森博嗣のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
〈期せずして生まれてくる僕たちのような子供を、普通の大人はどう思っているのだろう? どんなふうに見ているだろう? 仕事とはいえ、戦争で死んでいく子供たちのことを、彼らはどう自分の人生の中に組み込んでいるだろう? 何を受け止めているのだろう?〉
子供のまま大人になれない永遠の生命を持つ「キルドレ」として生まれたカンナミこと〈僕〉は、戦闘機パイロット。プロのパイロットは大人ではなれない。新しい配属先で勤めることになったばかりだ。前任者は死んでしまったらしい。大人たちは〈僕〉たちのことをどう思っているのだろう。子供のまま死んでいくことは、大人になってから老いて死ぬことと、どこがどう違うのだろう。
永遠を生きる子供たちを軸にして、人間の死と生に踏み込んでいく森博嗣の代表作のひとつです。文章といい佇まいといい、老若男女もちろん誰が読んでも楽しめると思うのですが、もしも十代前半くらいで読んでいたら、人生が狂わされていたかもしれないな、とも感じてしまったので、十代のうちに読んでおくといいのかもしれない、とも思いました。 -
Posted by ブクログ
ついにシリーズを読み終えてしまった。
いろんな考察も読んだけど、どれもしっくり来なくて、僕なりの感想を書きます。考察ではないです。
シリーズの最後の時系列なのだとのことだが、最初に執筆した作品なので、比喩や言い回しに癖が多めにあった。まずそれを楽しく読んだ。
文庫化したときにすぐ読んで、押井守監督で映画化されることを喜んだ。ぼくはポーランドに行ったことがあって、映画のシーンで建物や言葉にポーランドを感じた。映画は最高だった。
シンプルな言葉で複雑なことを書くのはとても高度な技だと思う。
熟達したダンサー、スポーツ選手、ミュージシャンなど誰でもそうだが、とても高度なことを簡単そうにやっているのは、そこに果てしない努力と、努力を努力と思わない精神がないとできない。
何者にもならず、
理解を求めないで、
拒んで。
判断せず、反射だけをして。
僕はだれも殺さないけど、
僕が買った掃除機を作っていた会社は、
軍事に使う物品を作っているかも知れない。
センサーとか、照明とか。
それは僕がだれかを殺していることになるんだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ混雑や行列に加わる人々を哀れで可哀想だと評する。自分の価値観・美意識にそぐわないと。このシリーズにおいて、著者はあくまでも個人的な意見と断りを入れて少々刺激的な発言をしているので、読者としてはカチンとくることもあるのだが、この意見に関してはちょっと擁護派を自認する。
このシリーズを読むときには、著者の居住地がどこか推理するのも一つの楽しみにしている。今回はいろいろなヒントが得られた。鉄道模型を走らせるほどに広大な敷地を持つことはことあるごとに書かれていたので、どうも日本ではないのではないかとあたりは付けていた。この著書では、「TVは見ない(地上波は電波が届かない)」と書かれており、さらに、「日本は初夏だけど、当地はまだ寒い」と書かれていたので、日本じゃないことは確定的。ヨーロッパのどこかだろうか?私の頭にはとある国が候補として浮かんでいるが、引き続き推理したい。
それにしてもDiscommunicationが和製英語だとは知らなかった。 -
Posted by ブクログ
これまでのS&Mシリーズの中で1番おもしろかったです。動機は自分のような常人には理解しきれない部分はありますが、芸術家やアーティスト(マジシャンをこのくくりに入れるのであればですが)の探究心やこだわりには凄まじいものがあり、だからこそ多くの人の心を動かすことができるのかなとも感じました。幻惑と妄想の違いについて犀川先生と西之園君が話す場面もとても印象的でした。
話の本筋からはそれるかもしれませんが、執筆当時はおそらくほとんど世になかったであろうSNSの展開について予測(もはや予言)している部分があり、森先生のすごさが改めてわかりました。 -
