谷崎潤一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
電車で読んだらダメリストにランクインのニヤニヤ本。
繰言もぼやきも偏屈も、文筆家の手にかかれば美しいフレームに嵌められた美術品のようにツンとすました一級品。
あー、ほんとそれ!そうですよねーと激しく首肯したくなることをスパッと過不足なく言い表しているところは胸がすく。
今のご時世ではそんな言い方できないだろうということを小気味よくバッサバッサと悪様に言う様はむしろ爽快なほど。
建築界のバイブルということだが、むしろ料理の捉え方に瞠目した。
【引用始】
日本の料理は食うものではなく見るものだと言われるが、こういう場合、私は見るものである以上に瞑想するものであるといおう。そうしてそれは、闇にまたたく無言の音楽の作用なのである。
【引用終】
羊羹の描写は左党が平伏す一級品。
【引用始】
玉のように透明に曇った肌が、奥の方まで火の光を吸い取って夢見るごときほの明るさをふくんでいる感じ、あの色あいの深さ、複雑さは、西洋の菓子には絶対に見られない。
【引用終】
同じく収録されている現代口語文の欠点について、のデアルの考察は長年の謎に一つの角度をくれたし、懶惰の説の運動による健康至上主義への抵抗は私が常々唱えていた屁理屈が筆者の手にかかればいかにも尤もらしく昇華されているのがおかしかった。
【引用始】
しかしながら不精な人間の眼から見ると、刺戟性の食物を大量に摂取するために、否が応でも運動しなければ消化しきれないということになっては、スポーツも一種の苦役である。それだけの時間を静かに読書にでも費やした方が、あるいはもっと有益であるかもしれない。
【引用終】
そしてどのパートにも見られる厠への考察が面白すぎる。どんだけこだわってんの、と突っ込みたくなるほど、何かにつけ厠を引っ張ってくる。世代的に見たこともないがもう眼前にありありと出てくるような記載でそのこだわりぶりに笑ってしまった。 -
Posted by ブクログ
谷崎潤一郎の代表作『細雪』の中巻。
上巻に引き続き執筆されましたが、私家版として刊行された上巻と違い、完成後長らく日の目は見られない状態でした。
中巻は戦後ようやく中央公論社から刊行されます。
内容は上巻の続きで、大阪の旧家の四姉妹の日々が綴られるものとなっています。
自分の人生のため、洋行の希望や、手に職をつけるための活動を始める妙子と、それを快く思わない恋人の奥畑。
そんな折に発生する大水害でヒーローのように現れて妙子を救った板倉に苛立ちが募る奥畑と妙子の恋愛事件や、お隣に住んでいた仲の良かったドイツ人一家の引っ越し、恩師の逝去、そして板倉の病気と、次から次へと発生するトラブルだらけの日々がドタバタと書かれます。
上巻同様、娯楽小説として面白い小説でした。
日本文学史上にこの作品ありと言われる作品ですが堅苦しさはなく、上中下巻の長編ですが非常に読みやすいので長さを感じさせずに読めます。
戦時中に書き始められるも国策により掲載禁止になり、戦後ようやくGHQの検閲の元で刊行を行い、昭和天皇にも献本され、今日、世界中で翻訳され読まれるという大変な作品ではあるのですが、中巻に於いては特に崇高なテーマ性なども感じられず、個人的にはただ面白い作品と思いました。
特に中巻は、要所要所にスペクタクルを感じるシーンが挟まり、エンタメ性を感じました。
下巻は衝撃展開が待っているので、中巻は4人の日々を紹介しているシーンなのかもと思います。
ただ、中巻ラストは少し驚きました。
実年齢以下に見られることが多く、奔放なようでしっかり者の妙子は、個人的に4姉妹の中で一番お気に入りなのですが、一方で奥畑があまり好きくないです。
家柄よりも出会った相手やときめきを優先して幸せになってほしいなと思っていたのですが、そんな終わり方になるなんて。
下巻もあまり良い展開にならないことを知っているので、この先は少し読むのが怖い気がします。 -
Posted by ブクログ
日常に倦んだ男が、刺激的な”秘密”を持つべく、気まぐれから夜な夜な女装しては街を練り歩く話。
艶やかな着物に身をつつんで、人々の視線を恣にしては悦に浸っていた男だったが、とある晩、すさまじい美貌の妖女に出会う。まさに一顧傾城のその女は、どこかで見覚えがある気がするのだが……。
という感じで、設定も筆致もちょっとエロティックで読みながらドキドキした。
女と再会した明くる日の晩の素晴らしい大雨に始まり、指定された逢い引きのルールはこれまた随分とアブノーマルで蠱惑的だし、退屈な日常からこんな非日常に連れ出されちゃったら行く末は変態まっしぐらですよ。
秘密、というものの危うい快感を伴う蜜の味。
てっきり男を翻弄して楽しむための演出かと思いきや、自分に飽きさせないためだったのか、真実は悪女とみせかけてとてもいじらしい振る舞いだったのが意外だった。
でも女の気持ち分かるな。幻の国に住む、夢の中の女だと思わせておきたい。秘密を暴いたってなんにも良いことなんてないのだから。それはただの現実なのだから。
それにしても表紙絵がすごく好き。白布で目隠しされた男の色気やばい。
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