大田直子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者がもともと携帯端末Palmの開発者であったこともあり、人工知能に関するトピックも扱われているが、興味深いのは、やはり新しい脳理論について述べた第1部である。
著者の設立したヌメンタ社における研究によれば、脳の新皮質は「皮質コラム」と呼ばれるニューロンの塊を一つの単位として働いている。
そして、それぞれの皮質コラム(計15万個!)は、構造的には同等のものであって、しかも共通のアルゴリズムに従って働いている。
もっとも、皮質コラムは場所によって異なる役割(例えば視覚を担当するか触覚を担当するか)を持っており、役割の異なる皮質コラムが組み合わさって認識や思考が形成されている。
また、著者は、皮質コラムの本質的な機能は、モデル化及び予測であるという。
「停止しているエスカレータ」を上り下りする際の経験を思い出すと、これが腑に落ちる。
エスカレータが停止していることは明確に認識しているのに、最初のステップに足を乗せる時の体重移動は、どうしても動いているエスカレータのステップに乗る時と同様になってしまう。
これは、脳が「エスカレータに乗る時の身体の動き」をモデル化しており、「エスカレータに乗ること」を予測すると、それが停止している時でもそのモデルに従った動きをするよう、脳が身体に指令を出しているからだろう(なお、本書によれば、新皮質は直接的に「指令」を出すのではなく、まずは古い脳に「依頼」を出すのだという。)。
脳の構造という点からもう一つ重要なのは、主に生命維持や情動を掌る「古い脳」(旧皮質)と、知的機能を担う「新しい脳」(新皮質)の区別である。
人は「古い脳」なしには生きていけないが、著者は「古い脳」のために人類が滅亡してしまう可能性があるとも主張している。
本書では、例えば外国人に対する排外的な行動も「古い脳」による本能的なものと説明されており、昨今の国際/国内情勢を見ていると、「古い脳」が世界を滅ぼすこともあり得ない話ではないと思えてくる。 -
Posted by ブクログ
「じん・ましん」ですか? かゆくなるやつ?
そんなじゃありませ~ん! 表紙の画像よく見て!
色つき「パスタ」うにゅうにゅ、これ「リボソーム」ですから!
はい! この本はリボソームのパーツの立体構造と動き方を調べて2009年にノーベル化学賞を受賞されたヴェンカトラマン・”ヴェンキ”・ラマクリシュナンさん(ヴェンキさん)の「自伝的科学エッセイ」です。
ヴェンキさんが、インドの大学を卒業してアメリカに渡り、のちにノーベル賞を受賞するまでをユーモラスに、そして、率直に語っています。
たいへんおもしろかったです!
この本、まず巻末の「解説」から読まれることをおすすめします。リボソームが何かを説明してあります。
リボソームは、細胞のなかの分子です。遺伝情報から、エネルギーを使って、タンパク質を合成する「分子マシン」です。
水分を除いた細胞の「乾物」だと、重さの30%がリボソーム。だから、細胞の中にたくさんあります。その数、6~7万個!
水分70%の肉100gだと9gくらいあるのかな?
わたし、ぜんぜん意識せずに「リボソーム」めちゃめちゃ食べてました!
リボソーム、細胞のなかの分子としては最大の大きさ、でも細胞と比べると、めっちゃ小さいです。
そして「大」と「小」のふたつにわかれます。両方とも「RNA」と「タンパク質」でできています。でも、太古の昔はRNAだけだったとか。
RNAって、情報を運べるし、化学反応も起こせるすごいやつ、「生命のはじまり」とも関係しているようです。そんなRNAとタンパク質をつなぐリボソーム、超重要分子です。
ヴェンキさんは、そんなリボソームのちっちゃい方の立体構造を明らかにしました。
この「立体構造を明らか」って、つまるところ人間の目でみてわかるようにすることです。
つくづく思います、人って目で見てわかることが、何かを理解するのに重要なんですね。当時難しかったとはいえ、ノーベル賞級の仕事になるんですから。
この本のおもしろさは、ヴェンキさんのノーベル賞にいたるまでのストーリーです。
もともとヴェンキさんは理論物理学のひとです。それが、アメリカで物理の博士号をとってからの生物学への転向です。ゼロからのスタートです。
生物学に転向してから読んだ『サイエンティフィック・アメリカン』でリボソームに出会います。そこから、どんどん追いかけます。
ヴェンキさんはとても優秀ですが、超天才とかではない感じ。スターじゃない、常識ある普通っぽいひとが、ゼロからはじめてノーベル賞にたどり着くのが痛快でした。
自分を成長させるために研究拠点を変える決断、自分にもチャンスがあると思ったら研究レースに飛び込む勇気、とってもよかったです。
生体の高分子のお話なので、とくに役立つ情報はないのですが、ひとつお役立ち情報ありました!
