大田直子のレビュー一覧

  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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    イノベーションがいかに人類に豊かさをもたらしたかについてで、蒸気機関や電球などのエネルギー、ワクチンや水道などの公衆衛生、鉄道や飛行機などの輸送、ジャガイモや遺伝子編集などの食料、0やS字パイプなどのローテク、通信とコンピュータ、農業や家畜化なと先史時代といったそれぞれの分野の代表的なイノベーションを紹介。そしてイノベーションの本質、経済学、偽物、抵抗、現代における欠乏について論じている。
    イノベーションには信じられているような瞬間的なものではなく、漸進的で段階的である。誰かがいないとなかったイノベーションはなく、他の誰かが辿り着いただろうというものがほとんど。原子力発電は安全性が求められ、イノベーションに不可欠な幾度もの実験ができないのでイノベーションが起きにくい。政府の形は社会学的シーラカンスといえるほどイノベーションがない。特許を巡る法廷での争いに多くの貴重な時間とお金が浪費されている。
    前著に比べるとやや悲観的なトーンが見えるのは、Covid-19の影響か。

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    2022年01月28日
  • あなたの知らない脳 意識は傍観者である

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    よくある錯覚の絵を使い、ほらね、脳が認知できてない部分を補完してるんだよ。という本ではなくその先の話を書いて想像させてくれる本だった。脳が概念的に2.5次元で理解してることから、意識したものが、事が、解像度が上がり脳に情報が入ってくるとはじめて理解できた。目標や言霊を発した瞬間に情報が集まってくることは自然であると思えた。このような気づきがたくさんある本であった。最後の2章では話の展開があり、法が掲げる平等の前提である、『みんなの脳が平等』ということに対して異を唱えており、そこから法律や世界の在り方を説いていた。この部分については他の本におこして欲しい話題だったため、星4とした。実際4.5点位だった。

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    2021年11月09日
  • あなたの知らない脳 意識は傍観者である

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    「考えついた」というのは、無意識がすでに考え終わったことを意識が知るだけ。「見る」というのは、脳が予め予想したことに対して視覚がフィードバックして調整するフィードバックループによる。脳の神経系は冗長化していて、同じ事柄に異なる解法を試そうとし、ときには対立している。そんな話だけでも刺激的なのに、神経法学、犯罪者への量刑の話へと発展するのが最高です。考え方の次元が変わった気がする。

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    2021年09月23日
  • においが心を動かす ヒトは嗅覚の動物である

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    献辞で、「やられた」と思ったのは初めてだ。

    はしがきに、「いまこそ、心と脳のいくぶん陳腐な哲学的憶測を、こうした新しい現実に合わせて変えるべきだ。」とある。本書はそんな本。

    訳者は大田直子さん。この方の翻訳は難しい内容でも理解して、我々に理解させるよう書く方だ。
    嗅覚に興味のある方はぜひ手に取っていただきたい。

    内容は難しいので、P325〜P334の第10章「要点」を読みつつ、記された参照ページをめくりながら論理を整理していくのが早いかな。

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    2021年09月16日
  • あなたの知らない脳 意識は傍観者である

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    脳の働き仕組みについて様々な例をあげて丁寧に説明している。自由意志や犯罪者の罰への考察などをはじめ、興味深い発見や意見に感心した。

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    2021年08月31日
  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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    エネルギー、公衆衛生、輸送技術、コンピュータ技術など、これまでに人類が起こしてきたイノベーションの歴史を説明しつつ、それらの共通点やイノベーションの本質に迫る内容。


    一般的に「イノベーション」というと、優れた天才発明家による突然の閃きや革新的アイディアによる技術の進歩というものを思い浮かべてしまうが、
    実際には生物界における「進化」のようなゆるやかなプロセスであることが多いということがわかった。


    アイディアを発見する人だけではなく、それを広める人、コストを下げる人、流通を確保する人が必要で、
    技術的な突破口を開き、それらを大量に製造する方法を考え出し、安価に広く普及させるという一連のプロセス全てが「イノベーション」の要素である。


    また、イノベーションが起きる原動力となるのは自由な環境と、異種間の積極的な交流、多くの失敗が許容される環境で早く、たくさん失敗しながらとにかく実験を繰り返す事だということが、多くのイノベーションの歴史を振り返る事で理解することができた。


