安部公房のレビュー一覧
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大学4年生だったかな。まぁ、十何年も前のこと。ちょっとお手伝いしてたバイトのマスターが、好きな本なのだと、いくつか本を下さって、そこに安部公房の砂の女があった。それまでは、高校の教科書で赤い繭が載ってて、奇妙で怖い感じの話を書く人くらいの印象だったのだけど、
そこからどハマりして、いくつか呼んだ記憶がある。
でもこの初期の短編は、読んだことがなかった。
久しぶりなのもあるし、初期なのもあると思うけど、初めはちょっと入り込みにくかった。
後ろの方の、耳の値段や、鏡と呼子、鉄の卵辺りで、あぁこれこれ、そうだ、この感じ、となった。
少し長いお話の方が、私には合ってたのかも。特に鉄の卵が良かった。突飛な状況と、見方が変わることによって全然世界が違く見えてくる感じ。
今から70年とか前の話で、時代を感じるものもあれば、全然色褪せないものもある。鉄の卵のシチュエーションとか、進撃の巨人?とかDr.stones?とか思っちゃったりして。
また、読み返してみようと、思った。 -
Posted by ブクログ
まさか未来予言機の開発話がこんな展開をするとは…目が離せず、一気に読んでしまった。
古典文学を読んでいると、当時の感覚では当たり前でも今の感覚では「倫理的にどうなんだ」と思う現象が多々ある。きっと未来人から見た我々にもそういう点がいろいろあるだろう。
人間の価値観は絶えず変動しているが、絶対的に現在が最善というのは間違っているのではないか?
それでも良かれ悪かれ、私たち「現代人」は現代の価値観の中で現代を生きるしか道はないのだが。
最後に安部公房は、現代人に未来の価値観を評価する資格はないと言った。
現代人の偏見で未来を観測して、頓珍漢だと絶望するくらいなら、未来予測なんてない方が良いのかもしれない。
未来人がぴちぴちの全身タイツだって、ヤバい見た目の生物に進化していたって、黙って受け入れるしかない。彼らが未来に生きる「現代人」である限り。 -
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安部公房が書く「都会という無限の迷路」、それはタクシーであり公衆電話であり地図であり電話番号……、そのような「都会」は今はもうないのかもしれない。
初めは物語世界に入り込むのに苦労した。
半分を超えたあたりで、小説のテーマが何となくわかった。
入り込めなかったのは、現代が安部公房の時代とは前提が変わってしまったからかもしれない。
冒頭、「だから君は、道を見失っても、迷うことは出来ないのだ」とある。
安部公房の時代からさらに時が経ち、現代はもはや、手掛かりとしての地図すら消えてしまった状況ではないか。
道が自分と同化し、道を見失うこともできなくなった……。 -
Posted by ブクログ
「ぼくの眼に、彼女はすりガラスであっても、彼女の眼には、ぼくは単なる透明ガラスだったのだ。」(人魚伝)
人魚の彼女と「ぼく」の間にある言語・生物的な壁と、それに付随するもどかしさを端的に、そして叙情的に表す表現力。
安部公房の作品はいつも、どこにでもありそうな風景と人物である。なのに、何かが変で、普遍的世界と表裏一体の非現実。
あとがきでもあるように、相対する関係がじつは同じ穴のムジナで、メビウスの輪のように交わる世界が安部公房の持ち味である。
本著の中で特に好きなのは、「無関係な死」と「人魚伝」。
【無関係な死】
無関係の証明をしようとあがくうちに、その死体との関係性が増し、最後にはどうしても否定できない程の関係性が出来上がっている。床の白さの演出が素晴らしい。
サスペンスのような筋書きから、ほんの少し、初めの一歩がズレただけで、行き着く結末が非現実味を帯びる。
【人魚伝】
全身緑の人魚が可愛く思えてくる。まさか安部公房の作品でここまで女性?を愛らしく感じることがあるとは。
冒頭の「物語という檻の悲惨さ」は、最後の半ページで意味が啓ける。
物語にすれば、結末が生まれ、そこに何らかの意味づけがされる。この場合は「ロマネスクな家畜」(この表現も美しい。)
物語の意味づけは無意味であり、重要なのはその途中にある、書き上げられない小さな蠢き。
しかし人魚というこれぞ物語、伝説的寓話を伝えるには物語の手法しかない。物語にできないものを物語でしか伝えられない、滑稽さ。
こうした解釈を加えることも、物語に意味付けをしているという点で、作品を「物語の檻」に閉じ込めることになる。安部公房の妙技によって、作品を語ることを封じられてしまっている。
そして例に漏れず、「捕食者と家畜」、「物語とその拒絶」という相対するテーマが、メビウスの輪となって絡まっている。 -
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自動書記という手法があります。これは執筆者の無意識を反映するために、意図を抱かずに書く方法のことです。
人間が眠っているときに見る夢を文字に起こすと、自動書記のようになるのかとこの作品を読んで感心しました。
おそらく私たち読者にとっては意味のわからない不思議な余韻の残る作品の羅列でしかないのですが、書いている安部公房さんにとっては「これはこのような意味なのかもしれない」と思いながら書き進めていったのではないでしょうか。
他人の夢の内容を文字に起こした上でそれを読めるのは貴重な体験ですね。しかも世界的前衛作家の安部公房さんの夢となると、さらにその貴重さが増すように思います。
個人的に気に入った作品は「発想の種子」です。
ぜひ読んでみてください。 -
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ネタバレ贋物ユープケッチャからの始まりで、早速にも好奇心を鷲掴みにされた。
嘘か本当か分からないような情報と共に、サバイバルゲーム的な展開が繰り広げられる。
結局、ユープケッチャは何だったのか?
ユープケッチャに何を託そうとしたのかが分からない。
公房独特のクセの強いブラックユーモアもあり、そこで安心感と安定感を得る。
ノアの方舟には正直な、唯一の人間しか乗船できないらしい。
「砂の女」が苦手意識があり、初めに読んだ時は暑苦しいしで辛かったけれど、再読を決心させてくれた。
まだ公房作品に慣れないし掴めないまま「砂の女」を読んだ記憶があり、しかし本書は夢中になれたので、再読すればまた違う視点や感覚に触れられそうで仕方ない。
場面などは全く違うんだけれど、閉塞感が似ていることから決めた。
世界のあらゆる自分以外の人間が透明人間に見えたところ、案外他人なんてそんなものかもしれない。
モグラの他人に対する見方が変わった瞬間が凄く好きで、背中をぽんと叩いてあげたくなる。 -
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学生時代以来の安部公房。
BOOKOFFで購入。
「砂の女」を読んで新婚旅行で鳥取砂丘に行ったくらいだから、学生時代にはわりと熱心に読んでいたと思う。
安部公房はくせがあり、最初にスッと入れないとなかなか読み通すのが難しいが、これはスッと入れた。
スマホもパソコンもほとんど普及していない時代、想像力の豊かすぎる主人公が核戦争に備えて巨大なシェルターを作り、「生き残るに値する人々」をスカウトする筈だったのだが…という話。
主人公を始め、出てくるのはいびつな人たちだ。いびつさが奇妙に誇張されグロテスクでさえある。
しかし、読後感はわりと爽やかだった。