山本幸久のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この本のタイトル「三つ星」が一体何なのか? それがこの物語のメッセージだ。
そこにあるのは、信頼できる、リスペクトできる仲間達と力を合わせ、工夫して食べることへの喜びを共感し合えること。
高級であることよりも新鮮であること。
収穫する喜びを共感し合えること。
昔から地元の人達に受け継がれてきた食材や料理の意味合いを深く理解すること。
そんなメッセージが物語の味として仕込まれている。
「ええか、悲しいときには美味しいものを食べるのが一番なんやで、そうすると悲しいより美味しいが勝って元気になるんやで!」
一番気に入った台詞だ。
その気持ちが作者が伝える「三つ星」なんだな、、って感じる。
元気 -
Posted by ブクログ
思いやりとか親切心とかって、結局のところ自分自身の傲慢なのか?
さえ子と醐宮が出会った場面、さえ子が前の仕事を辞めた理由、さえ子と義足ユーザーたちとの関わり…読み進めていくうちに、そんなことを考えさせられた。
相手の気持ちを100%理解することは難しい。
それは、マジョリティかマイノリティか(適切な言い方でなかったらごめんなさい)に関係なく、どちらにも言えることで、であるならばどうすれば良いのか。
どう向き合うのか、どう受け入れるのか。
自分の“あたりまえ”や“常識”は、他人のそれとは違うのだということを、日頃感じていることをこの本を読みながらふと思いだす。
バリアフリーとユニバーサルデザ -
Posted by ブクログ
オールナイトニッポン55周年記念公演を小説化した一冊
放送100回目を迎えた藤尾涼太のオールナイトニッポン、しかし直前にスキャンダルが発覚し…というあらすじ
僕はラジオが好きだ
ただ、なぜ好きなのかと言われると言葉に詰まってしまう
この本を読んでちょっと分かった気がする
リスナーとパーソナリティとが繋がり、一つの生放送を、忘れられないあの夜を作り上げていく感覚が好き
聴き返すと初めて聴いたときの感情しっかり思い出せる密着さが好き
いつも一人で聴いているのにイベントに行くと沢山の仲間がどこからか現れるのが好き
あとは当たり前だけどラジオ描写が脳内再生余裕すぎる…! -
Posted by ブクログ
義肢装具士を目指す主人公さえ子。高校を卒業してから7年勤めた内装会社を辞めて、貯めてたお金を専門学校の学費に使い、何年も付き合った彼氏にフラれて、まさに前を向くしかない崖っぷちの彼女。
渋谷にある専門学校で出会った2人の仲間と共に、四苦八苦しながら学びと経験を深めていく。
義肢装具士というお仕事、全くと言っていいほど知りませんでした。
お恥ずかしながら。
そこには、今まで知り得なかった深くて時に悲しくて、でも明るくて元気が出る素敵な社会がありました。
自分の人生に芯がある人は強くて美しい。
それは、義肢装具士を目指すさえ子とその仲間も、彼らに関わる先生や先輩、それから義肢を使っている方々も。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久々山本幸久、別作品の登場人物がコソっと出てくるのが楽しみな山本作品だが、今回は冒頭いきなりド直球にアヒルバスのデコちゃん登場。
話は八王子の置屋「夢民」に所属する芸者5人の物語。5人それぞれが主人公の短編5編を収録。読みやすい楽しい話が基本なんだが、それだけでなく若干引っかかるような悲しいような挿話もチラホラと入ってくる。
特に未以さんは非常に気になる、というかこれ続編読まないと寝ざめ悪いパターンやわ。アヒルバスの中にちょっと出てくるとかでもいいので、彼女のその後、できれば幸せな姿を読みたいと思う。
その他兎笛さん木遣り練習のシーンや、茂蘭さんのカラオケシーン、謎の美女寿奈富さんの過去 -
Posted by ブクログ
ネタバレTさんのおすすめ。
なぜ、男性ストリップに照明をあてているのか。
なぜ、チップに必要なお札を用意しているのか。
なぜ、マネキンでチップをパンツにはさむ練習をさせるのか。
銀座三越のライオンを退治するのか、
築地本願寺を忍び足で歩くのか。
それは主人公のバスガイド高松秀子、通称デコが、
バスツアーのお客様に楽しんでほしいから。
敬愛する先輩が辞めてしまい意気消沈する中、
新人研修を担当させられたデコが、自分自身も成長していく。
こう書いてしまうと全然面白くないが、
ベテランガイドの鋼鉄母さんとその息子、
友人ではなく同期アキ、
個性あふれる新人たちと、登場人物がぶっとんでいて面白い。
行 -
Posted by ブクログ
東京の商社で働いていた静香は、身体を壊し退職後に実家の「有野練物」の手伝いをしていたが、町おこしプロジェクトに応募し、おでんの屋台を開く。
実家の工場で作った練物でのおでんは、出汁も染みて絶品。
少しずつ常連客も増えて親しくなり、高校時代の元カレのDJポリスの六平太とも良い関係に…。
登場人物のキャラも際立つうえにちょっとした問題も切り抜けて、良い方向に進んでいくので気持ちよく楽しめる。
心に沁みてくる温かい物語である。
そして、なんと言ってもおでんが美味しそうである。
たまねぎ天に紅しょうが天、餃子巻にウインナー巻、肉いなり、小型ばくだん…とインターンを終えて寄った早咲ちゃんが頼んだも -
Posted by ブクログ
ニニが出ている。芸者でゴー、こうして友情出演みたいに出てくるのが嬉しいし山本幸久さん好きだよね。義肢装具士の存在も含めて考えたことないので、勉強になりました。3人もよかった 会社はこれから本当に出来ると思う。専門学校は大学みたいに学生生活を楽しむ場所じゃないので友情を育てる難しいかと思いますが、この3人は巡ってきたのですね。無意識のうちに出た言葉が相手を傷つける場面があるけど、あれを言われると何も言えない声も掛けれないと自分も思う。難しいね良かれと思って伝えても相手には同情だけの哀れみと受け取られるって 五十嵐貴久さんと同じでこのふんわり読んでいて和んでしまうのはどういう理屈なんだろうと考える
-
Posted by ブクログ
東京の大手商社で体調を崩し、実家の練り物屋さんの手伝いをしていた主人公の静香。ある日、一念発起して町おこしプロジェクトに応募し、実家の練り物を主食材にしたおでんの屋台を始める。美味しさに誘われて集まる多彩な常連客との騒動を描いた作品。
今回は『笑う招き猫』のアカコとヒトミがかなりの頻度で顔を出し、『ある日、アヒルバス』はバスのみ登場します。このあたりは山本幸久ファンなら判るはず。
途中でズッコケかけたけど最後は見事に立て直し、何もかもが良い方向に向かう怒涛のエンディングも心地良く。マンネリちゃあマンネリなのですが、ここは「安定」と呼びたい山本幸久節でした。
寒い日にはもってこいの一冊です。 -
Posted by ブクログ
覚悟を決めて何かに立ち向かう人の美しさが描かれていて私はとても好きでした。
と言っても、義肢装具士を目指す主人公のさえ子は途中で何度も「私は向いてないかも」と弱気になります。
そんな時に周りが羨ましく見えたり、自分の弱いところばかりが目についたりとすごくリアルな描写がありました。
でも周りには何気なく元気をくれる友人がいて、頑張っている人がいて、自分を頼ってくれる人がいる。
それを知りもっと逞しくなっていく、そんなお話なのですが読んでいてとても清々しい気持ちになりました。
読み進めるうちに登場人物に嬉しいことがあると自分も嬉しくなり、反対もまた然りですっかり没入していたように思います