    とにかく多くの実例が紹介されているので、この本を読めば世間でイノベーションと言われているものの歴史にある程度触れる事ができ、そこから自分の興味のある分野を広げるきっかけにもなると思います。
    本棚に置いて定期的に読み返したい本です。

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    2021年08月22日
  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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    人類の様々なイノベーションは発明というかたちで特許というかたちで我々の生活を便利にしてきた。エネルギー、公衆衛生、輸送、食料、通信等様々な分野にまたがりこれからも続いていく。どのようにして発明しどう製品に結び付けていくのかはとても参考になる。イノベーションはセレンディピティであることが多い、遊びの要素、CRISPR遺伝子編集、オープンイノベーション、等どれも知的好奇心をくすぐる良書だと思う。

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    2021年08月15日
  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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    今こそイノベーションが大切。
    破壊的イノベーションこそが閉塞した現状を打破する為の云々かんぬん…
    といったフレーズは巷でよく聞かれるが、そもそもイノベーションって何?
    今までイノベーションとされてきたモノはどうやって産まれたのか?
    というのを考察した内容。


    本著で語られている様に、イノベーションは一人の天才・一つのひらめきから産み出されるのではなく、知識の交換、数多の失敗やそこからの小さな改良や改善の積み重ねによって産まれるという話は興味深い。
    つまるところは、『繁栄』でも語られていたようにアイデアの交配こそがイノベーションの産みの親ということかな。

    技術、経験といったものが積み重ねることでイノベーションが産まれるという話を聞くと人類の歩みの深さの様なものを感じら壮大な気分になる。


    だかこそになるのか、特許による技術の保護が逆にイノベーションを阻害しているという後半の下りは知的財産の保護が以前に増して叫ばれているが現代において中々に考えさせられる内容と思う。


    物事を長期的に俯瞰して見る事で、一般的なイメージとは異なる視点で語ることができる著書の洞察力は素晴らしいの一言。
    読む度に新しい世界を開くようで、知的好奇心をくすぐられます。

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    2021年07月27日
  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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    膨大なことをよくコンパクトに1冊にまとめるものだと思う。いまだに「天才」や「自由」を追い求めるような「イノベーション」本が多いけど容赦なしにリドレーは。

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    2021年06月26日
  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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    先史の農業革命から、電球・飛行機・水道といった有名な事例、さらには遺伝子編集といった最新のものまで、人類の歴史におけるイノベーションの数々を丁寧に掘り下げることで浮かび上がるイノベーションの本質的なメカニズムや阻害要因などを明らかにした一冊。

    著者は、過去のイノベーションの分析を通じて、それらの事例に共通するのは”一握りの天才の閃きによる画期的な発明がもたらした成果”などではなく、むしろ「偶然の発見」や「既存のアイディア同士の新たな組み合わせ」、さらにはそれらを「試行錯誤」を繰り返しながら漸進的に進化させることにより、やがて安価で実用的かつ信頼性の高い製品やサービスとして定着していく一連のプロセスであるとして、そのようなイノベーションを育むためには、リスクテイクや失敗に寛容で、実験と学習を繰り返すことができる環境が不可欠であると主張する。

    イノベーションこそが人類の発展を支える礎と信じて疑わない著者からすれば、イノベーションはこれまでも常に既得権益との戦いの歴史であり、今日でも遺伝子組み換え作物や原子力発電に対する否定的な見方、GDPRのような「予防原則」に基づく規制、さらには知的財産保護までもが、イノベーションを減速させ、社会の健全は発展を阻害しているとして、イノベーションを取り巻く欧米各国の状況に警鐘を鳴らす。”イノベーション・レッセ・フェール”ともいうべき「一方の極論」として耳を傾ける価値はある。

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    2021年05月30日
  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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    イノベーションに対する認識を改めることができる本.

    大企業や政府機関で「イノベーションを起こすぞ」なんて呑気に言っている御仁に読んでいただきたい.


    イノベーションは「ある一人の天才が突然のひらめきで完成されたイノベーションを誕生させ一夜にして世界を変える」的なイメージがあるけど,本当は違う.

