安部公房のレビュー一覧
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ネタバレ意味が分からないままとりあえず読み進め、読後にあらすじまとめを読んでもやはり意味がわからず、考察を読んで初めて少し納得した感じ。
途中、展開の意味がわからなすぎて、アリスのような童話のつもりで書いているのかと思った。
名刺という社会的な自分の名前を消された時、残った自分という存在は、自分を自分であると認識ができるだけで、そこにただ”存在”しているだけの、生物としてだけの存在になってしまうのではないか。
考察を読むと、とらぬ狸が特に面白かった。
とらぬ狸とは人間の非現実的な願望であり、目玉銀行へ目玉を預けること要求されるのは、現実を見る能力を手放すように促している。
赤い繭では、家を探し求 -
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「間氷期」とは、地球の氷期と氷期の間の比較的暖かい期間のこと。現在が「第四間氷期」である。とすると、次の氷期が訪れるという話なのかと思いきや、そうではなかった。未来を予知する「予言機械」の開発者が殺人事件に巻き込まれるところから始まり、人類の未来に関する大いなる謎へと繋がっていく。
主人公である予言機械の開発者は、その機械の「使い道」を考えなければならない状況になっている(しかも政府の意向に反しない範囲で)。それは当たり前のように見えて、実はそうでもない。純粋に技術的興味(シーズ)によって開発をしているだけの開発者にとって、用途(ニーズ)などはどうでもいいのである。
そもそも、新しい技術が -
Posted by ブクログ
第14回読売文学賞受賞作。
昆虫採集に訪れた男が、砂に囲まれた穴の底に閉じ込められ、そこで暮らす女と共に生活を強いられるという特異な設定の物語。住居は絶えず砂に埋もれていくため、男は脱出を望みながらも、生き延びるために日々砂掻きを続けることになる。
当初は脱出が第一の目的であったはずが、生活を続けるうちにその意識は徐々に変化していく。やがて男は状況に適応し、砂掻きの効率化を考え、女との共同生活にも疑問を抱かなくなっていく。この過程は、外部から見れば半ば強制された労働でありながら、内側からは日常として受け入れてしまう人間の性質を象徴しているように感じられた。
簡単に言えば社畜である。
砂と -
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カンガルー・ノートの次に読みたいと思って買った本。▼人が「死にそう」な状況を克明に描写することによって、これほどまでに「生」をリアルに活字から摂取することになるとは思わなかった。安部公房は、荒唐無稽なフィクションを極めてさもありげに明晰に記述するから、こちらも信頼して没入してしまう。▼一方で不条理を条理として何ら疑わない村人の純粋さを俯瞰することが面白い。彼らの仕事。この意味を伴わない只の営為を通して、意味以外の表情や着眼点が立ちあらわれる。▼この描写の妙にふれ、読書“体験”そのものの価値を強く感じた。次はカミュの「シーシュポスの神話」を手に取ってみる。
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主人公の宅に来訪してきた目の前にいるこの気違いは、果たして人間なのかそれとも火星人なのか。話しているうちに会話の主導権を握られ、己すらも人間であるという自信がなくなってくる。なぜ己は己を人間だと断言できるのか。気違いが火星人ではないと否定することもできなくなってきてから、物語は予期せぬ展開を迎えることになる。
気違いと対峙しているシリアスな緊張感があった。特に序盤のナイフを手にするくだりでは、自称火星人が何をしでかすのかわからない恐怖がありありと伝わってきた。しかし最後まで読んでしまうと、一体誰が人間で誰が気違いなのかがぼやけてくるのも恐ろしい。いっそ皆火星人であってくれた方が幸せな結末だっ