あらすじ
発展を続けるニューヨークに孤絶して建つ、古色蒼然たるグリーン屋敷(マンション)。そこに暮らす名門グリーン一族を惨劇が襲った。ある雪の夜、一族の長女が射殺され、三女が銃創を負った状態で発見されたのだ。物取りの犯行とも思われたが、事件はそれにとどまらなかった――。姿なき殺人者は、怒りと恨みが渦巻くグリーン一族を皆殺しにしようとしているのか? 不可解な謎が横溢するこの難事件に、さしもの探偵ファイロ・ヴァンスの推理も行き詰まり……。鬼気迫るストーリーと尋常ならざる真相で、『僧正殺人事件』と並び称される不朽の名作が、新訳で登場。
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Posted by ブクログ
ニューヨークの一角に建つ旧世代の名残のようなグリーン屋敷で起きた連続殺人事件を探偵役のファイロ・ヴァンスが解き明かす。
消えた犯人、消えた凶器、怪しい足跡、限られた関係者、過去の出来事から現代の事件へのつながり、隠し部屋、古い名門に隠された内情…。
由緒正しい探偵小説だあ(^○^)
探偵役のファイロ・ヴァンスは貴族階級で、著者であるヴァン・ダインがファイロ・ヴァンスの学友で法律代理人で探偵記録者となっています。
警察ものだと情報を共有して容疑者逮捕を急ぎますが、素人探偵ものだと「今は言えない」が通じるので小説として盛り上がりを作れますね・笑
グリーン家屋敷は三世代前に作られ、前当主のトバイハスは膨大な財産をなしたがかなり悪どい事をしたという噂がある。13年前に遺言で「家族はこの先25年はこの屋敷を維持すること。家を出たら財産相続権を失う」と残しているためグリーン家家族はお互いを嫌い合いながらも屋敷から出られない。
屋敷に住むのは、未亡人で下半身不随のミセス・グリーン、実子として息子と娘が二人ずつ、養女(ほぼ未亡人の看護人)が一人。執事、料理人、メイドたち。そして事件の関係者にはよく出入りする主治医が追加される。
このグリーン家で連続殺人が起きます。
お屋敷内での連続事件なんだから通常だったら家を離れればいいのですが、グリーン家は「遺産相続権を失う。家族はお互い嫌い合っていて助け合わない」ということで殺人現場から出られない納得の理由になっているわけですね。
さらにこのグリーン家の人々の異常性もあります。みんなそれぞれが高慢だったり攻撃的だったりして嫌な奴。家族が殺されても「そんなことで騒がしくなって迷惑」くらいの反応のため、連続殺人が起きても読者としても「この人たちじゃなあ…」という気持ちに(^_^;)
推理小説としてもまさに読者に正しく情報を提示してきて実にフェアだ・笑
由緒正しい探偵小説は頭の切り替えとか頭の休憩になって楽しいです(^^)
Posted by ブクログ
『十角館の殺人』登場人物フェア開催中(※1人で勝手にやってます)
アガサ→ポウ→カー→エラリイに続いて、5人目ヴァン・ダイン初読み。
ニューヨークに孤絶して建つグリーン屋敷。
名門グリーン一族に次々と惨劇が起こる…
『十角館』フェアをやるくらいなんで、何しろ「館」が大好きな自分には大当たり!!
綾辻行人さんの館シリーズを読んでいる時と同じドキドキ感でめちゃくちゃ面白い。
グリーン屋敷の見取り図も部屋の平面図もあって、館好きはテンションが上がる。
この家族は互いに憎み合っていて、誰が犯人でもおかしくない。
閉鎖的空間でみんなが疑心暗鬼になるこの感じがもう大好きな展開。
アマチュア探偵のヴァンスは、他の名探偵と違って自信家でもないし、早い段階で犯人を当てるような洞察力もない。
個性もあまりない探偵だけど、だからこそ探偵と読者が同じ目線で一緒に犯人探しができて楽しかった。
作者ごとに様々なタイプの探偵がいて、それぞれ良さがあるなぁ。
海を渡って100年近く多くの人に読まれている不朽の名作は、どれを読んでも超絶面白い。
そして新訳版だからとても読みやすい!!