    歴史で辿ってみると一人の天才,英雄で完結したわけでもなく,一夜にして誕生したわけでもなく集合的・漸進的な活動が後から振り返ってイノベーションと言われているんだということがわかる.

    イノベーションは進化のように「アイデアの生殖」の繰り返し.ゆっくりと進行する,時間が経ってその分岐,差異を認識されるに過ぎない.

    イノベーションを仕掛けようと思ったら,「イノベーションを起こそう」と偉い人が掲げるのではなくそれが起きた環境や状況,経済を理解してその環境に近い環境を与えることが必要だなあと思う.
    自由(交換,実験,想像,失敗),失敗の許容,時間的猶予,非計画性(一見無価値と思われる試行への許容),見返り,助成金ではなく懸賞金

    では,なぜイノベーションは誤解されるのかー>知的財産権と人間の本性(単純化,偉人が欲しい)

    普段の日常生活で見聞きすること,大したことないと思っていることも後から振り返れば大きなイノベーションだったと言われるものがあるんだろう.(数年前のブロックチェーンとか).著者はイノベーションが人々に理解されるのは15年と見積もっている.

    本の構成としては,エネルギー,公衆衛生,輸送といった分野でのイノベーション誕生物語が最初に展開されるが,正直枝葉末節に興味がない人にとってはだるい… そんな人はまず第8章を読もう.
    ただこれらの膨大な事例は無駄ではない.イノベーションとはこうであると説明しようと思ったら帰納的に事例を並べて説得力を守らせるしかないだろうから.

    大企業や帝国,国家ではイノベーションは起こしにくい.保守的,失敗を許容,予防原則を張るから.
    規制は大企業に恩恵がある.参入障壁となりそれを乗り越えられる力を持つ組織だけが生き残るから.製薬,農薬,GDPR

    知的財産権もイノベーションを阻害する.アイデア(イノベーションに必要な配偶子)を閉じ込める.アイデアの生殖(セックス)がおきない.




    =============ー

    イノベーション:
    アイデアを実用的で頼りになる,手頃な価格の現実にすること

    1週間の40時間を誰かに提供し,睡眠を除いた72時間を誰かにさあさえてもらって消費できる.人類の相互依存の強化.個々の専門化・消費の多様化
    ー>論理的でマクロないい捉え方だ.でもITで1の仕事で100の成果が出せるようになっているのに人類はそれに比例して楽になっているとは言えない.やはりその恩恵は投資家やイノベーション企業の経営者が多くとっているんだろうか.

    イノベーションはその時代時代で現れるべき時に同時多発的に発生.「孤高の天才発明家」はいない.エジソンの電球ですらそう.象徴的でない人は忘れ去られる
    イノベーションは段階的・漸進的・集積的,後から振り返ってまとめられるだけ.

    原子力産業が斜陽なのはトライアンドエラーができないから

    アメリカの成功理由は「財産権」と「試行錯誤」

    天然痘 感染者の膿を取っておいて,非感染者に移植(肌に傷をつけ塗り合わせる)ー>ワクチンの先駆け?

    イノベーションは偶然から始まることが多い.もしくは偶然という要素が必要不可欠なことが多い.(エジソンのフィラメント発見,シェールガス採掘技術の発見,天然痘の対処方法の発見,蒸気機関機器の不備etc)

    偶然からイノベーションへの昇華には膨大な実務(PoC)が必要

    蒸気機関車:誰もが馬の方が良いと持っていた
    イノベーションは長期的な影響が理解されない
    イノベーションは集合的で漸進的

    18世紀,聖職者は教区民にジャガイモを食すことを禁じていた.聖書に書いていないという理由で.(ジャガイモはスペインがアンデス山脈から持ち帰ってヨーロッパに広まる

    アンモニアの生成法は偉大なモチベーション
    植物の成長に窒素は欠かせない.ー>空気中の窒素から窒素化合物を生成できるようになることで農業にプラス(火薬の材料でもある)

    鳥糞石(グアノ) 太平洋の海鳥のフンが長年堆積してできた石.尿素,アンモニア,リン酸塩,カリウムなどの養分を含み

    アンモニア生み出す細菌が発見.最近,植物に撒く粉末肥料として販売された.ハーバーボッシュ法は過去のものになるかも知れない

    トイレのS字パイプ ローテクなイノベーション

    通信 情報を電気で伝えること,情報伝達の即時化

    犬の家畜化,農業の誕生,そして生命の誕生も自然が起こしたイノベーション.イノベーションは40億年前から連続して緩やかに続いているだけでつい数千年は人類が人工的にそれを引き起こすようになったに過ぎない

    帝国ではイノベーションが生まれにくい 保守化 上層の抵抗,変化への不寛容.

