安部公房のレビュー一覧

  • 他人の顔(新潮文庫)

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    人はみな他人の顔を求めるものだと思う。 SNSで友人を作るのが当たり前になっている現代は、出版された時代と比べてもかなり「自分とは別の顔」が普及した世の中になっている。
    のみならず、コスプレやメタバース、ゲームのアバターなど「自分以外の自分」で自己表現ができる機会は多い。
    化粧や整形の普及もあって、顔がもたらすアイコン的特性自体も強くなったかなとも思う。

    本書の主人公は、他人の感情などまるで見ていない。妻・同僚の感情や思いやりに無頓着で、被害者意識で利己的な屁理屈と哲学をこねながら延々と同じ場所をぐるぐる回っている。結果として仮面と自己の同一性は歪み、現実との通気口となるはずの仮面は現実逃避

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    2024年02月08日
  • 壁(新潮文庫)

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    新潮文庫、昭和44年発行版を読んだ。
    収録作は「S·カルマ氏の犯罪」、「バベルの塔の狸」、「赤い繭」(赤い繭、洪水、魔法のチョーク、事業)。
    全編を通して悪い夢でも見ているような感覚であったが、面白かった。
    「赤い繭」は国語の教科書にも載せられているが、なるほど一番まとまりがよく、短い中に安部公房のエッセンスの詰め込まれた作品であると気付かされた。

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    2024年02月04日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    [感想]
    『友達』のなんだかわからない世界観に強引に引き込んでいく安部公房の描写力、会話力がすごい。
    『棒になった男』の棒とは何か?観客に向けて棒の森と言っているので、現代社会に生きる人々=棒と言っているのか、決まりきった考え方で生き死んでいく人々のことを棒と言っているのか様々な考察ができる作品なっていた。

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    2024年01月20日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    電子頭脳を持つ予言機械、今で言う人工知能のような機械にある男の未来を予言させたことに端を発し、事態はあれよあれよと急展開を迎える。
    SF的な要素があるかと思えば、唐突にミステリーな要素が垣間見えたり、SF小説と言われているが、不思議な作風だった。この作品が日本で初の本格SF小説だそう。
    そして、1959年に出版されたとは思えないほどに近未来的で、今の時代に出版されても古さを感じさせないのではないかと思う。
    「砂の女」や「箱男」のような哲学的な作品を書くかと思えば、この作品のようにSF要素のある未来を予想したかのような作品を書いたり、阿部公房の作風の幅の広さに驚いた。この作品のほうが先の2作品よ

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    2024年01月19日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    安部公房特有の暗くねばっこい質感がありながら読む手を止まらせない一冊。

    探偵としてあちこち探し回り、一癖も二癖もある人たちと何度もすれ違っているが探してる男の姿は一向に見つからない。影さえ見えないままだから心のどこかに知らない影を作りたがるのは誰もがそうなのかもしれない。

    そうして終わらない迷路を彷徨った主人公が最後にたどり着いた先が実際に迷路の終わりだったのか、新しい迷路の始まりだったのか。細部に至るまで抽象化した現代の偶像としての都会、社会性を描いた作品に思えて面白かった。

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    2024年01月08日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    安部公房の短編集は読むのにすごくエネルギーがいる。長編小説であれば最初から最後までトップスピードというわけにはいかないので「遊び」がある。遊びとは、安部公房の世界から我々の住む、あるいは理解し得る世界へ戻って来れる瞬間のことである。しかし短編小説では向こうの世界に入ったっきり、物語が終わるまで帰ってくることができない。読者が通訳だとして、通訳の話す時間を与えるために適宜話すのを止めてくれるスピーカーが長編小説、自分の言いたいことを最初から最後まで一気に自分の言語で話してしまうスピーカーが短編小説といったところである。後者の場合、通訳である読者である我々はとにかくスピーカーが話すことを全神経を集

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    2023年12月11日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    ネットで話題ということで気になっていたがなかなか出会わず忘れていた頃、たまたま立ち寄った書店で平積みになってるのを発見。小さなお店に似つかわしくないほどの大量の平積み。買い求める際もなぜか店員さんがとても喜んでいたのでこの人この本好きなんだな。と、思っていたところ本のオビを見て納得。オビの文句書いたのこの店の店員さんじゃないか!こんな偶然もあるんですね。おかげでこの本に出会えました。面白かったです。ありがとう。

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    2023年10月31日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    これまで読んだ安部公房の中では、
    私にとっては難解で、
    意味を理解するというよりは、
    円環的で、主客が狂っていく、
    いつもの蟻地獄のような安部公房世界を味わうことに努めた。

    難解な理由の一つは、
    会話が、描写が、
    何を言っているのかわからないのだ。
    限りなくリアリティがあるような変哲もない団地の景色も、
    その変哲もなさが詳細に語られるほどに、
    なんの特徴もなくて超現実的になる。
    根室婦人の言葉は終始何を言っているのかひとつも分からず、
    夢なのか幻なのか、
    主人公同様に区別がつかずに混乱してくる。

    しかしそれらは読書から離れて現実に戻った時に、
    今この私が私であるという自己感覚に、
    大きな疑

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    2023年10月29日
  • 密会(新潮文庫)

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    ●あらすじ
    ある夏の未明、突然やって来た救急車が妻を連れ去った。男は妻を捜して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一盗聴マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、出自が試験管の秘書、溶骨症の少女、〈仮面女〉など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的な愛と快楽の光景を描き、野心的構成で出口のない現代人の地獄を浮き彫りにする。
    (新潮社HPより抜粋)

    ●感想
    これは難解…なんだけと面白…!
    安部公房はいつもそうだけど時間軸が前後する上に今作では一人称視点、三人称視点が入り乱れて読者を一瞬たりとも安心させない(あるいは一度安心させる)仕掛けが至る

