あらすじ
《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。はたしてたんなる気違いなのか、それとも火星人そっくりの人間なのか、あるいは人間そっくりの火星人なのか? 火星の土地を斡旋したり、男をモデルにした小説を書けとすすめたり、変転する男の弁舌にふりまわされ、脚本家はしだいに自分が何かわからなくなってゆく……。異色のSF長編。(解説・福島正実)
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火星にロケットが軟着陸しているまさにその時。
主人公は「こんにちは火星人」というラジオ番組の台本を書く作家。
そこへ「火星人のことで相談がある」と訪ねて来た客とのやり取りで話が進みます。
客とその妻との連携プレーで話を聞くハメになってしまった主人公。(これが後からジワジワ怖い)
話の要点はうやむやに、撹乱されていく主人公。この客は何?人間?人間そっくりの火星人?おかしな人間?
屁理屈みたいで頭が痺れてくるような会話が続き
ラスト急にめっちゃ怖い!
トポロジーは最後まで難しかったですが…面白かった!
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あー天才だなぁ〜
最初は何言ってるん?なんの話?
ってなるんやけど最後はのめり込み過ぎて
私も頭がおかしくなる。
読み終わっても結構引きずる
読むドラッグって感じです。
登場人物はほぼ2人
ずーっと喋ってるだけの話
なのになぜこんなに面白いのか。
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やっぱり凄い作家なんだな。
いま、こんな作品を発表する人はいないよね(この作風を求める読者って減ったのかな)。
ほとんど会話しかないのに独特な雰囲気があって、状況がコロコロ変わる。事実と妄想の違いが分からなくなっていく。
観念操作のマジックというよりは安部文学独特のロジック展開なんだろうな。
Posted by ブクログ
SFマガジン1966年9月号から3回に分けて連載。2か月後の67年1月に「日本SFシリーズ」の1冊として刊行され、71年5月には「世界SF全集」に収録。この迅速さから、早川の編集長(福島正実)の力の入れようがわかろうというもの。
人間そっくりの火星人。見かけが人間と同じだというのに、火星人であることをどう証明するのか、あるいは人間でないことをどう証明するのか。火星人を名乗るセールスマンと放送作家の問答が、団地の1室で繰り広げられる。堂々めぐりの会話がみごと。そしてどんでん返し、そのどんでん返しもまたひっくり返される。巧いとしか言いようがない。
新潮文庫版の解説は福島正実。作品を解説せずに、安部公房がSFをどう見ていたかを述べている。福島はこれを書いて2カ月後に亡くなった。
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自らのことを火星人だと言い張る訪問者。対話を通じていく中で、寓話と現実の境が曖昧になってゆく。物語の立て付けやパーツによる定義を超えた、物語の現実との連続性の中での寓話性によって読者の現実を揺るがす手法がSFの真髄を体現していた。
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本での中で過ぎている時間よりも、読んでいる時間のほうが長くて不思議な感覚になった。そのせいなのかは分からないが徐々に洗脳のようにいわゆるトポロジー症候群にかかっていく様がリアルすぎた。自分もなってるような気持ちになった。本の中でリアルと寓話が混じっていく過程で、本の中と現実の中も混ざっていく気がしたから感情移入出来るのかもしれない。すごく面白かった。
Posted by ブクログ
「人間そっくり」は1966年に『S-Fマガジン』に連載された作品です。
ある日、
自分は火星人だという男が訪ねてくる。
自分は火星人だという男。
彼は、ある小説の原稿を手にしている。
タイトルは「人間そっくり」
今回の出来事を、事前に小説に仕上げてきたという。
そこから、延々150ページにわたり
何が本当で、何が嘘かがわからない押し問答が続く・・・。
まるで星新一のショートショートのような展開です。
ただ・・・長い・・・(;^_^A
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火星人を自称する謎の男と、訪問を受けた脚本家との会話で進んでいく。
自称火星人の扱う不思議な論理で、訪問を受けた脚本家と一緒に読者もどんどんと錯乱。
ページ数こそ少ないが、粘っこい読後感がいつまでも残る傑作。
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来訪者:自称火星人の男
標的:ラジオ脚本家
クルクル裏返る男の物言いに翻弄される脚本家。人間がその人間たる足元を巧妙に削られ「人間そっくり」にされてゆく様には、滑稽と戦慄を覚える。
文豪がガチで飛び込み営業したら、何でも売っちゃいそうで怖い。
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自分は何者か家族は何者か、隣人は何者か?