    イノベーションんが越えなければいけない試練. 役に立つこと,価値が低コストで実現されること.(宇宙開発は芸術)

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    2021年04月25日
  • いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学

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    ネタバレ

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    いつも「時間がない」あなたに/センディル・ムッライナタン、エルダー・シャフィール
    
    最近、仕事が多忙になってきて、あー、忙しいなぁ、時間が足りないなぁと思っていたところ、この心理状況のプロコンって何だろう?と思い、手に取った本。
    
    この本は様々な実験から、時間のみならず、金銭面でも、人が欠乏を感じた時の心理的影響と生産性の変化を分かりやすく教えてくれる。
    
    この本のキーワードは、"スラック"、"トンネリング"、"ジャグリング"である。
    スラックとは、余裕があることを指す。大きな旅行カバンだったら、必需品以外も入れることができ、お土産用のスペースができるかもしれない。これがスラック。
    トンネリングとは、トンネルに入ると抜けた出口から入る光が見え、それ以外は真っ暗で見えない。人は予定が詰まっている時、急用に追われている時、目の前のタスクにしか目にいかず、他の要素は見えなくなる。この状況をトンネリングと呼ぶ。
    ジャグリングは忙しい人は一つタスクが完了したとしても、すぐ次の急を要するにタスクを処理しなければならず、急用の連鎖を意味する。
    
    どんな人も逼迫する状況では、トンネリングが発生する。重要な要件があっても先延ばししていると、目の前のタスクが終わったら、その重要な案件の締め切りが来る。ジャグリングが発生する。
    これを防ぐためにはスラックが重要である。
    
    スラックを作ることで効率的になった事例、研究結果がとても面白かった。

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    2020年12月12日
  • 音楽嗜好症(ミュージコフィリア)

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    文字通り“雷に打たれて”以来、ピアノを弾くことに取り憑かれてしまった医師。隣人の家から大音量で流れるレコードプレーヤーの音楽のような幻聴。聴覚は機能しているのに脳が音楽を構成する要素をうまく感知できず、無感動になってしまう失音楽症。反対に、言語に不自由を抱えている人たちが音楽の力によって、コミュニケーション手段やアイデンティティを取り戻す過程。脳神経科医の著者が出会い、あるいは送られてきた手紙や時に自身の体験談から、音楽とヒトの脳の関係を語ったノンフィクション。


    私が本書で一番興味深かったのは絶対音感にまつわるくだり。ニューヨークと北京の音楽学校で行った調査で、4歳から5歳のあいだに音楽の訓練を始めた生徒のうち、中国人生徒は約60%が絶対音感の基準を満たしていたが、英語話者の生徒は約14%しか基準を満たしていなかったという。この差は中国語が言葉の意味を区別するのに音の高低パターンを用いる「声調言語」であることに関わっている。幼児期において言語能力の発達はふつう絶対音感の保持を妨げるのだが、声調言語はそれ自体音感を必要とするために、絶対音感も保たれるということらしい。
    これは同時に乳幼児はみな絶対音感の潜在能力を持っているのだが、言語を習得するため、あるいは聴覚情報を総合的に処理できるようになるために抑制されていくものだということも表している。話はさらにネアンデルタール人の時代へ飛び、原始の人類は音楽でコミュニケーションをとっていたはずなのだが、言語の発達により大部分の人間は絶対音感を失くし音楽能力が縮小した、というスティーヴン・ミズンの仮説を紹介している。
    まるで「文字禍」。他の章では古代ギリシャ人が膨大な「イーリアス」や「オデュッセイア」を覚えていられたのは叙事詩に節がついていたからだ、という当然の指摘もあり、ネアンデルタール人と比べて音感が退化してからも人びとは音楽で記憶をつなぎとめていたとわかる。言葉と文字が音楽をコミュニケーションの中心から追いやってしまったのだろうか。
    もちろん音楽は今でも人間の記憶と感情を喚起させる力を失ってしまったわけではない。本書第3部、第4部で紹介された音楽療法で救われたさまざまな人たち、特にチック症状に悩むトゥレットの患者たちがドラムを叩くことで解放されていく姿にはとても感動した。視覚・聴覚・知覚に障害を抱える人みなに音楽が作用するのはそれが〈振動〉に他ならないからではないかとも思い、コロナ禍の今、現場で音楽を共有することの意味をまたもう一度考えることになった。
    音楽に救われた人だけでなく、音楽に苦しめられた人びとも紹介されている。その多くは耳をよく使う音楽家だ。蝸牛管の衰えによって大脳皮質における音のマッピングが歪んでしまい、音感がズレてしまった作曲家の「自分がもっている耳で仕事をするんですよ。自分がほしい耳ではなくてね」という言葉には胸が痛んだ。聴覚が変調をきたすと、その空白を補うために脳が幻聴を聞かせることもある。ヒトの脳は〈意味〉を求め、〈意味〉をつくりだすことから逃れられないのだ。