わたし、血液検査のたんびにマグネシウムやタンパク質不足を指摘されていますが、リボソームさんもマグネシウム不足にもろ影響をうけるみたいです。
リボソームさんにタンパク質をせっせと作ってもらうため、もっとマグネシウムとらなきゃと思いました! -
Posted by ブクログ
脳に関して現在分かっているしくみを学べた。
脳は知識や経験を座標で蓄積するんだ!
ノートや辞書のように並べてるんじゃないんですね…
そして脳内にモデルを作り、それを基に予測しながら世界を見ているというのも驚いた。脳の予測と違うことが起きると誤りに注意を向けて脳内モデルを更新する。
日常の慣れきった行動は(脳内予測と同じなので)無意識に行うが、何かちょっとした違和感を感じるとそちらに意識が向く、というのはのその予測モデルから外れるせいなのか!
また先ほどの座標の話も、たまたまXで「育児疲れで義実家で爆睡後起きた母親が『私は今学生?就活してるんだっけ?あ、子供を産んで育児中だった…』と一瞬自分の時空を見失った話」を読み、ああこれは疲労などで脳内で座標の混乱が起きたせいで脳が時空を含めた現在軸を一瞬見失った話だったのか!と合点がいった。
記憶喪失とかもそうなんだろうな。
言葉は理解できるし、身体機能も問題ないし、常識も覚えているのにある記憶だけ抜け落ちたり混乱したりするのは、その記憶に関する座標がうまく機能しなくなっているせいなのだろう。
また古い脳と哺乳類だけにある新しい脳(新皮質)の違いも分かった。
人間の筋肉などの身体機能は古い脳でしか制御できず、知能を担う新皮質は直接筋肉に作用することはない。
また、我々の行動を導く「感情」というものは古い脳から生まれる。
人間の行動は「感情」から生まれ、古い脳が攻撃的なら攻撃行動をうまく行うために新皮質のモデルを使用し、古い脳が情け深い人なら新皮質のモデルを情け深い目標を達成するために使う、とも。
つまり新皮質や知性それ自体には目標はなく、古い脳が自らの目標を達成させるためにそれらをうまく使っていると。
そういえば私は学生の頃人前に出る、発表するというのがとても苦手で、自分の順番が近づいてくると、勝手に心臓がバクバクと激しく動悸し顔には血が上り、声が震えてどうしようもなくて、頭のなかでは大したことないから落ち着きたいとどんなに思っていても体の反応が頭と逆だった。それは古い脳が「ほかの人間」「人前」を評価してくる敵と認定していて、血流と心拍数を上げて戦闘態勢と恐怖の心理作用を起こしてたんだな…新皮質(知能)は古い脳を制御できないし、つまり身体機能も制御出来ないので、だからいくら落ち着けと心で思ってもだめだったんだな、と理解できた。
(こういう場合はいくら言葉や頭のなかで言い聞かせても身体反応を制御できないので、同じように身体的な行動である深呼吸などが大いに効くらしい。気休めじゃなかったんだ…)
後半はAIの話。
機械の知性と意識について。
AIには人間と同じような自己更新できる知性ある新皮質のような脳が必要だ。AIは意識は持つだろうが人間の古い脳のような死への恐怖や悲しみといった要素は不要なのでそれをわざわざセットすることはないという前提で、感情はないだろうとも。
後半ではAIの話と並行して、人間は古い脳によって感情を支配されているのでせっかくのテクノロジーを誤った信念を持つ人たちに悪用されやすく、滅亡の可能性を捨てきれないと言った重点を置く。
ただ著者は古い脳に対する新しい脳(知能)の勝利を希望してやまない、ハッピーエンド志向で終わらせているのが、警告はあるものの恐怖を煽らない良いまとめ方で良かった。 -
Posted by ブクログ
原著は2018年刊。ヴェンカトマラン・ラマクリシュナンの研究自伝。
1952年インド生まれ。細胞のタンパク質工場「リボソーム」の構造と機能の解明で、2009年ノーベル化学賞を受賞。
生い立ちから始まるわけではない。インドで物理学を学んだことも出てこない。アメリカに渡り、UCSDの大学院で生物学、ポスドクとしてイエールでリボソームの研究に入り込んでゆくところから始まる。1980年代、90年代、構造生物学が輝いていた時代、その熱気と活気と興奮が描かれている。
