山本幸久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この小説は同名の生配信舞台の内容がもととなったもの。
私は元々、山本幸久さんの著作が好きなので、大好きな映像作品を山本幸久さんが小説化してくれたなんて最高過ぎではないか!!と、1秒も迷わずレジへ持って行った。
リスペクトを持って映像をほぼそのまま小説化した印象だが、オリジナルストーリーが加えられている部分もある。
ここが映像と小説の差となってくるので、評価のしどころだと思うが、ほぼ完璧なオリジナルストーリーだったと言わざるを得ない。
ネタバレをせずに書くと、映像では見せていなかったけど絶対に存在する人の視点を追加している。
あの物語にはこういう人がいて、こういうことがラジオとともに生まれている、というある意味欠かせない視点が追加されていて、とてもとても良かった。
そして、その存在のキャラクター設計が、もう理解が過ぎていると言っても過言ではない。
個人的には最後のところと、次回作の導入が蛇足かなと思ったけど、それ以外は気になるところはまったくなし。
見事な小説化だと思った。
映像とともにおすすめ! -
Posted by ブクログ
働く女性の生活の一部を切り取った短編アンソロジー
女性視点で描かれる各小説から、働く女性の悩み、苦しみ、喜びを感じ取ることができ、不覚にも「クール」で涙した。
他にも、伊坂幸太郎さんの書いた短編は短いながらも伏線が貼られており、読んでいて点と点がつながる心地よさを感じることができた。
エール3作を通して、「働くこと」「社会とつながること」の二つについて考えるきっかけを得れたと思う。今までは社会の歯車というマイナスイメージを持っていた会社員も、見方を変えれば誰かを喜ばせる素敵な仕事のように感じた。
社会人になったのちも、誰かを喜ばせる仕事をしたいし、その喜ばせれるかも知れない機会を「面倒だから」という理由で逃げない大人になりたいと強く思う。
エールは女性中心で「派遣社員」「契約社員」「パート」といった人が登場することが多かった。今度は男性中心のエールを読みたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ある日、アヒルバス」の続編。
前作から8年後、初っ端、泣きそうだった。
自分が成長してないようで、企画したツアーが売れてなくて、
ちょっとデコが落ち込んでいた。
でも、恋人もいないのに「お見合いツアー」で世話焼きおばさんをやったり、
後輩の企画では応援したり、一緒に下見をして後押ししたり、
社長に酔って絡んできっかけを作ったりして
十分がんばってるよ、デコ、と言ってあげたかった。
実はデコのことが好きなのかと思っていたバスの運転手、小田切は結婚して子持ちになり、
ピコピコハンマーの鬼、同期の亜紀も結婚して育休中と予想外の展開。
さて、今回外国人対策に雇われたおっさんガイドは、
バスガイド仲間だけでなくガイド先でも鼻つまみ者。
最後の頼みの綱とばかりに、デコと組まされる。
がぐぐぐぐぐ、と怒りながらも
おたくツアーをガイドし、
次第におっさんをお客様の輪にまきこんでいく。
しかも最初に一緒にツアーを回った後、
掛け合いを面白くしたり、
一緒にプリキュラを踊ったりするのがデコらしくて笑えた。
おたくツアーの中身も面白そうだったし、
前作を上回る面白さだった。
そして何より、カレシができたようで良かった。
ただちょっと言わせてもらえば、
豪徳寺の招き猫はねー、
昔はいろんな種類の古い招き猫が置いてあって、
ちょっと怖かったんだよー。 -
Posted by ブクログ
義肢装具士になるため勤めていた会社を退職して25歳で専門学校に入学した女性の努力と奮闘を描く青春お仕事小説。
◇
義肢装具科2年生の教室。二階堂さえ子は下腿義足製作についての実習中だ。実習は3人ひと組の班で1人の義足ユーザーにモデルになってもらい行われる。
さえ子たち4班のモデルは穂高優太という写真館の2代目だ。大学時代にバイト中の事故で右足の膝から下を切断したという穂高は高齢者の多いモデルの中でも32歳と飛び抜けて若く、人間的にも知的で包容力がある。
ミッション系の学校を卒業している穂高から「人間の身体がよくできているのは神様が造り給うたから」という旨の話を聞かされた3人は、ならば自分たちは神の造形に優るような義足を造ろうと決意を新たにする。
「神様には負けられない」という意気込みで義肢装具士への道を着実に歩もうとする3人だが……。
* * * * *
山本幸久さんの文章の巧みさが如実に感じられる作品でした。それに、恐らくかなり綿密に踏み込んだ取材をなさったことがわかるという点でも好感を持てました。
例えば、義足を必要とする多くの人たちが登場しますが、どの人も前向きに生きていて人生を悲観してはいません。
私も身体に障碍を持つ方たちと仕事を通して深く接してきた経験があり、皆さんが一様に明るく積極的に生きようとしていらっしゃったことをよく知っています。それだけに本作での描写にはリアリティを感じました。
また、詳細に描かれる義足製作の過程にしても、説明くさくないのに非常にわかりやすく書かれています。
さらに、実習などで製作に取り組むさえ子たちの様子が、その苦労も含め活き活きと伝わってきて、情景が目に浮かぶほどでした。
こういうところにも、山本さんの丁寧な取材を感じることができます。
そして何より作品を支えているのが、さえ子たち主要人物の魅力的な設定で、さすが山本さんだと思いました。
7年間の建築会社勤めでバリアフリー設計に関わり、身体に何らかの不自由を持つ人たちの生活を意識したことが、さえ子をこの道に引き入れるきっかけになっています。
これだけで中編程度の作品が1本書けそうな事情を、さえ子のために用意しているのです。
さえ子とチームを組む永井真純と戸樫博文にも同様にバックボーンとなる物語が個々に用意され、それが控えめに紹介されつつストーリーが展開していきます。
3人とも、義足を必要とする人たちのことを第1に考えて、義肢装具士を目指しています。フィクションとは言え、その姿勢には心が救われる思いです。
ハード面ではバリアフリーがかなり進んできています。けれど、人々の意識面でのバリアフリーの拡がりは遅れているように見えます。
障碍は個性の1つに過ぎないということをすべての人が本当に理解するまでには、まだまだ時間がかかるのかも知れません。
それでもそういう社会の到来を信じたいと本作を読んで思いました。
山本さんと言えば、軽妙な文章でコミカルに描かれた作品が目立ちますが、本作はコミカルなところを含みつつ、大切なことを深く考えさせてくれる内容でした。 -
ネタバレ 購入済み
花屋に立ち寄りたくなる
今年、栄東中、本郷中、田園調布学園中の入試に出題された本。花屋さんの話ってあまり興味がなかったのだけど、読み始めたら面白いのなんのって。花びらと思っている所は実はガクだったり、節句の話や花言葉、和歌や俳句など花にまつわる様々な蘊蓄を交えながら心温まるストーリーが紡がれていく。ブラック企業を辞めて花屋のバイトを始めた主人公が、花を通して仕事の楽しさや自分の生き甲斐を見出していく。花屋を取り巻く様々な人たちによって人情溢れる人間関係の輪が広がっていく。そして、恋も。なんと幽霊までも。「満天星」読めないよ~。