Posted by ブクログ
くそっ!!年末にブルシットジョブのせいで友達との飲み会に遅れた!仕事にやりがい感じられてない未熟者なのでこういうことがあるととても不服に感じる。
到着まで時間があるので移動しながら感想を書くことにする。
『やりがい』の考え方(やりがいの定義?)が個人的には一番刺さった。
『やりがいをもって仕事をしましょう』みたいなことを言うけれど、著者の考える『やりがい』の定義に従うとやりがいのある仕事なんてのは幻想だってことがよくわかった。
(もちろんやりがいをもって仕事をしている方はたくさんいるだろうけどね)
自分はいまのところ仕事にはやりがいは持ててないけど、それ以外のところでやりがいを持ってると自信をもって言えるな。
岡本太郎ばりに自分のスジを通す生き方をする。
自分のスジに対してあーだこーだ言われたときにやりがいを感じる。
そんなひとにわたしはなりたい。
-
Posted by ブクログ
スカイクロラシリーズの長編5弾。
自分が誰か分からないという僕が、病院から抜け出して、女のところにいって、遠くまで逃げて、またそこで別の女に会って、匿われて。。という逃避行の物語。自分が誰か分からず、相手も誰かわからないままなのに、一切の不安はなく、空を見上げると、そこに成すべきものがあると思う。思うというか願うに近いような感じ。
ここからスカイクロラに繋がるということなのだけど、4つも長編をまたいで最初の物語に繋がることができる作家の技術に驚く。
クレイドゥザスカイはとくに抽象度が高く、どこであるとか誰であるという意味を捨てて、事象がかかれる。
シリーズを時系列順に読み返しているが、昔読んだときのことを一切覚えていなかった。驚いた。僕も多分、誰が何をしたかについては興味がないのだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレみんな仲良く大集合のご機嫌な一冊。
なんと言ってもVシリーズが世界で1番すき。
なんて呑気に読んでいたらそうだ!この年でした。すっかり忘れていた。
わからないのに全てわかるような。すごい。としか言えない。全てずっと正しくて、だからなのか、としか言えない。優しさと愛情と慈しみを感じた。言葉と行動から。
最近悶え苦しみながら断捨離をしており、自分には何が必要か考えたらやっぱり森博嗣の作品だという結論に達した。寄り道もいいけどさ。
別に無理に捨てなくても良いのでは?と言ってくれた友人に拍手。
プラトンの饗宴は愛読書なのでもうそれだけで鼻血出そう。
欠点も多いけれど人間くさいキャラクタたちと絡めて四季の内面の変化を描く。無駄なく綺麗。生きるとは美の本質を認識することとプラトンは言ったとおり、美しい話の展開。こうやって美しいものを見ることでイデアに近づいていく。生きる希望はもうここにしかないのではないかというほど、まだ少しやぶれかぶれだ。それでも恐怖を感じられるほどには幸せだ。
オリンポスの神々は親殺しを経て力をつける。
オイディプスもこのモチーフがあるせいか、男性の自立という意味づけをされがちですが、そうじゃなくて神様に近い存在にとっての自立だから性別など関係ない、とする目の付け所が素敵。
ちゃんとギリシャ神話の味がしました。
私から見たら四季はとても愛情深い人で、なぜなら自分と他人は別の人格だとわかったうえで歩み寄ろうとするから。私たちは、特に近いバックグラウンドを持ったもの同士は、当たり前に共感を強要しがちで、それは暴力にも似ている。海外に暮らし、第一言語でない言葉で不自由ながら人と関わると優しくなれる気がする。自分を否定せず、他人も否定しない在り方を模索し続けるから。
最初で最後かもしれない、完全にわかりあうという瞬間。そしてすぐに距離ができるという現実。錯覚かもしれないこの愛に満ちた時間があったから、四季は愛情深い人になったのかもしれない。これがあれば1人で生きていける?のところが大好き。何度も読み返す。
夏は必ず過ぎ去ってしまう
夜更かしして伏線回収してしまって寝付けない。ここ7年くらいで一番のびっくり。