有栖川有栖のレビュー一覧
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ネタバレ1作目、2作目とロジックに重点を置いたパズラー風作品を上梓していた有栖川有栖の第3長編。
今作はフーダニットではなくハウダニットものであり、本格的なアリバイ崩し作品。
アリバイ講義などもあり、氏のアリバイへの熱が見てとれる。
一つ目のトリックはいわゆる時刻表トリックなのだが、そこに切符という「物」を絡めているのが巧い。とても分かりやすく、切符のトリックには驚かされた。
二つ目のトリックは、秀逸なのは間違いないが、少し予想がついてしまった。「双子を両方殺して死体を移動したりすれば何とかなるんじゃね?」というしごく簡単な発想ではあったのだが、驚きが半減してしまったのは残念。
二つの秀逸なアリバイトリックに加え、探偵の小桑までも双子だったという皮肉的な真実や、「マジックミラー」という象徴的なアイテムなど、様々な趣向が凝らされており、読み応えがあり非常に完成度が高い。
有栖川作品の中ではあまり知名度が高くないように感じるが、なかなかの秀作。 -
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ネタバレもう30年近く?もの長きに渡って続く火村シリーズですが、時代の流れに乗って最新機器なども自然に取り入れ、読むごとに火村&アリスについて新たな発見ができることに感嘆します。私の中で、この二人のコンビを越えるホームズ&ワトソンコンビは、今後も現れないような気がするなぁ。
火村のSOSから始まる「船長が死んだ夜」。犯人を罠に嵌めるやり方は、このシリーズには珍しいような気も? 船長の寝言と犯人の名前とのつながりは、少々苦しいというか、これをやりたかったがための「船長」だったのかなぁ、などと野暮な勘繰り……。
準レギュラー二人の登場が嬉しい「エア・キャット」。幻の猫が現実になる日も近いのかな? どうでもいいですが、マスターのキャラが濃かったので、彼も準レギュラーだったけかと錯覚しそうになりました(笑)
表題作「カナダ金貨の謎」。筆者は倒叙形式も書くのが上手い……! 解説にもありましたが、犯人視点からの火村&アリスの描写が、読者の目にはとても新鮮で、愉快ですらありますね。
そしてこのコンビファンには垂涎ものだろう「あるトリックの蹉跌」。あったあった、こんなエピソード、と懐かしみつつ……なんとその小説の「トリック」が明らかになる日が来るとは! 手書き原稿の付け足しの痕跡や、アリスの発言やリアクションから推理を組み立てる学生火村がスマートです。若い二人のやりとりがよそよそしいのが堪りません(笑)
まさかの「逆〇裁判」としか思えないゲームの登場に驚かされた(笑)、「トロッコの行方」。序盤のハイになっているアリスの「聞こう!」と、火村の「黙って聞け!」に、電車の中で噴き出しそうになりました。今巻、このコンビ絶好調ですね……。 -
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ネタバレ作家アリスシリーズは、アリスと火村先生のやりとりにいつもほっこりさせられるバディものというイメージが強いけど、偶に驚くほど心にズドンと重いものを落とす作品がある。
人の良い顔をして裏では何をやっているか分からない、そんな犯人たち。
情に訴えられずに、冷徹な瞳でその罪を暴く火村先生。「異形の客」ではその冷徹さの中に犯人に対する嫌悪感と怒りが見えてぞくりとしました。
「ホテル・ラフレシア」のなんとも無情なラストにも火村先生の優しさが見えます。
体調不良で取り壊し間際の宿に泊まった表題作のアリスと、「201号室の災厄」の高級ホテルでボコボコにされる火村先生の対比がかわいそかわいい。
久々に目にしたシャングリラ十字軍の今後の展開が気になります。 -
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ネタバレまさかの脱出劇!(笑)
これが見事だよね。信長がかっこよすぎて、はわわってなった。
青春だ~。やっぱりこの関係性が好き。
見えているけど立ち入れない洞窟の奥に入るところでアドレナリン全開!
マリアとアリスが再会するシーンは、ぐっと来た。
これまで3作読んできたけど、初めて最後の追及シーンで泣けなかった。
江神さんの論理的推理は見事だけど、この宗教団体に不信感を抱いていたからなのか……。犯人が結構振り切ってて怖さのが勝った。
あと檀上に上がって張り詰めた空気の中頓珍漢なことを言うモチに、アリスがこの先輩をもっと好きになったって言ってるのにちょっと笑った。
あと、宗教団体の秘密も知ってなるほどなあと思った。
そこにつながる?(笑)
長編5作と短編2作で完結らしいけど、早く出てほしい気持ちと完結してほしくない気持ちが錯綜している。
でも絶対に生きているうちに完結してね、有栖川有栖。 -
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ネタバレ予言がテーマの短編集。
表題作の前に差し込まれている「推理合戦」が好き。掌編だからすぐ読めちゃうんだけど、ちゃんとアリスが推理してて好き。
というか、朝井さんと火村先生に対抗して現場までいっちゃうアリスが可愛い。
この話のために買っても惜しくない(笑)
「助教授の身代金」は昨今の誘拐事件事情(?)がよく分かる。この事件では誘拐というか、なんというか、真犯人の歪んだ愛と性癖の結果というか…。
犯人は怖かっただろうな、全然意味がわからなくて。
「ABCキラー」はドラマ特別編の記憶朧気にありながら読んだ。予告状の犯人が一番不気味。そいつも捕まえて欲しいよ火村先生。
そして表題作。
予言の裏の切ない想いが引き起こした殺人事件。
占いという曖昧模糊のものを根底としながら、あくまで推理は論理的。
げに不可思議は人の信じる思いかな。
そしてこの話の見所は、アリスが火村先生との想い出を第三者に話してたら1時間も過ぎたという点ではないかと思うのです。その直前の火村先生の悩みへの想いの部分も捨てがたいけどね。 -
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ネタバレーー
「国名シリーズ」と云えば日本ではアリス・アリスガワなんですよ憶えときな!
