日暮雅通のレビュー一覧
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ヴァン・ダインのデビュー作。
好きな順に読んでしまうので、シリーズものなのにデビュー作が最後になってしまった(^_^;)
でも「最初はこんな感じだったんだ!」と後から知るのも結構楽しい。
〈名探偵ファイロ・ヴァンス〉が好きになったのは心理学的推理をするところ。
バークリーの〈名探偵シェリンガム〉も同じく心理学的推理。
バークリー作品の解説によると、アメリカでベストセラーになっていた同じ心理を扱うヴァン・ダインを意識していたのではと書いてあった。
次第に心理的なものを扱わなくなったヴァン・ダインに対して、バークリーはとことん心理的なものを追求していったらしい。
物的証拠にこだわる地方検事マーカムとヴァンスのやり取りが面白い。
「人の性質はみんな違うものだよ。時としてどんなによく似た人間がいるように思えたとしてもね。」
ヴァンスは犯人の心理についてわかりやすく説明してくれる。
初回なので紹介が長いのと、他と比べて事件が地味に感じた。
これで創元推理文庫のヴァン・ダイン新訳版4冊は読み終わってしまった。
1番好きなのは『カナリア殺人事件』かな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「メタバース」という言葉を作った本ということで。
30年前にこんな世界を、という感想をよく見るが、まあ確かにそうなんだが、半世紀生きている人間からすると、30年前にはネットはあったしな、と思う。日本ではまだまだパソコン通信全盛時代でインターネット普及はしていなかったが、すでに存在はしこれから広がっていくだろう、という情報はあった。ハイパーメディアクリエイターという肩書きの某人が某大学でそう話していた。
仮想空間はルーカスフィルム社のHabitatというものがあったことを考えると、仮想空間のアイデア自体はそんなに驚くものではないと個人的には考える。ただ、それを洗練させ普及させた功績は大きいと思う。それにより構築する世界の具体的イメージが共有され、実現の手助けになったのは確かだと思う。
上巻★4なのは。
基本的的な世界観は好み。
サイバーパンクな登場人物や情景、完成された仮想空間描写、連邦府のディストピア感、近未来な世界情勢図(主人公の誕生年から考えると、おそらく西暦2000年くらいだ。どこかで明記されていたらすみません)、現実世界に影響を与えるバーチャル空間のドラッグ、物語のスピード感、各要素が好みなだけではなく、その盛りだくさんの各要素が矛盾や諍いを起こさず作品を構築している。素晴らしい。
下巻★3なのは。
まずは、舞台や要素は間違いなくサイエンス・フィクションなのだが、バトル・シーン、シュメール神話のくだりなど、よく描かれているとは思うのだが、自分的にはやや長い。加えてレイヴンとY・Tのラブシーンは要らない。眠らせる理由付けが必要だったのかもしれないけれど。
一番は、スノウ・クラッシュがなんとなく霞んでしまったように感じたこと。スノウ・クラッシュとは何なのか? の回答は良いと思うのだが、何だろう、存在感が薄れてしまって、勿体無い気がしてしまう。ジャニータが利用しているんだけど、最後が現実世界だったからかな。
一方で、さまざまな要素をしっかりと描いている点、にも関わらず世界を破綻させていない点などは作者の力量の為せる技なのだと思うし、作品全体のクオリティを上げる要因となっているのだと思う。
細かいところだが。
レイヴンが恋に落ちるY・Tが15歳というのが少し気になる。
ロリコンか。
解説にあったDa5idの考察。
5はローマ数字のVなので、Da5idはDavidであると。なるほどなー。
こういう細かな仕掛けは色々とあるような気がする。気づくとこの作品へのリスペクトは深まりそうだ。 -
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ネタバレヴァンスが最後まで犯人や推理を明かさない、まあ推理小説でよくある探偵の沈黙とも言うべきことに、しっかりと理由があるのが好ましい。物語として成立する推理小説であり、ただの謎解き小説ではない。
フーダニットにおいては、絞り込むことは容易いものの自分では犯人を当てられず、しかし無理のない筋立てになっていて良い。
厳しめに☆3としたのは「また読みたい!」と思うほどにはのめり込めなかったためであり、引っかかった点はなかった。ヴァンスという探偵が私にとってやや魅力に欠けるせいもあるかもしれない。また長編小説特有の中だるみはあまりないが、集中して読み切れるほどではない。ミステリ史に残る名作とまではいかないが、読んで損はない作品だろう。 -
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このシリーズ、アイリーンと友人になり生活を共にするようになったネルが主人公なんだけど今回はネルの昔の知人の事件に巻き込まれ、その知人はアフガニスタンでワトソンとも知り合いで…という話。アイリーンとホームズとの関係性をアイリーンよりのネルから描く描写がホームズに対して辛辣でよい。今回ホームズ要素は少ないけれどホームズという人間の存在がアイリーンにおいて相当大きいのがわかるシーンもあるし、ホームズもワトソンも出てくるのが良い。物語としては山場がモリモリしてるわけでもトリックが目新しいわけでもないのでアイリーンと旦那のゴドフリーとネルとの掛け合いとネルと知人の恋についてをずっと読まされている感じ。このシリーズのアイリーンって活発で好奇心が強くて時々子供っぽくて、いわゆるホームズパスティーシュに描かれるホームズとキャラ設定が同じなんだよね。原作のアイリーンがそんな女性だったのかについては原作の描写が少ないのでわからないけれど、このくらい活発なアイリーンと共にいるゴドフリーなかなかに大変そうだよね。
原作は全8篇あるらしいけど、2から3までの翻訳に相当時間が開いたことを考えると続きの翻訳はないのかもな。ホームズが出ないと売れないということもあるのかもしれない。昨今、翻訳も相当厳しいところがあるだろうし(出版の金銭的な面で)。でも続きが読みたいところです。小説的な面白さは可もなく不可もなくの星3。 -
Posted by ブクログ
新訳が出たということで再読。とは言っても、高校生のときに読んだのだが、どんな内容だったか全く覚えていなかったので、実質的には初読と同じ。ただ一つだけ、本文が始まる前に「有名なグリーン家殺人事件があったころのグリーン屋敷」という版画が挿入されているのだが、この屋敷の立派な構えや聳え立つ尖塔については鮮明に記憶が残っていた。
下肢が麻痺してしまった未亡人、亡くなった家長の遺言に縛られ遺産を相続するためには四半世紀はこの屋敷に住むことを余儀なくされている4人の子どもたち、そして養女。これらの面々がいがみ合って暮らしていたグリーン家で、次々と家族が殺されていく、果たして犯人は家族の中の誰かなのか、そしてその動機は、手口は?というもの。
探偵役のファイロ・ヴァンスのペダンチックさが鼻持ちならないということは良く聞くが、確かに捜査陣の側からすれば「あんたの言っていることが捜査と何の関係があるのだ」と言いたくなるのは分かるものの、解決と全く無関係なことでもないので、読んでいてそれほど嫌な感じはしなかった。
次々に関係者が殺されていくので容疑者が絞られてしまい、犯人自体の見当はだいたい付いてしまうのだが、犯行方法の詳細は分からなかったので、最後まで面白く読むことができた。
創元推理文庫よりヴァン・ダイン新訳の刊行が2010年に『僧正』から始まり、『ベンスン』2013年、『カナリア』2018年、そして本作『グリーン家』が2024年、一応「S.S.ヴァン・ダイン全集」と銘打たれているが、果たして12作全部出るのだろうか。