅せられてしまう者がいて、思いが強いと狂気になり、やがてそれは成功か不成功か、人為的なものもあるけど、この本では狂気、狂気、更に狂気。
だけど、所々ギャグコミックのような描写に笑ってしまったりもする、いいエッセンスが加わりあまり苦がない作品だけど、個人的には結構難しかったので、また読み直したいと思います。
Posted by ブクログ
現実の中にいきなりでてくる非現実。だけれども、非現実なのに、なぜか違和感を感じさせずに、リアリティをもつのは、安部公房ならでは。だから好きで読んでしまうんですよね。飢餓同盟も同じで、不思議な世界に誘われたいなら、ぜひとも読むべき1冊です。
Posted by ブクログ
自分達を不幸にする社会構造をひっくり返すという目的のために存在していた筈の手段が、目的へとすり替わっていく。
最近も頻繁に見かける類の狂気かと思う、元は高い使命意識を持っていたであろう人々が、目的と手段を履き違えて頓珍漢な声を荒げ、白い目で見られる様は。
そしてその活動すら、金持ちの金稼ぎに利用される様も、どこかで見覚えがあるなと思ってしまうのは穿った考え方だろうか。
花井が革命に執着する気持ちはなんとなく分かる。
飼い慣らされている、誰かに人生を掌握されているという、八方塞がりで前進も後退もしないことへの焦燥感だろうか。
現状に甘んじていた方が楽であるにも関わらず、それでも八方塞がりからの脱出を試みる、これだけでは異常でも狂気でもないのだが…読後感には徒労感が付き纏う。
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砂の女やら密会やら、安部公房の息が詰まる閉鎖的なストーリー、これらってどれも自らの足で閉じ込められに行ってるね、まあこんなはずじゃなかったとはなりますでしょうけど!
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閉塞感漂う「花園町」で共産主義的な革命を画策する者たちの哀愁劇を描く。”ひもじい同盟”という極めて貧相な名前から”飢餓同盟”へ名称を変え、地熱発電所を基軸に革命を試みるが・・・。
作品全体に纏わりつくどんよりした暗い雰囲気と、あくの強い個性的な登場人物は安部公房ならではといえよう。ドストエフスキーの『悪霊』がベースにあるらしいが、当時の共産主義を担ぐ者たちに通ずるような、何かに飢えた者同士が至極脆弱な共同意志の下革命を目指すが虚しく瓦解する姿はなんとも滑稽である。
本書で特に秀逸だったのは「患者に飢える」というくだりだ。患者の治療が医者の使命だが、その医者が患者に飢えるとはこれ如何に。本作のパラドックス的側面を巧みに表現した言葉と感じた。作者自身は本作をあまり好きではなかったようだが、安部作品のなかでは比較的分かりやすい物語かと思われる。
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【本の内容】
眠った魚のように山あいに沈む町花園。
この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちは、革命のための秘密結社“飢餓同盟”のもとに団結し、権力への夢を地熱発電の開発に託すが、彼らの計画は町長やボスたちにすっかり横取りされてしまう。
それ自体一つの巨大な病棟のような町で、渦巻き、もろくも崩壊していった彼らの野望を追いながら滑稽なまでの生の狂気を描く。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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ユートピアを目指すため革命を企てる男、花井の指導の下
町からどこか外れた人々がなんとなく集まってできた飢餓同盟
町の権力争いに巻き込まれてどんどん崩壊していく
秘密結社による革命という目的をめぐって
戦後の生きることに強烈な執着心を持った村人達がぶつかっていたり
花井がずれてしまった目的のために狂っていき、そのため周りの人たちが離れていく様子が
非現実な世界からとてもリアルな現実を突きつけてくる
最終的に狂ってしまった花井は村社会の発展のための生け贄なのか?
