安部公房のレビュー一覧

  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    安部公房との出会いは、高校2年生の時に使用していた現代文の教科書の中だった。
    本書にも収録されている「棒」という素っ気ないタイトルが冠せられた10ページ程度の作品で、非条理、無説明、急展開な内容に惹きつけられた。
    数年後に「砂の女」を読み、少し違う雰囲気だけど良いなと思い、「棒」を連想させるタイトルの「壁」の世界観は自分にははまらず、「箱男」にもそこまではまらなかった。

    しかし、短編集である本書は、良い意味で作者の混沌さが薄れており、良質なSFものとして楽しめる。
    それらはサイエンスフィクションでもあり、藤子不二雄に絵を付けてほしい 少し不思議な物語でもある。
    時代背景や設定も現代、近未来、

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    2016年12月07日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    意外と読んでいなかった本作。

    無意識から生まれ来るものについて、
    安部公房が語るように、
    精神分析的な解釈を考えるよりも、
    その無意識に動かされ、遊び、昇華することを生業としている、
    芸術家達が言葉にするのが、
    とてもおもしろいと感じる。


    公然の秘密

    が、強く残った。

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    2016年06月24日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    安部公房がいかにして物語を編むのか、創作の舞台裏をみるような一冊。

    彼の紡ぐ世界は、書こうと思って書けるようなものでない。
    ピカソの絵をみて、自分でも描けるのではないかと言う人がままいる。しかし、実際描こうとすると、途端に筆が止まるのではないか。描いてはみたものの、「なにか」が違う。彼の絵はデタラメに描いたのでは真似できない、「なにか」を備えている。だから人心を揺する。
    例えはピカソでなくてもいいのだが、安部公房の作品の凄みは、ピカソのそれと似ている。意気込んで筆をとってみても、意図した途端に死んでしまう世界。彼はそれに命を吹き込む。それができる作家なのだ。今まで思ってもみなかったことだが、

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    2016年05月09日
  • 密会(新潮文庫)

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    妻を救急車によって攫われた男がその行方を追うにつれ、組織としての病院と患者、そして医師に撹乱されていく話。「盗聴」という行為をもって、社会における性の統制と計画的な消費を断片的に描写しています。
    もっともらしい言葉を使って概要を述べるのは簡単なのですが、ではこの作品は何を示したかったのか?といった部分に踏み込むと途端に手がかりが無くなってしまう。結果的には「閉鎖的な異常社会と外界にはあまり差は無い。」とか、胡散臭い感想をぼんやりと持つが、それだけで済むほど焦点は少なくない。
    結局、一度二度読んだ程度では理解が難しい作品です。また、もしかすると点で読む作品では無く、安部公房の作品群として線で

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    2016年05月07日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    安部公房の一部ドタバタも含むSF中心の短編集。青年が突然、珍しい木「デンドロカカリヤ」に変化する。夜中に突然現れた見知らぬ家族によって家が乗っ取られるなど、わかりやすい恐怖から、世の中が知らぬ間に水の底になって、人間が人喰い魚に鳴ってしまうなど、常識の根本が覆されてしまうものまで、多彩な作品群。

    様々な表現が文学的で、理解するのに時間がかかることを除けば、筒井康隆や小松左京を読んできた人にとっては、非常に面白い本と感じるであろう。特に気になるのは、作中人物の思考だと思って読んでいると、急に第三者の視点のような表現が織り込まれるところ。

    こういう作品群から、現代文の問題を出されたら、絶対解け

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    2016年02月12日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    多分初めて読んだ安部公房だったと思う。
    ここで無頼派にハマった。
    若いうちに読んどいて良かった。

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    2016年01月09日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    圧倒的想像力というか空想力!
    安部公房の頭の中ってどんなことになってるんだろう。
    実存への不安感とシュールさでぐらぐらする、面白い!!

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    2015年03月10日
  • 密会(新潮文庫)

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    ここまでドギツイ性的描写ができるのはさすがです。

    ややグロテスクな表現もあるので中々人にはお勧めできませんが、
    安部公房作品が好きな方にはたまらない一作かと思います。

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    2015年02月15日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ◆パス「波と暮らして」→ディキンソン「早朝、犬を連れて」を読み、無性に「人魚伝」を読み返したくなり、再読。
    ◆1957年〜64年に発表された初期短篇10篇。小説でいうと「砂の女」〜「他人の顔」の頃か。
    ◆飛び込んできた不測の事態によって、現実だと思い込んでいた世界は揺すぶられ歪み崩れ落ちる。元の世界が虚構なのか、この事態が虚構なのか。現実を取り戻そうと足掻く主人公はどちらの世界からも滑り落ち、居場所を剥奪され世界の狭間に取り残される。◆読み終えた私に残されるのは、主のいない帽子・白々とした床・緑色過敏症だけ…
    ◆はぁ、やはりこの悪夢のような世界観に魅了される。◆ゾクゾクするのは初読時から変わら

