安部公房のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
人はみな他人の顔を求めるものだと思う。 SNSで友人を作るのが当たり前になっている現代は、出版された時代と比べてもかなり「自分とは別の顔」が普及した世の中になっている。
のみならず、コスプレやメタバース、ゲームのアバターなど「自分以外の自分」で自己表現ができる機会は多い。
化粧や整形の普及もあって、顔がもたらすアイコン的特性自体も強くなったかなとも思う。
本書の主人公は、他人の感情などまるで見ていない。妻・同僚の感情や思いやりに無頓着で、被害者意識で利己的な屁理屈と哲学をこねながら延々と同じ場所をぐるぐる回っている。結果として仮面と自己の同一性は歪み、現実との通気口となるはずの仮面は現実逃避 -
Posted by ブクログ
電子頭脳を持つ予言機械、今で言う人工知能のような機械にある男の未来を予言させたことに端を発し、事態はあれよあれよと急展開を迎える。
SF的な要素があるかと思えば、唐突にミステリーな要素が垣間見えたり、SF小説と言われているが、不思議な作風だった。この作品が日本で初の本格SF小説だそう。
そして、1959年に出版されたとは思えないほどに近未来的で、今の時代に出版されても古さを感じさせないのではないかと思う。
「砂の女」や「箱男」のような哲学的な作品を書くかと思えば、この作品のようにSF要素のある未来を予想したかのような作品を書いたり、阿部公房の作風の幅の広さに驚いた。この作品のほうが先の2作品よ -
Posted by ブクログ
安部公房の短編集は読むのにすごくエネルギーがいる。長編小説であれば最初から最後までトップスピードというわけにはいかないので「遊び」がある。遊びとは、安部公房の世界から我々の住む、あるいは理解し得る世界へ戻って来れる瞬間のことである。しかし短編小説では向こうの世界に入ったっきり、物語が終わるまで帰ってくることができない。読者が通訳だとして、通訳の話す時間を与えるために適宜話すのを止めてくれるスピーカーが長編小説、自分の言いたいことを最初から最後まで一気に自分の言語で話してしまうスピーカーが短編小説といったところである。後者の場合、通訳である読者である我々はとにかくスピーカーが話すことを全神経を集
-
Posted by ブクログ
これまで読んだ安部公房の中では、
私にとっては難解で、
意味を理解するというよりは、
円環的で、主客が狂っていく、
いつもの蟻地獄のような安部公房世界を味わうことに努めた。
難解な理由の一つは、
会話が、描写が、
何を言っているのかわからないのだ。
限りなくリアリティがあるような変哲もない団地の景色も、
その変哲もなさが詳細に語られるほどに、
なんの特徴もなくて超現実的になる。
根室婦人の言葉は終始何を言っているのかひとつも分からず、
夢なのか幻なのか、
主人公同様に区別がつかずに混乱してくる。
しかしそれらは読書から離れて現実に戻った時に、
今この私が私であるという自己感覚に、
大きな疑 -
Posted by ブクログ
●あらすじ
ある夏の未明、突然やって来た救急車が妻を連れ去った。男は妻を捜して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一盗聴マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、出自が試験管の秘書、溶骨症の少女、〈仮面女〉など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的な愛と快楽の光景を描き、野心的構成で出口のない現代人の地獄を浮き彫りにする。
(新潮社HPより抜粋)
●感想
これは難解…なんだけと面白…!
安部公房はいつもそうだけど時間軸が前後する上に今作では一人称視点、三人称視点が入り乱れて読者を一瞬たりとも安心させない(あるいは一度安心させる)仕掛けが至る -
Posted by ブクログ
ネタバレ●あらすじ
自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく「無関係な死」など、10編を収録。
(新潮社ホームページより引用)
初めての安部公房。10篇の短編が収録されている。
文豪のつもりで読んだらかなりエンタメ寄りでびっくりしました。いつもオチでびっくりさせられるし、あるいはずっとハラハラして続きを読みたい気持ちにさせられます。文体はかなり比喩が多い。しかも言語感覚が独特。全然共感できない比喩もあれば、でも時々びっくりするぐらい鋭い比喩もあってどきどきしながら読みました。
特に好きだったのは「夢の兵士」「家」「なわ」「無関係な死」「人魚伝」「時 -
Posted by ブクログ
最初の出だしはかいわれ大根?!となりましたが、すぐこれは死の物語なのか…と話の中身は分かり易く、時々ふっと笑ってしまうタイミングが合って、読みやすかった。澁澤龍彦の『高岡親王航海記』、安部公房版ですね。
安部公房の半生全然知りませんが、これが自身の闘病生活を綴っているのだとすると(そのようにしか見えませんでしたが)、かいわれ大根とか言いつつ…とか、やはり排泄にまつわる辛さや、変わる視点・意識など、最後はこうなるのかとひしひしと思いました。ところどころで描写や文言がささって、ふっと笑うんだけど、笑った瞬間悲しくなってました。オタスケ オタスケ オタスケヨ オネガイダカラ タスケテヨの歌が本当に -
Posted by ブクログ
幻想的というか不条理というか、とにかく訳のわからない10編。でも読み終えてしまった。
夢の兵士:脱走者の正体にニヤリ。
誘惑者:駅での出来事。追う者と追われる者の逆転。立場の逆転好きだねえ。
家:死なない祖先。ホラー小説のようだ。
使者:嘘火星人の話。気が狂っているだけなのか?
透視図法:スルスルと登ってくる針金にゾッとした。
賭:頭のおかしい宣伝会社の話か?
なわ:壁に開けた覗き穴。壁とか穴とか好きだねえ。ドキドキの展開だけど犬が可哀想。
無関係な死:なぜ警察に通報しないのか?などと言ってはけないのかな。
人魚伝:緑の人魚。ねじ曲がった欲望の果て。
時の崖:ボクサーの心の動き。結局は飯、タバ -
Posted by ブクログ
半世紀以上の時を経て、2020年代の我々こそ切実に読む物語ではないだろうか。
私が最初に読んだ2006年ごろ、世間はweb 2.0の頃で、深層学習や機械学習以前。作中の「予言機」はまだ荒唐無稽なものとして捉えていた。
しかしchatGPT等のLLM(大規模言語モデル)と呼ばれるAIが現実に存在する2024年の私には、「予言機」は切実さを感じる存在で、明らかに2006年よりも、このお話自体の内容が切実に迫ってくる(chatGPTは予言のための機械ではないが、予言機はchatGPTのように未来を「生成」し、作中人物と対話している)。
64年の歳月を経ている作品が、直近約20年を挟んで、こんなにも読 -
Posted by ブクログ
火星人についてのラジオ番組の脚本家の家に、自称火星人の気違い男が訪ねてきて、自分は本物の火星人だと思うか、自称火星人と名乗る気違いだと思うか、気違いだと思ってるんだろ、証拠を見せろ、、うんちゃらかんちゃら、、やってるうちに、まんまと相手の話術に乗せられ、とうとう自分が火星人だと言わされてしまう。
相手の話術もすごいけど、なぜ引き返せなくなったのか、、
結局、アイツは誰だったのか、、何が目的だったのか、、、
そもそも夢だったのか?
最初はどうなるのかと、展開や会話がおもしろかったけど、読んでるこちらまで、だんだん訪問者の口車に乗せられているような気がしてきて話をすっ飛ばしたくなる笑