安部公房のレビュー一覧

  • 箱男(新潮文庫)

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    安部公房の小説を読むのは学生時代以来〇十年振り。安部公房も今年(2024年)で生誕100年になるのか。

     最後まで読んでも、混乱と言うか、不思議な気持ちで一杯。
     ダンボールの空箱を頭からすっぽりかぶって、箱男の側からは覗き窓を通して外が見えるが、外の人間からは箱をかぶった者がどんな人間なのか分からない存在。見るー見られる、覗くー覗かれるの関係、現代社会における匿名性の存在といった内容面においてもいろいろ考えさせられる作品だが、本書を特長付けるのは何と言っても複層した語りの問題であろう。
     主な登場人物は、元カメラマンの「箱男」。彼の前に現れる看護婦と医者の「贋箱男」。医者は実は贋医者で、自

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    2024年11月24日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    「飛ぶ男」
    腹違いの弟であると主張する男が
    夜空を飛んでやってくる
    しかし何者かに空気銃で撃ち落とされる
    飛ぶ男はプレシャスな存在だから
    誰もがこれを欲しがったり
    その存在に嫉妬したりするのだ
    それは例えば
    有力な会員権などよりはるかに価値があって
    また入手困難なのかもしれない
    未完の絶筆である
    初期作品「天使」や「題未定」のエッセンスを混ぜ合わせ
    発展させようとしたものではないだろうか
    であれば
    おそらく続きは「白い蛾」の船長が予見したところに
    近づくのだと思われる

    「さまざまな父」
    科学的に説明のつかないことはオカルトである
    ミステリ小説ではオカルトのインチキを論理によって暴く
    一方、前

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    2024年11月20日
  • (霊媒の話より)題未定―安部公房初期短編集―(新潮文庫)

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    初期作品集。発表する予定なく未完のものも。題未定など筋がわかりやすいものから手紙のように観念的すぎて理解できないものまで、ある程度安部公房に触れていると作品のルーツを辿るように楽しめそう。虚妄などは印象的。

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    2024年09月20日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    安部公房未完の作品。
    この作品をどんな風に仕上げようとしていたのか、結末がわからないのが何とも悔しい。

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    2024年09月11日
  • (霊媒の話より)題未定―安部公房初期短編集―(新潮文庫)

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    安部公房。
    半世紀も前に夢中になって読んだ作家で、未発表の短編集というので思わず手に取ったのですが、とんでもなく読むのに苦労した。読むのにパワーが必要な作家だったのだな、と妙な納得をしてしまった。

    「飛ぶ男」、どうしようかなぁ。

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    2024年09月09日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    【2024年169冊目】
    飛ぶ男は3人の人間によって目撃された。トラウマを抱えた女性、暴力団員の男性、そして飛ぶ男が目的としていた男性――である。窓ガラスから飛び込んできた飛ぶ男は言った。「スプーン曲げができるんだ」と。

    初の安部公房作品でした。あらすじをまとめようとしたら、とっちらかってしまった感じですが、間違ってはいないというのが恐ろしいです。文章自体、難しいものではないのですが、内容が難しいと言えば難しい。じっくり噛むように読まないと理解できないかもしれない。

    飛ぶ男のほか、「さまざまな父」も収録されていますが、二つの話が繋がっているのかどうかも不透明。ずっと不透明な物語、これが安部

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    2024年08月26日
  • 壁(新潮文庫)

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    一部はシュールレアリズム文学としてまだついていけたけど、二部はもうダメだった、意味わからんすぎる、不条理の果ての果て。三部の短編集は薄っすら既読感があった(『赤い繭』と『魔法のチョーク』)。星新一を哲学方向に完成させたというような印象。『事業』は面白かった。表現こそ安部公房的な言い回しだらけなんだけど、構成は筒井康隆ぽいし内容は星新一グロ増しといったところか。他の作家の名前出さないとなんか言えないなんて、感想文としては三流も三流だろうけど、物語の枠組み自体が崩壊したようなものばかりで、そのままでは私にはとても受け止めきれない。だから既知の枠に無理矢理にでも収めて安心したくなっちゃうんだろうな。

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    2024年07月23日
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)

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    安部公房の最後の前衛長編作。
    死について相変わらず分かりづらい舞台を用意して、
    読者に投げかける。
    脛にかいわれ大根。意思を持つベット。採血に執心する下り目の看護婦。積み石をする小鬼たち。賽の河原での母親との喧嘩。意味不明なステージが続くが、数年後に再読したら何か見えてくるような気がする。

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    2024年06月22日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    ユーモアかとおもえば、やはり狂気。途中訳がわからなくなり、なんともスッキリしない。あがきもがくわたしたちの中にある狂気と、解説にある。が難しい。

