有栖川有栖のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『謎を解くのは先生で、あんたが物語を完成させるんかな。それがコンビを組んでる理由や』
作中の容疑者が、火村・アリスコンビを評した言葉ですが、なるほどなあ、と思いました。何とも奇っ怪な事件に対し、今回も火村とアリスコンビはそれぞれの視点から、事件と物語にケリをつけます。
前世の記憶を共有するという人たちが集まり、開かれた占いの集い。その集いに参加していた二人が殺害され、さらに被害者の一人が予言された死の日付と、死亡推定時刻も近いことが分かる。事件の管轄である兵庫県警は、火村とアリスのコンビにも協力を要請する。
話の構成はやっぱり巧い。占いに隠された思惑と、被害者の生前の不審な動き。そこから過去へ過去へと事件を遡っていくと、たどり着くのは小さな旅館での土砂崩れ事故。少しずつ材料がそろい、事件のピースが見えてくるのが心地良い。
今回は野上刑事の活躍も印象的。火村とアリスは各警察から頼りにされていますが、野上刑事だけは、素人が事件に首をつっこむことを、心よく思っていない様子を隠そうとしません。
読んでいるイメージからすると、いわゆる昔ながらの刑事というか、足と勘で事件に迫る、頑固な印象が強い。そんな野上刑事が捜査を進め、片道8時間の山奥の旅館までの強行軍を厭わず向かう。その最中で野上刑事の家族や心情も垣間見えて、彼がより身近に感じられました。
前世であったり予言であったり、胡散臭い話が多く事件の真相も特殊ですが、一方でアリスが終盤にふと思い浮かべる、前世と来世に対する啓示が印象的。
『前世とは昨日のこと』
アリスは火村の過去に関して、思いをめぐらすのだけど、読者であった自分の心にも気持ちよく迫ってくるものでした。過去の失敗や後悔、苦い記憶を前世のこととして切り離す事ができたなら……。
作中で色々と不思議で、奇怪な前世論が出てくるので、アリスのセンチで優しい前世の啓示は、その対照としてよりストンと落ちてきます。
そしてこのアリスの啓示と同じようなことを考えた登場人物が、最後に火村の心の裡に何かを起こす。火村の心情がこのシリーズで描かれることはほぼないけど、それでも彼の心情に起こったものを、アリスと同じように想像してしまう。
犯罪学者の火村が事件を解決する。作家のアリスが事件に物語を与える。
ミステリってともすると、事件の解決とそのロジック、あるいはどんでん返しに神経が注がれ、物語としては物足りなく感じてしまうものもあるけど、作家アリスシリーズ、特に近作のものにおいては、その心配がほぼなくなってきているように感じます。そしてそれは、何よりアリスの心情が反映されている語りの部分が大きい。
事件を解決する火村。事件に物語を与えるアリス。やっぱり良いコンビです。 -
Posted by ブクログ
このミス2018年版6位。フーダニットの本格ミステリー。犯罪学者・火村英生がフィールド・ワークと称して殺人現場に赴いて探偵するやつ。25年間続いている人気シリーズらしい。過去にこのシリーズ読んだような気もするけどあんま印象ないです。最近なんだか本格ものが楽しめないのですよね。もともとこの人の本は好みじゃないのか評価点が低く内容も全然覚えてないんだけど、映像媒体やコミックが主流の中でわざわざ苦労して小説読んでも殺人の仕掛けとかが映像に比べて分かりにくくて小説のメリットが感じられないのですよね。やっぱ小説の存在意義は美しい文章表現と物語を兼ね備えた文学にあるのではなんて思ったりした。叙述系ミステリーは小説ならではですが、たまにあるからだまされるわけで叙述系ばっかりじゃ面白さ半減なんでしょうね。
そんなこと抜きにしてもやっぱりこの本は意外性も少ないし、あっと声をだすやられた感もないし、何かどんでん返しあるかと思って読んでたらすんなり終わるし。会話もあんまり楽しくないのよね。何で、6位なんだろ。 -
Posted by ブクログ
心霊とミステリーが融合した短編集。
個人的には、第2作目を読んでから、この作品を読破。
心霊現象というと、普通は「これは〇〇で起こせる」や「〇〇を使えば再現できる」など否定する作品が多いですが、この作品は、心霊を肯定し、それをうまく使ってミステリーと相まっているので、新しい切り口で攻めてきている印象で、斬新でした。全7作から構成されていて、それぞれ程よい量なので、気軽に読めるかと思います。
あらゆる心霊現象から解決するまでのロジックがしっかりとしているので、なるほどと思うことが多くありました。ただ、衝撃的や驚きの展開というわけではありませんが、スーッと納得したという感覚がありました。
色々事件を紹介していましたが、個人的に思うことは幽霊よりも生身の人間が恐ろしいと感じました。人間の怨念や悔しさ、恨みは計り知れないなと思いました。口で説明すると、ホラーのような印象を受けますが、文章からはそういった恐怖はなく、一つのミステリーとして楽しめました。
登場人物は個性溢れる人たちですが、なんといっても探偵の濱地健三郎のスタイリッシュさが際立っていました。
濱地の過去が気になるところですが、実写化するなら、谷原章介さんかなと思いました。