あらすじ
笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ――。交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という〈意識下でつづっている創作ノート〉は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。
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Posted by ブクログ
夜空を見上げているとき、視野の周辺にちらと星影がうつり、視線をあらためて向けなおすと、かえって見えなくなってしまう事がある。眼をそらしてやると、再び視界に戻ってくる。網膜の中心部と、周辺部の、機能の分業からくる現象だ。夢と現実にも、どこか似たところがあるように思う。現実は、意識の中心部でより鮮明にとらえられるが、夢は、むしろ周辺部でしかとらえられず、中心に据えることで、かえって正体を見失ってしまいかねない。
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自動書記という手法があります。これは執筆者の無意識を反映するために、意図を抱かずに書く方法のことです。
人間が眠っているときに見る夢を文字に起こすと、自動書記のようになるのかとこの作品を読んで感心しました。
おそらく私たち読者にとっては意味のわからない不思議な余韻の残る作品の羅列でしかないのですが、書いている安部公房さんにとっては「これはこのような意味なのかもしれない」と思いながら書き進めていったのではないでしょうか。
他人の夢の内容を文字に起こした上でそれを読めるのは貴重な体験ですね。しかも世界的前衛作家の安部公房さんの夢となると、さらにその貴重さが増すように思います。
個人的に気に入った作品は「発想の種子」です。
ぜひ読んでみてください。
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随筆でもあり小説でもある感じの話と、スナップショットが詰まっていた。
他の作品に比べると読みやすい。
私も夢(悪夢)をみることが多いほうだとおもうけど、安部公房がみる夢はやっぱりひと味違う。
他の作品にも通じるところがあって、不条理で少し怖い。
スナップショットも安部公房らしい味わいがあって良かった。
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「選ぶ道がなければ、迷うこともない。私は嫌になるほど自由だった」
安部公房にハマるきっかけになった「鞄」をまた数十年振り振りぐらいに読みたくなった。
昔は選択できることが少なくて迷うこともなく進むことが出来たのに、大人になるにつれて選べることが増え、どんどん僕は不自由になってしまった。
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そもそも論だけど、安部公房の文体かっこよすぎる、勇ましいというか、なんというか、
アリスのカメラ
「シャッターを押しつづけていさえすれば、いつかアリスが写っているかもしれないという幻想。不可能にかけた、一瞬の緊張。それは、現実の拒絶であり、部分への解体の願望でもあるだろう。だが、アリスと出会えるのは、不思議の国の中でしかない。」
カメラで写真を撮ることで写り得ないであろうものの存在を肯定しようとするの皮肉だよな、あるものしか写らないカメラに対して、存在しないはずのものが写ることを祈るなんて、
公然の秘密
「当然だろう、弱者への愛には、いつだって殺意がこめられている。
やがて仔象は、古新聞のように燃え上り、燃えつきた。」
分からないけど分かりたいだけなのか、分かっているのか、分からないのかすら判断できない、
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著者の不思議な世界、夢の中にはいりこみ、なかなか抜け出せなくなってしまう。
彼の独特な感性や文章の種は、彼の無意識の中に潜んでいるのだろう。
不気味で怖いような気持ちを感じながらも、どこかでプッと笑ってしまうユーモアが秀逸。
夢と現実の狭間を行き来する唯一無二の作家と再認識。
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まず、とっておきの睡眠誘導術を伝授されてから夢の話へ。
「こんな夢を見た」系のエッセイなのかな、と読みはじめました。笑う月、これはトラウマになりそう。
そこからだんだん安部公房の創作や発想のきっかけみたいな話になってきて、これはこれですごく面白かった。
夢のイメージが作品に反映されてるって事は…
作品を読めば安部公房の夢を体験できちゃうってこと?あの独特な雰囲気は、無意識下のイメージ…?うーむなんだか妙に納得。
そしてその後は、夢の話のような創作のような短編作品が続きます。
奥さんの安倍真智による挿絵(コラージュ作品?)も差し込まれていて贅沢。
夢の中感が漂ってる〜〜
Posted by ブクログ
夢を通してそこから創作の種について語る。エッセイのようなものから完全創作の様に思えるものまで幅広く収録されており、脈略のない展開が続く作品集自体が夢の様であった。現実と寓話の間をゆく著者の作風の一端が知れる微睡の様な作品集。
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夢とは論理では辿り得ない迷路を潜り抜ける方法。
サッカリン、祖父殺し、アリス、廃物・・・全く辻褄の合わない現象の連続ですが、説明不能の面白さでした!