公的証明以外に証明出来るものは何もない
もし、それが証明できなかったら
自分は自覚がないまま自分そっくりの
他人に入れ替わってたら
安部公房は舞台にも力を入れていたので
舞台映えのする小説である
文章も映像を観ているようであった
Posted by ブクログ
「こんにちは、火星人」というラジオの脚本家は、ピンチに陥っていた。
"存在するはずのない火星人をネタに日本を風刺する"番組はこれまで順調にやってきたが、火星にロケットが軟着陸することになり、火星のことが明らかになると世間の目は厳しくなると予想されるからだ。
そんな彼が部屋で鬱々としていると、突然自らを火星人だと名乗る男が訪問してくる。
その男の妻から電話もあり、30分後に迎えに行くが、気違いで暴力的なため逆らわずに話を聞くようにと言われ、家に上げてしまう。
最初は気違いの戯言と聞き流していたが、相手は意外と論理的で適当な相槌は見逃してくれず、真剣に向き合わざるを得なくなり、ああ言えばこう言うの応酬が繰り広げられる。
男は自分を火星人と言い張ったかと思いきや、気違いと思ってくれていいと譲る。しかし、やはり本当は火星人で地球に調査にきていると明かす。しかもいちいち科学的な難しい理由をつけて。
それに振り回されるうちに、「先生」は何が常識で、何が真実なのかわからなくなっていき、自分を見失ってしまう。
読みながら「先生」と同じように混乱し、結末の病院はどこの星にあって、先生はいったい何人なのかわからなかった。
部屋の中でほぼふたりきりの会話だけなのに、コロコロと状況や価値観が変わり、ミステリーとは違うけれどどんでん返しが起こるのがすごい。
人は理由をつけて説明されると納得してしまうし、納得したはずのこともまた覆されてしまうこと、また、常識だと思っていることは実は根拠も理由もなく証明するのは難しいということを、短時間で痛感させられる一冊だった。
Posted by ブクログ
再読。君は火星人であるか?それとも地球人であるか?密室で繰り広げられる対話劇。ただそれだけと云えばそれだけだが、こんな面白い対話劇なんて中々ない。途中で飽きる事のない中毒性の高い作品。精神や思考が侵食されていく様が恐ろしくも面白い。
Posted by ブクログ
映画の箱男を観たので安部公房の本を探していて、箱男は無かったが、人間そっくりを読んでみた。
少し言葉が難しいけど、物語が短くサクッと読み終わってしまった。最後の数ページで急激にこわくなる。
結局人間そっくりな火星人なのか、火星人そっくりな人間なのか、分からないのがいちばん怖い。
Posted by ブクログ
砂の女で難しいイメージを持っていた安倍公房作品ですが、本作は非常に読みやすかったです。
確かに自分が火星人ではなく地球人だったとしても、それを証明することは不可能。
自分の存在が危ぶまれる可能性だってある。
Posted by ブクログ
火星人についてのラジオ番組の脚本家の家に、自称火星人の気違い男が訪ねてきて、自分は本物の火星人だと思うか、自称火星人と名乗る気違いだと思うか、気違いだと思ってるんだろ、証拠を見せろ、、うんちゃらかんちゃら、、やってるうちに、まんまと相手の話術に乗せられ、とうとう自分が火星人だと言わされてしまう。
相手の話術もすごいけど、なぜ引き返せなくなったのか、、
結局、アイツは誰だったのか、、何が目的だったのか、、、
そもそも夢だったのか?
最初はどうなるのかと、展開や会話がおもしろかったけど、読んでるこちらまで、だんだん訪問者の口車に乗せられているような気がしてきて話をすっ飛ばしたくなる笑
Posted by ブクログ
SF作家に熱烈なファンが来訪してくる。来訪者の妻の電話によりグッと引き込まれ、来訪者が異常者なのかどうなのか主人公と同じ目線で判断する楽しさがあった。意味不明ながらも筋の通った論理を展開する所は安部公房らしくて読んでいて楽しかった。
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ただの狂人か、火星病の地球人か、地球病の火星人か、何ひとつ確かなことは分からない。読んでいて不安になってくるような、自分の存在がふわふわしてくる感じがする。
Posted by ブクログ
脚本家の男のもとに火星人を名乗る男が訪問してくる。
そこからはじまるやりとり。
果たしてこの世界は現実なのか、寓話なのか?自分は何者なのか?
