【感想・ネタバレ】笑う月(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ――。交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という〈意識下でつづっている創作ノート〉は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。

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Posted by ブクログ

自動書記という手法があります。これは執筆者の無意識を反映するために、意図を抱かずに書く方法のことです。

人間が眠っているときに見る夢を文字に起こすと、自動書記のようになるのかとこの作品を読んで感心しました。

おそらく私たち読者にとっては意味のわからない不思議な余韻の残る作品の羅列でしかないのですが、書いている安部公房さんにとっては「これはこのような意味なのかもしれない」と思いながら書き進めていったのではないでしょうか。

他人の夢の内容を文字に起こした上でそれを読めるのは貴重な体験ですね。しかも世界的前衛作家の安部公房さんの夢となると、さらにその貴重さが増すように思います。

個人的に気に入った作品は「発想の種子」です。
ぜひ読んでみてください。

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2022年08月20日

Posted by ブクログ

随筆でもあり小説でもある感じの話と、スナップショットが詰まっていた。
他の作品に比べると読みやすい。

私も夢(悪夢)をみることが多いほうだとおもうけど、安部公房がみる夢はやっぱりひと味違う。
他の作品にも通じるところがあって、不条理で少し怖い。
スナップショットも安部公房らしい味わいがあって良かった。

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2020年08月18日

Posted by ブクログ

「選ぶ道がなければ、迷うこともない。私は嫌になるほど自由だった」

安部公房にハマるきっかけになった「鞄」をまた数十年振り振りぐらいに読みたくなった。
昔は選択できることが少なくて迷うこともなく進むことが出来たのに、大人になるにつれて選べることが増え、どんどん僕は不自由になってしまった。

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2020年04月30日

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意外と読んでいなかった本作。

無意識から生まれ来るものについて、
安部公房が語るように、
精神分析的な解釈を考えるよりも、
その無意識に動かされ、遊び、昇華することを生業としている、
芸術家達が言葉にするのが、
とてもおもしろいと感じる。


公然の秘密

が、強く残った。

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2016年06月24日

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安部公房がいかにして物語を編むのか、創作の舞台裏をみるような一冊。

彼の紡ぐ世界は、書こうと思って書けるようなものでない。
ピカソの絵をみて、自分でも描けるのではないかと言う人がままいる。しかし、実際描こうとすると、途端に筆が止まるのではないか。描いてはみたものの、「なにか」が違う。彼の絵はデタラメに描いたのでは真似できない、「なにか」を備えている。だから人心を揺する。
例えはピカソでなくてもいいのだが、安部公房の作品の凄みは、ピカソのそれと似ている。意気込んで筆をとってみても、意図した途端に死んでしまう世界。彼はそれに命を吹き込む。それができる作家なのだ。今まで思ってもみなかったことだが、彼の編む世界に欲情した。なんてセクシーなんだろう。

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2016年05月09日

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まず、とっておきの睡眠誘導術を伝授されてから夢の話へ。
「こんな夢を見た」系のエッセイなのかな、と読みはじめました。笑う月、これはトラウマになりそう。
そこからだんだん安部公房の創作や発想のきっかけみたいな話になってきて、これはこれですごく面白かった。
夢のイメージが作品に反映されてるって事は…
品を読めば安部公房の夢を体験できちゃうってこと?あの独特な雰囲気は、無意識下のイメージ…?うーむなんだか妙に納得。
そしてその後は、夢の話のような創作のような短編作品が続きます。
奥さんの安倍真智による挿絵(コラージュ作品?)も差し込まれていて贅沢。
夢の中感が漂ってる〜〜

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2025年09月26日

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夢をテーマにしたちょっぴり怖くて不思議な短編集。
怖いというより…人間の野蛮さが垣間見えて少々気持ち悪い。

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2025年01月15日

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安倍公房17編の短編集。
どれも不思議な話で、理解するのも難しいけどとてもおもしろい。
『鞄』、『公然の秘密』が好き。

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2024年09月05日

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夢を通してそこから創作の種について語る。エッセイのようなものから完全創作の様に思えるものまで幅広く収録されており、脈略のない展開が続く作品集自体が夢の様であった。現実と寓話の間をゆく著者の作風の一端が知れる微睡の様な作品集。

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2024年05月07日

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夢とは論理では辿り得ない迷路を潜り抜ける方法。
サッカリン、祖父殺し、アリス、廃物・・・全く辻褄の合わない現象の連続ですが、説明不能の面白さでした!
訳がわからないということは限りなく自由だ。

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2024年04月03日

Posted by ブクログ

ダイダイ色の月が笑いながら追いかけてくる。恐怖の極限のイメージ。

安部文学の秘密に迫る17の「夢」絵巻。

禁じ手「夢の記録」が示す異世界は、あり得ないほど遠く、心落ち着くほど親近感湧くクリエイティブ。

船上でのサバイバルを描く『自己犠牲』が大好き。

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2020年03月28日

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ネタバレ

阿波環状線の話が面白かった。
イメージのない認識のみの夢...
この発想が安部公房のすごいところなのかな?

