安部公房のレビュー一覧
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安部公房の戯曲集。
□ 「友達」(1967年)
トモダチ、つながり、共有、共生、協働、共同体。切断=孤独からの疎外、接続=関係への疎外。現代はコミュニケーションに包囲されている。あたかも、「断片化」され尽くした諸個人がその失われた「全体性」を回復する回路であるかのような顔をして、そしてそれは結局のところ資本にとって都合のいい消費に結びつけられ「断片化」が一層推し進められるだけでしかないにも関わらず。コミュニケーションの総体は個々人の境界接面を曖昧にし、一旦緩急あれば途端に個人を超えた匿名多数の意志を暴力的に体現しはじめるだろう。それは匿名多数といいながら、必ず特定の政治性を帯びている。コミ -
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ネタバレ
未来を受け入られられるタイプの人間と受け入れられないタイプの人間がいた。
予言による混乱を避けるべき予言機械の正式な了解が避けられる中、世界が水没する未来を受け入れ水棲人の育成をする人達もいた。
本が出版されたのは高度経済成長期。資本主義•工業化•田園風景の都市化が起こり、世の中の仕組みも街並みも大きく変わっていった時期である。
今までの常識が覆されていく世の中であった。
そんな中でどう立ちまわるのか。未来に対して否定的なタイプと肯定的なタイプでの議論がなされていた事だろう。
2021年、新しい生活様式と言った言葉が流布する中現代に生きている人々に対しても、問題提起をされているように -
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R62号の最後の衝撃。脳の回路、生産性、重役。頭取は何に感動していたのか?
戦後の労働や生活環境といった時代を感じる。そしてその奥に隠された寓話や教訓。設定も落ちもユニークで、読み進めてしまう。
「パニック」パニック商事。Kの痕跡。三日間の放浪。
「犬」人間くさい犬。「妻の顔」妻と犬のいれかわり?
「変形の記録」一番教訓や話の落とし所がつかみにくかった話。戦争のすなぼこり?
「死んだ娘が歌った……」掃除の授業、お弁当詰めの授業、心のイワシ、朝まで遊ぶ娘。工女の哀れさ。
「盲腸」羊の盲腸。
「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」
「鍵」盲目の娘と疑い深い親父。
「鏡と呼子」田舎小学校ながくて良 -
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マスクをしていないと、奇異な目を向けられる昨今において。
主人公はもはや妄想観念的な執着心でもって仮面を作り出そうとする。
しかし、この執着心やら孤独感とはどこに源泉があるのだろう。
顔、なのだろうか。
P.74『怪物の顔が、孤独を呼び、その孤独が、怪物の心えおつくり出す。』
こだわりの強さ、情緒交流の乏しさ。
そこに、恐るべきボディイメージの歪みと疎外感が加わる。
P.80『流行と呼ばれる、大量生産された今日の符牒だ。そいつはいったい、制服の否定なのか、それも、新しい制服の一種にすぎないのか』
これは昨今でもまったく同じ現象を容易に思い浮かべられる。量産型女子大生とか男子大生と