海外古典ミステリーはもっと難しいものだと思っていて、こんなに面白いとは知らず、恥ずかしながら若い頃に全く読んでこなかった。
そんな私に海外古典ミステリーへの入口をつくってくれた『十角館』が与えてくれた影響は本当に大きい。
遅くなったけど読みはじめて本当に良かった。
解説によると、この作品とエラリー・クイーンの『Yの悲劇』は、〈閉鎖的空間の連続殺人〉などが共通しているとのこと。
クイーンの違うシリーズに進もうと思ってたのに、『Yの悲劇』も読みたくなってしまった。
『僧正殺人事件』も『火刑法廷』 も国名シリーズも読みたいし、フェアはまだまだ続きそう♪
Posted by ブクログ
正直舐め腐っていた。所詮1928年の作品だろうと。そんな遠隔系トリックなんてまだ考案されていない時代だろうと。だからこそ2025年に読んでも「意外な犯人」になってしまった。俺は馬鹿だった。『ビッグ・ボウの殺人(1894年)』でつい最近感銘を受けたばかり(※巻き込みネタバレではない)だし、ホームズだってもっと前からいたんだった。古典侮るなかれという教訓を得たが、侮りながら読んだ方が10倍楽しめることが判明した。
矢吹駆ってこのファイロ・ヴァンスが元ネタか?あと解決編の前に重要な手がかり100個くらい列挙するやつ、日本の本格ミステリにも継承されれば良かったのに。
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初ヴァン・ダイン。
他の方も仰ってますが、読者にとてもフェアな本格ミステリーだと思いました。
勝手なイメージでしたが、ヴァンの作品なら叙述トリックではなかろうと思って読めたから犯人は絞りやすかったかなと。
ただ、被害者が増えていくにつれ自動的に容疑者が限られてくるので後半になればなるほど犯人は見えやすい。
ミステリーにおいて、ありとあらゆるトリックが使われてきた現代において他の手法はもうない、と言われていますが、これは今読んだとしても楽しめる作品で凄いなと思いました。
ミスリードに導く手法がさすが…。
ヴァンスの講釈だったり、注釈が入ったりと初めはとっつきにくさを感じましたが、読むに連れ慣れていきました。
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著者の作品は僧正、ベンスン、カナリア、と読んできての本作だったが、今のところ1番面白かった。
解説やレビューでも影響作品として名前があげられる「Yの悲劇・エラリー・クイーン著」だが、納得の本作真犯人。
↓↓犯人ネタバレ
ただ、撃たれて復活を果たし、再度毒を盛られて…というのは逆に怪しく感じてしまって、その通りに犯人を当ててしまえたのが残念だった。
それでも下準備をした上であれ、銃で自らを撃ったり、致死量の毒を飲んだりという身体を張った殺人なのでその執念に好感が持てた。
グリーン夫人のキャラクターや、歩けないはずなのに歩く姿を見たという証言があってまさか???と思わせてドキッとさせてくれたので良かった。
Posted by ブクログ
遺産相続ものとなればどうしても得をするものが犯人という事になるので絞りやすく、ましてや「そして誰もいなくなった」ばりにどんどん人が死んで行くので、後半になればなるほど分かりやすい。
なので、どの時点で犯人を当てられたかが謎解きに挑むものにとっては重要なのではないかと思う。
ただし、その殺人トリックについてまで完全に推理するとなるとなかなか難しいのではないだろうか。
あのファイロ・ヴァンスでさえなかなか真相に至るに時間を要しているのだから。
とにかく緻密な構成が素晴らしかった。
Posted by ブクログ
ニューヨークにひっそりと佇む古式ゆかしいグリーン屋敷。その一族が次々と射殺される事件が発生する。当初は強盗による犯行と見られていたが、マーカムに連れられて捜査に乗り出したヴァンスの推理によって、どうやら内部の犯行であるということが発覚する。グリーン家は当主のミセス・グリーンをはじめとして、家族でありながら互いに反目し合い、憎しみを抱いている。
指紋については完璧に消し去られているのにこれ見よがしに残された足跡、クリスティのポアロシリーズでもお決まりの、事件の鍵を握る人物がギリギリのところで口を封じられてしまう展開など、前二作以上に見所が多い。登場人物も癖が強く、一族だけでなく執事のスプルートや医者のフォン・ブロンなどいかにも怪しい人間がうようよしている。
「この人には死んでほしくないな」と思える人物が登場する作品は当たりが多いが、この作品についてもそれが言える。だが蓋を開ければ恐るべき殺人者、というのもそれ以上に面白い展開。レックス殺害についてはちょっと反則ではと思うけれど、エイダがどうやって殺人のヒントを得たかなど、全体としてうまくまとまった作品。
かわいいポメラニアンの活躍も、まさか仕組まれたものだったとは。
Posted by ブクログ
犯人は当たった!嬉しい!
