安部公房のレビュー一覧

  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    ネタバレ

    こんなに不気味な喜劇があるのか

    起こっていることを羅列するならばひどく喜劇的、あるいは滑稽である
    しかし、どのエピソードも言葉では説明し難い不気味さを有している

    ひたすら現実逃避し続けている”もぐら”
    しかし、本人にとってはそれこそが現実であるという奇妙なコントラスト

    そして、ひどく世俗的な理由から方舟に乗り込む3人

    さらに、もぐらと一方では類似的な、”ほうき隊”の登場

    僕たちはただ、大きな物語の中で生きているだけなのかもしれない

    さらには選民と棄民のアイディアも秀逸

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    2020年03月15日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    これも面白かった。

    特に好きなのは、
    『R62号の発明』と『人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち』。

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    2020年03月07日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    ネタバレ

    読んでいくうちに、主人公にとっては何処までが現実で、どこからが現実ではないのか、分からなくなってきた。
    でも、所々シュールな場面もあるし、色々なパワーワード的なものも出てくるので、全編を通して楽しく読むことが出来たし、何よりもユーモラスで読みやすかった。
    とは言っても、安部公房作品は、砂の女とこのカンガルー・ノートしか読んだことはないが…

    最後に現実世界で発見されて……と言う結末なのだが、この物語の中で起こっていることは、一体主人公にとっては何だったのだろう。どの時点からこうなっていて、どの時点で死んだのだろう。
    何だかとても不思議な気持ちになった。
    本当は脛からかいわれ大根なんて、生えて無

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    2019年10月30日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    ネタバレ

    『夢の兵士』
    詩的。
    『使者』
    安部公房らしさは、少しはあるが、発想とかの点で、あまり面白くない。
    『賭』
    安部公房らしい発想と内容で面白かった。
    『なわ』
    戦後文学ぽく、面白かった。
    小島秀夫が、ゲーム『デスストランディング』で引用していた言葉が、最後に出て来たが、この短編『なわ』で使われていた"なわ"の使い方は残酷だった。
    『無関係な死』
    誰もが考えそうな、家に帰ってみると見ず知らずの他人が死んでいたという設定で、安部公房らしい話が続く。
    『人魚伝』
    人魚への純愛を描く。
    結末は、何とも面白かった。


    〈感想〉
    いかにも戦後文学というのを味わえた。

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    2020年04月24日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    顔を作る工程の医学的SF。手記という形式の文学的比喩表現の応酬による渦巻くドロドロとした心情の描写。「おまえ」の予想外の態度。どこに到達するかわからないストーリー。良い意味で読み疲れるタイプの小説だった。

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    2019年12月08日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    ネタバレ

    阿波環状線の話が面白かった。
    イメージのない認識のみの夢...
    この発想が安部公房のすごいところなのかな?

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    2019年06月01日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    読書会で紹介された本です。
    こちらの表紙は「デンドロカカリヤ」っぽいですが、読んだ本の表紙は「水中都市」っぽいので古いバージョンなのかな。
    面白かったです。
    「デンドロカカリヤ」「手」「詩人の生涯」「水中都市」が好きでした。
    人が植物や魚になったり、世界が凍りついたり水中に沈んだりする、不思議な世界が楽しかったです。水中都市で空中を泳いでみたいです。魚は怖いけど。
    「闖入者」はとてもブラックで怖かったです。結末が辛い。
    安部公房は寓意があるのかどうかよく分からないですが、このよく分からない感じを楽しむので良いのかなと思います。
    解説がドナルド・キーンさんでした。読者に私なりの「解釈」を押し付け

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    2019年03月09日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    読んでると、夢の話なのか、色々よくわからなくなってくる。
    この不思議な感覚はやはり安部公房だなと思う。

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    2018年10月31日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    読む順番を間違えた……。
    出来れば最後に読みたかったです。
    夢日記を辿りながらのエッセイですが、公房の夢は何故か奇妙でちょっと怖い。

    夢はありのまま捉えるのが一番だ。

    この言葉からすると、常にストレスに悩まされていたのかなとも思います。
    がしかし、やはり夢の基礎は断片的で、ちらと見たり聞いたりした内容からやはり作られているのはよくわかりました。
    出来れば、デジャヴュのことも書いて欲しかった。
    公房はデジャヴュを何と考えて、どう捉えていたのか知りたかったです。
    なかなか真似の出来ない夢日記。
    といった感じです。

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    2018年09月08日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    著者が見た夢(寝ている間に見ている方の)について、それを文字にして描写した作品。

    夢をこんなに深く追及するという発想はなかったし、だからこそとても興味深く感じた。

    余談だが、村上春樹は安部公房の作品を読んで、少なからず影響を受けたのではないかな、と思う。

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    2018年07月16日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    R62号に続いてこれを読んで気付いたのは、自分は小説にストーリーを欲しているということ。表現だったり文章力だったり、とにかくもの凄い作品だってのは伝わるんだけど、好みかどうかと言われると微妙なところで……。
    分かりやすく起承転結が整っている作品ばかりを好んで読んできたから、この手の小説は噛み砕きにくい、だからこそあごの力がつくんじゃねえかなというもくろみ。あえて好みを上げるとしたら「使者」「賭」「なわ」の3つ。短編だけじゃなく長編にも挑戦してみたいところだけど……どうしようかな。