プロローグから引き込まれる。1980年、イエールの掲示板で見た講演会を聞きに行く。聴衆はわずか。質問はほとんど出なかった。だが、研究内容がすごいことだけはわかった。講演者はベルリンのマックス・プランクのアダ・ヨナット。その29年後、ふたりは同じ授賞式の席にいた。
第3章、リボソームの可視化の歴史の記述はみごと。専門外の者にもよくわかる。
訳文はよどみなく読める、おお、なんという幸せ! -
Posted by ブクログ
『脳は世界をどう見ているか?』は、脳を単なる情報処理装置ではなく、世界をモデル化するシステムとして描いている。
人間の脳は、古い部分の上に新しい部分を積み重ねるように進化してきた。古い脳は生存や感情を司り、新しい脳である新皮質は知能や思考を担う。この2つはルームメイトのような関係にあり、たとえば新皮質が「健康のためにケーキを我慢しよう」と考える一方で、古い脳は「美味しそうだから食べたい」と訴える。人間の行動は、そんな2つの声のあいだで揺れながら決まっていく。
特に印象に残ったのは、新皮質の構造に関する説明。
新皮質は、くしゃくしゃになった一枚のシートのように見えるが、実際には「皮質コラム」と呼ばれる小さな柱が15万個も並び、それぞれが知能の単位として働いている。新皮質に明確な境界線はないが、コラムの集まりはゾーニングされ、視覚野や聴覚野といった感覚ごとの領域を形成している。
各コラムは感覚情報をもとに対象を座標系で理解し、世界のモデルを構築する。脳は常に過去の経験を参照しながら複数の予測を立て、それらがコラム同士の「投票」によって統合され、ひとつの知覚としてまとまる。ホーキンスはこの仕組みを「1000の脳理論」と呼ぶ。
この理論を読みながら、いくつかの問いが浮かんだ。
まず、人はどうやって「私」を認識しているのか。
自己という感覚も、外界と同じように脳がモデル化している結果なのだろう。古い脳が身体の状態を監視し、新皮質がその情報を整理しながら「私はいまこうしている」と構築していく。自己意識とは、脳の内側に描かれた自分という世界モデルと言えそう。
次に、人によって思考力が異なるのはなぜか。
思考は新皮質が司る機能であり、新皮質はコラムの集合体として、感覚対象を座標系で理解し、世界モデルを構築する。数千のコラムが投票を重ねて一つの知覚を形成することを考えると、思考力の差は、世界モデルをどれだけ柔軟に再編成できるかという力の差として説明できる。
コラム自体に先天的な差があるのかは本書からは明確ではないが、もし差がないとすれば、投票の精度こそが思考力を分けるのかもしれない。
暗記法でよく言われる五感を使った記憶にも、この理論に通じる根拠があるように感じる。そうした示唆は本書にも見られた。
最後に、「美しい」という様な価値判断はどのように生まれるのか。
ここでも、古い脳と新皮質の関係が鍵になりそう。脳が予測した世界のモデルと実際の感覚が一致したとき、古い脳が快感として応答する。美とは、予測と現実が重なった瞬間の喜びなのだと思う。
そう考えると、既知の感覚や世界モデルとまったく無関係なものが美とされることは、脳の仕組み上あまり起こらないのかもしれない。ただ、既知との完全一致は、新皮質が行う予測が意識化されないため、快感には繋がりにくそう。美しさとは、未知の中に既知を見出す瞬間に生まれるとは言えそうだが、それ以上は分からない。
脳科学の本としての興味から本書を読み始めたが、AIとの関係や人類滅亡に対する提言など、想像以上に刺激的な本だった。 -
Posted by ブクログ
どうしよう。本気で感想書いてたら指もげる。
短く不恰好でここでは書けないようなものしか触らない指ですが、私にとっては大事なかわいい指ちゃんなのでそこそこに書いていきます。
言いたいことは表題のまま。てかドーキンスの時点で表題すら要らないかも知れない。が、私も含めて今回はどんな表現方法で彼の主張を筆圧高くなぞってくれるのかニヤニヤしながら読んでいきます。正直1割、いや2割くらいは日本語で書いてあっても理解不能ではありますが、残り8割も理解してるつもりであって正しく理解してるわけでも記憶してるわけでもないので気にしません。