読んでいるこちらまで自分の存在があやふやになってしまうような作品。
Posted by ブクログ
今でこそこのような「現実と虚構が混乱してしまう」テーマの話しは数多く作られてきたが、当時はかなり斬新だったのかもしれない。主人公の不安の高まりが徐々に伝わってくる。
安部公房の作品はかなり久しぶりに読んだ。本作品もその独特な不条理の世界観が面白い。どの作品も、日常の裏側の、しかしかなりかけ離れた世界にいつの間にか引きずりこまれ、そこに精神的に一体化されてしまうような話が多い。トリップ感覚とも違うこんな世界をよく描けるものだと改めて感じた作品。
登場人物と場面が限定されているので、映像よりも舞台劇に向いてそうだ。目の前でこの緊張感を表現してくれる役者達を観てみたいものだ。
Posted by ブクログ
ラジオ番組の脚本家である主人公の元に、火星人を名乗る人物が現れる。存在の不確かさを突きつけられる不気味な一冊。
自分が地球生まれである証明はできず、ましてや他人が同族であることも証明不可能だ。
出版年は昭和42年。戦争や政治的なムーブメントが巻き起こった時期に、他人への不信感が募っていたことの表れではなかろうか。
今や、大きな経済の変動は見込めない安定した社会になっている。しかし、だからこそ価値観が多様になり、他人を同族と見なしにくくなりつつあると思う。
筆者の測り得たことではないが、現代にも通じる側面があったと思う。
Posted by ブクログ
読んでいて、段々訳が分からないものに足元を掬われる思いがしてきた。
人間そっくりだと言う、火星人を名乗る男と、放送作家の男の会話で物語は進んでいく……が。
火星人を名乗る男の目的が全く分からない。分からないのに、それを回避してひたすら喋っている。作中で本人も言っていたが、大きな嘘を隠すために小さな嘘を沢山ついている。だから、何が本当か分からない。
最後の最後まで、訳が分からない。
放送作家は、自分が段々何者か分からなくなっていったと思うが……
以前、カンガルー・ノートを読んだ時も、何が現実で、何がそうじゃないのかが分からなくなってきたみたいな感想を書いたが、今回もそんな感じだった。
これ、二人の男の一人称がどっちも"ぼく"なんだよな。だから、ラストが余計に混乱するんだよ。どっちの"ぼく"なの?みたいな。
会話が多くて、割と読みやすいとは思うけど、本当…何が本当なのか分からなくなってくる……
Posted by ブクログ
天才。ページをめくる手が止まらなかった。会話文が多くて飽きない。
この物語を読み終えた人は全員ゾッとするはず。主人公の体験は誰にでも当てはまる話だから。宙ぶらりんになった後は、自分の存在自体について必ず考えてしまうはずだ。
トポロジーなどよく分からないこと以上によく分からないことが多過ぎる。それなのに感覚として分かってしまうこともある。それがこの小説の良さ。
Posted by ブクログ
ストーリーの9割が、一対一の会話劇。心理戦。
ラストの乱暴さも何故か安部公房らしさを感じた。個人的には、地球人と火星人の概念が混濁していくようにはあまり感じれなかった。
Posted by ブクログ
人間そっくりの火星人と称する男の来訪に対応しているうちに、次第に混乱していく。健常者から見た狂人と狂人からみた健常者は、ともに狂人に見えるという点で同一である。真実は不確定で、何が狂人かどうかは相対的である。
Posted by ブクログ
面白かった。最初の方こそ漢字が少なく読みづらいなあと思っていた。おまけに、けむに巻かれる一方で全然物語的進行がない。しかし、しばらく読み進めてこのけむに巻かれる口八丁を楽しむ構造なんだと気がつくと、面白く読めた。主人公と同じ体験をしているかのように相手の嘘か本当かよく分からない弁術を聞く。そういうのもアリなのかと思った。表現力も流石と言ったところでメモするところもいくつか。何が正しいのかわからなくなる体験は楽しかった。
Posted by ブクログ
自分は火星人だと名乗る困ったクレーマーの対処をする話、と考えるのが普通だと思うけど、表層的な捉え方か?
屁理屈を突き詰めたような話だけど、自分あるいは他人が何者かであることを証明するのって難しい。火星人でないことを証明しきるなんてできなくて、それこそ公理か。