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    2018年06月15日
  • 壁(新潮文庫)

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    本書は『砂の女』で知られる安部公房の芥川賞受賞作。

    ある日、名前を失ってしまったことで、
    社会の外に放り出されることになった主人公。
    その世界は奇妙さを増していき、
    ある意味で支離滅裂な夢のようなイビツなものとなっていく表題作の『壁』と、
    他、二章からなる作品です。

    非現実的なタイプの小説です。
    現実性からかなり高くジャンプしています。
    そこには、現実性の強い重力から逃れながらも、
    現実性から逃れたがゆえの、
    孤独による、よるべなさのようなものがあります。
    しかし、その世界観といい、文体といい、
    何故かとても心地よくもあるのです。

    その幻想世界にある、現実社会を照らすするどい寓意。
    それ

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    2025年07月14日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    小学生の頃、教科書に載ってた顔を見て「えらく渋いオッサンだな…」という印象が強かったので顔と名前だけは覚えている安部公房。職場の友達に勧められたので読んでみたんですが、なるほど面白い。
    慣れないうちは文章が読みづらかったし、好みかと聞かれると違いますってなっちゃうんだけど、内容の深さに否が応でも魅了されてしまう感じ。個人的には鉛の卵と鍵が好き。もう何冊か読んでみよう。

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    2018年05月20日
  • 密会(新潮文庫)

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    ネタバレ

    淫乱の溶骨症の少女、ヒステリックでわがままな女秘書、仮面女となってしまった彼の妻(?)、あまりに身勝手且つ魅力的すぎる女たちに振り回される主人公。
    溶骨症の少女については、そういう風に愛されていつか溶けてしまいたいと思った。
    パテ状の肉塊になってしまった娘を男は懸命に人間の形に戻す。声のしている辺りに耳を寄せると「さわってよ……」幾層にも肉や皮がたるみどこが股間の襞なのか区別もつかないが、男は襞という襞をさぐってはさすり続ける。娘はやがて眠ってしまう。男は地下をさまよいながらときどき電池を抜いてはこっそり娘を抱きしめる。

    ―いずれは盗聴器の電池も切れ、ぼくは誰にも気兼ねなしに娘を抱きつづける

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    2018年02月25日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    「不条理」と一言で片付けるのは簡単だけど,それだけではない,深い味わいのある短編揃い.「悪夢」といってもよいか.期せずして不可解な状況に主人公が引きずる込まれる話ばかりである.
    南米の作家の短編は,ムッとするような,頭のクラクラするような,欧米の作家とはまた違う変なトーンの話が多いが,それを思い出させる.

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    2017年02月14日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    今まで読んだ安部公房の本は、独白系が多かったのだが、この作品はめちゃくちゃ会話がある。会話もまた素晴らしい。間の取り方が恍惚的。

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    2017年01月04日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    『砂の女』『他人の顔』など脂が乗った時期に認められた短編10作品。前後関係のない不条理な状況、推考しながら輪転する物語、ブラックユーモアのような皮肉めいた結末。安部公房節がいずれの作品でも輝る。

    表題作『無関係な死』や『人間そっくり』の元ネタ『使者』は然ることながら、『人魚伝』が素晴らしい。架空の生命体へ妙な生活感をまぶしながら人魚の真意までの流れは、『第四氷河期』を読んだときのような、自分の創造力の欠如を恨めしく思う。

    いずれの作品も安部公房らしさをふんだんに味わえる作品である。

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    2016年09月29日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    「世にも奇妙な物語」と言えば分かりやすいと思います。短編ですからね。読みやすいですが、あっさりとしていて、私はどちらかというと、同氏の長編のほうが好きなようです。

    <掲載作品の一覧>
    R62号の発明
    パニック

    変形の記憶
    死んだ娘が歌った
    盲腸

    人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち
    鍵耳の値段
    鏡と呼子
    鉛の卵

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    2016年05月02日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    箱男が個人的に難解だったので少しとっつきにくい印象を抱いていたけれども、この短編集に入っている作品はどれも話の展開がわかりやすく、伝奇的で面白かった。「闖入者」が好き。

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    2016年04月29日
  • 密会(新潮文庫)

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    「壁」や「箱男」と比べるとやや劣る感は否めないが、病院という非日常的日常空間を通して絶対的非日常へ読者を強引に導く筆力は圧巻だ。読み手を極めて混乱させ一度読んだくらいではとてもストーリーを理解できないが、敢えていえば本書のテーマは「性の倒錯」だろうか。退廃的でサイバーパンクのようでもある。直接的な性描写や幼児愛好などタブーを厭わない表現は公房氏作品のなかでも異色かもしれない。

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    2016年04月03日