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    2020年08月02日
  • あなたの脳のはなし 神経科学者が解き明かす意識の謎

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    分かりやすい。分かっていると思っていたことでも、理解が深まり、何か次のアクションを起こしたいと感じさせてくれる。その意味で良書だと思う。

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    2019年09月29日
  • 心の視力 脳神経科医と失われた知覚の世界

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    人間って本当によくできてるな。当たり前のことに感謝感謝。サックス先生の本読むと毎回同じ感想。すぐ忘れちゃうからまた読むんです。

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    2019年09月22日
  • 世界が動いた「決断」の物語 新・人類進化史

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    意思決定論の歴史とまとめ。
    ここ数十年意思決定論が出ていて、カーネマンに代表される行動経済学から短期と長期の考えが異なり、歪みが生じるという理解が進んでいる。方法としてはディシジョンツリーや加重平均、スーパーコンピューターを使ったアンサンブル予報、死亡前死因分析、シナリオ分析、あるいはランダムテストがあるが、本当にその人にとっては一回こっきりしかないような結婚するかどうか?というものに資するツールかはよく考えないといけない。ここでは、温暖化、シンギュラリティ、エイリアンとの遭遇を超長期課題の例としているが、そのようなものに対しては、様々な角度、人、の深く長い分析討論が必要である。

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    2019年08月22日
  • 世界が動いた「決断」の物語 新・人類進化史

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    決断の技術を向上させるには、ストーリーが重要とのこと。その為には文芸小説が良いらしい。
    小学生の息子には沢山の本を読んでもらいたいです。

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    2019年06月08日
  • 魂に息づく科学

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    やっぱりドーキンス先生はいいですよね。
    人間ふくむ動物が進化の産物であり、
    それゆえの制約を受けている。という前提を
    何を考えるにしても基本に据えておかなくてはいけない。

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    2019年05月14日
  • 魂に息づく科学

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    本書は、すでにどこかで発表されたリチャード・ドーキンスの文章を集めて編集して一つの書籍にまとめたものである。その材料には、科学解説、社会批評などの他に、知人の著書の序文や弔辞なども含まれる。イギリスのEU離脱を決めた国民投票やトランプを選んだ米大統領選の結果などにも皮肉を利かせた、ある意味翻訳を通すとわかりにくい類の文章まで集められている。
    回りくどいものあったり、背景の理解が必要なものがあったりと、なかなかすっと楽しめなかった、というのが読後の感想である。


    アインシュタインは「私はとても敬虔な無信仰者である - これはちょっと新しい種類の宗教だ」と言ったという。
    もちろん、これはドーキンスが反対する類の宗教ではない。本書に取り上げられたエッセイにおいても、反宗教の立場を鮮明にしているものも多い。

