安部公房のレビュー一覧

  • 砂の女(新潮文庫)

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    口の中がジャリジャリしてくる。
    砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底にある一軒家に閉じ込められる。

    ​その家での暮らしはあまりにも異様。
    食事中も傘をささなければ砂が降ってくる。
    しかもその砂はサラサラではなく、しめっぽくて肌にべたつく。海辺で体に張りつく、あの嫌な砂の感触。

    さらに毎日砂搔きをしなければ、家は砂に埋もれてしまう。
    「これじゃまるで、砂搔きするためにだけ生きているようなものじゃないか!」
    いやだ。絶対にこんな生活は嫌だ。

    書き出しから一気に引き込まれた。
    砂の不快感があまりにもリアルで、読んでいるだけで口の中までジャリっとしてくる。

    なぜ女はこの家に住んでいるのか。

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    2026年07月23日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    独特の不気味な雰囲気。
    絶対にありえないはずなのに、本当にあるのかもしれないと思わされる妙なリアリティが余計に薄気味悪い
    「こうなっても不思議ではない」の、イヤな方が敷き詰められた本。
    何より昭和33年にこんな作品を書いたのが凄すぎる。

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    2026年07月21日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    どんな環境でも楽しみはあるということを、再認識した。人は自分より良い生活をしている人を見ると、自分は不幸なのだと錯覚して、現状を打破し次のステップに行こうとするが、この考え方は堂々巡りで続いてしまう。本書を読んで、どんな環境にいても、労働と生活を通じて、満足できるくらいの幸福を享受できることを知った。次のステップに行こうとするのではなく、今を生きることが大事である。

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    2026年07月13日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    安部公房さんの代表的な小説ということで、読みました。正直しんどかったです。蟻地獄のような砂の坩堝の中で、もがく主人公。現代の社会の中で同じようにもがく自分を含めたサラリーマンに共通する「何か」を感じながら、圧迫されるような感覚で読んでいました。これはマックス・ウェーバーの言うところの「鉄の檻」ですね。もう一度「プロテスタンティズムの倫理と・・・」を引きずり出すことにしました。

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    2026年07月12日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    抵抗している事実に満足していく。自分は主体性を持っている、と認識を無意識に変更していくのが悲しいかな人間なのか。

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    2026年07月09日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    ネタバレ

    生きていれば基本毎日見る顔
    当たり前のようで当たり前でない
    顔を失った主人公の執念深さにある種の恐れを感じた
    仮面が生産されるという妄想の中で俳優たちが顔の版権を主張するという描写は今の世の中で生成AIによって職を奪われることを危惧している俳優や声優たちの抗議と重なった
    皮膚の色は関係ない、人を見た目で決めてはいけない、ルッキズムがどうたらこうたら、多様性であるなどと謳われているような現代にも関わらず、美容整形が当たり前で男が化粧するのも受け入れられる状況を鑑みると、昔以上に顔の重要性は高まっているように感じた
    主人公はおまえに顔以外も含めて自分を理解して受け入れてほしいと勘違いをしてしまって

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    2026年07月08日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    ページを捲る手にも砂がまとわりついてくるような錯覚をするほどに、砂と湿気の相性の良さ(悪さ?)が際立つ描写が上手くて嫌悪感マシマシ。これは夏に読むべきかもしれない。

    脱出を試みる反発心を抱きながらも生活に順応していくさまを見ていると、社会から孤立した男があるべき場所に辿り着いてしまったんだと思う。無意識下では男は本当には帰ることを望んでいなかったのかもしれないし。それでも部落からの支援や連帯からは逃れられないという皮肉さをはらんでいるのが面白い。

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    2026年07月05日
  • 箱男(新潮文庫)

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    砂女を読んでみて他の作品が気になり手に取ってみた1冊。

    文体としては圧倒的に砂女よりわかりやすかった一方、構成がかなり複雑であり正直序盤は何が何だか分からない。

    一方で中盤〜後半になるにつれて、少しずつ序盤との繋がりが見えてくるので、前半は我慢しながら読み進めることが必要。(が、それでも理解するのがやや難しい。)

    題材としてはかなり興味深く、箱男という存在が目の前にいるのではないか、というくらい描写が上手く想像に難くない。
    現代ではオンライン上で様々なコミュニティを
    匿名で見ることができるが、もしかしたらそれは現代人の一人ひとりが「匿名という箱を被って観察をしている」、ということなのかも

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    2026年07月01日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    どれも世界観が完成されているから、現実を忘れて没頭することができる
    読んでる瞬間のみならず、余韻でもその逃避を与えてくれる

    安部工房の作品に出てくる人間、主に他者は、他人に対して猜疑心と利己心ばかりしかなく、温かみを感じない
    根源的な感情がほとんど恐怖と虚栄心に限られているように思う
    そのため小説によく見られる理想やロマン主義的側面への疑問や嫌悪感が浮かばずに、こちらも淡々としかし恐々と読み進めることができる

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    2026年06月30日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ありのままの自分を愛してほしいと思う気持ちと、ありのままの自分を愛せるわけがないという疑念。そしてありのままの自分など見られたくないという思い。人は「顔」を通して他者と繋がる。

    正直読みにくくて真ん中辺りは大変だった。しかし、大江健三郎の言うようにこの構成だからこそ成功した作品になっているように思える。
    『砂の女』同様、終わらせ方が上手いなあと思う。

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    2026年06月27日
  • 壁(新潮文庫)

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    面白いが箱男の方がわかりやすく面白かった。

    何かを表現したくて書いている小説なのだろうけど、何を意味しているのかイマイチわからなかった

    解説求ム…

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    2026年06月27日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    最初は主人公の些細な出来事に楽観的に考えたり、生への執着による支離滅裂の言動が気になったりしたけれど。
    感情を中心に物語が進むからこそ、結末が面白い!

