あらすじ
《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。はたしてたんなる気違いなのか、それとも火星人そっくりの人間なのか、あるいは人間そっくりの火星人なのか? 火星の土地を斡旋したり、男をモデルにした小説を書けとすすめたり、変転する男の弁舌にふりまわされ、脚本家はしだいに自分が何かわからなくなってゆく……。異色のSF長編。(解説・福島正実)
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Posted by ブクログ
「こんにちは、火星人」というラジオの脚本家は、ピンチに陥っていた。
"存在するはずのない火星人をネタに日本を風刺する"番組はこれまで順調にやってきたが、火星にロケットが軟着陸することになり、火星のことが明らかになると世間の目は厳しくなると予想されるからだ。
そんな彼が部屋で鬱々としていると、突然自らを火星人だと名乗る男が訪問してくる。
その男の妻から電話もあり、30分後に迎えに行くが、気違いで暴力的なため逆らわずに話を聞くようにと言われ、家に上げてしまう。
最初は気違いの戯言と聞き流していたが、相手は意外と論理的で適当な相槌は見逃してくれず、真剣に向き合わざるを得なくなり、ああ言えばこう言うの応酬が繰り広げられる。
男は自分を火星人と言い張ったかと思いきや、気違いと思ってくれていいと譲る。しかし、やはり本当は火星人で地球に調査にきていると明かす。しかもいちいち科学的な難しい理由をつけて。
それに振り回されるうちに、「先生」は何が常識で、何が真実なのかわからなくなっていき、自分を見失ってしまう。
読みながら「先生」と同じように混乱し、結末の病院はどこの星にあって、先生はいったい何人なのかわからなかった。
部屋の中でほぼふたりきりの会話だけなのに、コロコロと状況や価値観が変わり、ミステリーとは違うけれどどんでん返しが起こるのがすごい。
人は理由をつけて説明されると納得してしまうし、納得したはずのこともまた覆されてしまうこと、また、常識だと思っていることは実は根拠も理由もなく証明するのは難しいということを、短時間で痛感させられる一冊だった。