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    2024年06月21日
  • 水中都市・デンドロカカリヤ(新潮文庫)

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    ある日突然、自分の部屋が他人に占領されたら…。(『闖入者』)
    まるでロシアによるウクライナ侵攻を予言したかのような作品ですが…

    どの作品も不条理な設定で、寓意に満ちています。
    読むたびに不思議な世界に連れて行ってくれますが、何かゾワゾワと落ち着かなくなる話ばかりなので通勤途中に読むのはおすすめしません。(*´д`*)

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    2024年06月16日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    予言機械が開発者の意図を越えた動きを始める…AIが現実になっている現代に読んでも、不自然なSFさは感じさせず、読む者を不安に陥れる安部公房の世界に引き摺り込まれる。
    50年以上前に書かれた本とは思えない。
    予言を知ったら取る行動を織り込む操作を無限回繰り返す最大値予言、という件は数学的にはイメージできるが、人間の行動をそのように処理できるとしたら興味深い。

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    2024年06月15日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    訳の分からなさ加減がクセになる作品集
    夢と現実、虚構と潜在意識の混じり合った
    不可思議な世界観が気持ち悪くて面白い
    発想の種子が詰まりすぎていて嫉妬してしまう

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    2024年06月03日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    遺作で未完とされる本作。
    「さまざまな父」を含めて完結で良いのではと感じる。

    解説によると「内部の内部に外部との絡路を探し求めた作家」とある。
    彼の作品群はベルリンの壁崩壊前の東欧圏で特に受け入れられていたという。
    興味深い。
    他作品も体験したい。

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    2024年05月05日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    社会革命の縮図の中で各人の思惑が多角的に照らされている。枠組みを変革するという目的が権実世界の中でその枠組みの中で規定されてしまう。

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    2024年05月04日
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)

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    中高生の頃に好きな作家で生誕100年ということで書店の棚に飾られていたので手に取ったが(590円)、家の本棚を見てみるとあり(360円)ました(笑)。
    後半に配置されている表題作まできて”読んだな”と思い出したので、当時も文庫を購入したが表題作だけを読んだのかもしれない。
    表題作以外では列車の待合室から始まる『誘惑者』、自分は火星人だと言う男絡まれる『使者』、おかしなリクエストを受ける不動産設計士の『賭』、壁の穴から覗く『なわ』が面白かった。

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    2024年05月04日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    ネタバレ

    夢に関するエッセイ?だけど、小説家なのでだいぶフィクションも含まれてるかと。不思議な趣の話が続くけれど、わりとさらっと読めてしまった。

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    2024年04月15日
  • 飛ぶ男(新潮文庫)

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    正直内容はよく分からないけど、細かすぎる情景描写、予定調和にならずに次々と放たれる独特な描写の応酬にただただ圧倒される 完全に理解するには私の中の語彙力やら知見、寛容さが足りなすぎた

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    2024年04月07日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    ネタバレ

    既得権益者が政治経済を牛耳っている田舎町で、地熱発電所を建設して革命を起こそうという男とその同盟者?たちの物語。

    革命といいつつ、地熱発電の掘削場所探索の原理は胡散臭く、革命の思想はあやふや。男一人のドタバタ劇のようになり、結局は精神異常者と扱われてしまう。

    閉塞感のある組織に不満があるとき、権力を持たない者が一人でジタバタしてもうまくいかない、みたいなよくありそうな話で哀しい。

    口の重しには墓石と重い財布。

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    2024年03月30日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    ややこしい
    自分と自分の対話

    でもすごい練られてるなーと感じた。

    結末が、なんかなーと思ったけど。

    深く読み取ることが私にはできなかったけど、

    現実では考えられない未来が
    ふつうに感じる時が来るということは
    コロナでの数年間の生活もそうだが
    ありえるし

    今と繋がらない未来は確かにあるとは思う
    その中で生き抜いていくしかないけど
    連続性のない未来をポンとみせられると
    私は、そのために準備しようとかおもえるかなー?

    ただでさえ、地震がくるっていっても
    防災グッズも購入してないのに、、、

    私も未来を妨げてしまうのだろうか。怖いなー

    安倍公房さんの本は、なんか難しそうだし
    怖そうだし、

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    2024年03月29日
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)

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    失踪者を探す男がやがて自分を見失っていく話。調査の拠り所がなくて落ち着かない男の様子が、読点だらけのモノローグから滲み出てきて、読んでいる間ずっと不安で不安定な気持ちになりました。

    冒頭の一節がとても印象的で、読み終わった後にもジワジワ効いてきます。

    「都会――閉ざされた無限。けっして迷うことのない迷路。すべての区画に、そっくりの同じ番地がふられた、君だけの地図。だから君は、道を失っても、迷うことは出来ないのだ。」

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    2024年03月14日