有栖川有栖のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
有栖川有栖といえば「学生アリス」と「作家アリス」のシリーズが二枚看板であり、互いが互いの小説を執筆しているというパラレル設定である(それにしたら学生アリスは多作すぎ作家アリスは寡作すぎるのだがそういうことを気にしてはいけない)。
「学生アリス」シリーズ初の短編集である「江神二郎の洞察」はもうタイトルそのまんま、謎の大学生名探偵江神二郎が深い洞察を披露してくれる短編集である。
連作短編ではなく、書かれた時期も相当バラバラだが、最初から通して読むと有栖川有栖くんがEMCに入部したところから始まり、1年を経て有馬麻里亜が入部するところで終わる。
短編はきちんと独立して謎を提示して解決しているものの「やけた線路の上の死体」(実質デビュー作)と「桜川のオフィーリア」の間に第一長編「月光ゲーム」の事件が挟まり、「桜川-」以降のアリスには常にその事件が影として差しているので、学生アリスの長編を全部制覇してからの方が多分面白いだろう(ちなみに「桜川のオフィーリア」は「女王国の城」と関連がある)。
有栖川有栖の名探偵は江神二郎にしろ火村英生にしろ背景に謎が多いのだが、江神二郎は、火村英生よりも情が濃い...人間愛が深い気がする。恐らく有栖川有栖という作家が若くして生み出した探偵というのも影響しているが、常に思索的であって、しかしそれをひけらかすでもなく、後輩たちを見守りいざというときは引っ張るという感じ。ああいう先輩が欲しい。
江神とアリスが延々ミステリについて語り合う「除夜を歩く」は、ミステリ研究の入口のようなテイストがある(それにしても望月作の短編は凄まじかった...)。
望月、織田の両先輩も好もしい。あのふたりの掛け合いには味がある。そしてこのふたりが実は事件呼ぶ体質なんじゃないかと思わされる(でもまあ「孤島パズル」を考えるとEMC全員事件体質なんだろうなと思うが)。
そして学生アリスの作品群には一種の青春小説的テイストがどこかある(長編は大学内で事件は起きないのだが)。EMCの面々のやり取りを見ていると「こういう学生時代って良いな」と思わされるし、勿論有栖川有栖が意識したわけではないのだろうが、昭和から平成への世相感をどことなく写した作品でもある。尤もその時代に書かれた作品は少ないのだが。
学生アリスシリーズは長編1作と短編集1作で完結すると有栖川有栖は明言している。早く読みたいものである。 -
ネタバレ 購入済み
それぞれが異なる犯人を思い描きつつ、なかなか判明しない真犯人と暗号の謎、事件にも影響しつつ皆を追いつめるクローズド・サークルなど、思った以上に読み応えあり。
-
ネタバレ 購入済み
錯乱した現場、混乱した被害者・加害者・第三者の立場。前作よりさらに、人の内面にウェイトをおいた謎解きが面白い。秀一のフロートカプセル、優子のライトハウス、相馬の女装癖etc. 例え共感されずとも、その人にとって特別な繭というのはある。守られた世界、あるいは子宮内の楽園。それが動機となっているのが悲しく、冒頭を読み返すと一層哀れだ。
それにしてもアリスが小説を書くのも、意外に重い理由があるんだなぁ。知らないだけで皆いろんなものを背負ってるもんなと暗くなりかけたところで、絶妙に新婚ごっこをやる二人。いいコンビ。 -
ネタバレ 購入済み
いい感じの表紙に、このタイトル、そりゃ一体どんな犯人が出てくるのかとドキドキしちゃう。あとがきでも触れてあって思わず笑ってしまった。確かにママやら妻やらに捧げる犯罪だったら、犯罪者不在のいわゆる人が死なないミステリーっぽさがあるな。今度読んでみようかしらん。
鸚鵡返しや殺風景な部屋とかも変わりネタだったけど、ネタより火村の安楽椅子探偵ぶりに驚嘆。今回は二人で出掛けていって謎解きっていうの少なかったけど、「くるか、アリス?」「付き合えということやな」から受けるコンビの安定感に和む。 -
ネタバレ 購入済み
オノコロ島はトリックがなかなか突飛だったけど、それよりも見所は相手の立場をいかに正しく見抜いて尋問するか、だな。
表題作といい、火村の頭脳の冴えと、繊細な駆け引きの巧さに嘆息するばかり。それに、頑迷固陋だと思ってた野上さんの以外な一面も知ることができて、ちょっと好感が持てるようになったのもうれしい。
ミステリ夢十夜は、ミステリかどうかはさておき、これは西宮神社かしらと思いつつ、福男をかけてめっちゃ頑張る火村の姿を想像して笑ってしまった。 -
Posted by ブクログ
春のキャンパスで一年生のアリスは運命的な出会いをする。
ぽとりと落ちた「虚無への供物」の導きによって。
落とした男は江神二郎。推理小説研究会の部長である。
ということで学生アリスシリーズの短編を読みました!
内容は「日常の謎(といっても血なまぐさい話もあったりする)」とミステリーの哲学的な考察を織り交ぜた青春のエピソード。
名作ミステリーがたくさん登場し、ミステリー本案内としても価値あり。
江神さんがミステリアス。うわさに聞く彼の背景については何もわからなかった。
もう1冊短編集が出るらしいのでそれを待とうっと。
学生アリスのシリーズは、なんだか単なる虚構としては読めないんですよね。
アリスたちが巻き込まれて受ける傷が大きくてつらい。
そういう意味ではこの短編集は事件がわりと軽めでよかったです。 -
Posted by ブクログ
密室。その言葉を聞くだけで、その字面を見るだけで、心が躍るミステリファンは多いだろう。かくいう私もその一人。
本書は有栖川有栖先生が、イラストレーターの磯田和一さんとタッグを組んで、古今東西の密室の名作をセレクトし、イラストを添えて解説したもの。
密室が苦手という友人から、その間取り等が頭に浮かびにくいと言われたことがある。しかし、本書なら、磯田さんの情感あふれるイラストで、密室の雰囲気をたっぷりと味わうことができる。
各イラストには、磯田さんの感想が書き込まれているが、有栖川先生の解説と同じくらい、このコメントが面白い。有栖川先生がベタ褒めする作品を磯田さんはお気に召さないケースもチラホラあり、ニヤニヤしてしまう。
本書はミステリのガイドブックとしても活用できる。20年前、まだ学生だった私は、現代書林版の本書を片手に神保町を渉猟して歩いた。読み返すと、まだ意外に読んでいない作品が多い。また本書から読書の幅を広げようか。ちなみにこの手元の創元推理文庫版には、有栖川先生の直筆サインが入っているのが自慢である。