    そのため、本書において、ドーキンスは、宗教がなくとも、道徳や信頼関係を築くことができると主張しようとしているように感じる。
    ユヴァル・ノア・ハラリが『ホモ・デウス』において、「リチャード・ドーキンスやスティーブン・ピンカーら、新しい科学的世界観の擁護者たちでさえ、自由主義を放棄することを拒んでいる。彼らは自己と意志の自由の解体のために学識に満ちた文章を何百ページ文も捧げた後で、息を呑むような百八十度方向転換の知的宙返りを見せ、奇跡のように十八世紀に逆戻りして着地する」と評したが、本書からもその気が少しする。非科学的宗教観やポピュリズムと戦うためではあるが、こういった一般向けのエッセイやスピーチとなると、ある意味では相手の土俵に乗せられて勝負を仕掛けているように思う。ドーキンスは、いわゆる人間主義的発想から自由ではないように思えるが、それは反宗教としての立場としても正しいものなのかどうか考えてしまう。

    ドーキンスは、「私たちの脳は、目標と目的を設定する能力を与えられています。もともとその目標は、厳密に遺伝子存続のためでした」と書くが、まるで遺伝子に目標があるかのような誤解を与える書き方をしている。さらに続けて、「私たちの脳のような大きな脳は、すでに述べたように、構成要素である自然淘汰された遺伝子の命令に積極的に逆らえます」と書いている。そして少し先の結語として、「利己的な遺伝子の観点からすると、私たちの脳は創発特性によって別の方向へ走ったのであり、私の個人的価値体系はこのことをとても明るい兆しと見なしています」とする。倫理的空白おいて宗教が必要なのではないかとする相手への反論のためなのだが、倫理的空白にこそ黙して耐えなければならないのではと思うのだが、それはこの審級においては間違いなのだろうか。

    ドーキンスがここまで宗教に対して強く当たる理由は、進化論こそが宗教との間での論争の元になっているということである。そして、その肝が実は宗教を信じる側においても、その科学的知見と矛盾するというものではなく、宗教こそが道徳的な生活の根拠になるべきであり、進化論を真として認めて、聖書の誤りを認めることが宗教を支えてきた何かを棄損することになることを恐れてのものなのであろう。ドーキンスもまたそのことを知っている。

    ドーキンスはダーウィンを持ち上げて、このように語る。
    「ダーウィンの自然淘汰による進化説は、地球上の生命の存在と形態を説明する局所理論にとどまらない。おそらく、私たちが生命と結びつける現象を適切に説明できる唯一の理論だろう」

    宗教については以下の通りだ。
    「宗教的信念は合理的でない。宗教的信念はばかだ。ただのばかでなく、超ばかだ。宗教は本来分別のある人々を、禁欲主義の修道院に送り込み、ニューヨークの超高層ビルに突っ込ませる」

    アメリカでは、進化論を信じる人の割合は増えてきているが、いまだに少数派らしい。創造論を支持する人は、1980年代から2010年に入っても変わらず四割を超えているとする調査結果もある。
    ドーキンスにとって、EU離脱とトランプ大統領もその不合理性の先にあるようにも見えているのかもしれない。ドーキンスも米国以外の先進国であれば、ここまで焦らずに済んでいたのではないのだろうか?

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    2019年04月29日
  • オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史1 2つの世界大戦と原爆投下

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    ・西洋が世界の勝利者になったのは、西洋の思想、価値観、宗教が優れていたからではなく、
    むしろ組織的な暴力をふるうことに優れていたからである。
    ・我が国の歴史の中で日本人ほど忌み嫌われた敵はいないだろう(ピュリッツァー賞受賞歴史学者アラン・ネヴィンス)
    ・原爆被爆者、峠三吉の詩「八月六日」 ”あの閃光が忘れえようか”
    ・原子爆弾の投下に「これは史上最大の出来事だ!」と喝采を叫んだトルーマンに対してある民主党党員が大統領宛に打った電報
     「無辜(むこ)の人を死に至らしめる兵器に歓喜するなど、かりそめにもアメリカ合衆国の大統領たるもののなすべきことではない。
      喜んだ理由が破壊ではなく、破壊に終止符を打ったことにあると明確にしていただきたい。」
    ・アイゼンハワー
     私は2つの理由で原爆使用は反対だと言った。
     第一に、日本は降伏する用意ができており、あのような恐ろしい兵器を使用する必要はなかった。
     第二に、私は自国があのような兵器を用いる最初の国になるのを見たくはなかった。

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    2018年12月09日