いろいろ考えさせられるのだが、何を考えさせられているのかまだ分からない
地熱についての科学的な記述とか
人間を計器にしてしまう想像力は安部公房ワールド全開で少し難解だった
“ひもちび”とか“ウルドック”なんていうもじりの言葉遊びが面白い。
複雑に絡んだ人間関係や権力関係、よくここまで作れるなぁ。
Posted by ブクログ
ユートピア思想の具現化を追い求めて結成された「飢餓同盟」。
排他主義・権威主義がはびこる廃れた温泉町に革命の機運を起こすべく奔走するが、徐々に手段が目的と化し、自らも政治・経済システムに取り付かれた狂人となり果て、同盟が瓦解していく模様を綴った作品。
支配の重壁に押しつぶされようとしている人々が、立ち上がりその壁を突き崩そうと試みる。
例えその試みが儚く敗れ去ったとしても、彼らの飛ばした小さな火花の中に、私たちの社会のより良い可能性を見つけることができるのではと感じました。
私はこの作品を絶望ではなく希望の教訓であると信じたい。
Posted by ブクログ
ほかの作品にもよく見られるような、土俗性と人間の過剰なまでの人間らしさが散りばめられている作品。
雪に閉ざされた地方都市や戦後間もないであろう時代といった舞台には、確かに今この場にいる自分との距離を感じてしまう。しかし、われわれが日本人である限りはどこにいようとどんな時代を過ごしていようと同様の構造を周囲に見出していくのだろう。
なんて思った。
装丁がすてき。
Posted by ブクログ
ユーモアかとおもえば、やはり狂気。途中訳がわからなくなり、なんともスッキリしない。あがきもがくわたしたちの中にある狂気と、解説にある。が難しい。
Posted by ブクログ
既得権益者が政治経済を牛耳っている田舎町で、地熱発電所を建設して革命を起こそうという男とその同盟者?たちの物語。
革命といいつつ、地熱発電の掘削場所探索の原理は胡散臭く、革命の思想はあやふや。男一人のドタバタ劇のようになり、結局は精神異常者と扱われてしまう。
閉塞感のある組織に不満があるとき、権力を持たない者が一人でジタバタしてもうまくいかない、みたいなよくありそうな話で哀しい。
口の重しには墓石と重い財布。
Posted by ブクログ
安部公房の小説は、不条理とアイロニーと現実とのはざまでストーリーが揺れ動いて、話は面白いのだけど、大変難解な作品が多いとの印象を持っている。この作品はかなりわかりやすいと思うのだけど、それでも、全体を眺めると、大きなテーマが小さな世界に織り込まれていて、読み解くのは大変そうと思った。小説の舞台はスケールも小さく、舞台をみているようなドタバタ劇もあるんだけど、ストーリーを追うだけでは見えないものがいっぱいありそうな感じ。戦後の時期に隆興した現代文学の中でも、異彩を放っていると思う。
以前、未読主要作品のまとめ買いをしたので、時折挑戦したいと思う。
Posted by ブクログ
花園町のように、一部権力者の圧倒的な支配によって成り立ち、なんともいえぬ閉塞感が漂う町、というのは、こと、田舎においては今だにたくさんあるだろう。生きることに疲れながらも、生きることを求め続けた飢餓同盟の面々のアイロニー。八方塞がりの中でもがき苦しむ現代人もまた、彼らのようにユートピアを求めて彷徨っているのかもしれない。
Posted by ブクログ
とあるさびれた田舎町で、共同体から疎外されルサンチマンを抱えたはぐれものたちが、地熱発電所の建設を利用してアナーキーなユートピアを目指す「革命」を企てるが、町の支配者たちに発電計画を横取りされて瓦解・挫折するまでをユーモラスかつアイロニカルに描く。
描かれる「革命」が政治的な陰謀というより、1人の夢想家の大博打に町が巻き込まれていく形で、「革命」の挫折の要因が権力の弾圧や革命勢力の内紛のようなありがちなものではなく、地方政治における諸勢力間の陰湿でせこいなれ合いや、法的な許認可や土地取引の経済的な駆け引きの敗北であるのが、単なる反ユートピア政治小説と一線を画している。初出は1950年代と古いが、ある意味、原発や大型レジャー施設の誘致に翻弄される地方の姿を予見したとも解釈でき、すこぶる現代性をもった小説である。
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自分が安部公房に期待するものは、日常に非日常が滲み出すようなふわふわとしたジャメヴュとSF要素なので、そこからは外れていたかなと思う。
ただ、その分読み口は非常に軽く、諧謔味は他の作品より強かった。そこを気に入るかどうかは、完全に好みの域。個人的には嫌いではない。
あくまで自分の意見だが、本書は安部公房の学生時代を戯画したものではないだろうか。
筆者は学生運動にかなり入れ込んでいたと聞く。
いわば回顧録のようなものだとすれば、なかなか興味深い。
Posted by ブクログ
話の筋は置いておくにしても、なかなかに理解が難しい作品だった。結末も救いがない。
本筋とは外れるが、私は著者の日本語の使い方が非常に好きである。個人的には三島由紀夫よりも素晴らしいと思っている。
Posted by ブクログ
八方塞がりの現実のなかであがきもがいているわたしたちすべてのうちに、花井や矢根や森といった人間が現に住み着いていることを、わたしたちははっきりと知るべきだろう。(p268)
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描写が生き生きしていてすごくよかった。舞台やキャラクター設定、SF要素なども、安部さんらしさ満載。雪にまどろむ寂れた町、診療所を与えられない医者、の組み合わせがカフカの「城」を思い出させる。
