森博嗣のレビュー一覧
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今回で読むのは恐らく3回目になる。主人公である萌絵の友人である杜絵の家族に起きた不可解な誘拐事件のお話。意外な結末に、3回目でも驚かされて楽しませてもらった。トリックというよりもその真相に辿り着くまでの登場人物の会話が面白い。この話では犀川先生よりも、萌絵と萌絵の叔母である睦子の会話が印象に残る。睦子の余計なお節介に怒り捲し立てる萌絵に対して、騙し討ちした睦子は反省する事なく、逆に「今回は見逃すけど、今のは言い過ぎ」とキッパリ言ったり、別れ際には服装の事を実は気にしてる素振りを出してお茶目な一面を見せたり、完全には憎めないキャラクターだと改めて思った。登場人物の会話に知的さとユーモアさが混じってて、こんな会話に参加したいなぁと思わせてくれる。
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最も印象に残ったのは、感情をサインカーブに例えた考え方である。
感情はプラスとマイナスの間を波のように動き、最も変化が激しいのは、喜びや悲しみのピークではなく、プラスマイナスがゼロになる地点だという。逆に感情が頂点や底にある時は、カーブは一度平らになる。
これは日常の実感にも重なる。何でもない平穏な状態こそ、次の感情へ大きく動き始める可能性を持っているのだ。
孤独な時間は、この微妙な感情の変化を感じ取るための時間でもある。自分の気持ちを固定的に捉えず、常に変化する波として眺めることで、感情に振り回されず、少し距離を置いて自分自身を見つめられると感じた。 -
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生きたいと願う自由と、死にたいと願う自由と
Gシリーズ4作品目(まだ3冊目を読んでいないのだけど、、)はバスジャック事件に巻き込まれるというサスペンス展開、その中での登場人物達の語りに生き死にの意義を考えながら、確実に進むバスの目指す先は希望であるのか、絶望であるのか。ハラハラドキドキしながら読み進めることができた。
作品を通しての違和感を抱きながらも読み進めた先にある今作の肝となる構成トリックは語ることはネタバレになるが故難しいが、私はこういう気付かされるトリックはとても好きで、思わず前を読み返すこともあった。登場人物達の今の現実に対して考えている主観や視点が、第三者の視点から見るとどのように見えるのか、その解き明かしの面白さはGシリーズの中では今のところ一位かなと感じる。
作品の根幹を流れる生きることの目的や死ぬことの理由、そして罪を犯す動機といった人間の心の中にフォーカスを当てつつ、物語としてはあって欲しい「筋道」や「ロジック」、「一貫性」が現実世界では「なんとなく」とか「後付け」だったり、何か読み手が、大衆が納得するような「物語性」を演じているだけといった、ある種の物語作品として触れづらい点にも触れながら、心の様相を描写するのは流石だなと思った。
段々とシリーズに慣れてきて最初はあまり面白味を感じていなかった新しい登場人物達にも読み手としての推しポイントを見出せるようになってきた。ただやっぱ全体を追っている身としては西之園さんの心の、振る舞いの成長には毎回嬉しく思うところが多い。 -
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ネタバレS &Mシリーズの3作目。
1.2作目はトリックが全く解けなかったが、今回は少しだけ推理が合っていたので嬉しかった笑
オリオン像が消えたわけではなく、逆の方角を見ているのでは?という所までは推理できたが、センターホールが回転したり、それを利用して殺人をした所までは思い付かなかった、、
赤と青の照明切り替えられるんかい、、
トリックはもちろん、本作は人間関係も面白かった。
萌絵のクラブ仲間が犀川の部屋に押しかけた時、「(萌絵の心のヒビについて)いったい誰が測っているんだ?ときいてやろうかと思ったが、度胸がなかった。汗が出ているかもしれない。」と犀川がタジタジなのは笑えた。最後の3.3.8.8.で24を作る問題は犀川は解けなかった振りはしなかったと思うなぁ。
ただ登場人物が多いのと、家系図がごっちゃごちゃで理解が難しかったのが個人的に少し読みづらかった。 -
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冬はそう、「四季」の温もり
四季シリーズラストの作品、そして「四季」という一人の天才がどのような人物だったのか、どこから生まれ、どこへいくのかを書き表した作品。時系列も今までのシリーズとは違い、また過去や現在、未来が交錯するような複雑さ。
ただ純粋に四季という一人の女の子の中にある生きていくのことの縛りと死により得られる自由、人を天才だの凡人だのと定義づける社会の尺度といったものの中で、彼女の中にある人間との間に生まれる純粋な温もりを追い求めているように感じる。
彼女の頭の中では様々な実証実験も様々な結論づけも可能。そんな中で彼女が導き出す結論は、生きているということは何なのか、読んでいく中でもぐるぐると読み手の中で駆け巡り複雑、ただその複雑さを体験することこそが我々読み手が四季という一人の人間を関係性の中で自分の中に定着させるか、そういった自己との語り掛けがたくさんある。
一人の女の子として、一人の女性として、一人の母親として、そして一人の人間として、四季という人物が、何度も何度も考え、何度も何度も想定し、何度も何度も巡り合ってきた運命の坩堝からラストシーンどのような選択をするのかが見ものであり、またラストシーンの純粋な温かさは「人間がお好きですか?」という問いかけに対する、彼女の「人間らしさ」が感じられた。
「人間離れ」している天才、「猟奇的な」側面をもつ天才、「血」の繋がりに対して彼女が辿り着いた一つの選択には彼女の中に流れている「血の温もり」を感じざるを得ない。