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2019年06月01日

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読んでると、夢の話なのか、色々よくわからなくなってくる。
この不思議な感覚はやはり安部公房だなと思う。

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2018年10月31日

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読む順番を間違えた……。
出来れば最後に読みたかったです。
夢日記を辿りながらのエッセイですが、公房の夢は何故か奇妙でちょっと怖い。

夢はありのまま捉えるのが一番だ。

この言葉からすると、常にストレスに悩まされていたのかなとも思います。
がしかし、やはり夢の基礎は断片的で、ちらと見たり聞いたりした内容からやはり作られているのはよくわかりました。
出来れば、デジャヴュのことも書いて欲しかった。
公房はデジャヴュを何と考えて、どう捉えていたのか知りたかったです。
なかなか真似の出来ない夢日記。
といった感じです。

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2018年09月08日

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著者が見た夢(寝ている間に見ている方の)について、それを文字にして描写した作品。

夢をこんなに深く追及するという発想はなかったし、だからこそとても興味深く感じた。

余談だが、村上春樹は安部公房の作品を読んで、少なからず影響を受けたのではないかな、と思う。

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2018年07月16日

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高校の国語の教科書に掲載されていていまだに印象に残っていた『鞄』。なんてことのない、鞄が重くて運べない、といった話がいまだに忘れられず、この度10年振りに再読した。夢小説らしく、不思議な、ただやはり忘れがたい小説である。

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2016年02月10日

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夜に見る夢の話。一編が短いから読みやすい。
初の安部公房だったけどかなり好きになれそうな感じだった。また読んでみたい。

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2016年01月26日

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夢という切り口を通して現実世界と「安部公房の世界」とを結び付ける安部公房の頭の中を垣間見ることができる興味深い短編集。著者の着眼点や発想力はいずれの作品でも驚かされるばかりだが、なるほど、こういう空想から生まれるのである。

いずれの短編も優れた佳作だが、個人的には人間の残酷さと幾許かのホラーを感じる「蓄音機」と、「自己犠牲」が寓話的ブラックユーモアが効いて面白かった。

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2015年12月13日

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本当に「夢の内容を書き写した創作ノート」以上のものではない。
「公然の秘密」や「シャボン玉の皮」等は思想が見えて面白い。
「弱者への愛にはいつだって殺意がこめられている。」
少し分かる気がした。
理由はまだ言語化出来ない。

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2025年05月31日

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訳の分からなさ加減がクセになる作品集
夢と現実、虚構と潜在意識の混じり合った
不可思議な世界観が気持ち悪くて面白い
発想の種子が詰まりすぎていて嫉妬してしまう

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2024年06月03日

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ネタバレ

夢に関するエッセイ?だけど、小説家なのでだいぶフィクションも含まれてるかと。不思議な趣の話が続くけれど、わりとさらっと読めてしまった。

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2024年04月15日

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夢を録音していたという話があったが、
安部公房の作品の夢を見ているような感覚の原点は
ここにあるのかもしれない。

まさに現実と夢に境目がわからないように、
夢という題材にありながら、
事実のような、フィクションのような、エッセイのような
奇妙な感覚に囚われる作品だった。

ショートショート並みに短い話ばかりでかなり読みやすい
が、まあ夢なので「なんじゃこりゃ?」な話もいくつかあるのだった

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2023年07月01日

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この本に納められている「鞄」を読み返したかった。
「鞄」は、たしか高校の国語の教科書に載っていた話。
高校生当時は、わけわかんないけど不思議な味わいのする話だな、と思っていた。なぜか記憶に残っていた。
読み返してみて、やっぱりわけわかんないけど、不思議な味わいのする話だった。

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2022年04月11日

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初めて読んだ安部公房の本

この本が最初でよかったわからないけれど短編でサクサク読めた

逆説的な表現が多くてこいつ好きな子いじめるタイプだと思った

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2021年12月07日

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初めて安部公房の作品を読んだ。夢の内容をモチーフにした短編やエッセイが収録されていた。不気味でよく分からない物も多いが引き付けられる文章で、ページ数も短くすぐに読める。

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2021年03月03日

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夢に見たことを起床後に作文しようとするといかにストーリー化するのが困難かがわかる。作話が夢でなく、思い出している時に見繕っていることなのかも知れぬ。本書では、実際夢の中でのでき事が夢としてリアルに(?)感じる。巻末に解説が欲しいと思った。2021.1.19

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2021年01月19日

Posted by ブクログ

小説かと思ったら半分くらいエッセイ。エッセイの方は作品のルーツがわかるような内容のようだが、肝心の作品をそこまで多く読んでいないし最後に読んだのも遥か前で余り感じるところなく。
最後の数篇は正に夢を元にしたらしい小説。案内人や密会の出口の無さや性的イメージは自分の見る夢に近い。
鞄は夢の感覚とは離れているような気もするけど、起承転結が見事で好き。

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2019年04月28日

Posted by ブクログ

夢と現実の溝に挟まって、でも、
だからといって
抵抗するでもなく受け入れるでもない感じ…
はっきりしないまま途切れ途切れに延長していく「夢」のメモ。
朝、天井を見て
「あれ、ここどこだっけ?……あ、私の部屋か…」
「今日、何曜日だっけ?!……大丈夫だ、休みの日だった…」
っていう寝覚めのような、
の一瞬脳みそ持ってかれるような読後感です。

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2018年10月08日

Posted by ブクログ

短編なのでスイスイ読めるが、独特の世界観に難渋。著者は頭が良すぎて、我ら凡人には理解できない思考回路のような気がする。
氏が創作する過程が垣間見えたのは非常に楽しい。

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2017年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なかなかに悪夢。
ちょっとでもつま先を浸そうものなら、がっしと足首掴まれて引きずり込まれそうな…。
でも心惹かれる世界。

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2025年05月28日

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