1動物を読みとる
いきなり「あなたは遺伝子版死者の書」ですよ。また「パリンプセスト」であるとして赤と青のインクで美しく書かれた葉書を挿絵としている。
外人プレゼンの基本形を感じさせますね。まず冒頭に結論、そっから色々展開していって最後にまた結論。ダイヤモンド型。薄い本ではないですが、ここから始まる話は全てこれが言いたいのだと心の準備が出来ますし、13章ではここに(もしくは同意の別比喩に)戻ってくるのねと期待させてくれます。親切なのよ。
2絵画と彫像
死者の書の分かりやすい例として擬態を紹介。
楽しいけれど正直ここはなくても本筋通るのでは?とか思ったけど遺伝子が死者の書であることを一瞬で体感させる(擬態生物は環境変わったら目立ってしゃーない。喰われて絶滅。)ためにはこれが1番分かりやすいか。
3パリンプセストの深層で
進化の途中で海陸海陸と行き来した生き物たち。こういうのも創造論の人達は無視するのかねぇ。
「人のパリンプセストは太字で四足歩行と書かれ、その後二足歩行、成り上がりで新参者の二足歩行とうっすら上書きされている。」腰痛のたびに思い出すとあるけれどまさに。原罪があるとするならこっちじゃない?
パリンプセスト論では盲点、反回神経、骨を紹介。(巻末では精巣と陰茎をつなぐ管も紹介)
4リバースエンジニアリング
これとこれをするために設計されたものは、おそらく似たように見えるだろうってなことを言いたいようで。心臓とポンプ、食事が同じながら種が全く異なる生き物の骨の比較など。私としては「犬歯というけれど原生肉食ではネコ科の方が長い犬歯に頼っている。なぜならイヌ科は追跡ハンターで獲物は疲れ切っている。ネコ科は不意打ちだから犬歯必要。」ってのが1番おもろかった。にしても犬歯という名称を使ってること自体現代には(というか1万年前からでも)そぐわないのでは?猫歯でいいじゃん?
5共通の問題、共通の解決策
コウモリは色を聞くと推論する。そもそも我々が見ているものは脳独自の着色であり異なる波長の光のコード化されたラベルとしての脳による内部調合物である。恣意的なラベルであるという同じ考え。なるほどね。てか本当そうですよね。我々が見ているものが世界なわけない。紫外線すら見えてないとかそういうレベルじゃなくて、赤とか青とか勝手にほざいてるだけなのよな。
何度も進化をし収斂していったホンソメワケベラや掃除エビと床屋が同じ縞模様であるという小話も好き。
6主題の変形
一見あまりにも違って見えるカニの甲羅も数学的法則の変形だったりする。ここでは甲殻類が取り上げられてますがあいつら確かに無茶してますよね。特に石川秀美(幼生時代)。フジツボ、君には別室で話がある。
7生きているあいだの記憶
「何が報酬、罰になるか。脳による選択は確定していない。遺伝子の自然淘汰によって決まる。」
8不滅の遺伝子
物理的なDNA分子自体は一時的でもヌクレオチド配列に記された情報は潜在的に永遠だ。
「わたしは体をたくさん見てきた
あなたは自分が賢いと思っているが
わたしは永遠に生きながらえる
あはたは生存機器にすぎない」
まず乗り込み、育て、そして捨てる。
そうなのよ。
9体壁の向こうへ
延長された表現?てのかしら。ミノムシ、トビケラ、トックリバチアナバチ、カマドムシクイ、ニワシドリなど。
10振り返る遺伝子の視点
ここのカッコウ、おもろかったわー。
てかホトトギスってウグイスに托卵するのね。
あとジュウイチの動画がYouTubeであった。最初本当に口に見えた(羽の内側が)。ありゃすごい。
てか繰り返すけどこの辺の生き物も神が作ったと思ってる人達がいるんだよね?創造論って一部の犯罪者にとって都合いいんだろうなぁ。(ごく一部のね。ほとんどの信者は真面目だとは思いますが)
てか全然話変わるんですけど喜多嶋ま(以下略
11バックミラーをもう少し見る
あんましピンとこなかった。
12良い時間、悪い仲間
「種の遺伝子プールはほかの全ての区画と隔離された独自の密閉された区画のなかでバシャバシャと水飛沫をあげる」