しかし、花井さんは骨の髄までしゃぶられっぱなしだったなぁ。同盟が空中分解くらいで済むのかなーと思ったら、予想以上にひどい結末だった。うーん。主人公二人の身の上が自分と重なってしまって、結構堪えた。
どんな思想があっても、どんな努力をしても、現実は壁だらけでどう行っても回り道だらけで、結局目的地にはたどり着かないまま歩かされ続けるんだよなぁ。
春が来て、窪地に落ちた小鳥の死骸が一瞬見せた可能性が切ない。
面白かったと言えば面白かったのだけど、どうもふに落ちないのは、花井の指導者としての采配がイマイチだったからかも。もっと頑張れるでしょ!まあ完璧だったらあの結末にはならないし、結局私の求めてるものにはならないんだろうけど。
というわけで、ちょっと残念な気持ちで星みっつ。
Posted by ブクログ
閉ざされ沈む小地方都市の町花園。
それ自体がまるで一つの巨大な病棟のような町の中で
"ひもじい"と呼ばれ疎外されたよそ者たちが結成した飢餓同盟。
地熱発電に託した若い彼らの野望は
町に渦巻き、飲み込まれ、やがて崩れ去っていく。
安部公房の著作にしては珍しく、登場人物・主人公に名前があってびっくり。
「夢」を生け捕りにした様な
シュールにシュールを塗り重ねた彼の多くの作品とは
ちょっと趣向が違う作品でした。
「医者」と「党」の、安部公房。
こんなに現実に寄った作品は初めて。
革命の思想から遠ざかって久しい世代の私には
少し入りづらい読みかかりでした。
現実を書いているのだけれど、どこか寓話のようで。
個人の心情を書いているのだけれど、まるで人間全体のことのようで。
読み砕くのにセンスのいる作品だと思います。
私には、まだ全部を理解出来ない。
時間を見つけて、再読したい一作。
Posted by ブクログ
隙間ない権力を打倒しようと文字通りあがき苦しむ男たち。全体的にどんよりと息苦しい霧が舞うような花園の町は、これからもあがく人間を踏みつぶし肥やしにし、しかし大きくもならずに存在していくように思う。変えられない場所の陰鬱さ。しかしどこか滑稽で、それがさらに歪みを感じさせる。
Posted by ブクログ
普段、形而上的なタッチの多い安部作品ではシュールさが強いが、精神性や狂気の観点では通底する著者のテーマだろう。世界観は違うが「石の眼」をパワーアップさせた感じの日常にある変質。内容においては、結びの一行を言いたかったのだろう。現実に潜む、奇妙な物語。
Posted by ブクログ
読んでいて登場人物たちの策略に嫌悪感がしてくるが、考えてみれば現実的な小説だと思う。
織木が唯一、真面目な青年として最後まで描かれていたのは、読者として救いだった。
Posted by ブクログ
まさに破滅へのゆるゆるとした苦しい道程・・・
真綿で首をしめつけられる感触・・・・
閉鎖感・・・・
空気を殴る・・・・
いきつく先は狂気しかないのか・・・・
ほんと欝だー
どこか滑稽なんじゃなく、全体的に滑稽なのにものすごく重たい。
共産主義・・・・
こういった問題は現代こそもっと見つめなおすべき問題。
Posted by ブクログ
安部公房の作品にしては登場人物が多くその点がゴチャゴチャしている印象。話の筋は読み取りやすいが、ただ現実の主義問題とてらすだけでなくなにかもうひとつ深いテーマを探すことが出来る作品だと思う。もう一回読む。相変わらず名前には拘りがあり名前はもじりになっているらしい。わからないけど。安部公房は意味のない名前はつけない作家だとおもう。
Posted by ブクログ
山間の花園町で、「ひもじい」と阻碍されたよそものたちが、革命のための秘密結社「飢餓同盟」を結成し、権力への夢を地熱発電に託して動き始めるのですが、革命を起こすどころか崩壊していく物語です。
読んだ印象を一言で言うと、「怖い話だなー」でした。
最初、花井についてなんとも思わなかったのですが、次第に彼が嫌いになりました。話すことが夢想的すぎる上に、人に対しての態度がイライラしました。
さすがに、途中から、アレ・・・おかしいな・・・?と思ったんだけれど、やっぱり壊れてしまいました。それがとても怖かったです。
織木さんも可哀相だな、気の毒だな・・・と思っているうちに。
私の読解力の問題かもしれませんが、登場人物が多すぎて、ちょっと混乱しました。
しっかり見れたのは、森さんと織木さんくらいかな・・・。
そして、「幸福」「健康」「うるわし」といった奇妙な名前(呼び名)。
何か意図があったのでしょうか・・・。
最後のメッセージが、ちょっと物足りないという印象を受けました。
それから、まったくもってメインの内容ではないんですが、季節の描写が美しくて、驚歎しました。
全体的に暗い内容だったので、それがやたら印象的に思えました。
もう一度しっかり読み直したいんですが、当分の間は読みたくないので、またそのうちに気が向いたら読んでレビューを書き直します。
壊れっぷりが怖い作品でした。
Posted by ブクログ
途中経過:いちいち考察が鋭くておもしろい、「閉塞感」というものをいやというほど実感できる
読んだあと:
「人間は本質的に頭が悪いこと」「進歩という神話に踊らされる滑稽な姿」を直感的に感じ取った。
手段と目的の転倒、意地っ張り、無駄なプライド、無益なことに必死になる(かえって害になることも多い)、これが本質的な人間の「頭の悪さ」なのだと思う。
「進歩」という幻想もその一つ。
いくら科学技術が発展し、頑張って生活を「改善」したところで、結局何も変わらない。
くだらないことにいちいち腹を立て、心配という名の妄想で体を壊したり、自殺したりする。人間は依然としてどうしようもなくアホなままである。