安心と信頼のミステリ、なんてものがこの世にあるのならそのひとつ。
クイーン読んでたら読みたくなるというのは必定で、前回『オランダ靴』でバディということばを出したけれど、個人的にコンビとしては江神×アリスよりも火村×アリスのほうが好み。付き合いの長さみたいなものが染み出しているから、というのもあるだろうけれど、掛け合いだとかお互いの、懐に入っている感じなどが安心して読んでいられる。
一編の小説として、ミステリとして、となるとまた変わってきますが。
学生アリスシリーズだと、掛け合い担当は別に居るからなぁ…そのせいってわけじゃないけどあちらで一番好きなのは『孤島ゲーム』である。なんか申し訳ないですねお二方。
というわけで、「あるトリックの蹉跌」は是非。作家アリスと火村英生の貴重な学生時代を覗きつつ、驚きの事実をどうぞ。
ふたりのカップリング感 (なんだそれ)を楽しみたいときは「トロッコの行方」。わたしはコマチさんと同意見です。欲張りで自己満足したがりなんだよな要するに。
もちろん中編ミステリとしての出来も素晴らしいです。ジェットコースター的というか、この場合もちろんトロッコのイメージなんだろうけれど、カチリとポイントが切り替わってからのスピード感が凄い。
表題「カナダ金貨の謎」は国名シリーズの割に少しトリッキーな倒叙型ミステリ。しかしそれが、諧謔的な有栖川さんの筆致にとてもマッチしていて良かった。
安定感も読み応えもある一冊。☆3.6 -
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火村英生と有栖川有栖のコンビの中の、国名シリーズ、文庫化最新作。
安定の静かな面白さ。描写の適格さ、丁寧さ、柔らかさ、それを含んだわかりやすさ。今回は短編小説。
【船長が死んだ夜】
火村が免停をくらったために、アリスに運転手を頼んでの小旅行の終わりに出くわした殺人事件。もと船長が殺された。犯人は失われたポスターが必要だった人。最後のアリスの気づきが秀逸。
【エア・キャット】
朝井小夜子とのバーでのマジックショーから連想された最近の事件。猫の名前と、文豪の文庫本がぎっしりの本棚の中の新しい文庫本、そして三匹の猫たち。
【カナダ金貨の謎】
表題作。
カナダ金貨を幸運のお守りとしていつもつけていた元ラッパーの男が殺された。
彼を殺した男と、アリスの視点それぞれで語られる物語。
自分の影を殺したって、自分が薄れるだけかもしれない。
【あるトリックの蹉跌】
大学時代の火村とアリスのお話。
【トロッコの行方】
トロッコ問題について質問してきた学生たち。
火村先生の本心の答えがいい。
ある女性が歩道橋の一番上から突き落とされた。彼女が残した言葉から犯人を絞り込んだが、そこから動けない警察が火村英生に助言を求めた。
トロッコが止まるときにひき殺したのは。
どれも面白かったけれど、トロッコの話が特に面白かった。
火村さんの答えがいい。誰も自ら手を下せないという火村さん。
それを分かっているアリスの二人が好きだ。 -
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ネタバレミステリの代表ともいえる「密室」について、ミステリ作家の有栖川有栖とミステリファンの建築家・安井俊夫が対談形式で語り合っている作品。
ミステリ作品からみる「密室」の定義や、建築からみる「密室」の定義の違いのほか、なぜ「密室」がミステリの原点ともいえるのか、というところまで丁寧に説明されています。
文章も平易で、コアなミステリファンでなくとも楽しむことができる一冊で、図や写真なども用いて解説してくれているところも丁寧でわかりやすいです。
さらに、現代の「プライベート空間を外界から隔離して、自身の安全・安心な環境を確保しようとする」という風潮は、「プライベートな空間を破られるときの不安や嫌な感情を想起させる密室殺人を恐れる気持ちを強くする」ということにもつながっており、すでにトリックは出尽くしたとされる「密室」を扱う作品が今もなお根強い人気を博している原因でもあるという分析は説得力がありました。
2021年は、世界で初めての密室が描かれた(というより世界初のミステリが密室殺人だった)『モルグ街の殺人』が出版された1841年から180年。
ほぼ2世紀にわたってエンタテインメント作品の代表格として世界中で愛されている「ミステリ」という世界の奥深さにも触れることができたように思います。
いままで有栖川有栖の作品をしっかりと読んだことはありませんでしたが、これを機に手に取ってみようかと思います。