安部公房のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
学生時代に読んだ本を再読。
父に薦められて読み、SF好きになり、読書習慣が付くことになった思い出深い本である。
予言機械、水棲生物の存在は常識から大きく外れている。
その異常さ、不気味さに起因しているのだろうか、読み進めるにつれて主人公の世界自体が現実から剥離していく様な感覚に陥る。
未来の残酷さを受け入れるか否かが、この本の主題となっているが、楽観主義の私は本編の未来はまだ良いように感じた。
現実では、今まさに起きている戦争ですぐ近くの国が核を撃つかもしれない。
それを起点とし、人類が滅ぶ事もあり得る。
そんな未来が無いと言い切れるだろうか。 -
Posted by ブクログ
「目を覚ましました」から始まる。何かしら変だと思う。まるでカフカの変身の毒虫のお話のような失われた自分の名前。
自分の中に砂漠を宿して、いや からっぽになった自分もどきをもてあまして悪あがきをする。
不思議な世界を冒険している童話のようであり、かなりシュールな旅をしているような気分を味わう。
「バベルの塔の狸」は、もっと冒険する。
はたして自分の中の葛藤なのか?様々な要素が絡まる。世界にのめり込んでしまった!
楽しすぎるし、ゾワゾワと鳥肌がたつ!あーでもないこーでもないと頭を巡らせる事ができる。
何度でも読めるし、何度でも違う感想を持てそう。そしていろいろな学び直しをしたくなる
壁はさまざま、 -
Posted by ブクログ
けものたちは故郷をめざす
著:安部 公房
新潮文庫 あ-4-3
ヤマザキマリの「国境のない生き方」にお薦めがあったので、一読させていただきました
逃げ遅れた日本人久木久三と、日系中国人高との、満州からの逃避行
八路軍を巻くように、都市を避ける南下路
眠ることすら難しい凍土の旅程
野犬、狼がうろうろとする、身を隠すことができない原野
氷はあるが、水を飲むことがなかなか許されない
ピストルをもち、なかば脅されながら進む
疲労困憊でわずかな坂を上ることすら時間がかかってしまう
敵とも味方とも分からない連れにも神経を研ぎ澄ませ、久三の生への挑戦が続く
凍傷でボロボロとなる皮膚、パンをもうけつ -
Posted by ブクログ
本屋をぶらっと見ていたら何と新刊に安部公房が!!!一番好きな作家と言っていいくらいに好きなのでとても感激!
未完ながら、この精緻で堅牢な構造物のようにかっちりとした文章は正に安部公房。飛ぶ男というのも安部公房らしい。最初未完と知らずに読み始めたので、途中から文字が欠けていたので印刷ミス?と一瞬思ったがそうではなかったみたい。あの微妙な空白は何の空白なんだろうか?
とはいえしっかり安部公房の世界を感じれてよかった。「さまざまな父」も同じモチーフのようなのでこれらがひとつの作品として纏まればかなり面白い作品になるだろうな、と空想するのもまた楽しい。
安部公房、また全部読み直そうかな、と思って