安部公房のレビュー一覧

  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    それにしても、どんなにか恐ろしい、孤独の日々だったことだろう。
    ぼくは灰汁のような憐れみにひたされ、燻製のようになりながら、
    やっとの思いで彼女を振り向いて見た。

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    2023年03月22日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    まさか未来予言機の開発話がこんな展開をするとは…目が離せず、一気に読んでしまった。
    古典文学を読んでいると、当時の感覚では当たり前でも今の感覚では「倫理的にどうなんだ」と思う現象が多々ある。きっと未来人から見た我々にもそういう点がいろいろあるだろう。
    人間の価値観は絶えず変動しているが、絶対的に現在が最善というのは間違っているのではないか?
    それでも良かれ悪かれ、私たち「現代人」は現代の価値観の中で現代を生きるしか道はないのだが。

    最後に安部公房は、現代人に未来の価値観を評価する資格はないと言った。
    現代人の偏見で未来を観測して、頓珍漢だと絶望するくらいなら、未来予測なんてない方が良いのかも

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    2023年08月07日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    安部公房が書く「都会という無限の迷路」、それはタクシーであり公衆電話であり地図であり電話番号……、そのような「都会」は今はもうないのかもしれない。

    初めは物語世界に入り込むのに苦労した。
    半分を超えたあたりで、小説のテーマが何となくわかった。
    入り込めなかったのは、現代が安部公房の時代とは前提が変わってしまったからかもしれない。

    冒頭、「だから君は、道を見失っても、迷うことは出来ないのだ」とある。
    安部公房の時代からさらに時が経ち、現代はもはや、手掛かりとしての地図すら消えてしまった状況ではないか。
    道が自分と同化し、道を見失うこともできなくなった……。

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    2023年02月10日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    個人的には名作。
    『密室』は苦手だったが、こちらは後期安部公房の寓話性とダンジョンの面白さが噛み合って先がとにかく気になった。
    ラストの静寂と、もの寂しさは次作『カンガルーノート』に引き継がれる新鮮さでとても良かった。

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    2023年01月03日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    安部公房の作品という感じでとても良かった。この世界に身を浸すことが楽しい。意味や風刺はもちろん私には読み取りきれない。でもそれでもいい、そのまま作品を楽しめばいいと解説に書いてあって楽な気持ちになった。純粋に安部公房の描く世界の美しさと不可思議さと、その文体の見事さに浸って良いのだと思った。

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    2022年11月25日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    希望でも絶望でもない未来。
    安部公房は一貫してしっかりとした論拠をもって現代社会への警鐘や逃避をテーマにしてきましたが、SF作品への挑戦は自然な流れのように思えます。
    他の作品同様に、鋭い視点と論理的な指摘、そしてたっぷりのユーモア。紛れもない安部文学であり、大いに楽しませて頂きました。

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    2022年11月05日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    「人間そっくり」は1966年に『S-Fマガジン』に連載された作品です。

    ある日、
    自分は火星人だという男が訪ねてくる。

    自分は火星人だという男。
    彼は、ある小説の原稿を手にしている。
    タイトルは「人間そっくり」
    今回の出来事を、事前に小説に仕上げてきたという。

    そこから、延々150ページにわたり
    何が本当で、何が嘘かがわからない押し問答が続く・・・。
    まるで星新一のショートショートのような展開です。
    ただ・・・長い・・・(;^_^A

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    2022年10月30日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    失踪シリーズに挙げられるが、個人的に安部公房作品でも砂の女と並び傑作。
    顔を失った男の自閉した内省・思考の流れが滑稽で面白い。読んでいくうち主人公と同化し沈み込んでいく引力がある。
    作品世界が非常に狭く、読後は疲労も残り要体力。

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    2023年01月13日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    次はどうなるの?どうなるの?と読書が止まらない作品でした。読み終わらない間のわくわく感と、自分もその場に居るようなスリル感。楽しくてしかたありませんでした。安部公房さんの本また読みたいと思う。

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    2022年10月18日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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     「ぼくの眼に、彼女はすりガラスであっても、彼女の眼には、ぼくは単なる透明ガラスだったのだ。」(人魚伝)
     人魚の彼女と「ぼく」の間にある言語・生物的な壁と、それに付随するもどかしさを端的に、そして叙情的に表す表現力。

     安部公房の作品はいつも、どこにでもありそうな風景と人物である。なのに、何かが変で、普遍的世界と表裏一体の非現実。
     あとがきでもあるように、相対する関係がじつは同じ穴のムジナで、メビウスの輪のように交わる世界が安部公房の持ち味である。

     本著の中で特に好きなのは、「無関係な死」と「人魚伝」。「人魚伝」はかなり深い。

    【無関係な死】
     無関係の証明をしようとあがくうちに、

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    2022年09月21日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    天才。
    これは夢か現実かわからなくなることが夢の中であるが現実の中で起こしている。
    かいわれ大根やカンガルー、ベッドといった周りにあるものをあり得ないものと組み合わせて登場させる。それが癌を患わした自分と重ねているのか、それが小説だと主張してるのか。
    人が死ぬときはそんなもんだと言ってるのかもしれないし自分の妄想で人は死ぬというのを言いたかっただけなのかもしれない。

