日暮雅通のレビュー一覧
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ネタバレ今作は見立て殺人の原点らしい。
コックロビンを模した殺人、その後もすずめなど、犯人もマザーグースを意識して展開していく。
終盤は犯人を引っ掛けてから推理披露まであっという間の展開で面白かったのだが、そこに辿り着くまでが長かった。序盤はコックロビンの歌の話でまだ読みやすいのだが、中盤は登場人物の会話が飛び交いながら、チェスや数学の話であまり頭に入ってこず。なんとなく読み進めていたら矢が女性用のものであるとか、追加で殺人が起きたとか、何かしら判明したり起こってはいるのだが。
ラストは予想外に呆気なく死んでいったというか、ヴァンスが見殺しにした形ではあったが、犯人が捻くれていて結構面白かったので -
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ネタバレニューヨークのフォーリーズで活躍してカナリヤという愛称のあった美女(今で言うラウンジ嬢とかプロ彼女?)が殺された事件のお話。
犯人は妻子持ちのおじさんだった。レコードに女声で台詞を吹き込み女性が生きてるように見せかけて殺害時刻を偽装した。
殺人を実行している時にワードローブ内にカナリヤを恐喝しにきた別の男が隠れていたことが話をややこしこくさせていた。
探偵ヴァンスの「自分の生命はその当人のもので、当人が好きなようにしてよい。(中略)僕は、むしろ自殺は人間に残された唯一の権利だとまでいいたいくらいだよ」という思想のもと、犯人は拳銃で自殺して幕。 -
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ネタバレYの悲劇ほどではないが、衒学的で読みづらい。
ドイツ語やギリシャ悲劇の引用などが多数出てくる。
メトロポリタン美術館のことを「ヨーロッパが引き取りを拒否した死体の陳列室」と評したのは面白かった。
探偵は貴族のファイロ・ヴァンス。著者のヴァンダインが友人として事実を記録したかのように書いてある。
要素は、古いお屋敷、奇妙な一族、一族の連続殺人。
屋敷から人を離れさせない理由として、亡くなった当主の遺言で「屋敷から離れたら相続権なし」としていた。
犯人は養子の末っ子。実父がドイツ人の精神病にかかっている殺人鬼で、血筋が悪さをして犯行に及んだという筋書きだった。自作自演で自分を撃ったり、警察と -
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ネタバレカナリアと呼ばれたブロードウェイの女優が、自室で絞殺される。部屋は激しく荒らされ、完全な密室だった。事件の晩に男と出掛けた後自室に戻ってからは、誰も部屋には入っていないとメイドや電話交換手たちは証言する。
検事マーカムに呼び出された探偵ファイロ・ヴァンスは、こじ開けられた宝石箱やわざと倒されたランプなど、荒らされた部屋の中の様々な矛盾を指摘する一方、カナリアと関係の深かった男たちを取り調べていく。
カナリアと関係のある男たちは誰しもが何かを隠していたり、微罪を犯していたりする。事件の晩も自然とカナリアのもとに引き寄せられるなど、死に際しても男たちを翻弄するカナリア。
クローゼットに隠れ、目の前 -
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ヴァン・ダインのデビュー作。
好きな順に読んでしまうので、シリーズものなのにデビュー作が最後になってしまった(^_^;)
でも「最初はこんな感じだったんだ!」と後から知るのも結構楽しい。
〈名探偵ファイロ・ヴァンス〉が好きになったのは心理学的推理をするところ。
バークリーの〈名探偵シェリンガム〉も同じく心理学的推理。
バークリー作品の解説によると、アメリカでベストセラーになっていた同じ心理を扱うヴァン・ダインを意識していたのではと書いてあった。
次第に心理的なものを扱わなくなったヴァン・ダインに対して、バークリーはとことん心理的なものを追求していったらしい。
物的証拠にこだわる地方検事マー -
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ネタバレ「メタバース」という言葉を作った本ということで。
30年前にこんな世界を、という感想をよく見るが、まあ確かにそうなんだが、半世紀生きている人間からすると、30年前にはネットはあったしな、と思う。日本ではまだまだパソコン通信全盛時代でインターネット普及はしていなかったが、すでに存在はしこれから広がっていくだろう、という情報はあった。ハイパーメディアクリエイターという肩書きの某人が某大学でそう話していた。
仮想空間はルーカスフィルム社のHabitatというものがあったことを考えると、仮想空間のアイデア自体はそんなに驚くものではないと個人的には考える。ただ、それを洗練させ普及させた功績は大きいと -
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ネタバレヴァンスが最後まで犯人や推理を明かさない、まあ推理小説でよくある探偵の沈黙とも言うべきことに、しっかりと理由があるのが好ましい。物語として成立する推理小説であり、ただの謎解き小説ではない。
フーダニットにおいては、絞り込むことは容易いものの自分では犯人を当てられず、しかし無理のない筋立てになっていて良い。
厳しめに☆3としたのは「また読みたい!」と思うほどにはのめり込めなかったためであり、引っかかった点はなかった。ヴァンスという探偵が私にとってやや魅力に欠けるせいもあるかもしれない。また長編小説特有の中だるみはあまりないが、集中して読み切れるほどではない。ミステリ史に残る名作とまではいかないが -
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このシリーズ、アイリーンと友人になり生活を共にするようになったネルが主人公なんだけど今回はネルの昔の知人の事件に巻き込まれ、その知人はアフガニスタンでワトソンとも知り合いで…という話。アイリーンとホームズとの関係性をアイリーンよりのネルから描く描写がホームズに対して辛辣でよい。今回ホームズ要素は少ないけれどホームズという人間の存在がアイリーンにおいて相当大きいのがわかるシーンもあるし、ホームズもワトソンも出てくるのが良い。物語としては山場がモリモリしてるわけでもトリックが目新しいわけでもないのでアイリーンと旦那のゴドフリーとネルとの掛け合いとネルと知人の恋についてをずっと読まされている感じ。こ
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新訳が出たということで再読。とは言っても、高校生のときに読んだのだが、どんな内容だったか全く覚えていなかったので、実質的には初読と同じ。ただ一つだけ、本文が始まる前に「有名なグリーン家殺人事件があったころのグリーン屋敷」という版画が挿入されているのだが、この屋敷の立派な構えや聳え立つ尖塔については鮮明に記憶が残っていた。
下肢が麻痺してしまった未亡人、亡くなった家長の遺言に縛られ遺産を相続するためには四半世紀はこの屋敷に住むことを余儀なくされている4人の子どもたち、そして養女。これらの面々がいがみ合って暮らしていたグリーン家で、次々と家族が殺されていく、果たして犯人は家族の中の誰かなのか