あらすじ
「貴殿のお命をいただきに参上した」トビヒと名乗る男は、炭焼き小屋で眠っていたゼンを戸外へ連れ出すと、面差しを確かめ、そう言った。
敵は多勢、ゼンは闇を駆けた。だが逃げた先は崖縁。そこで待ち受けていたのは、これまでに出会った誰よりも強い侍だった。命を賭けるに値する相手、ゼンは男に敗れ、谷底へと落下する。
姉弟に助けられ命は取り留めたが、ゼンは記憶と刀を失っていた。「ヴォイド・シェイパ」シリーズ完結編。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ボイドシェーパーからはじまる5つの連作長編の完結編んである。禅という若い剣客の自分探しの道中の物語であり、成長の物語でもある。禅は、日本人が理想とする武士を体現する。強さ、やさしさ、潔さ、心の平静安定成熟、無欲、利他の心。一方で禅は武士の弱みである(とおそらく筆者が考える)「盲目的な忠義」からは自由である。5つの物語を読むことは、禅の道中に同行する喜びであり、至福の時間であった。たぶんそのくらい禅のことが気に入ったのだろう。一方で周囲の武士が見せる「盲目的な忠義」の非生産性・非合理性に今の日本社会の問題もみる。日本人の強さに武士道敵精神があるとすればこの盲目的な忠義にその弱さがある。官僚・小役人代表される「ルール」や「前例」からのがれられない姿勢や価値観がいまもある。オーストラリアに住む数学者である筆者ならではの視点と思う
Posted by ブクログ
アカシとの対決、アカシの倒れる描写に痺れた。めちゃくちゃ良いクライマックス、臨場感、風景が浮かぶ。
戦国時代の頃の話っぽいけど、登場人物皆カタカナで書かれてるせいか不思議と時代劇感を感じず(古臭さを感じず?)読めた。
ラストのゼンは脱け出しただけなのか、もう戻らないつもりなのかw
剣豪哲学小説、面白かった!