それよね。種ってのは。もういい加減「人種」って言うのやめようよ。あと「白人」も。ピンク人でいいじゃん。有色ってなんだよ。てめぇら内蔵透けてんのかよ。ねぇ。
「遺伝子は他の遺伝子と協力しあっていかなければならない。それは現在の体の中の仲間とだけではなく、次世代で共通プールから排出される異なる仲間のサンプルとも協力しなくてはならない」
なーるーほーどー。私達は遺伝子レベルでも個人レベルでも同じなのね。
「種にアイデンティティを与えるのは有性生殖なのだ」
蛾の顕性遺伝子が消えた話もおもろかった。
そんな程度って言ったら乱暴だけど、それくらい偶然というか、たまたまなんだよなぁ。人間はバラエティが少なすぎてこういうことも起きないんだろうけど。
13未来への共通の出口
我々自身の細胞が40兆として、腸内には40-100兆の細菌がいて、更に数千兆のミトコンドリアがいますと。細胞ベースだと私は私のマイノリティなのね。こないだ読んだ本でも「自分自身をもっと広義に捉える」というのがありましたが、そもそもこれが私の体!と思ってるものが細胞ベースでは全然少数派なわけですから狭義も広義もへったくれもないですよね。そうなると手入れして長く使うよりは70年で乗り捨てた方が手軽なただの乗り物としての自覚も生まれやすくなります。
指ってか首が痛いからもう書くのやめるわ。
解説にも「本書はドーキンスの集大成」とありましたがほんとそんな感じ。脇に逸れるおかげでどのトピックも内容は分厚く、写真や挿絵もたくさんでカラフル。楽しい。ジャレドダイヤモンドもそうですが元気で長生きして欲しいなぁ。でも年齢的にそろそろ執筆は難しくなるでしょうね。これが最後の本とかなのかなぁ。
私がパッパラパーなりにこざっぱりと生きてこれたのはドーキンスの本によるところもあると思う。いや、ある。こんな偏食のパーにも食べやすいように知識を飴でくるんで与えてくれたドーキンスにまた感謝。利己的な遺伝子はいつもベッド横にありますよ先生。 -
Posted by ブクログ
オリヴァー・サックス(1933-2015)の強烈な自伝。出版は2015年。
原題は“On the Move: A Life”。のっけからバイクの話が登場し、6ページ目までぶっとばす。書名の通りon the move。もちろん、この慣用句はサックスのactivityの高さの謂い、その生き方を指している。
ロンドン生まれ。父母はともに医師、ユダヤ人。オックスフォードの医学部を卒業し、28歳でアメリカに渡る。医師として、研究者として几帳面な生活を送るも、一方、仕事がオフになると、バイクで放浪。同性愛者でもあり、一時期は薬物依存の生活も送った。『レナードの朝』のあの医師のイメージからは想像もできない。
このように前半はなにやら告白録の様相。しかし、この破天荒な生活体験がなければ、後半生の、患者に寄り添った、あの豊饒なメディカル・エッセイ群は、生まれなかったに違いない。
写真はたっぷり、カラー口絵が28葉、本文にモノクロ29葉。そしてカバー表紙には、バイクにまたがる若き日の坊主頭のサックス。訳文はひじょうに読みやすい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレリチャード・ドーキンスの最新刊。内容はドーキンスの総決算的なものとなっており著者の過去の著書のエッセンスが凝縮されている。現在ではまだ実現できていない内容も予想の形で結構入っている。
動物は『遺伝子版死者の書』でありその『パリンプセスト』を読むことで過去に生きていた環境が分かる、というもの。
序盤は擬態・絵画などの偽装を自然淘汰によって遺伝子プールに彫刻していくことの例をあげる。その後海から陸に上がりさらに海に戻りまた上陸したリクガメの紹介、歯の形から草食・肉食が分かること、異なる種の機能が同じような形になる収斂進化、その逆に同一の種からそれぞれの環境にあうように進化していく適応放散、と続く。