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    2015年01月12日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    表題2作。
    ひどくシュールな漫画を読んでいる気持ちになる。
    水中都市にしても、デンドロカカリヤにしても
    「ある枠」をはめて物語を一層意味深くしている。この作者、物一つ眺めてからの創造力が桁外れだ。モノづくりにとってはネタの宝庫かもわかりませんね。

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    2014年12月17日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    「失踪した主人を探して欲しい」
    この時点で、安部公房を何冊か読んできた人なら、見つかることはないことは想像に難くないだろう。したがって、見つからないのである。
    いなくなった人を探して見つからないというテーマは「密会」と似ており、安部公房作品らしくどの登場人物ものらりくらりと本質を語らない。主人公もフラフラと本質に突っ込まず、心理描写を見ながら、読者がどんどん焦らされていく。プロットとしても「密会」の昼間版というところ。とはいえ、あちらほどディープでえげつない描写が有るわけでもないので、慣れていなくても割と読みやすい1冊となっている。安部公房の準初心者におすすめしたい。
    安部公房作品の読み解きの

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    2014年12月01日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    手触りかん、現在形、途中までは才能をフルに発揮、恐らく最後の数十ページは彼にとっても挑戦。いいね!!

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    2014年10月10日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    ふと読み返したくなり再読。3年ぶりくらいに読んだが、印象が変わった。
    安部公房後期の長編。この小説の見所は「登場人物全員悪役」ということだろう。しかも小悪党。それらの登場人物が騙し合い、出し抜き合い、物語は進む。
    まず笑ったのが「デブ」の頻出具合。主人公のもぐら君がデブなんだけどデブやブタと言われたらキレる。ブタと呼ばれないために自らもぐらを名乗っているくらいだ。このもぐら君、なかなかスケベで女の尻を触ろうとしたりひっぱたこうとしたりする。笑いどころが意外に多い。
    この小説は壮大な「かくれんぼ小説」だ。みなさんもかくれんぼの経験があるだろうが、そんなワクワク感がある。偽物という意味の「さくら」

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    2014年09月27日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    ネタバレ

    安部公房作品の中で一番好きな小説。純文学と探偵小説の融合だ。
    主人公は興信所員。ある男を探してほしいという依頼を受け、調査を開始するが手がかりは次々に失われ、登場人物は死に、主人公は都会の迷路の中に追い込まれていき、追うものと追われるものが逆転し、最後には記憶喪失になってしまう。現代の恐怖を描いている。
    特筆すべきはハードボイルドなこの作風だろう。紫煙と酒がよく似合う世界。タフな主人公。ウィキペディアの「ハードボイルド」の項にこの作品は上がっている。安部公房の作品は深読みしようと思えばいくらでもできるが、難しいことは考えなくても楽しめるのが最大の売りだろう。純粋な探偵小説としても読むことができ

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    2014年07月27日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    なぜ、安部公房の作品は文学作品だというのに、いつも、長い夢を見たような気分になるのか。文字よりもそこから喚起されるイメージのほうが頭に焼き付いて離れない。

    孤独、アイデンティティの喪失という題材を儚くも美しく、お得意のメランコリックな文体で仕上げた名作。

    社会での歯車の一部感で苦しくなっているときに読むと刺さるように心に響く。

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    2014年06月21日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    追うものが、追われるものになる。
    無関係のものが、関係するものになる。
    支配するものが、支配されるものになる。

    他の安部公房の作品と同様に、この短編集の中でも立場の逆転が沢山起こっている。
    恐ろしいけど、楽しい。
    小さなきっかけ一つで、目に映る世界が大きく変わっていく。

    「誘惑者」と「賭」が、個人的には好み。

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    2014年03月05日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    読む本がなくなってしまったので、BooksKiosk新大阪店で買いました。
    (2013年9/28)

    男は、砂の穴からは逃げなかったけれど、
    岩の穴からは逃げ出したんですね。
    (2013年10月5日)

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    2013年10月06日
  • 方舟さくら丸(新潮文庫)

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    ネタバレ

    核戦争の危機から逃れるための方舟。
    その船長、“もぐら”はデパート屋上のガラクタ市場で、“ユープケッチャ”という、自分の糞を食べる閉鎖生態系を持つ虫を見つける。それは採石場跡の地下でひっそり、誰の干渉も受けずに暮らす“もぐら”彼自身のような存在だった。彼はユープケッチャを方舟の乗船審査基準として、生き残るための乗船券を渡す人物を探す。

    デパートの屋上で出会ったサクラの男女二人組に、方舟の鍵を持ち逃げされ、“もぐら”はユープケッチャを売っていた昆虫屋と一緒に方舟へと向かう。たどり着くと二人はすでに侵入しており、船長もぐらは、サクラとその連れの女、そして昆虫屋とともに方舟の中で過ごすことになる。

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    2013年06月28日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    カフカ的な作品で理解が難しかったです。断片的には、何かを象徴しているのかなっと思うシーンもあるのですが。。。これを読んで面白いといえる人っているのでしょうか。。。

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    2013年03月18日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    過去に読んだ本。

    大学4年の頃、その時受講していた講義の先生の影響で安部公房にハマって、何作か読んだ。

    暗い、不条理な感じがいい。

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    2012年12月15日