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    2022年09月13日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    自動書記という手法があります。これは執筆者の無意識を反映するために、意図を抱かずに書く方法のことです。

    人間が眠っているときに見る夢を文字に起こすと、自動書記のようになるのかとこの作品を読んで感心しました。

    おそらく私たち読者にとっては意味のわからない不思議な余韻の残る作品の羅列でしかないのですが、書いている安部公房さんにとっては「これはこのような意味なのかもしれない」と思いながら書き進めていったのではないでしょうか。

    他人の夢の内容を文字に起こした上でそれを読めるのは貴重な体験ですね。しかも世界的前衛作家の安部公房さんの夢となると、さらにその貴重さが増すように思います。

    個人的に気に

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    2022年08月20日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    つまりは未来を受け入れられる人間とそうじゃない人間がいるという話だった。私たちは理解できない強大なものに恐怖心を感じるようにできている。

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    2022年08月04日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    11の無慈悲な短編集
    シニカル・ウィット・刹那・苦悩に溢れ
    あらゆる人間の負の感情を曝け出すも
    対極にある無頼な世界に帰結する

    タイトル2作も情け容赦ない末路を辿るが
    “何か”を犠牲にする事で救われたような…
    無責任な安堵が心を満たした

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    2022年06月04日
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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    ◯名著。表現力が際立って良いと感じる。情景と心情が一瞬で頭に入ってくる。荒野で彷徨い続けるあたりは迫真。彼らが何故生きているのか不思議なほど、自分のイメージもボロボロに追い込まれていた。
    ◯ストーリーも意外に面白い。かなりひっくり返り、展開していくので、描写との相乗効果で読後感はぐったりする。しかしそのこと自体をもってやはりすごいと思う。砂の女に馴染めない人はこちらを読んでみてもいいのではないか。
    ◯久しぶりに本を読んだが、全ての本がこのようなものだと良いと思う。

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    2022年04月23日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    ネタバレ

    贋物ユープケッチャからの始まりで、早速にも好奇心を鷲掴みにされた。
    嘘か本当か分からないような情報と共に、サバイバルゲーム的な展開が繰り広げられる。
    結局、ユープケッチャは何だったのか?
    ユープケッチャに何を託そうとしたのかが分からない。
    公房独特のクセの強いブラックユーモアもあり、そこで安心感と安定感を得る。
    ノアの方舟には正直な、唯一の人間しか乗船できないらしい。
    「砂の女」が苦手意識があり、初めに読んだ時は暑苦しいしで辛かったけれど、再読を決心させてくれた。
    まだ公房作品に慣れないし掴めないまま「砂の女」を読んだ記憶があり、しかし本書は夢中になれたので、再読すればまた違う視点や感覚に触れ

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    2022年04月18日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    学生時代以来の安部公房。
    BOOKOFFで購入。
    「砂の女」を読んで新婚旅行で鳥取砂丘に行ったくらいだから、学生時代にはわりと熱心に読んでいたと思う。
    安部公房はくせがあり、最初にスッと入れないとなかなか読み通すのが難しいが、これはスッと入れた。
    スマホもパソコンもほとんど普及していない時代、想像力の豊かすぎる主人公が核戦争に備えて巨大なシェルターを作り、「生き残るに値する人々」をスカウトする筈だったのだが…という話。
    主人公を始め、出てくるのはいびつな人たちだ。いびつさが奇妙に誇張されグロテスクでさえある。
    しかし、読後感はわりと爽やかだった。

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    2022年02月27日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    きっとこの寓話の世界に比べたら、現実なんてバカくらいに単純で平凡なものなのだろう。大学の講義の合間に、あの広場のベンチで、ページをめくる指がスキップしていたのを今でも思い出す。 今ならぼくは、肘に豆苗を生やすだろう。

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    2022年01月29日
  • 人間そっくり(新潮文庫)

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    火星人を自称する謎の男と、訪問を受けた脚本家との会話で進んでいく。
    自称火星人の扱う不思議な論理で、訪問を受けた脚本家と一緒に読者もどんどんと錯乱。
    ページ数こそ少ないが、粘っこい読後感がいつまでも残る傑作。

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    2023年01月01日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    放置された地下採石場跡の広大な洞窟に、モグラこと〈ぼく〉は核シェルター設備を作り住み込んだ。近づく核投下の日までにこの方舟に乗れる資格のある人を見つけて乗船切符を渡そうとするが、ひょんなことで3人の男女とシェルター内での共同生活が始まる。しかし洞窟に侵入者が現れ、仇敵とも言える父親からの連絡、さらには便器に片足を吸い込まれて身動きが取れなくなり〈ぼく〉の計画は崩れ始める。核による人類滅亡、シェルターにより生き延びる人たち、生き残った人たちによる新しい社会と平和、そうした一連の想像はすべて幻想であり現実逃避でしかない。逃避した先の世界もまた現実と変わらない。
    冒頭で〈ぼく〉は自分の糞を食べて同じ

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    2021年12月26日