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Posted by ブクログ
個人的に極めて好きな作品。
■ファイロ・ヴァンスの考え方
一流の美術家は20人に同じ題材で絵を描かせても、どれが誰が描いた絵かを見極められる。それは、その人物の特徴が絵画には現れるもので、二人として同じものはないから、という理由による。同様に、犯罪にもその人物の(心理学的)特徴が現れる。つまり、唯一無二の「その人だ」という痕跡が残る。
故に、それを追えば犯人は特定できる。逆に、それを追わずに物的証拠や状況証拠を追っても意味がないどころか誤った方向に向かい冤罪を生みまくることになり危険。
ただし一方で、
「裁判で有罪とするための確たる証拠」という意味では「心理学的根拠」では意味がない。かと言って物的証拠ではヴァンスが述べるように「物的証拠なんかでは犯人を特定できない」のだから、それも意味がない。
やるなら、心理学的根拠、手法を用い犯人を特定した後、「やっぱりね」という物的証拠を見つけ出す、という順になる。
という、この考え方とそれを踏まえた作品の作りになっていること自体が非常に好み。
「誰が犯人か」とか「ヴァンスの考え方は本当に正しいのか?」とかは別にどうでもよく、この発想の仕方が非常に好み。
■アントニイ・バークリー
自分の最も好きな作家の一人にアントニイ・バークリーがいる。
バークリーも同様に「心理的要素が重要」と考え、『毒入りチョコレート事件』を境に後期になるにつれて本格を捨て心理的側面を重視するスタイルになる。
一方でS・S・ヴァン・ダインは初期の方が心理的側面を重視し、後期になるにつれてその特徴がなくなってしまう、とのこと。(ヴァン・ダインの後期はまだ読んでない)
S・S・ヴァン・ダインもアントニイ・バークリーも他の同時代作家とは異なるベクトル(心理的側面)から推理小説を捉え、それが作品に見事に反映されている、という部分が共通していて、その作風が自分に合っている、と感じた作家。
Posted by ブクログ
著者と相性が良いのか、ここまで読んだ長編3冊はいずれも意外なほど期待値を上回る読後感(そもそも期待値があまり高くないということもあるかもしれないが)。ファイロ・ヴァンスとDAマーカム、ヒース部長刑事などの丁々発止ながら品位を保とうとする掛け合いの好感度が高いのは、透明人間スマート・セット(笑)ヴァン・ダインがちょこちょこ挟む個人的感想によるところが大きい気がする。あまりに黒子すぎて不自然という感想ももっともだがが、ワトソン役が2人以上いる中でさらにもう1人となると収拾つかなさそうなのでこの異様な沈黙が都合良いのでは。後日談で、ちょい役の気の良いミセス・バニングを「私はなぜか、いつ見てもあの女性を好ましいと思う。」と評し裁判に巻き込まれなかったことを喜ぶ優しい性格が好き。ファイロ・ヴァンスについては、1990年代頃の有名なミステリ評「夜明けの睡魔」で、あからさまにやっかみながら一回転して作品は褒めていたようだが自分は結構この衒学キャラクターを楽しんでいる。「高潔な人物てのは、いわば自分の欠陥をさらけ出す勇気がない人間のことだ。」(P123)など、強引だし当然異論はあろうが、見落としがちな真理の一部を突いていて感心させられる。またマーカムの概ね大人エレガントなツッコミや受け答えは勉強になり、真似してみたいと思う。容疑者や刑事の姓名が変化に富んで面白い。
本文の引用が長いが思い入れが感じられるあとがきの充実度に星を1つ増やした。ガーデン殺人事件を読んで、今まで古い翻訳は敬遠していたけれど味があっていいなと思っていたところで「全長編を個人全訳された井上勇氏」の経歴にじんと来るものがある。この新訳も可読性向上させつつ、カジュアルになりすぎず一世紀前の雰囲気を損なわないようで好感が持てる。
Posted by ブクログ
物的証拠や状況証拠・容疑者の自白・アリバイといった、犯罪捜査において重要視されがちなものはそのまま信用せずに疑い、犯行の手口や現場を心理学的に検証して犯人を突き止める。教養と才気に溢れた富豪ファイロ・ヴァンスの探偵方法は現代でのプロファイリングに似ている。
衒学的で、相方に自分だけが知る真相を仄めかす言動は、後世の作品や探偵たちのキャラクターに大きな影響を与えていることは間違い無いだろう。とは言え、たまにぶん殴りたくなるほど鼻に付いたが。
探偵“ファイロ・ヴァンス”が仮名で、本作は彼の友人で仕事上のパートナー“S・S・ヴァン・ダイン”による記録であるという設定がおもしろい。作者の影が巧みに消えている。
Posted by ブクログ
綿密に計画された犯罪は個の心理から構築される唯一無二の芸術品…心理の追跡は物的証拠や状況証拠よりも尊い…
なんと心理探偵は1926年に既に誕生していたのか。ポアロが心理云々を重視するようになったのは確か中期あたりから(?)だし、ロジャー・シェリンガムとはどっちが先なのだろう。
黄金時代の幕開けと称されているが、幕開けから既にこんなに皮肉られまくってるのジャンルとして煮詰まりすぎだろう。やや弱めの多重解決要素まであるし。今や英国のバークリーと共に米国では忘れ去られた悲しき作家らしいが、いまだに本格が根強い孤高の島国ではいつまでも読まれ続けられるのではないか。
Posted by ブクログ
ヴァン・ダインのデビュー作。
好きな順に読んでしまうので、シリーズものなのにデビュー作が最後になってしまった(^_^;)
でも「最初はこんな感じだったんだ!」と後から知るのも結構楽しい。
〈名探偵ファイロ・ヴァンス〉が好きになったのは心理学的推理をするところ。
バークリーの〈名探偵シェリンガム〉も同じく心理学的推理。
バークリー作品の解説によると、アメリカでベストセラーになっていた同じ心理を扱うヴァン・ダインを意識していたのではと書いてあった。
次第に心理的なものを扱わなくなったヴァン・ダインに対して、バークリーはとことん心理的なものを追求していったらしい。
物的証拠にこだわる地方検事マーカムとヴァンスのやり取りが面白い。
「人の性質はみんな違うものだよ。時としてどんなによく似た人間がいるように思えたとしてもね。」
ヴァンスは犯人の心理についてわかりやすく説明してくれる。
初回なので紹介が長いのと、他と比べて事件が地味に感じた。
これで創元推理文庫のヴァン・ダイン新訳版4冊は読み終わってしまった。
1番好きなのは『カナリア殺人事件』かな。
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