安部公房のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ読んでいくうちに、主人公にとっては何処までが現実で、どこからが現実ではないのか、分からなくなってきた。
でも、所々シュールな場面もあるし、色々なパワーワード的なものも出てくるので、全編を通して楽しく読むことが出来たし、何よりもユーモラスで読みやすかった。
とは言っても、安部公房作品は、砂の女とこのカンガルー・ノートしか読んだことはないが…
最後に現実世界で発見されて……と言う結末なのだが、この物語の中で起こっていることは、一体主人公にとっては何だったのだろう。どの時点からこうなっていて、どの時点で死んだのだろう。
何だかとても不思議な気持ちになった。
本当は脛からかいわれ大根なんて、生えて無 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『夢の兵士』
詩的。
『使者』
安部公房らしさは、少しはあるが、発想とかの点で、あまり面白くない。
『賭』
安部公房らしい発想と内容で面白かった。
『なわ』
戦後文学ぽく、面白かった。
小島秀夫が、ゲーム『デスストランディング』で引用していた言葉が、最後に出て来たが、この短編『なわ』で使われていた"なわ"の使い方は残酷だった。
『無関係な死』
誰もが考えそうな、家に帰ってみると見ず知らずの他人が死んでいたという設定で、安部公房らしい話が続く。
『人魚伝』
人魚への純愛を描く。
結末は、何とも面白かった。
〈感想〉
いかにも戦後文学というのを味わえた。 -
Posted by ブクログ
読書会で紹介された本です。
こちらの表紙は「デンドロカカリヤ」っぽいですが、読んだ本の表紙は「水中都市」っぽいので古いバージョンなのかな。
面白かったです。
「デンドロカカリヤ」「手」「詩人の生涯」「水中都市」が好きでした。
人が植物や魚になったり、世界が凍りついたり水中に沈んだりする、不思議な世界が楽しかったです。水中都市で空中を泳いでみたいです。魚は怖いけど。
「闖入者」はとてもブラックで怖かったです。結末が辛い。
安部公房は寓意があるのかどうかよく分からないですが、このよく分からない感じを楽しむので良いのかなと思います。
解説がドナルド・キーンさんでした。読者に私なりの「解釈」を押し付け -
Posted by ブクログ
本書は『砂の女』で知られる安部公房の芥川賞受賞作。
ある日、名前を失ってしまったことで、
社会の外に放り出されることになった主人公。
その世界は奇妙さを増していき、
ある意味で支離滅裂な夢のようなイビツなものとなっていく表題作の『壁』と、
他、二章からなる作品です。
非現実的なタイプの小説です。
現実性からかなり高くジャンプしています。
そこには、現実性の強い重力から逃れながらも、
現実性から逃れたがゆえの、
孤独による、よるべなさのようなものがあります。
しかし、その世界観といい、文体といい、
何故かとても心地よくもあるのです。
その幻想世界にある、現実社会を照らすするどい寓意。
それ -
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ネタバレ淫乱の溶骨症の少女、ヒステリックでわがままな女秘書、仮面女となってしまった彼の妻(?)、あまりに身勝手且つ魅力的すぎる女たちに振り回される主人公。
溶骨症の少女については、そういう風に愛されていつか溶けてしまいたいと思った。
パテ状の肉塊になってしまった娘を男は懸命に人間の形に戻す。声のしている辺りに耳を寄せると「さわってよ……」幾層にも肉や皮がたるみどこが股間の襞なのか区別もつかないが、男は襞という襞をさぐってはさすり続ける。娘はやがて眠ってしまう。男は地下をさまよいながらときどき電池を抜いてはこっそり娘を抱きしめる。
―いずれは盗聴器の電池も切れ、ぼくは誰にも気兼ねなしに娘を抱きつづける