訳がわからないということは限りなく自由だ。
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ダイダイ色の月が笑いながら追いかけてくる。恐怖の極限のイメージ。
安部文学の秘密に迫る17の「夢」絵巻。
禁じ手「夢の記録」が示す異世界は、あり得ないほど遠く、心落ち着くほど親近感湧くクリエイティブ。
船上でのサバイバルを描く『自己犠牲』が大好き。
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「夢という意識下で綴っている創作ノート」ということで、安部公房の作品がどんな風に生まれていくのかが少し想像できた。
まず思ったのが、天才は見る夢からして違うんだということ。
夢の内容が独特な世界観だし、すでにどこか文学的。思いっきり凡人の私には、理解が難しい部分もたくさんあった。
それでも、なぜだか知りたい、わかりたいと思わせてくるような本だった。
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作者独特の短編集です。
東大医学部卒の天才は、凡人には理解できない世界に生きています。掴めそうな、手に取れなさそうな不思議な小説感が湧き出していました。
「鞄」→自由とは何かを問う面白い小説です。どのようにも捉えることが出来、思考することに興味を覚えます。
「自己犠牲」→ドラマや映画のショートストーリーにもなりそう。ラストに衝撃を受けます。
「公然の秘密」→SFっぽくて想像力が湧き上がりました。
この本から始まり、『砂の女』『箱男』の順番に読むと阿部公房ワールドに入りやすいかなと思います。
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★読書会の課題図書★
私には難しかった。けどつまらなかったわけでもなかった。
安部公房の他の本を読んだことがないから、いきなり安部公房のアイデアの出所とか、話の作り方の説明をされているようでピンとこず、先に他の本を読むべきだったかもしれないと思った。
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本当に「夢の内容を書き写した創作ノート」以上のものではない。
「公然の秘密」や「シャボン玉の皮」等は思想が見えて面白い。
「弱者への愛にはいつだって殺意がこめられている。」
少し分かる気がした。
理由はまだ言語化出来ない。
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訳の分からなさ加減がクセになる作品集
夢と現実、虚構と潜在意識の混じり合った
不可思議な世界観が気持ち悪くて面白い
発想の種子が詰まりすぎていて嫉妬してしまう
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夢に関するエッセイ?だけど、小説家なのでだいぶフィクションも含まれてるかと。不思議な趣の話が続くけれど、わりとさらっと読めてしまった。
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夢を録音していたという話があったが、
安部公房の作品の夢を見ているような感覚の原点は
ここにあるのかもしれない。
まさに現実と夢に境目がわからないように、
夢という題材にありながら、
事実のような、フィクションのような、エッセイのような
奇妙な感覚に囚われる作品だった。
ショートショート並みに短い話ばかりでかなり読みやすい
が、まあ夢なので「なんじゃこりゃ?」な話もいくつかあるのだった
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この本に納められている「鞄」を読み返したかった。
「鞄」は、たしか高校の国語の教科書に載っていた話。
高校生当時は、わけわかんないけど不思議な味わいのする話だな、と思っていた。なぜか記憶に残っていた。
読み返してみて、やっぱりわけわかんないけど、不思議な味わいのする話だった。
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初めて読んだ安部公房の本
この本が最初でよかったわからないけれど短編でサクサク読めた
逆説的な表現が多くてこいつ好きな子いじめるタイプだと思った
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初めて安部公房の作品を読んだ。夢の内容をモチーフにした短編やエッセイが収録されていた。不気味でよく分からない物も多いが引き付けられる文章で、ページ数も短くすぐに読める。
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夢に見たことを起床後に作文しようとするといかにストーリー化するのが困難かがわかる。作話が夢でなく、思い出している時に見繕っていることなのかも知れぬ。本書では、実際夢の中でのでき事が夢としてリアルに(?)感じる。巻末に解説が欲しいと思った。2021.1.19
Posted by ブクログ
小説かと思ったら半分くらいエッセイ。エッセイの方は作品のルーツがわかるような内容のようだが、肝心の作品をそこまで多く読んでいないし最後に読んだのも遥か前で余り感じるところなく。
最後の数篇は正に夢を元にしたらしい小説。案内人や密会の出口の無さや性的イメージは自分の見る夢に近い。
鞄は夢の感覚とは離れているような気もするけど、起承転結が見事で好き。
Posted by ブクログ
「赤い繭」という短い話を読んだ。
それで、ふと「鞄」を思い出して、読み直してみようと思ったのだった。
安部公房は、よく分からない。
けれど、いつもその分からなさの中に、通じるものがあって、自分にとって特別に至ってしまう。
「笑う月」
私はよく夢を見る方なので、誰かの見る夢の話にも興味を惹かれる。
花王石鹸のような月に、ただふわふわと追いかけられる夢。怖い。
今日、あんな顔を持つ月のイラストはないよね。
「夢を書くのに適したスタイルで書けない夢は、夢としての価値もない、という簡単な事実である。」
まず見なければならない。
でも、見たから書けるわけではない。
見たように書くことの中に、捨てるいさぎよさが必要だ、とある。
面白い。
「公然の秘密」
泥の中から這い上がる化石の?腐りかけた仔象。
見世物となり、食べ物としてマッチを与えられ、最後には燃えてしまう。
「当然だろう、弱者への愛には、いつだって殺意がこめられている。」
最近のニュースの中で、この仔象たりえる人を、ふと思いつく。
傷付き、飢えた仔象に、取り囲む多くの人は今、固唾を飲んで「何をやるか」迷っているのだろう。