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    2023年08月23日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ●あらすじ
    自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく「無関係な死」など、10編を収録。
    (新潮社ホームページより引用)


    初めての安部公房。10篇の短編が収録されている。
    文豪のつもりで読んだらかなりエンタメ寄りでびっくりしました。いつもオチでびっくりさせられるし、あるいはずっとハラハラして続きを読みたい気持ちにさせられます。文体はかなり比喩が多い。しかも言語感覚が独特。全然共感できない比喩もあれば、でも時々びっくりするぐらい鋭い比喩もあってどきどきしながら読みました。
    特に好きだったのは「夢の兵士」「家」「なわ」「無関係な死」「人魚伝」「時

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    2023年08月02日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    「R62号の発明」「鉛の卵」「変形の記録」は特に、心に残る素晴らしいSF。思慮と冒険に満ちた作品の数々。

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    2023年08月01日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    好きな長篇。
    サスペンス色が強く緊迫した雰囲気が、主人公と同調していく様で面白い。
    作者の先見の明という点で有名な本作だが、やはりこの時代でこの作品を生み出した安部公房は怪物という他ない。当時描かれていた未来を、現代から答え合わせ様々な考証が出来る有意義な一冊。

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    2023年07月23日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    安部公房全集29に所収のものを読んだ。読んだ、というか、訳が分からなくて飛ばし読み。
    訳が分からない、は褒め言葉で、ものすごいぶっ飛んでいてついていけなかったということ。
    なんだこれは。
    会社の新製品開発提案箱に冗談のつもりで「カンガルーノート」という落書きメモを提出して採用されてしまった男の脛にかいわれ大根が密生する。
    こわいー、脛がむずむずする。

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    2023年06月15日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    最初の出だしはかいわれ大根?!となりましたが、すぐこれは死の物語なのか…と話の中身は分かり易く、時々ふっと笑ってしまうタイミングが合って、読みやすかった。澁澤龍彦の『高岡親王航海記』、安部公房版ですね。

    安部公房の半生全然知りませんが、これが自身の闘病生活を綴っているのだとすると(そのようにしか見えませんでしたが)、かいわれ大根とか言いつつ…とか、やはり排泄にまつわる辛さや、変わる視点・意識など、最後はこうなるのかとひしひしと思いました。ところどころで描写や文言がささって、ふっと笑うんだけど、笑った瞬間悲しくなってました。オタスケ オタスケ オタスケヨ オネガイダカラ タスケテヨの歌が本当に

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    2023年06月14日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    幻想的というか不条理というか、とにかく訳のわからない10編。でも読み終えてしまった。
    夢の兵士:脱走者の正体にニヤリ。
    誘惑者:駅での出来事。追う者と追われる者の逆転。立場の逆転好きだねえ。
    家:死なない祖先。ホラー小説のようだ。
    使者:嘘火星人の話。気が狂っているだけなのか?
    透視図法:スルスルと登ってくる針金にゾッとした。
    賭:頭のおかしい宣伝会社の話か?
    なわ:壁に開けた覗き穴。壁とか穴とか好きだねえ。ドキドキの展開だけど犬が可哀想。
    無関係な死:なぜ警察に通報しないのか?などと言ってはけないのかな。
    人魚伝:緑の人魚。ねじ曲がった欲望の果て。
    時の崖:ボクサーの心の動き。結局は飯、タバ

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    2023年04月10日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    途中入り込みにくい篇もあったが、最後の鉛の卵にて、やはりこれ、という結末。「スカッとしない展開」という意味でスカッとする転換劇。気づくと安部公房の論理のすり鉢状の砂に飲み込まれている。

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    2023年03月12日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    半世紀以上の時を経て、2020年代の我々こそ切実に読む物語ではないだろうか。
    私が最初に読んだ2006年ごろ、世間はweb 2.0の頃で、深層学習や機械学習以前。作中の「予言機」はまだ荒唐無稽なものとして捉えていた。
    しかしchatGPT等のLLM(大規模言語モデル)と呼ばれるAIが現実に存在する2024年の私には、「予言機」は切実さを感じる存在で、明らかに2006年よりも、このお話自体の内容が切実に迫ってくる(chatGPTは予言のための機械ではないが、予言機はchatGPTのように未来を「生成」し、作中人物と対話している)。
    64年の歳月を経ている作品が、直近約20年を挟んで、こんなにも読

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    2024年09月15日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    火星人についてのラジオ番組の脚本家の家に、自称火星人の気違い男が訪ねてきて、自分は本物の火星人だと思うか、自称火星人と名乗る気違いだと思うか、気違いだと思ってるんだろ、証拠を見せろ、、うんちゃらかんちゃら、、やってるうちに、まんまと相手の話術に乗せられ、とうとう自分が火星人だと言わされてしまう。
    相手の話術もすごいけど、なぜ引き返せなくなったのか、、
    結局、アイツは誰だったのか、、何が目的だったのか、、、
    そもそも夢だったのか?
    最初はどうなるのかと、展開や会話がおもしろかったけど、読んでるこちらまで、だんだん訪問者の口車に乗せられているような気がしてきて話をすっ飛ばしたくなる笑

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    2023年02月16日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    SF作家に熱烈なファンが来訪してくる。来訪者の妻の電話によりグッと引き込まれ、来訪者が異常者なのかどうなのか主人公と同じ目線で判断する楽しさがあった。意味不明ながらも筋の通った論理を展開する所は安部公房らしくて読んでいて楽しかった。

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    2022年12月17日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    『友達』の原題にもなった『闖入者』が抜けてて素晴らしい。
    他収録作はシュールレアリスム寄りだが、安部公房作品では相対的に取っ付きやすい部類かもしれない。

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    2023年01月04日