さすがのヴァン・ダイン、古典かつ本格のミステリで私好み。警察なんとかできるでしょ、はさておき、構想が素晴らしかった。訳も読みやすい。
引き込む力、謎を際立たせる構想、読んで満足間違いない。
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ヴァン・ダイン(多分著者自身)による事件の記録という形で書かれていて、そこは嫌いではなかったが注釈が少しだるかった。(注釈まで話の一部になってる部分があるため読み飛ばさないほうがいい。)
探偵役ヴァンスの例え話も難しくてよく分からず…、ただ検事マーカムと刑事ヒースがウザがってくれていたためストレスは無かった。
事件自体はいかにもな舞台にいかにもな名探偵で好みだったし、謎解き部分では散らばった要素がうまくまとめられ面白かった。全体に漂う不吉な雰囲気も良かった。
Posted by ブクログ
再読
「呪われた一族」「閉鎖空間の連続殺人」→このパターンの本家本元みたいな作品。クイーンの『Yの悲劇』につながる作といってもいいかも。
ファイロ・ヴァンスってどんな探偵だったっけ? と再読してみたけど、いいねぇ。思わせぶりで貴族的な態度は、名探偵の鉄板のパターンだね。
Posted by ブクログ
お初の方の本。ミステリ界では有名で古典と呼ばれてるらしい。探偵役は美術にちょっとうるさいタイプで、助手はほとんど…というか、まったく喋らない。ニューヨークにある古い屋敷に縛り付けられた一族の血塗られた事件。どいつもこいつも性格が悪く、家族同士でいがみあっている始末。母親なんて目も当てられない。それから捜索等が全くもって進まず、しかも探偵役が真相にたどり着いても、まだ待て、まだその時じゃないと止めてくる始末。あんまりにもゆったりしすぎてる。屋敷内は調べ上げたのに、屋敷の外や庭はまったく捜索されなかった。最後もなんだか分かりにくい。私には合わなかった、残念。
Posted by ブクログ
古典すぎてしんどかった。
もともと海外物の小説はそんなに得意ではなかった。日本とは違う言い回しとか慣用句、馴染みのない引用、聖書などの常識もないので、はなから読みにくい。まして古典なので、事件から捜査から推理から、その流れがゆっくりに感じた。
恐らく作品が発表されたころはこの内容も斬新だったのだろうな。事件の最初のあとは中盤を飛ばしてすぐにまとめになるあたりを読んで、結論を読んで終えてしまった。
気が短くてすみません。最初から最後までつぶさに読むのは無理だった。
Posted by ブクログ
Yの悲劇ほどではないが、衒学的で読みづらい。
ドイツ語やギリシャ悲劇の引用などが多数出てくる。
メトロポリタン美術館のことを「ヨーロッパが引き取りを拒否した死体の陳列室」と評したのは面白かった。
探偵は貴族のファイロ・ヴァンス。著者のヴァンダインが友人として事実を記録したかのように書いてある。
要素は、古いお屋敷、奇妙な一族、一族の連続殺人。
屋敷から人を離れさせない理由として、亡くなった当主の遺言で「屋敷から離れたら相続権なし」としていた。
犯人は養子の末っ子。実父がドイツ人の精神病にかかっている殺人鬼で、血筋が悪さをして犯行に及んだという筋書きだった。自作自演で自分を撃ったり、警察といてアリバイが証明できる時に遠隔で兄弟を殺したり考えられていた。
この時代のミステリー小説は精神病患者が多すぎないか?
Posted by ブクログ
異様な一族に降り注ぐ不可思議な殺人事件という要素が面白い。
お互いを憎み合う家族や不気味な使用人達、アリバイに欠け挙動不審な医者等この人物達の関係性について非常に興味を掻き立てられた。
犯人の意外性が薄いのとトリックや警察側の動きも少し現実味が無いような気がした。
Posted by ブクログ
しんどかった。大昔に読んだはずで、犯人も目星が付いていたのに長かった。とりあえず、旧版の後書きにも目を通しておこう。アダからエイダになっているのね。あと、人物紹介欄にグリーン婦人が上がっていないのは云々もよくわかりました。今の時期に、新訳版が出る意義も理解出来たように思う。
Posted by ブクログ
新訳が出たということで再読。とは言っても、高校生のときに読んだのだが、どんな内容だったか全く覚えていなかったので、実質的には初読と同じ。ただ一つだけ、本文が始まる前に「有名なグリーン家殺人事件があったころのグリーン屋敷」という版画が挿入されているのだが、この屋敷の立派な構えや聳え立つ尖塔については鮮明に記憶が残っていた。
下肢が麻痺してしまった未亡人、亡くなった家長の遺言に縛られ遺産を相続するためには四半世紀はこの屋敷に住むことを余儀なくされている4人の子どもたち、そして養女。これらの面々がいがみ合って暮らしていたグリーン家で、次々と家族が殺されていく、果たして犯人は家族の中の誰かなのか、そしてその動機は、手口は?というもの。
探偵役のファイロ・ヴァンスのペダンチックさが鼻持ちならないということは良く聞くが、確かに捜査陣の側からすれば「あんたの言っていることが捜査と何の関係があるのだ」と言いたくなるのは分かるものの、解決と全く無関係なことでもないので、読んでいてそれほど嫌な感じはしなかった。
次々に関係者が殺されていくので容疑者が絞られてしまい、犯人自体の見当はだいたい付いてしまうのだが、犯行方法の詳細は分からなかったので、最後まで面白く読むことができた。
創元推理文庫よりヴァン・ダイン新訳の刊行が2010年に『僧正』から始まり、『ベンスン』2013年、『カナリア』2018年、そして本作『グリーン家』が2024年、一応「S.S.ヴァン・ダイン全集」と銘打たれているが、果たして12作全部出るのだろうか。