安部公房のレビュー一覧

  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    手触りかん、現在形、途中までは才能をフルに発揮、恐らく最後の数十ページは彼にとっても挑戦。いいね!!
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)
    ふと読み返したくなり再読。3年ぶりくらいに読んだが、印象が変わった。
    安部公房後期の長編。この小説の見所は「登場人物全員悪役」ということだろう。しかも小悪党。それらの登場人物が騙し合い、出し抜き合い、物語は進む。
    まず笑ったのが「デブ」の頻出具合。主人公のもぐら君がデブなんだけどデブやブタと言われた...続きを読む
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    安部公房作品の中で一番好きな小説。純文学と探偵小説の融合だ。
    主人公は興信所員。ある男を探してほしいという依頼を受け、調査を開始するが手がかりは次々に失われ、登場人物は死に、主人公は都会の迷路の中に追い込まれていき、追うものと追われるものが逆転し、最後には記憶喪失になってしまう。現代の恐怖を描いてい...続きを読む
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    なぜ、安部公房の作品は文学作品だというのに、いつも、長い夢を見たような気分になるのか。文字よりもそこから喚起されるイメージのほうが頭に焼き付いて離れない。

    孤独、アイデンティティの喪失という題材を儚くも美しく、お得意のメランコリックな文体で仕上げた名作。

    社会での歯車の一部感で苦しくなっていると...続きを読む
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    追うものが、追われるものになる。
    無関係のものが、関係するものになる。
    支配するものが、支配されるものになる。

    他の安部公房の作品と同様に、この短編集の中でも立場の逆転が沢山起こっている。
    恐ろしいけど、楽しい。
    小さなきっかけ一つで、目に映る世界が大きく変わっていく。

    「誘惑者」と「賭」が、個...続きを読む
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    [かいわれの刑]朝目覚めると、脛に違和感。なんぞと思って見やればなんとそこにはふさふさのかいわれ大根。あまりの不気味さに仕事どころではなく皮膚科に駆け込み治療を求めるも、ベッドにしばられた僕はそのまま地獄巡りの旅を余儀なくさせられることに。上司からコンセプトを考えるよう言われていた「カンガルー・ノー...続きを読む
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)
    読む本がなくなってしまったので、BooksKiosk新大阪店で買いました。
    (2013年9/28)

    男は、砂の穴からは逃げなかったけれど、
    岩の穴からは逃げ出したんですね。
    (2013年10月5日)
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    ≪R62号の発明≫
    失業し、自殺を決意した男が、居合わせたアルバイト学生から「死体をゆずってほしい」と頼まれる。しかも、生きたまま、死んだつもりになって…。
    連れて行かれた事務所で、男はR62号という工作用ロボットに改造されてしまう。
    偶然にも“生前”クビを切られた製作所に派遣されたR62号は、「人...続きを読む
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)
    核戦争の危機から逃れるための方舟。
    その船長、“もぐら”はデパート屋上のガラクタ市場で、“ユープケッチャ”という、自分の糞を食べる閉鎖生態系を持つ虫を見つける。それは採石場跡の地下でひっそり、誰の干渉も受けずに暮らす“もぐら”彼自身のような存在だった。彼はユープケッチャを方舟の乗船審査基準として、生...続きを読む
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    「鉛の卵」は面白かったがあまり安部公房の作品ぽくなくて、
    海外のSF作品のように感じた。くせが無いというか。
    「棒」は昔教科書で読んだ。これが一番好きかも。
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    表題作2編を含む全12編の短編集。
    社会風刺に満ちた作風や秀逸な比喩を交えた特徴的な文体、シュールなアイデアなどとても楽しめた。
    特にSF色の強い表題作の2短編がお気に入り。
    「盲腸」での食事の描写が良くも悪くもとても気持ち悪く、一番印象的だった。
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)
    カフカ的な作品で理解が難しかったです。断片的には、何かを象徴しているのかなっと思うシーンもあるのですが。。。これを読んで面白いといえる人っているのでしょうか。。。
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    過去に読んだ本。

    大学4年の頃、その時受講していた講義の先生の影響で安部公房にハマって、何作か読んだ。

    暗い、不条理な感じがいい。
  • 密会(新潮文庫)
     小説内で登場する架空の病院内および市街地がとても精密に描写されていることに驚いた。作者は当初地図を描いて載せようとしたほど(全集26・構造主義的な思考形式)作品内の空間設定が練られていることがわかる。
     作品の冒頭は主人公の妻が連れ去られてから4日目の早朝、報告書というかたちで読者に提示される。そ...続きを読む
  • 密会(新潮文庫)
    再読必須。

    バラバラの時間軸がきれいにまとまって行きながら、悪質なポルノに歪んでいく構成がすごい。

    病んだ社会に囲まれた、絶望的な孤独。与えられた役割を演じきれない人間は黙殺される。現代社会そのものの姿じゃないか。
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    探偵の即物的視点からえがく傑作。
    内容については他の方が書いていらっしゃるので割愛する。

    勘違いしてはならないことはこの小説はスリップストリームであり探偵小説とは違うと言うことだ。

    この混乱する社会を混乱していく小説で見事にえがいてある。

    序盤から終盤にかけての即物的文体、終盤の幻想的文体、こ...続きを読む
  • 密会(新潮文庫)
    『溶けてしまった骨のまわりに、幾層にも肉や皮がたるみ、どこが股間の襞なのか、もう正確には分からない。

    娘の襞はますます深くなり、人間の形から遠ざかって行くようだった。』

    天才。
  • 第四間氷期(新潮文庫)
    すごくおもしろかった。
    SFにミステリーを合わせたようなストーリーで、「他人の顔」や「砂の女」よりエンターテイメント色が強い。安部公房らしい既成概念をひっくり返すような発想の転換がありつつも、独特な文章表現は少ないので読みやすい。
    安部公房が難解だとか堅苦しい印象を持っている人に勧めたい。
    ラスト1...続きを読む
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    本にはまさに「読み時」があるんだと実感した
    この本はその読み時に読んだからすごくよかった

    表題作が文句ないけど、誘惑者と賭も好きです
    透視図法は難しすぎてわからなかった
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)
    人類みな友達、この言葉で済ませたい。飄々とした人たちが、やらかしちゃう物語、「友達」。「棒になった男」はいきなり降ってくるとこからナイス。文学的幅を示した、才能あふれる作者の戯曲。他者と自己の関係を恐ろしくも滑稽に描いた、日本昔話的表現にジーンっ。