安部公房のレビュー一覧

  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    芸術(物語)と政治(経済)の対立を、両極の部分は風刺しながら、その間に真理を求めようとする作品が多いように思いました。
    作品全体に漂う、偏狭な世界への苛立ちが、時代を超えて私たちの嘆きと共鳴します。

    文句なく面白い短編集でした。
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    一人の探偵の男が依頼人の失踪した夫を探してゆくうちに、手がかりを失い、自分自身さえも失ってしまう。主人公の男が最後に自らの道を手探りでも切り開こうと未知の世界へ歩んでゆく姿は読むものにある種の勇気を与えてくれる。アメリカで高い評価を受けた作品。傑作。
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
     この本は表題の『水中都市』、『デンドロカカリヤ』含め11編の作品が収録されている。初期短編集ということもあるのかないのか、思想的なものがこれでもかというほど見え隠れしている。そう思って読まなければ、いくつかは純粋に読める、筈。

     所謂「らしさ」が詰まった作品が多い。そして変身譚ばかり。一見すると...続きを読む
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)
    安部公房は初めてなのだけど…、
    戯曲は基本嫌いなのだけど…、
    しみじみ面白かった…。
    久々の充実感。
    最近読んでいた本って軽かったんだなーと。

    すごい演劇的なストーリーだと思う。
    当たり前だけど。
    その全体の理不尽さがすごい演劇っぽい。

    表題の『友達』は、
    ちょっと私が不得意なタイプの理不尽物語...続きを読む
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    相変わらずシュールだった。小鬼たちの「オタスケ オタスケ オタスケヨ オネガイダカラ オタスケヨ」が頭から離れない笑。
    結局脛のかいわれは幻想だったのか…
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    素敵すぎる!最高です!
    未完成だけどそこも含めて「完成」ととらえる
    独特な世界観と斜め上から見下ろすような描写
    なのになぜかリアルで映像が脳内に溢れる
    ほどよいカオス感が大好物!
  • 壁(新潮文庫)
    不思議な物語である
    話の筋がメチャクチャだか
    テンポがいいので心地よく読める
    キュビズムみたいに誰でも書けそうだか
    安部公房しか書けない言葉
    裁判のシーンは水ダウの小峠が出演した
    「どんなにバレバレのダメドッキリでも芸人ならつい乗っかっちゃう説」を思い出しクスリとしてしまう
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    未完作品。完成版読みたかったあああああああ!!
    本当に、本当に悔やまれる…公房作品特有のトチ狂った設定は本作もご多分に漏れず、一瞬で読み切ってしまいました。
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)
    氏の他の作品と比べて心理描写より写実的な記述が多い印象。その為か、大陸の荒野を彷徨う様が目に浮かぶ。
    国家に翻弄される久三が気の毒過ぎる…
  • 笑う月(新潮文庫)
    夢を通してそこから創作の種について語る。エッセイのようなものから完全創作の様に思えるものまで幅広く収録されており、脈略のない展開が続く作品集自体が夢の様であった。現実と寓話の間をゆく著者の作風の一端が知れる微睡の様な作品集。
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)
    満州から日本日の逃避行を描く。理想化された日本を求めるほどに遠くなり幾多の困難が立ちはだかる。『砂の女』が塀の中からの視点を描いたのと対比的に、本作では塀の外からの原始的、野蛮な世界から塀の中の社会秩序の世界を希求する男の物語だった。
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    飛ぶ男
    p121
    しめしめ、背骨が曲りはじめたぞ。

    作家の頭を盗み見ているような感じ。
    起承から書くタイプなのかと想像。どれだけの編集や修正的な加筆が施されているのかはわからないけど、これだけでも資料的な価値はあるのかなと。
    章が変わって、視点が変わる感じは見事で、本作が未完のまま終わるのは残念で...続きを読む
  • 箱男(新潮文庫)
    高熱でうなされた夜の夢のような、筒井康隆『パプリカ』の映画版のような、はたまた『ボーはおそれている』のような、ふわふわと掴みどころのないまま言葉の渦に巻き取られていく気持ちよさ。
    中学生のころ読み切れなかった箱男ですが、新装版&安部公房生誕100年とのことで再挑戦しました。とても面白かった!

    論理...続きを読む
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    起承転結の転で終わった
    二部に相当する話しでそういうことかと思い
    未完
    これから承転がくりかえされて物語がどう
    進むかはもう、わからない
    最後まで読みたかった
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    彼女は、いまでも安部公房を読んでいるのだろうか。彼女とは、僕の大好きな俳優の松岡茉優さんのこと。高校生当時の彼女の有名なエピソードから、僕は安部公房に興味を持ち、読み始めた。この本で3冊目。『砂の女』『カンガルーノート』に続き、ようやく3冊目を読み終えた。
    安部公房の物語は、読み始めると、あっという...続きを読む
  • 笑う月(新潮文庫)
    夢とは論理では辿り得ない迷路を潜り抜ける方法。
    サッカリン、祖父殺し、アリス、廃物・・・全く辻褄の合わない現象の連続ですが、説明不能の面白さでした!
    訳がわからないということは限りなく自由だ。
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
     安部公房さんの作品に久々に再会しました。砂の女、箱男をかなり前に読んだ記憶があります。いずれも設定が突拍子もなく一気に興味を惹かれる。この作品も最初から現実とは思えないものの、即イメージできる情景描写がおかしな場面を想像できた。
     解説が福岡伸一さんでした。生物と無生物のあいだ は難しいけど、理解...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    とにかく理不尽。
    ある時何の予兆も無くこんな目にあってしまい、当たり前だった毎日が突然変わってしまう事は決して他人事じゃないという恐怖感があった。
    自分はとんでもないブラック企業で働いた事があるのだが、その会社にめちゃくちゃ馴染んでいた当時の自分を思い出した笑

    しばらく忘れることができない、ずっと...続きを読む
  • 砂の女(新潮文庫)
    未発見の昆虫を探しに遠出した際に、意図せず砂の中の家に閉じ込められた男と、その家に居た女。
    あまりにシュールな状況下で男が脱出を試みる話。
    ある意味、ホラーの部類に入るような内容。

    安部公房さんの作品で、古さはありますが、何故か
    社会生活や労働といった人間の生の在り方についても考えてしまう、趣のあ...続きを読む
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    夢なのか現実なのか境目の見当たらない長編。これが安部公房の遺作と言われているのですね。その前提でストーリーを思い返すと、いろんな解釈ができそうです。

    あらすじはメチャクチャで、意味があるのか無いのかもよくわからない。

    膝に蟻走感。膝からカイワレ大根→近所の医者に行ったら自走ベッドに乗せられて硫黄...続きを読む