安部公房のレビュー一覧

  • 他人の顔(新潮文庫)

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    顔という不確かなものを科学者らしく科学的に分析し、再現するとともに、顔の本質について思索を深めていく過程が多様な比喩表現で描かれ興味深く読める。
    だからこそ、最後の妻の手紙によって、主人公のこれまでの行動が全て無に帰されるところは読んでいるこちらまで顔が熱くなってしまった。

    人間関係一般に一貫した法則性を見出そうとする試み自体が無理のあるものなのに、主人公はそれに気づかない。
    主人公は顔に価値を置くことを無意味と言いつつ、周囲の人間がそれを認めないからという理由で仮面を作る。しかし本当は主人公自身が自分の醜い顔を認められないのである。 

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    2022年08月24日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    顔を失った男のあがき。
    精巧な仮面で手に入れた他人の顔。
    心の平静を求めた外見への追及はむしろ、
    男の孤独と剥き出しになった心をつまびらかにする。
    安部公房の独特の比喩表現がたっぷりで、どこまでもひたすらに暗い作品。

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    2022年08月21日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    安部公房の戯曲集。

    □ 「友達」(1967年)

    トモダチ、つながり、共有、共生、協働、共同体。切断=孤独からの疎外、接続=関係への疎外。現代はコミュニケーションに包囲されている。あたかも、「断片化」され尽くした諸個人がその失われた「全体性」を回復する回路であるかのような顔をして、そしてそれは結局のところ資本にとって都合のいい消費に結びつけられ「断片化」が一層推し進められるだけでしかないにも関わらず。コミュニケーションの総体は個々人の境界接面を曖昧にし、一旦緩急あれば途端に個人を超えた匿名多数の意志を暴力的に体現しはじめるだろう。それは匿名多数といいながら、必ず特定の政治性を帯びている。コミ

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    2022年08月07日
  • 密会(新潮文庫)

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    エロなのにわけわからん。変態を文学的に格調高く幻想的に描くとこうなるのか。何を読んでいたんだろうという気持ちになる。

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    2022年12月22日
  • けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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    安部工房作品としては、奇想天外さが薄く、テーマが割とはっきりしている(アイデンティティとはどこにあるのか?)。
    面白いが、ちょっと弱い。

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    2022年04月15日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    この本に納められている「鞄」を読み返したかった。
    「鞄」は、たしか高校の国語の教科書に載っていた話。
    高校生当時は、わけわかんないけど不思議な味わいのする話だな、と思っていた。なぜか記憶に残っていた。
    読み返してみて、やっぱりわけわかんないけど、不思議な味わいのする話だった。

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    2022年04月11日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    ネタバレ

    妻の手紙が秀逸。古女房は、もはや母親であり、母親は出来の悪い息子のやってることは、何でもお見通しなのだ。

    全体としては、主人公の延々と続く泣き言、嫉妬、妄想にうんざりしながら何故か読み続けてしまう。読み続けるうちに、不意に気づく。彼のように思考の渦に巻き込まれて、混沌として、訳の分からないことをしてしまう。そんな人、存外ありふれているのではないだろうか。

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    2022年02月14日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    ネタバレ

    顔って何だろう、と言うことを考えて考えて考え抜くとこうなる、という話に思う
    読んでると自分が同じ仮面を被ってる気になってくる。
    感情的になったり、後からそのことを反省したり、言ってることは突飛だったり極端だったりするけども、心の動きがとても人間的でリアルなので余計に気持ちが悪い笑

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    2021年12月19日
  • 密会(新潮文庫)

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    あらすじ
    『密会』は、安部公房の書き下ろし長編小説。ある朝突然、救急車で連れ去られた妻を捜すために巨大病院に入り込んだ男の物語。巨大なシステムにより、盗聴器でその行動を全て監視されていた男の迷走する姿を通して、現代都市社会の「出口のない迷路」の構造を描いている。 1977年12月5日に新潮社より刊行された。
    感想
    異次元、異空間作家らしい物語。
    砂の女の方かわかりやすいかな。

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    2021年12月09日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    初めて読んだ安部公房の本

    この本が最初でよかったわからないけれど短編でサクサク読めた

    逆説的な表現が多くてこいつ好きな子いじめるタイプだと思った

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    2021年12月07日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    ネタバレ

    構成と言葉の選びに馴染みがなくて、仮面作成中のとこらへんは読むのを何度も諦めかけたけど、後半仮面ができてからは展開が気になって、一気に読めた。
    普段小説は、登場人物の言動に共感や尊敬しながら読書を進めるタイプだから、この本はそれが難しかった。
    一度では解釈しきれなかったし、深夜読み飛ばしてしまった文もあると思うけど

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    2021年09月05日
  • 第四間氷期(新潮文庫)

