あらすじ
失読症のミステリ作家や楽譜が読めなくなったピアニストは、どう「見る」ようになったのか。片目の視力を失った著者自身の経験もふまえ、目と脳の、そして想像力の、奇妙で驚くべき働きを描く。卓越した洞察力と患者への温かな視線が際立つ、傑作医学エッセイ
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Posted by ブクログ
譜面が読めなくなったピアニスト、文字が理解できなくなった作家、社交的な人が意思の疎通ができなくなった、、何らかの、それまで大事だった能力をなくしてしまい、その状況と折り合っていく人を描いている。最期の「心の目」は、『ビジュアル・シンカーの脳』とあわせて読むと面白いと思う。
Posted by ブクログ
文字を画像として認識できても読めなくなることがある。aphasia。手話失語症なるものもある。言語って一体何なんだろうか。
なぜ文字が読めるのだろうか。文字なんて人類の歴史の中でついさっきできたばかりのようなものなのに。
。。。と、読み終わってから思ったが、そもそも文盲な人の脳ってどうなってるんだろうか。文字が読める人だと識字を担当している脳の場所って、一体全体どうなってるんだろうか。
Posted by ブクログ
「レナードの朝」で知られる脳神経外科医の近作。ある一方向のものがわからない、人の顔が見分けられない、ものは見えているのにそれが何なのかがわからないといった知覚喪失の世にも不思議な世界の物語。
サックス自身も人を見分けるのが困難という相貌失認を抱えていて、これも初めて知って、びっくり。ただただ唖然。
Posted by ブクログ
人間の機能感覚と、認識の錯覚など、実際の症例をもとに学んでいく。オリバー・サックスは、思春期のころに読み、脳の不思議さ、感覚の土台について人間って不思議だなーと感心したことを覚えています。専門用語も多く正しく理解できたどうかは不安です笑
Posted by ブクログ
目にかかわる、脳の障害が、具体的な人を通して記述される。とてもひどい症例であっても、大変な努力と工夫により新しい状況を切り開いてゆく姿は、人間の可能性を伝えてくれる。そして、脳そのものの可塑性やいろいろな機能のネットワークを作り変えてゆくすごさに感動してしまいます。
Posted by ブクログ
視力にまつわる医学エッセイ。
「みる」「読む」ということが、いかに精妙複雑な働きで成立しているかを教えられる。
反射した光を感知するだけでは駄目なのだ。それを「認識」できなければ意味はない。
りんごを見たとき、脳内で抽象化された「りんご」という概念と結びつけられなければ、その人はそれをりんごとして見ることすら出来ない。「紅くて丸いの」だ。
物の特徴を抽象化して分類することができなければ、隣の人の頭をスイカだと勘違いしたっておかしくはない。
むしろ人の顔を見分けるのすら高度なワザに思えてしまう。
立体視の素晴らしさについての体験記はとても心を打つ。
雪の一ひら一ひらのなかに身を置く自分を実感するということ…そういう感動を抱いたことなんて、私は今までなかった。
生まれたときから当たり前のように備わっている事柄だから意識しないけれど、もし失ってしまったら、一体世界はどのように見えるのだろうか。話を聞いて想像することは出来るけど、きっとそれは想像でしかない。
視覚心像についての言及も面白い。
その人の経験からくるものと、創造力からくるもの。
頭の中で見えるものって、一体どういう仕組みになっているのだろう。
触覚や聴覚から風景を「見る」ことが出来る…それは目から入った情報とは違うものでありながら、限りなく近いものだ。
足りないものを補完する力。
新しい環境に順応する力。
人間のからだに秘められた数々の可能性に驚かされる。