あらすじ
発展を続けるニューヨークに孤絶して建つ、古色蒼然たるグリーン屋敷(マンション)。そこに暮らす名門グリーン一族を惨劇が襲った。ある雪の夜、一族の長女が射殺され、三女が銃創を負った状態で発見されたのだ。物取りの犯行とも思われたが、事件はそれにとどまらなかった――。姿なき殺人者は、怒りと恨みが渦巻くグリーン一族を皆殺しにしようとしているのか? 不可解な謎が横溢するこの難事件に、さしもの探偵ファイロ・ヴァンスの推理も行き詰まり……。鬼気迫るストーリーと尋常ならざる真相で、『僧正殺人事件』と並び称される不朽の名作が、新訳で登場。
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Posted by ブクログ
正直舐め腐っていた。所詮1928年の作品だろうと。そんな遠隔系トリックなんてまだ考案されていない時代だろうと。だからこそ2025年に読んでも「意外な犯人」になってしまった。俺は馬鹿だった。『ビッグ・ボウの殺人(1894年)』でつい最近感銘を受けたばかり(※巻き込みネタバレではない)だし、ホームズだってもっと前からいたんだった。古典侮るなかれという教訓を得たが、侮りながら読んだ方が10倍楽しめることが判明した。
矢吹駆ってこのファイロ・ヴァンスが元ネタか?あと解決編の前に重要な手がかり100個くらい列挙するやつ、日本の本格ミステリにも継承されれば良かったのに。
Posted by ブクログ
著者の作品は僧正、ベンスン、カナリア、と読んできての本作だったが、今のところ1番面白かった。
解説やレビューでも影響作品として名前があげられる「Yの悲劇・エラリー・クイーン著」だが、納得の本作真犯人。
↓↓犯人ネタバレ
ただ、撃たれて復活を果たし、再度毒を盛られて…というのは逆に怪しく感じてしまって、その通りに犯人を当ててしまえたのが残念だった。
それでも下準備をした上であれ、銃で自らを撃ったり、致死量の毒を飲んだりという身体を張った殺人なのでその執念に好感が持てた。
グリーン夫人のキャラクターや、歩けないはずなのに歩く姿を見たという証言があってまさか???と思わせてドキッとさせてくれたので良かった。
Posted by ブクログ
遺産相続ものとなればどうしても得をするものが犯人という事になるので絞りやすく、ましてや「そして誰もいなくなった」ばりにどんどん人が死んで行くので、後半になればなるほど分かりやすい。
なので、どの時点で犯人を当てられたかが謎解きに挑むものにとっては重要なのではないかと思う。
ただし、その殺人トリックについてまで完全に推理するとなるとなかなか難しいのではないだろうか。
あのファイロ・ヴァンスでさえなかなか真相に至るに時間を要しているのだから。
とにかく緻密な構成が素晴らしかった。
Posted by ブクログ
ニューヨークにひっそりと佇む古式ゆかしいグリーン屋敷。その一族が次々と射殺される事件が発生する。当初は強盗による犯行と見られていたが、マーカムに連れられて捜査に乗り出したヴァンスの推理によって、どうやら内部の犯行であるということが発覚する。グリーン家は当主のミセス・グリーンをはじめとして、家族でありながら互いに反目し合い、憎しみを抱いている。
指紋については完璧に消し去られているのにこれ見よがしに残された足跡、クリスティのポアロシリーズでもお決まりの、事件の鍵を握る人物がギリギリのところで口を封じられてしまう展開など、前二作以上に見所が多い。登場人物も癖が強く、一族だけでなく執事のスプルートや医者のフォン・ブロンなどいかにも怪しい人間がうようよしている。
「この人には死んでほしくないな」と思える人物が登場する作品は当たりが多いが、この作品についてもそれが言える。だが蓋を開ければ恐るべき殺人者、というのもそれ以上に面白い展開。レックス殺害についてはちょっと反則ではと思うけれど、エイダがどうやって殺人のヒントを得たかなど、全体としてうまくまとまった作品。
かわいいポメラニアンの活躍も、まさか仕組まれたものだったとは。
Posted by ブクログ
お初の方の本。ミステリ界では有名で古典と呼ばれてるらしい。探偵役は美術にちょっとうるさいタイプで、助手はほとんど…というか、まったく喋らない。ニューヨークにある古い屋敷に縛り付けられた一族の血塗られた事件。どいつもこいつも性格が悪く、家族同士でいがみあっている始末。母親なんて目も当てられない。それから捜索等が全くもって進まず、しかも探偵役が真相にたどり着いても、まだ待て、まだその時じゃないと止めてくる始末。あんまりにもゆったりしすぎてる。屋敷内は調べ上げたのに、屋敷の外や庭はまったく捜索されなかった。最後もなんだか分かりにくい。私には合わなかった、残念。
Posted by ブクログ
Yの悲劇ほどではないが、衒学的で読みづらい。
ドイツ語やギリシャ悲劇の引用などが多数出てくる。
メトロポリタン美術館のことを「ヨーロッパが引き取りを拒否した死体の陳列室」と評したのは面白かった。
探偵は貴族のファイロ・ヴァンス。著者のヴァンダインが友人として事実を記録したかのように書いてある。
要素は、古いお屋敷、奇妙な一族、一族の連続殺人。
屋敷から人を離れさせない理由として、亡くなった当主の遺言で「屋敷から離れたら相続権なし」としていた。
犯人は養子の末っ子。実父がドイツ人の精神病にかかっている殺人鬼で、血筋が悪さをして犯行に及んだという筋書きだった。自作自演で自分を撃ったり、警察といてアリバイが証明できる時に遠隔で兄弟を殺したり考えられていた。
この時代のミステリー小説は精神病患者が多すぎないか?