    人間は適応力が高いと思うし、現実を受け止めることによって楽に生きられる側面もあるとは思うけど、それでも共感はできなかったな

    慣れは怖いな

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    2026年06月26日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    夜、夢をみているとき、それがどんなに変な内容でも夢の世界ではまったく変だと思わないから不思議です。安部公房さんの作品もそれに似ています。

    ある日突然自宅に死体が現れますが、なぜか警察を呼ぼうとしません。(『無関係な死』)
    それを変だと思わせない文章がすごいです。

    読み終えてもなんだかすっきりはしません。わかったようなわからないような…。なんというか、かゆいところに手が届かないのです。
    このかゆさの〈正体〉こそが大事だと思うのですが、どうしてもそこに手が届かないまま、また夢をみるのです。

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    2026年06月14日
  • 壁(新潮文庫)

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    『第一部 S・カルマ氏の犯罪』

    主人公はある日突然、自分の名前を失う。そこから物語は、「自分とは何か」「存在とは何か」という哲学的な問いを軸に展開していく。しかし本作の魅力は、その難解なテーマだけではない。

    物語の世界は終始、現実と虚構の境界が曖昧で、まるでデ・キリコやサルバドール・ダリの絵画の中を歩いているようだった。裁判所や会社といった現実的な舞台が登場するにもかかわらず、そこでは常識が通用しない。不条理でありながら妙に説得力があり、その独特な世界観に強く引き込まれた。

    特に印象的だったのは、「無機物の、有機物への革命」という発想である。無機物には意志があり、生きているにもかかわらず

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    2026年06月14日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    自身の価値観をただ主張し続ける男に苦々しい思いを感じつつ読み進めた。
    競争社会の価値観に囚われ疲弊し心理的孤独だった男が、共同体的価値観の村落・女と過ごすことで価値観に変化が生じる物語。のように感じられた。

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    2026年06月13日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    「手」と「飢えた皮膚」が好み。「鉄砲屋」も素晴らしかった。「闖入者」は本当に胸糞が悪かった。安部公房の様々な顔が楽しめる短編集で、満足感は強い。

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    2026年06月09日
  • 箱男(新潮文庫)

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    正直読み終えた直後は、ほとんど意味が分からなかった。

    誰が本当の箱男なのか。ノートを書いているのは誰なのか。何が事実で何が嘘なのか。読み進めるほどに全てが曖昧になり、途中からは登場人物の言葉すら信じられなくなってしまった。

    しかし不思議なことに、読み終えて数日が経つと、この作品について考える時間が増えていった。理解できなかったはずなのに、気づけば作品のことを考えている。『箱男』は読んでいる最中よりも、読後にこそ真価を発揮する小説なのかもしれない。

    この作品で私が最も揺さぶられたのは、「真実とは何か」という問いだった。

    物語は、箱男を観察していた男が箱男となり、その記録をノートに綴る形で

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    2026年06月07日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    凄まじい砂の世界、窮屈すぎる過疎社会、卑しい部落の人間。息ができなくなるくらいの強烈な閉塞感に加え、比喩表現でさらにクラクラしてくる。

    逃げ出すことばかり考えていたけど、あれ?自分がいた元の世界ってそんなに良いところだったっけ?なんで戻りたいんだっけ?ってなってた男の心境の変化を、ラストの行動で理解した。
    たしかに、自由ってなんだろう。自由には責任が伴う。自由だってしんどい。
    結局「外の世界のことなんてどうだっていい」という女の一言に尽きるなと。

    私にとって初の阿部公房作品。言葉の難しさや分かりづらさはあるものの、息苦しさを感じさせる表現は見事。読み終わってすぐに深呼吸をした。

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    2026年05月30日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    奇妙な状況で想像がフル回転する。

    砂が当たり前にある生活が耐え難い。
    耐え難いはずなのに、順応していく様に妙に納得できてしまった。

    「罰がなければ、逃げるたのしみもない。」

    適応しきった砂の女と
    自由を定義しようとする男

    1/8m.m.の流動

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    2026年05月26日
  • 砂の女(新潮文庫)

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    ネタバレ

    この作品には、全体を覆う“乾いた空気感”というものが凄くうまく表現されていた。無機質で冷たい文体。そして主人公の一人称ではなく、神の視点から淡々と語られる構成。その全てが合わさることで、読んでいるこちらまで砂に包まれていくような感覚になった。
    物語の展開自体は非常にシンプルだと感じた。ある日突然、主人公の日常は崩壊し、砂の世界へ閉じ込められる。そして元の生活へ戻るために脱出を試みる。ただ、その分かりやすい構造の中に、とてつもなく深いテーマが隠されていた。

    序盤では、理不尽に閉じ込められた主人公に強く同情してしまう。しかし読み進めるうちに、ある違和感が生まれた。
    「元いた世界と、砂の世界は本当

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    2026年05月26日