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    ネタバレ


    未来を受け入られられるタイプの人間と受け入れられないタイプの人間がいた。

    予言による混乱を避けるべき予言機械の正式な了解が避けられる中、世界が水没する未来を受け入れ水棲人の育成をする人達もいた。

    本が出版されたのは高度経済成長期。資本主義•工業化•田園風景の都市化が起こり、世の中の仕組みも街並みも大きく変わっていった時期である。

    今までの常識が覆されていく世の中であった。
    そんな中でどう立ちまわるのか。未来に対して否定的なタイプと肯定的なタイプでの議論がなされていた事だろう。

    2021年、新しい生活様式と言った言葉が流布する中現代に生きている人々に対しても、問題提起をされているように

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    2021年08月29日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    顔という社会の接点を失い、仮面を通じて社会との接点を回復しようとするなかで、仮面の裏側いにる「ぼく」は誰でもない他者の視点で顔(不完全な仮面)を被った人間の本質を暴いていこうとする人間風刺。
    結局人は素顔という不完全な仮面を被り社会と関わり合い、表層的な部分でしかお互いを判断できない。それに対し、完全な仮面を被った自分を本質にたどり着いた特別な存在と考えますが、本質を見抜かれていたのは自分。
    とても、ブラックユーモアたっぷりの人間風刺で面白い作品です。考察の部分が多く、展開が少ないですが退屈せずに読ませるところはさすがです。

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    2021年07月13日
  • 飢餓同盟(新潮文庫)

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    花園町のように、一部権力者の圧倒的な支配によって成り立ち、なんともいえぬ閉塞感が漂う町、というのは、こと、田舎においては今だにたくさんあるだろう。生きることに疲れながらも、生きることを求め続けた飢餓同盟の面々のアイロニー。八方塞がりの中でもがき苦しむ現代人もまた、彼らのようにユートピアを求めて彷徨っているのかもしれない。

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    2021年05月17日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    初めて安部公房の作品を読んだ。夢の内容をモチーフにした短編やエッセイが収録されていた。不気味でよく分からない物も多いが引き付けられる文章で、ページ数も短くすぐに読める。

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    2021年03月03日
  • 笑う月(新潮文庫)

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    夢に見たことを起床後に作文しようとするといかにストーリー化するのが困難かがわかる。作話が夢でなく、思い出している時に見繕っていることなのかも知れぬ。本書では、実際夢の中でのでき事が夢としてリアルに(?)感じる。巻末に解説が欲しいと思った。2021.1.19

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    2021年01月19日
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)

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    R62号の最後の衝撃。脳の回路、生産性、重役。頭取は何に感動していたのか?
    戦後の労働や生活環境といった時代を感じる。そしてその奥に隠された寓話や教訓。設定も落ちもユニークで、読み進めてしまう。

    「パニック」パニック商事。Kの痕跡。三日間の放浪。
    「犬」人間くさい犬。「妻の顔」妻と犬のいれかわり?
    「変形の記録」一番教訓や話の落とし所がつかみにくかった話。戦争のすなぼこり?
    「死んだ娘が歌った……」掃除の授業、お弁当詰めの授業、心のイワシ、朝まで遊ぶ娘。工女の哀れさ。
    「盲腸」羊の盲腸。
    「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」
    「鍵」盲目の娘と疑い深い親父。
    「鏡と呼子」田舎小学校ながくて良

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    2021年01月01日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    難しい。再読しないと。
    仮面の陰に隠れてこそこそするのではなく、仮面ははっきり仮面だと分かるものでないと意味がない、という妻の手紙が見事。仮面を見破っていた妻は、仮面に隠れるような卑小な男は捨て、仮面を演技として使う男の前には共演者として現れる。
    素顔が仮面か、仮面が素顔か。

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    2020年12月28日
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)

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    『友達』は友達とは何だ、どこからが友達で何が知り合いで…なんて思う。家族は家族が演じねばならないと感じる。
    『棒になった男』は短編としては面白い。けれどこれを(実際に上演するとして)一回にまとめて、この順で上演する必要性がまだわからない。一つずつの面白さは存在するのに。

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    2020年08月13日
  • 他人の顔(新潮文庫)

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    マスクをしていないと、奇異な目を向けられる昨今において。

    主人公はもはや妄想観念的な執着心でもって仮面を作り出そうとする。

    しかし、この執着心やら孤独感とはどこに源泉があるのだろう。

    顔、なのだろうか。

    P.74『怪物の顔が、孤独を呼び、その孤独が、怪物の心えおつくり出す。』

    こだわりの強さ、情緒交流の乏しさ。
    そこに、恐るべきボディイメージの歪みと疎外感が加わる。

    P.80『流行と呼ばれる、大量生産された今日の符牒だ。そいつはいったい、制服の否定なのか、それも、新しい制服の一種にすぎないのか』

    これは昨今でもまったく同じ現象を容易に思い浮かべられる。量産型女子大生とか男子大生と

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    2020年05月28日