そして動物に芸を仕込む反応形成は何を報酬・罰にするかは遺伝子で決められていること、遺伝子が能動的であり原因であること、表現型は爪や体を超えてそれらが作り出す巣の形状さらには相手を魅了し操作しようととする求愛行動にも延長できること、カッコウの紹介、ハーレムを形成するゾウアザラシのオスは過去を振り返ると隆々とした立派なオスとごく少数の忍び寄り戦略のオスのみがいること、遺伝子が仲間を作り伝わっていくこと、最後に垂直性細菌・水平制細菌を紹介し私達は垂直性ウイルスの巨大なコロニーの一部であり壮大な生活共同体なのだ、として終わる。 -
Posted by ブクログ
原著は2017年刊。オリヴァー・サックスは2015年に亡くなっているので、いわば「遺作」。亡くなる2週間前、サックスは、「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」誌に掲載したいくつものエッセイをこのような形でまとめることを編集者に託したのだという。
エッセイは10篇。サックスの敬愛する3人のビッグネイムが頻繁に顔を見せる。ただ、登場するのは、植物学者としてのダーウィン、精神分析を言い出す以前の神経学者としてのフロイト、意識の川(流れ)について考えたジェイムズである。
いつものサックスと少し違うのは、人間よりも、動植物にスポットライトをあてている点。なんとなく枯れたエッセイのようにも感じる。もちろん、味わい深いのはいつも通り。 -
Posted by ブクログ
Sleeping Beauties: The Mystery of Dormant Innovations in Nature and Culture
イノベーションは自然にも文化にも容易に生まれる(多重発見)が、成功するのは難しい。多くは休眠状態に入り、環境が整ったときに発現する。
【目次】
序章 水に書かれし名
第1部 自然
第1章 インスタント・イノベーション
第2章 長い導火線
第3章 分子の高速道路
第4章 好ましい振動
第5章 遺伝子の誕生
第2部 文化
第6章 カラスと水差し
第7章 数を数えるニューロン
第8章 隠れた関係
第9章 車輪の再発明
第10章 眠り姫 -
Posted by ブクログ
人類がなぜここまで繁栄したのか、そしてこれからも繁栄できるのかについて、「合理的楽観主義者」の著者が描く。
鍵は「専門化と交換」にある。
この性質は現生人類だけに見られる特徴であり、我々より脳の容量が大きいとされたネアンデルタール人にも見られなかった。
人類は専門化と交換により、集団的知性を高め、テクノロジーの進化を引き起こし続けた。
逆に言えば、その2点が抑制されると進歩は停滞する。
過去の例を見ると、いずれも強権力者による抑圧で交易が制限された場合には停滞が見られる。
そしてそれは未来にも言える。
もしもなんらかの圧力により経済活動が抑制でもされれば、解決できるはずの問題も未解決のままになるだろう。
例えば環境問題がそうである。
環境活動家は経済活動を控えるように訴える。
しかし、経済の停滞はイノベーションの停滞につながり、問題解決を阻害することになる。
とはいえ、それを折り込んでも人類は発展し続けてきた。
だから、2100年は今よりも素晴らしい世界になっていることだろう。
というような内容。
人類史、食料問題、エネルギー、アフリカの貧困、環境問題と、幅広い題材を取り扱う。
時として悲観論者に対する攻撃が、データに基づいて行われる(そのデータの有効性は私には分からない)
イノベーションはトップダウンでは行われないのだということに納得させられる。
この本には出てこないが、宇宙に行くということに関して言えば今ではNASAよりSpaceXに期待ができる。
政府は肝入りで事業を動かすのでなく、事業を邪魔せず活性化させることにフォーカスした方が良い。
この本に出てくる専門化と交換は国や世界レベルの話として取り上げられているが、企業や個人レベルでも当てはめることができる気がする。
優れたビジネスマンは自分で何でもやろうとするのでなく、なるべく他人の力を頼ろうとする。
それが成功につながると理解しているからだ。
実用書ではないが、実用できる学びがあると思える。