安部公房のレビュー一覧
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それにしても、どんなにか恐ろしい、孤独の日々だったことだろう。
ぼくは灰汁のような憐れみにひたされ、燻製のようになりながら、
やっとの思いで彼女を振り向いて見た。Posted by ブクログ -
まさか未来予言機の開発話がこんな展開をするとは…目が離せず、一気に読んでしまった。
古典文学を読んでいると、当時の感覚では当たり前でも今の感覚では「倫理的にどうなんだ」と思う現象が多々ある。きっと未来人から見た我々にもそういう点がいろいろあるだろう。
人間の価値観は絶えず変動しているが、絶対的に現在...続きを読むPosted by ブクログ -
安部公房が書く「都会という無限の迷路」、それはタクシーであり公衆電話であり地図であり電話番号……、そのような「都会」は今はもうないのかもしれない。
初めは物語世界に入り込むのに苦労した。
半分を超えたあたりで、小説のテーマが何となくわかった。
入り込めなかったのは、現代が安部公房の時代とは前提が変...続きを読むPosted by ブクログ -
個人的には名作。
『密室』は苦手だったが、こちらは後期安部公房の寓話性とダンジョンの面白さが噛み合って先がとにかく気になった。
ラストの静寂と、もの寂しさは次作『カンガルーノート』に引き継がれる新鮮さでとても良かった。Posted by ブクログ -
安部公房の作品という感じでとても良かった。この世界に身を浸すことが楽しい。意味や風刺はもちろん私には読み取りきれない。でもそれでもいい、そのまま作品を楽しめばいいと解説に書いてあって楽な気持ちになった。純粋に安部公房の描く世界の美しさと不可思議さと、その文体の見事さに浸って良いのだと思った。Posted by ブクログ
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希望でも絶望でもない未来。
安部公房は一貫してしっかりとした論拠をもって現代社会への警鐘や逃避をテーマにしてきましたが、SF作品への挑戦は自然な流れのように思えます。
他の作品同様に、鋭い視点と論理的な指摘、そしてたっぷりのユーモア。紛れもない安部文学であり、大いに楽しませて頂きました。Posted by ブクログ -
「人間そっくり」は1966年に『S-Fマガジン』に連載された作品です。
ある日、
自分は火星人だという男が訪ねてくる。
自分は火星人だという男。
彼は、ある小説の原稿を手にしている。
タイトルは「人間そっくり」
今回の出来事を、事前に小説に仕上げてきたという。
そこから、延々150ページにわた...続きを読むPosted by ブクログ -
失踪シリーズに挙げられるが、個人的に安部公房作品でも砂の女と並び傑作。
顔を失った男の自閉した内省・思考の流れが滑稽で面白い。読んでいくうち主人公と同化し沈み込んでいく引力がある。
作品世界が非常に狭く、読後は疲労も残り要体力。Posted by ブクログ -
次はどうなるの?どうなるの?と読書が止まらない作品でした。読み終わらない間のわくわく感と、自分もその場に居るようなスリル感。楽しくてしかたありませんでした。安部公房さんの本また読みたいと思う。Posted by ブクログ
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「ぼくの眼に、彼女はすりガラスであっても、彼女の眼には、ぼくは単なる透明ガラスだったのだ。」(人魚伝)
人魚の彼女と「ぼく」の間にある言語・生物的な壁と、それに付随するもどかしさを端的に、そして叙情的に表す表現力。
安部公房の作品はいつも、どこにでもありそうな風景と人物である。なのに、何かが...続きを読むPosted by ブクログ -
天才。
これは夢か現実かわからなくなることが夢の中であるが現実の中で起こしている。
かいわれ大根やカンガルー、ベッドといった周りにあるものをあり得ないものと組み合わせて登場させる。それが癌を患わした自分と重ねているのか、それが小説だと主張してるのか。
人が死ぬときはそんなもんだと言ってるのかもしれな...続きを読むPosted by ブクログ -
つまりは未来を受け入れられる人間とそうじゃない人間がいるという話だった。私たちは理解できない強大なものに恐怖心を感じるようにできている。Posted by ブクログ
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11の無慈悲な短編集
シニカル・ウィット・刹那・苦悩に溢れ
あらゆる人間の負の感情を曝け出すも
対極にある無頼な世界に帰結する
タイトル2作も情け容赦ない末路を辿るが
“何か”を犠牲にする事で救われたような…
無責任な安堵が心を満たしたPosted by ブクログ